時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

東京国立博物館

6月以来の東京国立博物館(下記は前回)。
morina0321-2.hatenablog.com
特別展2つやってるけど、総合文化展(常設展)のみ。展示、全部変わってても不思議じゃないよね、というわけで全体ぐるっと。
朝10時過ぎに入場、退場は17時少し前だった(遠い目)どれだけいたの…。


まずは本館2階から。


1室。
「日本美術のあけぼの」に奇妙な形の土器が2つ。「香炉形土器」と「瓢形土器」。何に使ったんだろうなあ…。祭祀用かもしれないけど。


3室。
「仏教の美術」にいきなり鎮座する「蘭溪道隆(大覚禅師)坐像」。いやあ、これ凄いな…。なんでこんなに生き生きとしてるんだろう。鎌倉時代の木彫だよね…。あと、「金銅透彫光背」が光背だけ展示されていたんだけど、これがまた細かい細工で。
で、「禅と水墨画」。如水宗淵「叭々鳥・鶺鴒図」がとても繊細で素敵。如水宗淵は雪舟の弟子にあたるのね。雲渓永怡「花籠図」も細密で美しい。水墨画のコーナーで好みの絵ってあまり出ないのだけど、今回は好みだったなあ…。


4室「茶の美術」。
まあ相変わらず好みなものが並んでいるのだけれど、蟹が支えててユーモラスな「笹蟹蓋置」と、渡辺喜三郎の漆塗の盆と椀のセットが素敵でねえ…。


5室・6室「武士の装い」。
刀はあまり得意ではないのだけど、「山銅魚々子地桐目結文腰刀」の柄の魚の飾りは可愛かった。
あとは陣羽織が2枚。羅紗(毛織物)やヨーロッパ更紗を使ったものと、赤い毛織物とを使ったもので、どちらも舶来品で作っている。後者は「猩々緋羅沙」と。猩々は元々中国の妖精で、日本では赤い装束の酒の妖精、という扱い(本家の中国だと違う解釈もあるそうなのでこんな書き方)。


8室。
「暮らしの調度」の衣装は相変わらず美しいのだけれど、「小袖 浅葱綾地浪花丸模様」は、まず布地が綾地で、染め残しで波の模様にしているとか非常に手が込んでる。刺繍も美しいし。仙台藩伊達家の藩主(12代・伊達斉邦)の正室(綏姫)の衣装と伝わってるそうで。そりゃあいいものに決まってるよねえ。しかも調べたら、正室が前藩主のご息女で、藩主が婿養子なのだそうで。そりゃあ…ねえ…。
あと気になったのは「四種盤」。組香(香道でルールに沿って楽しむもの)のうち四種類(源平香、競馬香、矢数香、名所香)楽しめるセットになっていて。

これ、恐らく競馬香の駒なんだけど、結構細かく作られてていいなあ、って。
後は秋らしい紅葉飾簪とか、鹿の水滴3種とか、秋らしい絵付の焼き物とか。
「書画の展開」。江戸時代の書ってあまり好みでない…というか綺麗な紙の書があまりないからなんだけど、中院通村の短冊は美しかった。紙の趣味といい公家っぽいなあ、と思って調べたら、細川幽斎の養女が妻になるので、細川忠興と義兄弟になるようで。
あと、明らかに光悦風の作品がある、と思ったら、弟子の小島宗真「和歌巻」だった。
絵の方は、何度も拝見しているけど酒井抱一「夏秋草図屏風」、本阿弥光悦の義孫(光悦の養子の子)の本阿弥光甫「藤・牡丹・楓図」、俵屋宗達の後継者の俵屋宗雪「秋草図屏風」、住吉如慶が絵を描いている「伊勢物語絵巻 巻第五」と、琳派もやまと絵も美しく。


9室「能と歌舞伎」。
能「猩々」。そう、5室・6室で拝見した陣羽織の「猩々緋」の元はこちら。酒売りの常連客が海中に住む猩々で、酒売りが夜中に酒持って川辺で待ってて、出てきた猩々と共に酒を酌み交わして舞を舞い踊る、みたいな筋。楽しそうな酔っ払いの話だなあ(もう少しまともな認識をしろ)。
酒売りが男性なので、能の衣装にしてはそこまで派手な感じではなく、能面もなんだか楽し気で、個人的には嫌いじゃなかった。


10室。
「衣装(江戸)」は相変わらずどれも美しい。「小袖 納戸繻子地牡丹菊扇面網目藤模様」は色が綺麗だけど重そうだなあ、と思ったら、やはり女性物にしては重々しいので、能の縫箔か男性用の小袖かもしれないらしい。
「浮世絵」はいつもの通り鈴木春信や歌川広重辺りを。広重「名所江戸百景・紀の国坂赤坂溜池遠景」の武士の行列の表情が、なんか面白い。



