時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

ヴァロットン―黒と白@三菱一号館美術館


結構な雨の日(でも写真よく撮れてるなあ)。

三菱一号館美術館のヴァロットン展。
ヴァロットンの個展を三菱一号館美術館で実施するのは2度目。最初は2014年。
…実はその展覧会に軽い気持ちで行ったのが、書き手が美術館通いを始めるきっかけ。
確かその時も雨だった。開催したのが梅雨時期だったのもあるけれど。

2014年の展覧会はヴァロットンの生涯全体にスポットを当てていた。
最初は木版画が多く、都会の人々や群衆やらを俯瞰的に描いていて、結婚してからの油彩は…真正面から人を描くことが殆どない、どこか冷えた室内画や、現実からわずかに外れたような、妙に不安を感じさせる絵を描く画家。
morina0321-2.hatenablog.com
以前も書いたが、ハマスホイ(ハンマースホイ)の「ピアノを弾く妻イーダのいる室内」(国立西洋美術館蔵)を最初に拝見した時、ヴァロットンを想起した。

実は先日上記の本を読んだのだが(図書館で借りた)、そこでもヴァロットンとハマスホイの類似点を指摘していたから、似た感想を受け取るのは間違ってはいない様子。冷えた個性というか。
で、今回はヴァロットンの木版画にスポットを当てて「黒と白」。
実は三菱一号館美術館、ヴァロットンの木版画をかなりの点数所蔵していて、それを使用しての展覧会。


この展覧会、紙で作品リストを置いていなかった。PDFをダウンロードできるQRコードは展示してくれていたが。
…ううむ。…メモやら印をつけられないのは不便なんだが(そのためにノートは用意してあるけどね)。


第1章「「外国人のナビ」ヴァロットン」。
ヴァロットンはスイス人で、ナビ派に参加していたのでこのタイトル。初期作品。
若い頃の、エッチングやドライポイントの作品もある。
「眠る画家の母、横顔」はドライポイントなんだけど、黒と白の面の領域が広くて、この頃から木版画に移行した後の画風が見えるような。
で、そこから木版画へ。エッチングやドライポイントと違って線が太くなるのは木版画の特徴なのかな。
「1月1日」は版木と共に飾られていたけど(完成した木版画1点のみにするため、基本は版木は処分されてしまうので、版木が残っているのは珍しいそうな)、本当に白い部分はがっつり彫られていて、面白い。薄い輪郭は浅く彫られてるとか。「1月1日」は裕福な家族の左右に物乞いがいる、という、ヴァロットンっぽい題材でもある。
あ、最初の方は山を描いた作品が多い(スイス人としては身近な題材ではある)。
ユングフラウ」は月と山と雲という素敵な題材。もしかしたら少しジャポニズム影響があるかもしれない。他のナビ派と、いや他の当時フランスにいたアーティストは全てそうかな、ジャポニズムの影響はあったみたい。


第2章「パリの観察者」。
三菱一号館美術館の大きな部屋での展示、ここは写真OK。

作品もOKだけど、個人的にはこの章立ての表示の仕方の格好良さがいいなあ、と。



勿論、作品モティーフの装飾も。なかなか御洒落。
ヴァロットンはパリの市民生活や群衆を、とても冷静な目で見て描いている。冷静な目、というか皮肉気な目、というか。
…どうも、ヴァロットンは人間に対して達観してる性格だったのかなあ、という気もしてしまう。
彼がスイス人であってフランス人でなかった、というのもあるのかもしれないが。
展示で面白いのは、「群衆-パリの野次馬たち、街路の生理学」と「罪と罰」は書籍なんだけど、その1つ1つの版画をスライドで見せてくれている。
書籍だから頁替えしないと普通は拝見できないのでありがたいし、しかもこのスライドが全て撮影OK(流石に動画はNGだったけど、映像は他の展覧会だと普通は写真NG)。太っ腹!
そうそう、「罪と罰」もそうだけど、ヴァロットン、割と犯罪場面も事故場面も描く。馬車に轢かれてる人とか、川に入水自殺したらしい遺体(人の頭みたいなのが水面に描かれてる…)を引き上げようとしている(橋の上には野次馬ぎっしり)な「自殺」というまんまなタイトルもあるし。
子供も結構描いているのだが(ナビ派は一般の子供を描くようになった一派でもある)、「可愛い子供たち」なんか、警察に連行されている男にわらわら群がってる子供達だったりするし…。
あ、そうそう、この部屋に油彩「公園、夕暮れ」があるのだが、この絵が非常にナビ派っぽいと感じたんだよね。


第3章「ナビ派と同時代パリの芸術活動」。
この章は他のナビ派リトグラフも一緒に。
ヴァロットンは「入浴」が出ていたけど、なるほど、風呂の絵といえばボナールだな、と(ボナールは奥様が療養で何度も風呂に入ったため、そういう絵が多い)。
ナビ派にそんなに拘りはないのだけど、ケル・グザヴィエ・ルーセル「雪の中で」は割と好みだったり、個人的には結構好みなヴュイヤール「室内」は薄墨的なリトグラフでの作品だったり、ボナール「家族の情景」は色の使い方がお洒落で、ボナールの作品としては好きな方だったり。


