時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

創刊記念『國華』130周年・朝日新聞140周年 特別展「名作誕生-つながる日本美術」@東京国立博物館・平成館

GWの合間の平日に。一度やりたかった「終日、東京国立博物館」。

www.tnm.jp
東京国立博物館の特別展は基本混むので二の足を踏んでいたのだが、この特別展、「全然混んでない」という話を耳にして、おもいきってお金を払ってみた。本当だ、平成館の入り口にちょろっと入館者が並ぶだけだ(入り口が狭いからどうしても並ぶ)。不思議。
ちなみに「國華」は美術雑誌。入り口に表紙が並んだ絵が飾られているんだけれど、これがなかなか素敵な感じ。

この展覧会は大きく4章に分かれている。

第1章は「祈りをつなぐ」。テーマ1は一木で彫られた木造の仏像(半分以上が薬師如来)、テーマ2は普賢菩薩十羅刹女。この展覧会、「テーマのものがどのように「つながっていくか」なのだけれど、テーマ1では木造の仏像を日本にわたってきた中国の仏師が作成して、そのあとどう日本で作られていくか、で、テーマ2は普賢菩薩がどう伝わっていくか、そして周囲の十羅刹女が唐装から和装に変わっていく過程とか、そんな話が出てくる。どちらかというと、知識欲を刺激する展覧会。今回は実は音声ガイドを有料で借りた。でないと、どうやっても知識がついていけない…。なおナビゲーターは、壇蜜さんが前後期通じて、男性はどちらも声優さんで、前期は櫻井孝宏さん。後期は諏訪部順一さんだそうで。
テーマ3の聖徳太子絵伝のあたりなんかは受け止め方が難しい…
ので、「真言八祖行状図」で空海を探せ!(絵が薄くなっててどこにいるかわからない)とか、「聖徳太子絵伝」で自分の知ってるエピソードを探せ!(厩で生まれたとか)とか、そんなことを実施する俗人に(おい)

第2章は「巨匠のつながり」。テーマ4は中国の水墨画から雪舟が学んで、そこから狩野元信に「つなぐ」。玉燗から雪舟、は、以前出光美術館で見た「水墨の風」で知ったような。狩野派まで繋がってたよね、あれ。ちなみに狩野元信の花鳥画に繋がる展示は、前期のみなのでGWまで、という。逆に後期は水墨山水画みたい。
テーマ5は俵屋宗達が古典からコラージュしている話。テーマ6は伊藤若冲が中国の絵を模倣してからどんどん発展していく話。若い頃の「雪梅雄鶏図」をモチーフにして発展させて「仙人掌群鶏図襖」を描いたとか、ほう、と思いつつも、絵としては「雪梅雄鶏図」の方が好き…(あ)雪梅の具合が素敵でねえ。

第3章は「古典文学につながる」。テーマ7は伊勢物語。燕子花の歌からの「八橋蒔絵螺鈿硯箱」きたー!国宝蒔絵ー!眼福すぎてテンションが上がる。燕子花の発展で打掛の柄とかにもなっていて、それも素敵。これも前期のみ展示かー。
テーマ8は源氏物語。「夕顔」と「初音」モチーフが他のものに。子日蒔絵棚が伝ではあるけど本阿弥光悦。しれっと。東京国立博物館のものだから出しやすいけど、重文だし。