さて、一旦外に出て早めにお昼(混雑避け)。
いつもキッチンカーを利用しているのだけど、いつの間にか東京国立博物館のサイトに「ネオ屋台村」として書かれていた。当日何が来ているかも、ここからリンク飛んで拝見できる。便利になったなあ。
www.tnm.jp
この日は以前頂いたしらす丼を出していたキッチンカーで、この日は十勝豚丼を。



再び本館。今度は1階。

11室の「彫刻」というか仏像、今回は天台宗が多い。
www.tnm.jp
特別展がこちらなので、関連展示。ちなみに特別展をスルーしているのは、この辺詳しくないから…。


さて。
特別3室で、こんなイベント?やってた。
www.tnm.jp
初心者向けなのかなー、と思いながらもちょっと覗いてみる。
意外と面白かったのが「たのしむ」。これ、自分が所定の場所に立つと、映像が浮かぶようになってて、更に色々指示がでて、その通りにすると映像が動いたりする。身体を動かして見るのも、それはそれで楽しい。
「かんじる」コーナーでは複製品を、ガラスケースなしでじっくり拝見できる。おお、「孔雀明王像」がはっきり拝める…(何か別のものを見ているようなr)


12室の「漆工」は秋モティーフで。秋モティーフは好みなのが多い。眼福。


13室。「陶磁」は見たことあるものが多かったけれど、眼福。
あ、青木木米「白泥月梅文涼炉」は初めてかも。茶一色で梅を描いていて、月は大きく開いた穴で表していて。


14室は特集「浅草寺のみほとけ」。
浅草寺天台宗なので特別展絡み。
まずは小さな厨子がついた、鮮やかな衣を纏った「聖天(しょうてん)坐像」。聖天(歓喜天とも)はガネーシャのことなのだそうで。象以外にも童士の姿でも表されるようで。東洋館11室の書き手の大好きなガネーシャ坐像の擬人化みたいなものか(違)厨子がついているのは、聖天は秘仏で基本外に後悔しないから、だそうで。いいのかなこの展示…。
続いて、小さな小鬼の象が1つ。「角大師坐像」。こちらは天台宗の僧・良源(慈恵大師/元三大師)が夜叉の姿になって疫病神を追い払っている像で、魔除けだそうで。
でもって立ち上がった牛に堂々と騎乗している「大威徳明王騎牛像」に、踏まれてる邪鬼がめちゃくちゃ曲がって酷い体制になってる「四天王立像」…ちょっと風変わりな仏像が多くないか、浅草寺…。


16室。


というわけで、アイヌ展示は祭祀関連。
いきなりウミガメ頭骨があったり、サパンペ(冠)にダイシャクシギの頭蓋骨がついていたりする。後者は解説読まなきゃ気づかなかった…気づかなくても良かった(遠い目)
琉球展示も厨子甕とか出ていたりするので、全体的に祭祀系というか。それはそれで興味深いけども。



さて、ここで連絡通路を通って平成館へ移動。



まず真っ先に伺ったのが、こちら。


特別展がある場合、鶴屋吉信さんがカフェを出すのだけど、今回は特別に「梵字カフェ」が。
syukubo.jp
普段は延暦寺で営業してるものが出張営業。特別展は行かないのにカフェは入るという…。
梵字は生まれ年を申請すると、干支によって入れる梵字が違う。ちなみに書き手は普賢菩薩年齢バレ上等(お)
ともあれ、休憩&水分補給。
「織物の茶室」は入らなかったけれど、興味深く拝見する。
そういえばここのロビーに、「青天を衝け」のポスターが貼ってあったのだけど、このポスター、東京国立博物館の庭園と表慶館で撮影してるのね。全然大河ドラマに触れてないので知らなかったよ…。


その後は企画展示室。
毎年恒例の東京国立博物館の新収品展。
その中に、本阿弥光悦の書状が。筋肉が痙攣で痛む「すちけ(筋気)」という病気で執筆もできずに訪問もできないことを謝罪している手紙なのだけど、それって腱鞘炎じゃあ…というか職業病…。この後、光悦は書体が変わるそうで(痛くならないような書き方を会得したんだろうね)、そういう意味でも貴重な資料みたい。
あとは、チベットまたはネパールの仏像「忿怒尊坐像」が、特徴的に不動明王じゃないかと指摘されていたり。特別展の絡みもあるのかな、この辺。
美しかったのは「グリンシン(肩衣) ワヤン人形文様経緯絣」。よく見るとワヤン人形を形どってはいるけれど、とにかく経緯絣が美しい…。


続いて、考古展示室をぶらぶら。
考古展示室は変なものを見つけるのが好き。

…なんだろう、この変なキャラクターみたいなの、と思ったら「十字形土偶」。土偶になるんだ…。

お笑いコンビ?みたいな「土偶形容器」。弥生時代の土器になるらしい。
あと、興味深かったのは「続縄文文化」。北海道は気温的に水耕ができないから、日本の弥生時代も引き続いて縄文文化が残っていた、という展示で。狩猟に使う石器の種類が多い。
そういえばもう1つ気になったこと。男女二人連れのお客様だったのだけど、考古展示室の一角に埴輪がずらっと並んでいるところがあって、そこで女性がずっと笑いをこらえきれない状況になってたこと。
…分かる…埴輪の表情ってとてもユーモラスだもの…おかしくなっちゃったんだろうなあ…。