第4章「アンティミテ:親密さと裏側の世界」。
ヴァロットンが室内を描く版画集。
「楽器」の連作は平和で(音楽は鳴っているだろうけど)静かな情景で、これはこれで良い。ひたすら一人で練習に没頭している(猫が邪魔してる絵もあったけど)作品集。
良いのだが、その他の作品が男女の絡みに不穏なタイトルがついてるのが多い。
澄まし顔の女性に縋り付いて泣き崩れてる男性のタイトルが「信頼する人」とか。
でもって「アンティミテ」のシリーズ。「アンティミテ」はフランス語で「親交」という意味。…まあ…なかなか男女間のアレが…こう…。
澄ました顔の女性に言い寄ってる風の男性の作品にタイトル「お金」とか。
女性が顔覆って泣いてて、男性が滅茶苦茶狼狽している作品が「最適な手段」とか。
…いやあ…いいですな…(あ)
あと、「アンティミテ」の版木を(前述による完成品を1つにするため)処分する際に、アンティミテのシリーズの一部分をそれぞれ組み合わせて「版木破棄証明のための刷り」として作っていたのだが、これが作品としても非常に素敵。
ちなみに、この展示の直後、小部屋にこんなものが。


「アンティミテ」の作品を少し加工して(腕が動いたりする)繋いだ動画。記載通り、写真も動画も(!)OK。
「版木破棄証明のための刷り」も出てくるのが嬉しい。


次は章立てではなくて。
「姉妹館提携/アルビ・ロートレック美術館開館100周年特別関連展示 ヴァロットンとロートレック 女性たちへの眼差し」。
「アルビ・ロートレック美術館」はフランスの美術館。ロートレックの作品を寄贈してもらった美術館だそうで。
というわけで、このセクションはヴァロットンとロートレックの比較。
ロートレックは夜の世界に耽溺した方だが(彼の生活環境的に仕方がないと個人的には思う)、ヴァロットンは意外と「夜の世界」に関しての題材は少ないよね。「夜の世界」より上流階級のアレコレにはアレなだけで。
展示されていた「交響曲」も「夜の世界」というよりは、それよりアッパー階級な気がするしな…。


第5章「空想と現実のはざま」。
結婚してからの版画、かな。
結婚してからは油彩の方が作品数は多かったと思われる(それは前回の展覧会で思う)。ただ、それでも周囲からのニーズで木版画を作成していたっぽい。
「蔵書票」に馴染みがなくて初めて知ったのだが、蔵書の持ち主が誰かを明らかにする風習があったらしい。まあ、昔は蔵書を保有するなんて、とんでもなくコストがかかる話だというのは理解できる。印刷技術も発達していなかった時代だと猶更。
「F.レザンの蔵書票」はそういう意味で作成されたのだと。これが格好いいんだ。ヴァロットンのデザイン力の高さを感じる。
「小さな浴女たち」のシリーズも素敵。
あと、ジュール・ルナール「にんじん」の挿絵を手掛けたのもヴァロットンだそうで、そのほか「博物誌」「愛人」の挿絵も手掛けているそうで。「博物誌」の挿絵は綺麗だったなあ。もう少し拝見したい。
で、更にヴァロットンの晩年、「万国博覧会」(1900年)の作品と、第一次世界大戦関連の「これが戦争だ!」シリーズ。
万国博覧会」はヴァロットンの俯瞰的な冷静な目が描かせるのだろうな、と思うのだが、「これが戦争だ!」のシリーズは…。
ヴァロットンは第一次世界大戦に軍人として従軍希望だったらしい。年齢的にNGで、結局は従軍画家として参加したのだが。
…よく考えたら、ヴァロットンはフランス人ではないので、従軍希望がどういう意味だったのか、は結構深いものがあるような気がするが。どうなのか。
そして従軍画家として残した作品は、戦争の無残さを淡々と描いているような作品だった。


ヴァロットンは人間を好きだったんだろうか。
どうもなかなか複雑な心理をお持ちだったように、思う。
スイス人というナショナリズムも含めて。
とても興味深い。作品にも、底辺にある考え方も。


この後、下記の後期展示に顔を出そうかと思ったのだが。
morina0321-2.hatenablog.com
チケット売切れちゃってた。なので予定変更。


続く。

配信本当に大変有難いです

いやあ、本当に有難いことでございます。ハードル低く閲覧できるし、アーカイブ残ってると途中で止められるし巻き戻せるし…。
そんなことやってると、拝見するのに2日かかります(真顔)ヲタ気質。
こういう、どこまでも真剣に見てしまうタイプだから、動画コンテンツの消化に逆に向いてないんだよなあ…。

というわけで拝見しておりました。


配信チケット購入した時に、アンケートでベースの経験年数を聞かれて「なんかごめんなさい」となったりした書き手。
いやでも、全然知識ないけど、そんなについていけないってことはなかった。
個人的には、それまでベースマガジンのインタビューに折々目を通していたんだけど、いまいちどういう意味か分かってなくて、それがちょっと繋がった感。
あと、「ずっとふざけてる」って3連続で仰った、とか、先週某ハピサタで話をしてた件が出てきて、これか!とか(あ)

興味深かった。ありがとうございました。
書いてる時点でアーカイブがまだ残っているので、御興味のある方はどうぞ。終了しております。


→追記。ベースマガジンのWebに様子が出たよ。
bassmagazine.jp
「ふたりが何をしでかすかわからない」が文字になってる以外は、割と真面目なところを書いてくれている感。

東京国立博物館

ユリノキも色づく季節。

東京国立博物館は現在、特別展開催中。
www.tnm.jp
が、こちらのチケットが買える気がしないレベル。
で、暫く総合文化展を拝見していない。
特別展の後に総合文化展に流れる方もいるだろうし、混雑しているかなあ…と、恐る恐る総合文化展のみで。


入場したら、本館前に何やら椅子が。
www.tnm.jp
おっと、個人的には1年半ぶりのイベントですな。
morina0321-2.hatenablog.com
今回は拝見している暇がなく、スルーしたけれど。