第4章は「つながるモチーフ/イメージ」。テーマ9は山水。松林と吉野山(というか、桜のモチーフがそのまま吉野山に繋がってた。面白いな)。後期は松林が三保松原に代わるのだが…ここで長谷川等伯「松林図屏風」。…国宝、だよねえ。これは国宝だわ…。これ見ている時にたまたま人の流れがなくて。暫く立ち止まって堪能してしまった。空気感がなんともたまらない。これも前期のみなんだよね。いいもの見たなあ…と。
テーマ10は花鳥。蓮と雀。いずれも中国の絵から日本に、なんだけど。「蓮下絵和歌巻断簡」、しれっと蓮の絵が俵屋宗達で、書が本阿弥光悦。おいおい。国宝でも重文でもないけど、この蓮の描き方、結構好きだなあ。
テーマ11は人物のモチーフ。噂で聞いていた「紫式部日記絵巻」の、夜中にいきなり部屋を訪ねて(中で紫式部が怖くて震えてるのに)一晩外で待ってる、って、改めて見るとどんなストーカーだよ藤原道長、というアレが見られて満足(違)昔の権力者もこんなものよ。というか、これと今昔物語の梓弓は、構図が繋がるけど内容は全然違うよなあ…。で、その後の振り返る視線から、菱川師宣見返り美人図へと繋ぐ。見返り美人図は音声ガイド聞いているとにやにやするよ。ボーナストラックの方。後期もあるんだろうか、アレ。
テーマ12は古今をつなぐ、というか岸田劉生にもっていきたかったのかな。「道路と土手と塀」の迫力は凄い。でも、よく考えたらそこにつなぐのに、葛飾北斎歌川国芳って凄いな。そして寒山拾得の図から迫力のある「野童女」。お子様が泣きそう(あ)

平成館で特別展が開催されていると、平成館の1階で鶴屋吉信が店を開いている。特別展の混雑で近づけないことも多いのだが、今回はちょっと顔を出してみた。そしてうっかり購入してしまった、光悦満雲寿(まんじゅう)。薯蕷饅頭、要は山芋生地。東京限定なのだそうで。(京都の本店だとこの甘納豆がついてなくて「織部満雲寿」と言うそうな)。造形もかわいいし美味しい。なお、この後ちゃんと持ち込んだものをお昼に食べたとか(え)外のベンチで頂けるのは嬉しいね。キッチンカー来るからフリーで食べられるよ(展示物の前では飲食禁止。ロッカーに預けるといいよ)。鶴屋吉信はお弁当も売っているのだけれど、いかんせん特別展の内容次第では寄れないと思われるので、1日いるつもりなら、持ち込みした方がいいとは思うんだよね。レストランも混むし高いし(ぼそ)

本館で力尽きて、なかなか行けなかった東洋館。前、東洋館が立て直されている最中に表慶館で一部展示してて、その時に見ているには見ているのだが。今回は東洋館をきっちり回る。ひとが全然来ない(本館の常設展はあれを考えたら多いよね)。だけど、本館に劣らず楽しい。中国展示も勿論いいのあるけれど、今の展示だとガンダーラ仏像(彫りが深いからかイケメンに見える)とか、西アジア方面とか(ミイラもあるよ!(え))、朝鮮とか、東南アジアとか、インドとか。写真NGなのもあるけど、大部分写真撮影OKだったりするのも凄い。

本館常設展もしれっと。今回、平成30年に新指定された国宝・重文の展示をやっていた。GWまで。特別展と一緒に見ると、国宝・重文をいくつ見ることになるのだろう、ということに。
あと、書き手の大好きな12室(漆工)の展示替えが4月にあった。展示変わると分かるもんだね。
あ、そうそう、本館の前のユリノキが花を咲かせていた。

でもって、余力があったので表慶館の「アラビアの道-サウジアラビア王国の至宝」二度目。どんだけ好きなんだこの展示。で、自分がキャラクターとして気に入った(違)「アラム文字の刻された葬送ステラ」(2018年散歩④-2で載せたあの子)が最初見つからなくて、もう一周した馬鹿がここに。

さんざん回って、さあ帰りましょう、の前に、ちらっとキッチンカーのメニューを見たら。…角煮バーガー?いや、ちょっと待て、これは岩崎本舗角煮まんじゅう!?(岩崎本舗は長崎の角煮まんじゅう屋。長崎でも食べている。)なんでこんなところで…!?と思ってぐぐったら、あったよ。御親族でなさってるのかしら。というわけで誘惑に抗えず。