まずは本館へ。
3室。
「仏教の美術」。「毘沙門天立像」は、ユニークな顔立ちの毘沙門天と、踏まれている鬼が「ぐえっ」って感じで面白かったんだが、旧蔵・川端龍子でおおっと。
「釈迦三尊十羅刹女像」がなかなか綺麗だったなあ。
変わったところだと、水瓶の特集展示が。全体的に形が綺麗だよね。
「宮廷の美術」は、伝・藤原公任筆の「伊勢集断簡(石山切)」の破り継ぎの料紙がとても美しい。
伝・寂蓮の「和漢朗詠集切」も雲紙使ってていいなあ…。
絵の展示は「歌人の絵」。個人的に雰囲気は嫌いじゃないなあ。
「禅と水墨画」は、伝・雪舟等楊の「中国真景図巻」がなんとなく雰囲気が好き。


4室「茶の美術」は、多分何度か拝見しているものが出ていたような。粉引徳利とか。あれ、なんかいいんだよねえ。雨漏もあって。


5・6室「武士の装い」。
兜に印象が深い。「紅糸威星兜」は普通に格好良くて、「紫裾濃威筋兜」は竜の飾りがついてる。
で、「紅糸威二枚胴具足」。兜がサザエ。サザエ…。でもって、胴がちょっと西洋の鎧っぽい。スーツアーマーとかプレートアーマーとかそういう感じの。でもって袖の部分が金属の鱗状。おお、スケールアーマー(先程から何やらゲーム的な言語が…)。南蛮胴の形らしい。これ面白いなあ。


7室「屏風と襖絵」。
作者不詳の「花車図屏風」、とても綺麗。狩野派らしいけど。空間の取り方とかも好み。


8室。
「暮らしの調度」。
まずは家具系。
「澤瀉漆絵膳」がとても繊細で美しい…。
「草取蒔絵螺鈿硯蓋」は琳派っぽいなあ、と思ったら光琳風蒔絵の一種だそうな。
「貝尽蒔絵提重」は小皿のデザインが1つ1つ違ってて全て美しい。どうなってるんだ。
「鼈甲波亀蒔絵盃」は、波を表している直線の交差の仕方がとてもモダン、というか現代工芸でも通用しそうなデザインだな…江戸時代のデザイン凄いな…。
「鼈甲水草鯉蒔絵盃」は鯉の鱗のデザインが格好いい。
「茶室蒔絵料紙硯箱」は箱の外側の木目と、画面の余白が好き。
「楓鹿蒔絵硯箱」は楓と鹿の構図が。振り返り鹿も格好いいし…。
衣装はこの時期割とお馴染みの火事装束。格好いいんだよね、このシリーズ。
「火事装束 緋羅紗地注連縄模様」の赤の上着と紫の頭巾が目に眩しい。
「火事頭巾 金革紺萌黄黄段羅紗」も格好いいけど派手なデザイン。色は紺の地は落ち着いてるのに、その分金&黄色が目立つ目立つ。これ、女性用なんだな…。
「火事羽織 紺木綿地雷神模様刺子」は意外と渋い色だし図案は目立たないんだけど、雷を表してるのかな、模様がいかにも雷、という感じでなくて(むしろ太鼓持ってるし音波みたいにも思う)、ちょっと面白いなあと。
陶磁は何度か拝見したことあるんじゃないかな、という品々。でも好みの器ばかりだったので眼福。
文房具で水滴「瓜に栗鼠水滴」「柿水滴」と矢立「紅葉流水文」「竹形」。細工が綺麗だわデザインも素敵だわ…。
装飾&化粧品は「菊萩茫柄鏡」「柿に烏飾簪」の細工の細かさが綺麗で、「梅松葉紅葉文白粉刷毛」はちょっと珍しいかなあ。こちらも文様が細かい…。
「書画の展開」。
今回の絵が「扇に描かれた絵」特集の様子。以前もあったね。
morina0321-2.hatenablog.com
先に書。書の方にも扇に書かれたものが。烏丸光広「扇面「一枝に」」。雰囲気が好みなんだよねえ…。
で、大らかな絵と字を見てあ、っとなった仙厓義梵「滝図自画賛」。
でもってガラスケースには、特別展とリンクしているであろう、岡倉天心の手紙が。…結構面白い文字書くんだね、岡倉天心
で、絵なんだが。先にも書いた通り「扇に描かれた絵」なのだけど。
狩野常信・狩野山雪・狩野伊川院栄信・長沢芦雪・英一蝶・伊藤若冲尾形光琳尾形乾山酒井抱一東京国立博物館ここで本気を出してきたんだが…。しかもどれも素敵なんだよねえ。たまらん…。
渡辺崋山「蝙蝠図扇面」もなかなか素敵な形の蝙蝠を描かれてたし。
唯一存じ上げなかったのが佐脇嵩之かな。英一蝶の門人で、扇に絵を描くことが多かったそうで。「秋海棠図扇面」、いい感じだった。


9室「能と歌舞伎」。
金春家伝来の能装束と面。「厚板 藍白段籠目唐草模様」が結構好きかなあ。後は女性の面が品が良い気がする。


10室。
「衣装(江戸)」は相変わらずの眼福。渋い色が多いのも良い…。
「浮世絵(江戸)」。
今回は「風景の中の人物画」なんだろうか。歌川広重はいつもの通り多めに展示してくれてるんだけど(ありがたい)、人物が描かれてる絵が多かったので。
渓斎英泉の人物画がちょっと面白い感じだった。

余談だけど、渓斎英泉、最近読んだこちらのお陰で、こう…エロ絵師イメージになってしまったのですがそれは(お)風景画も素敵ですけどね、渓斎英泉。
肉筆浮世絵は奥村政信「小倉山荘図」も宮川長春紫式部図」も鮮やかで綺麗だった。
面白いのは、「摂津の玉川で擣衣(砧で布を打つこと)」という題材を扱った複数の絵師の作品を並べたこと。摂津の玉川は、六玉川(6つの名高い清らかな川)の1つ、摂津国の玉川。鈴木春信も歌川広重もあって嬉しい。礒田湖龍斎も春信風だった初期の作品で、個人的にはかなり好き。
北尾重政「浮世六玉川第二 近江 俊頼」(同じく六玉川のうちの近江の玉川を描いてる)も初期作品なのかな、春信風。余談だけど、北尾重政は須原屋茂兵衛という版元の系列(お父さんの須原屋三郎兵衛がのれん分けして別の店を持ったそうな)なのだが…須原屋は一部の埼玉県民には心惹かれる名前であり(こちらの流れを組む県内書店チェーン)。
「近江の玉川」題材は歌川広重葛飾北斎も描いているものが並んだ。豪華。北斎美人画、結構好き。


1階へ下りて11室「彫刻」。
珍しく全部撮影OKだった。
そして入口の「菩薩立像」がとても美しい…。
愛染明王坐像」は厨子と一緒に飾られていて、この厨子も合わせて美しい。
十二神将立像」は干支の十二神だけど、東京国立博物館にはそのうち5体が所蔵されていて、あと7体は静嘉堂文庫美術館所蔵…って拝見したことあるよそれ!
morina0321-2.hatenablog.com
全て拝見したことになる、のかな。これで。
個人的には未神の独特なポーズ(あと、髪型がドラゴンボールに出てきそう(え))と、抜刀ポーズの辰神がとにかく格好いい。

文殊菩薩騎獅像および侍者立像」もいいなあ。侍者がなんか生き生きしてる感じで。
あ、今回取り上げた展示、全て重文。これでもかと置いてあったよ重文…。


12室は普段は「漆工」だけど、今回は特別編。
「創立150年記念特集 根付 郷コレクション」。
実業家の郷誠之助氏のコレクション。
ただ…根付なので、沢山飾れるのだけど、写真が本当に撮りづらい(小さいものって撮りづらい)。
愛らしい動物の牙彫をいくつか気に入って撮影。
あと、今回江戸時代と明治時代が混ざって展示されていたのだが、明治時代に1つ、小さいけど美しい蒔絵装飾の「箱形菊蒔絵根付」の銘「是真」を見逃さなかった書き手。しれっと柴田是真を展示してる!
あと、4点牙彫で銘「光明」。石川光明…。解説なしでしれっと展示するから怖い。
あ、江戸時代だと銘「乾山」もあったよ…。


13室。
「刀剣」は相変わらず笄とか鍔を拝見し。
「陶磁」は拝見したことあるものが多いかなあ。それでも目の保養。


14室は「創立150年記念特集 未来の国宝―東京国立博物館 彫刻、工芸、考古の逸品―」。

実は11室の「菩薩立像」もこの特集の1つだったりする。
1品ずつ展示するのだが、私が拝見した時は「吉野宮蒔絵書棚」。うん、蒔絵がとても美しい…ただ、部屋が暗くていまいちはっきり分かりづらい気はした。


本館18室に行く前に、平成館の企画展示室をちょっと覗き見。

「つたえる、つなぐ 博物館広報の歩み」ということで、東京国立博物館の広報資料。
個人的には年末年始の開館閉館ポスター(そんなの作成されていたんだなあ)と、トーハクくん&ユリノキちゃん(東京国立博物館マスコット)のファッションショー的な展示が面白かったかな。


本館18室「近代の美術」。
日本画は、河鍋暁斎「地獄極楽図」が流石のユニークさを。
狩野芳崖「山水」、竹内栖鳳には珍しい群像画「富士川大勝」、下村観山「老子」(下村観山は老人描かせるといいよねえ…)と名前の知れている作家もありながらも、鶴沢深真(大阪の画家なのかな)「王昭君」、橋本静水(橋本雅邦の養子)「一休」も面白い。
で、ガラスケースは今回何を展示しているのかな、と軽々しく覗いたら…川瀬巴水「東京十二題」12作品全部出し。お、おおお…!?全部写真OKだし。なんてことだ。
彫刻は竹内久一「町田久成像」の布の具合が凄い。町田久成東京国立博物館初代館長。
工芸は人間国宝の作品が続く。濱田庄司があるのが嬉しい。高橋敬典「八方面取姥口釜」がとても可愛い形(書き手は茶釜が結構好き)。


さて。本館になにやら特別企画が。

「未来の博物館」。
国宝を8K映像や高精細複製して楽しむ企画。
8K映像の第1会場は法隆寺の夢殿の解説と「洛中洛外図屏風(舟木本)」の解説。
洛中洛外図屏風(舟木本)」は3つの切り口&前後編で6つぐらいのパートでそれぞれ解説が。「食と享楽」は土井善晴さんと伊集院光さんが解説してて、食文化とか気になるから凄い聞きたかった…んだけど、1パート7、8分ぐらいあって、その話が5つ目ぐらいで。立ちっぱなしで聞くのはなかなか辛いし、時間が溶ける…。


疲れたので。


「カフェゆりの木」でぜんざい(冷)とホットコーヒー。

すぐ傍の白い酔芙蓉が美しかった。


東洋館に移動。
10室。「朝鮮時代の美術」の展示替え。拝見したことがない水滴もあったりして、面白かった。


9室「中国の漆工」は屈輪が多かったので楽しい。


4階から3階に移動する途中で、「オアシス6 アジアの占い体験」が再開していることに気づいたりしつつ。


5室は特集が2つ。
普段の「中国の染織」が「創立150年記念特集 再発見!大谷探検隊とたどる古代裂の旅」。
古代裂は正直、ここまでよく染織が残っていたなあ、という、法隆寺宝物館の染織と似た感想を。
でもって「中国の陶磁」が「創立150年記念特集 東京国立博物館イスラーム陶器」。…好みドストレートなものをここで持ってきてどうしろと(あ)風変わりな焼き物を沢山拝見できる…最高だ…。
「中国の青銅器」で饕餮を拝見したり、「中国 墳墓の世界」は灰釉も青磁も良くて…この部屋、楽しかったなあ…。


3室の「西アジア・エジプトの美術」は拝見したことあるものが多かったかなあ。


13室。
「アジアの染織」は「カシミヤ・ショール」。
ペイズリー柄が多くて、個人的にはあまり好みではないのだけど。
ペイズリー関係なかった「赤地ミフラーブ文様切嵌刺繍カシミヤ」は切り張りされた花の刺繍が格好良かったり、金の刺繍が紺地に縫われた「コート 濃紺ヴェルヴェット地花卉文様金銀糸刺繍」は豪華で、「帯 銀地花卉鱗文様モール錦」も花の文様が目立たず、でも落ち着いてて美しい帯。
白地なのでペイズリー柄があまり目立たない感じの「白地ペイズリー花文様金銀糸刺繍」も良いなあ。
「カシミヤ礼拝用壁掛 紺赤縞地ペイズリー唐草文様綴織縫い合わせ」は内側がペイズリーだけど、外側の「綴織縫い合わせ」の部分がとても格好いい。
「アジアの民族文化」は「メラネシアの宗教彫刻」。ええと…独創的な仮面や像がどん、と…。一角の雰囲気がなかなか異様。それもまた良し。


午後だけだと、本館と東洋館(と平成館ちょこっと)回るだけで手一杯だなあ…。
やっぱり楽しい。というか、国宝展にも負けじと総合文化展も頑張ってる。
国宝展だけで終わっちゃ勿体ないよね、東京国立博物館

つながる琳派スピリット 神坂雪佳@パナソニック汐留美術館

panasonic.co.jp

実は6月に京都に伺った時、今回の展覧会でかなり作品を所蔵している細見美術館の方で開催していた。
東京に巡回するのを存じ上げていたのでその時は回避して、満を持して東京で。
前後期で作品が少し入れ替え。更に前中後期で書籍系展示の頁替もあるみたい。


「1 あこがれの琳派」。
神坂雪佳が憧れた琳派の方々。
本阿弥光悦俵屋宗達のタッグ(宗達は単独でも)、尾形光琳&乾山御兄弟、中村芳中酒井抱一、鈴木其一…ってちょっと待って、琳派オールスターズなんだが…。
深江芦舟や渡辺始興もあるよ。
とりあえず、書き手は初っ端に本阿弥光悦俵屋宗達、最後の方に酒井抱一を配置されて唸っていた。
その他だと、尾形光琳「柳図香包」の柳が綺麗だったり、中村芳中「月に萩鹿図」は全体的に綺麗なんだけど鹿の顔がユーモラスだったり。


「2 美しい図案集 ―図案家・雪佳の著作」。
神坂雪佳の作品のうち、図案集の展示。
この辺りの資料の大部分は「芸艸堂」(うんそうどう)という、手摺木版の書籍を専門に刊行している出版社のもの。現存している会社(Wikipediaの業種に「情報・通信業」となってて凄く違和感。いや出版だからそうなんだけど)。
こちらがなかなか素敵な図案ばかり。
「滑稽図案」は好みが分かれるとは思うが。「美人草」ってタイトルで、花のところに女性の顔がついてる草、とか、そういうのなので。
あ、今回の展覧会の宣伝絵は図案集「百々世草」より「狗児(くじ)」。


「3 生活を彩る ―雪佳デザインの広がり」。
神坂雪佳は工芸の図案もやっていて、この章はその辺りの展示。
例えば、雪佳の弟・神坂祐吉との漆工作品(神坂祐吉は漆工芸家)とか。
…って、もう一人弟さんいらしたのか…(もう一人の弟さんについては以前触れた)。
morina0321-2.hatenablog.com
「桜図半月形食籠」は漆の空間に舞う、螺鈿で描かれた桜の花びらが1つ2つ、という美しい作品。
後は雪佳が図案の陶芸作品。六代高橋道八「老松文鉢」や、五代清水六兵衛「波の図赤楽茶碗」、四代・五代清水六兵衛「遠山図向付皿」は、とてもデザインが大胆。
雪佳が琳派風の図案にしていて、更に陶工の手でより大胆にしているように見受けられるけれど、どうだろうね。
四代・五代清水六兵衛「水の図向付皿」は尾形光琳の水の流れを図案化して、それを皿にしたもので、こちらはとても上品。


「4 琳派を描く ―雪佳の絵画作品」。
というわけで日本画。今回、絵より図案の方が多い気も…。
ちなみに1区切りの箇所に展示されているのだが、実は2や3に一部展示されていたりもする。
琳派というか図案家っぽい絵でいいなあ、と思ったのは「十二ヶ月草花図」。四月の藤と六月の紫陽花が特に好き。
あとは「田園養鶏図」とか「砧図」とか、結構抒情的な感じが好きだったりする。こちらは琳派とは大分離れているけれど。
あと、細見美術館の方はこちらが展覧会の宣伝絵になってた「金魚玉図」。金魚玉は金魚を入れて、軒先に吊るすものなんだけど(今でも作ってるところはあるんだね)、とてもユニーク。


展覧会最後にフォトセッションが。

www.instagram.com
図案を電子処理したスライドが次々に映る形式。
ただ、全体を映そうとすると、画面が光っちゃって撮れない…。
半分ぐらい映したのでOKということで。


こういう、特色を生かした展覧会も面白いよね。


あ、パナソニック留美術館なんで、常設でルオー展示もあるよ。


移動前に、少し早めのお昼。


アンテナショップ「とっとり・おかやま新橋館」のレストランで。新橋はレストランorカフェつきアンテナショップが3店舗あるので、なかなか迷う…。
鳥取和牛ローストビーフ重、美味しかった。そして備前焼のコーヒーカップは嬉しい。


続く。

特別展 生誕150年記念 板谷波山の陶芸 ― 近代陶芸の巨匠、その麗しき作品と生涯@泉屋博古館東京

sen-oku.or.jp

板谷波山展。
morina0321-2.hatenablog.com
こちらでお話した通り、生誕150年記念展覧会。先に京都の泉屋博古館で実施しておられた。
展覧会初日に、割と移動しやすかったので伺った。


まず、エントランスホールに2点、写真OKの展示物が。
1点は後に置いておいて、「序章 ようこそ、波山芸術の世界へ」のうちの、「彩磁更紗花鳥文花瓶」が。
序章は波山作品のハイライト。第1展示室に続く。


第1展示室。
序章=ハイライトなので、葆光彩磁と彩磁が主な展示に。
「葆光彩磁牡丹文様花瓶」は葆光彩磁のマットな感じ&赤で描かれている、個人的な好みのもの。
延壽文(=桃)もかなり出てきていたなあ。
葆光彩磁でも彩磁でもない「太白磁紫陽花彫嵌文花瓶」は、真っ白な地に紫陽花が浮彫されているもので、上品で良かった。
「氷華磁仙桃文花瓶」もここに。地の色が本当に綺麗だよねえ、氷華磁。

で。第1展示室の最後だけ「第1章 「波山」へのみちのり」。
「芸術家を志して―東京美術学校時代」とサブタイトルをつけられた作品は、木彫の「元禄美人」。


いや、あの…東京美術学校時代は彫刻科だったのは(前の展覧会で)存じ上げていたが…こんなに上手いんですか…彫刻…。着物の皺とか凄いんだよ本当に…。ちなみにこれが東京美術学校の卒業制作。


第2展示室は引き続き「第1章 「波山」へのみちのり」。
第2展示室の最初に展示されているのは河久保正名「海岸燈台の図」。
そうですね、元々河久保正名の画塾にいたのだから、泉屋博古館東京は展示しますよね、となった。
波山が描いた絵も数点出ていた。「頼朝と文覚」の頼朝が若くて可愛かったり。
で、彫刻も数点。「ひきがえる」可愛い!皮膚も凄い上手くできていて、ちょっとぬめっとした感じすらある。
彫刻の先生にあたる高村光雲の作品とか、息子の高村光太郎の作品とかもあったり。高村光雲瓜生岩子像」の瓜生岩子は社会事業家(孤児養育事業をされていた)で、波山の妻・まるの師になるそうで。
で、そこから、初期に作成した陶芸作品に。夫婦共作のマジョリカ皿や、まる単独の作品も出ていたりした。
「彩磁藤文花瓶」は初期作品でもかなり好きだなあ。


第3展示室の最初は「第2章 ジャパニーズ・アール・ヌーヴォー」。
こちらは「2-1 陶芸革新―アヴァンギャルド波山」と「2-2 アール・ヌーヴォー―いのちの輝き」に分かれている。
前者は、実はケースに沢山入った陶片。
波山、作品が少しでも気に入らないと割っちゃってたからなあ…(遠い目)綺麗な破片も沢山あったよ…。
後者は…まだ初期かな。アール・ヌーヴォーデザインが入り始めた頃なので、前の展覧会では初期として展示されていたヤツデデザインの作品がいくつかあった。
あ、そうそう、この辺りから、特別出品で泉屋博古館東京所蔵の初代宮川香山の作品が出てくる。
リアルな鳥とか蟹とかが乗ってるような作品じゃなくて、きちんと(?)綺麗な作品なので、後期の作品かな。


で、第3展示室の残り半分は「第3章 至高の美を求めて」の「3-1 葆光彩磁の輝き」と「3-2 色彩の妙、陶技の極み」。
葆光彩磁の作品はほぼ3-1として紹介して、3-2はそれ以外の、彩磁・氷華磁・金砂磁というオレンジと言っていいのかな、という色、辰砂磁・黒曜磁と。
葆光彩磁は勿論美しいけど、個人的には氷華磁・黒曜磁は本当に好き。
「辰砂磁花瓶」は辰砂が地の色ではなく、白地に辰砂の釉薬を斜めかけしてて、とても格好いい…。
個人的に気になったのが「彩磁印甸亜文花瓶」。「印甸亜」=インディア。こちら、久保田米僊がネイティブアメリカンの工芸をスケッチしてきていて、それをもとに作成したのだそうで、本当にそちらの香りのする面白いデザイン。
あと、この辺りは香炉が結構出ていたのだが、「彩磁珍果文香炉」は北原千鹿が火舎を作成していて、火舎の摘みが鹿になっていて、とても可愛い。波山は北原千鹿と結構組んで作品作ってるんだよね。
波山自体は別の香炉で、摘みの好みは瑪瑙と書かれていたけど(複数あったと思う)。


第4展示室は「第3章 至高の美を求めて」の「3-3 侘びの味わい― 侘びの味わい―茶の湯のうつわ」。
花瓶も香炉もあって(淡黄磁の花瓶が出てきて色が落ち着いた美しさだった)、ではあるのだけど、天目茶碗がずらり。天目なので鉄釉だと思うのだけど、色がそれぞれ全然違う。
茶の湯用の展示は前回もあったし特集の1つにになっていたと思うけど、点数は今回の方が少し多いのかな。
この部屋の展示、非常に良かった。


最後に、ホールにあったもう1つの写真OKの展示物。
「唐花文壺(生素地)」。
波山が亡くなった後、残されていた、釉薬をかけられる前の壺。
永遠に釉薬をかけられることを待ち続けるのか。
…まあ、その後、割られるかもしれないけど…(あ)


面白いし目の保養になった。


HARIO Cafeに寄ろうかと思ったら、満席だったので取りやめてこの日は終了。

特別展「柴田是真と能楽 江戸庶民の視座」@国立能楽堂 資料展示室

久々に千駄ヶ谷に来た。


千駄ヶ谷は別趣味で来ることが多い場所で、千駄ヶ谷と言うとやはり買いに行ってしまったモンマスティーでアイスミルクティー。一休み。
この日結構暑かったんだよね。


で、千駄ヶ谷で初めての場所へ。

国立能楽堂に来ることになるとは…。
入口から入った時に一瞬戸惑う。守衛さんに入場証をお借りして入る。入場無料。
前・中・後期制。
個人蔵の作品が非常に多く、どうやってお借りしてきたんだろう、無料の展覧会で…と思わなくもない。清水三年坂美術館からお借りしている作品もあったし。

資料展示室は1部屋分。
「柴田是真と能楽」「柴田是真の作品」「柴田是真と「國華」」の3章制。
で、粉本(絵の下書き)がぎっしり。粉本とはいえとても上手い…。


「柴田是真と能楽」は能に関係する品々であり、能に親しくないので分かるのか、と思ったのだが、「猩々」や「高砂」は分かる。今まで拝見していたものが無駄ではなかった…。
morina0321-2.hatenablog.com
morina0321-2.hatenablog.com
柴田是真が人間を描くのをあまり拝見したことはなかったけれど、とても端正に描かれる。


「柴田是真の作品」は能楽関連以外の絵画及び漆工。
絵画だと「円窓鍾馗鬼図」。山種美術館にも同じ題材であったけれど。
morina0321-2.hatenablog.com
こちらの「円窓鍾馗鬼図」は、鍾馗が円窓から右下を睨んでいる。その先には、逃げまどっている小鬼。これが本当に表情豊かでたまらない。
漆工は色々様々。
「秋草鹿蒔絵印籠」は、印籠に描かれている鹿がデフォルメで可愛いなあと思っていたら、根付の爪月と秋草(萩?)が滅茶苦茶細かい…!
一方、「籠秋草蒔絵印籠」は、根付に月と兎。
「貝尽蒔絵櫛」は、他の作品とは一線を画した、妙なデザインが描かれていて、なんというか…ポップな可愛さがあるというか。幅が広い…。
「漆絵青海波兎図」は金属板に漆で絵を描いているのだけど、この薄い板の上に、漆を少し盛ってる感じで青海波を描いておおおおっとなる。
「菊蒔絵盃」の木目を生かした塗りとか、「多色刷竹葉図団扇」は多色刷のはずなのに黒グラデーションのみで竹葉を描いてて非常に格好良かったりとか。
…こんなに拝見できていいのだろうか。


「柴田是真と「國華」」。
「國華」はこの辺りを参照。
morina0321-2.hatenablog.com
国立能楽堂所蔵の「國華」の展示と、能に関連した川崎千虎の作品…あ、川崎千虎は川崎小虎の祖父になるのか。
で、川崎千虎旧蔵の是真の作品が出ていた。ざっと描かれていた「山水図」、なかなか趣がある。


…濃かったなあ。いいのかなあ、無料で拝見できて。
中期や後期も、都合がつけば伺うかもしれない。


続く。

特別展 大蒔絵展-漆と金の千年物語@三井記念美術館

久々に東京駅日本橋口から向かったら、なんか新しいビルができてた(1年前ぐらいにはあったらしい)。
tokyotorch.mec.co.jp
暫く歩いてなかったんだなあ…。
それもそのはず、三井記念美術館に最後行ったの、2年前だって。まあ、三井記念美術館の展示、なかなかに渋いからなあ…。
ビル自体も美味しそうな飲食店が入っていたので、ちょっと気になりつつ。



というわけで、やっぱり結構渋い、まあその中では煌びやかであろう展覧会。
MOA美術館・三井記念美術館徳川美術館の3館共同展なのだそうで、MOA美術館では終了、徳川美術館は来年実施とのこと。
前後期制(ただし、展示期間はもうちょっと細かく分かれていたり)。伺ったのは後期。
会期終了も近いこともあるのか、結構人が入っているような…というか…蒔絵の展示だからか、こう…人の流れが割と溜まり気味だったかも。まあ、細かく見たい気持ちは分かる。


展示室1は2章分の展示が。
「第1章 源氏物語絵巻と王朝の美」と「第2章 神々と仏の荘厳」。
ええと、いきなり初っ端にあったのが第1章の「石山切」だったのだが。
まあ…銀泥で絵を入れていたりするから、蒔絵の走りといえばそうなのかなあ。あ、勿論個人的にはウハウハである。
2点出ているのだけど、片方は藍鼠色と紫の紙を破れ継ぎ(この継いだデザイン自体が滅茶苦茶格好いい)した紙で、金砂子が撒かれていて、銀泥で鳥や薄や楓が描かれている、という。素晴らしい…。展示室1のような格好いい場所に配置されてるのもいい…。
第1章で他だと、「葉月物語絵巻」が出ていたのだが、これストーリーが散逸してしまって分からないんだそうで(タイトルも逸失してて仮でつけてるらしい)。
第2章から蒔絵作品も出てくる。
「秋草蒔絵手箱」は春日大社のものか。デザインが好きかも。あと、内容品も展示されていて、蒔絵ではないけど小皿の白釉が気になったりした。
「澤千鳥螺鈿蒔絵小唐櫃」の燕子花が細かいなあ。
と言いつつ、「妙法蓮華経巻第八(平基親願経)」が紺紙金字でおおおっと。描かれている舞楽の衣装も綺麗。


展示室2は「第3章 鎌倉の手箱」が。
とはいえ、「浮線綾螺鈿蒔絵手箱」は多分拝見したことあるんじゃないかな。サントリー美術館所蔵だし。
螺鈿が美しい。


展示室3には「第6章 江戸蒔絵の諸相」と、茶室に「第4章 東山文化-蒔絵と文学意匠」。
「第4章 東山文化-蒔絵と文学意匠」は能関連だったのだけど、面「孫次郎(ヲモカゲ)」は綺麗で、「紅白段草花虫籠模様唐織」は鮮やかだったなあ。


展示室4には「第3章 鎌倉の手箱」の続きと、「第4章 東山文化-蒔絵と文学意匠」「第5章 桃山期の蒔絵-黄金と南蛮」、でもって「第6章 江戸蒔絵の諸相」の「6-1 初音の調度」。
「菊慈童蒔絵手箱」の菊の配置とか、「松梅蒔絵手箱」の内箱の梅の花のデザイン(ぷっくりと可愛い)とか、「枇杷に栗鼠蒔絵大鼓胴」のリスがデザイン化されてて単純の線で面白いとか、「秋草蒔絵折敷」のデザインが好きだなあとか、幸阿弥長重「綾杉地獅子牡丹蒔絵十種香箱」のデザイン格好いいなあとか。
ああ、そうそう、「第5章 桃山期の蒔絵-黄金と南蛮」はイエズス会関連が出ていた。
東慶寺の「IHS葡萄蒔絵螺鈿聖餅箱]もあったね。


展示室5は「第6章 江戸蒔絵の諸相」の
「6-2 琳派の美」と「6-3 江戸の名工」。
「6-2 琳派の美」は後期は本阿弥光悦が多かったのだけど、工芸より、紙に描いたものがいいような気がする。「花卉摺絵新古今集和歌巻」も「鹿下絵新古今集和歌巻 断簡」も。後者は鹿が可愛くてねえ…。
「6-3 江戸の名工」はどれもこれもなかなか素敵で。この辺りから好きな感じになっていくのかなあ。時代が下れば技術が上がるので、それはそうなんだろうけど。


展示室6の小さい部屋は「第6章 江戸蒔絵の諸相」の「6-4 掌のなかの蒔絵-広がる需要層」。
溪斎英泉の浮世絵と、印籠と櫛・笄。
印籠は…個人的には印籠よりも、それについてる根付の方が気になった。琥珀だったり彫りが凝っていたり。
櫛・笄、酒井抱一下絵で原羊遊斎作。なんというか、原羊遊斎はデザイン本当に上手いと思うの…。格好いいなあ。


展示室7は、「第6章 江戸蒔絵の諸相」の「6-3 江戸の名工」「6-4 掌のなかの蒔絵-広がる需要層」「6-5 長崎と輸出用漆器」、「第7章 近代の蒔絵-伝統様式」「第8章 現代の蒔絵-人間国宝」。
…「第6章」、ここで原羊遊斎と酒井抱一をつぎ込んでくるのはどういうことか。いちいち素敵である。酒井抱一の絵「藤蓮楓図」もあるのが色々ずるい。
「6-5 長崎と輸出用漆器」は半分東京国立博物館から持ってきているので拝見したこともあるのだが、京都国立博物館から持ってきた「楼閣山水遊楽図蒔絵ナイフ立て」は面白い。ナイフ立てというもの自体が。
「第7章 近代の蒔絵-伝統様式」は明治時代。
柴田是真・三浦乾也「夕顔蒔絵板戸」を根津美術館から借りてきた。ありがとうございます…!池田泰真、川之辺一朝、小川松民、白山松哉…おおお…。
赤塚自得が素敵なのは存じ上げていたが、「牛背童子蒔絵硯箱」の抒情的な感じもいいなあ。
「第8章 現代の蒔絵-人間国宝」は現代作家なので、結構奇抜な作品が多い。
室瀬和美「蒔絵螺鈿丸筥「秋奏」」はオルゴール仕立てだし。


蒔絵が好きな方にはいい展覧会だと思う。満足。


三井記念美術館の近所で和菓子でも食べようか、と思ったら混んでいたので。


東京駅の構内「CITYSHOP」で、彩りの良いちゃんぽんうどんを。うどん屋さんじゃなくて、野菜を食べようコンセプトのお店だとか。


続く。