で、本館に戻って。
残っていた18室「近代の美術」。
幸野楳嶺、そこまで好みではないのだけど(お手本的な絵が多い気がする)、「秋日田家」は結構いい感じ。
寺崎広業「秋苑」は少女がとても可愛い。
川合玉堂も絵によるけど、今回の「月下擣衣」は好きなタイプ。幽玄さを漂わせる水墨画
あとは以前も拝見した長野草風「高秋霽月」とか。秋だものね。
陶磁は並河靖之と板谷波山と、初代宮川香山の絵付けのみのものと(彫刻的な装飾をする方だけれど、絵付けだけのも綺麗)。柴田是真の漆芸作品が2点。写真NGの「桃漆絵額」も素敵だし、「烏鷺蒔絵菓子器」も2つの箱が重なったような挑戦的な器に、地が金で烏鷺を黒漆で描く図柄よ…。
金工では海野清「埃及(エジプト)猫置物」が。いや確かにエジプトだけど…猫だけど…これを作りたかった動機が知りたい。
で、今回は個人的には洋画。高橋由一や原撫松も勿論好きな辺りだけれど、何よりも浅井忠の水彩が物凄い点数出ていて。これが個人的なツボ。どれも素敵。眼福。



続いて法隆寺宝物館へ。
ぐるっと回って、6室の染織で残っている布の綺麗さに凄いなーと思っていたりするのだが、今回は4室の木工が楽器だったりするので、それも楽しみつつ。
なんであれだけ綺麗に彩色が残ってるんだろうな…本当に…。



ここまでで一旦、キッチンカーに寄ってコーヒーブレイク。



そして東洋館へ。
東洋館は2つほど企画ものが。

www.tnm.jp
東洋館の毎年の恒例イベント「博物館でアジアの旅」、今年は「空想動物園」。架空の動物に関係する展示に、追加のコメントがちょこちょこ。個人的な推し展示「ガネーシャ坐像」がポスターのセンターに(そこ?)これは折々触れていく形で。
もう1つの企画ものについては、別途。


一番階上から。10室。
「朝鮮時代の美術」は布物が面白かった。文官服である「団領」に、祭礼で服につける「後綬(フス)」、何の解説もないから謎だけど(服に縫い付けたのかな)「紋章」等。団領はシンプル、後綬と紋章は華やかに。


9室。
「清時代の工芸」、「水晶鴨書鎮」の恐ろしいぐらいの透明感も凄いんだけど、「空想動物園」としては「白玉鳳凰合子」だろうか。ちゃんと「鳳」と「凰」で二対の作品になってる。
後は「龍鳳虎蝠七宝如意」。ただの龍じゃなくて、「赤龍」としてのコメントがあった。劉邦が赤龍から生まれた、なんて伝説があるんだね。存じ上げなかった。



8室「中国の書画」。
今回は「江戸時代にもたらされた中国書画」というテーマ。
おや、なかなか美しい観音様の絵が…と思って作者を拝見したら、卓峰道秀と。…あれ?日本人…?
実はこのコーナー、隠元隆琦が黄檗宗と一緒に中国文化を伝えていて、それで黄檗宗の日本の僧がその文化風の絵を描いているそうで。黄檗美術と言うみたい。
そこに飾られてた「観音変相図」の白衣観音が、なんとも姿やかで美しい。日本人が白衣観音を描くと、どうしてこう美しいんでしょうな…。
そしてもう1つの「観音変相図」もなかなか(観音だけでなく)色彩が鮮やかで美しい、と思ったら、作者の鶴洲霊こう(漢字が変換できない…上が羽で下が高)、住吉如慶の次男。
お父様の絵がちょうど本館8室に出ているという…。凄いなあ…。


5室。
「中国 墳墓の世界」では、副葬品となる「緑釉井戸」や「緑釉羊圏」(羊圏=養羊場)とか、緑釉の雄鶏、犬、青磁の虎…なんか口まんまるに開けてるけど虎でいいのかな…とか、壺の模様というか融合してるような「青磁天鶏壺」とか「黒釉天鶏壺」とか「青磁鉄斑文蛙形壺」とか。
また、「空想の動物」は結構5室に多くて。
「中国の青銅器」はまあ、饕餮文のものが多いのはともかく、鏡に彫られている空想の動物がかなり多い。獅子と同一視されるさん猊(さん、はけものへんに「俊」の右側)、龍ってなってるけどワニの一種じゃないかと言われているだ龍(だの字を説明できない)、一本足の大きな鳥、き鳳(きの字はやっぱり説明できない)辺りは存じ上げなかった。あとは麒麟や、四神(青龍・朱雀・白虎・玄武)あたり。
「中国の陶磁」にも麒麟黄龍(四神に1つ足して五神と言われる場合は麒麟黄龍もあるそうで)が描かれていたり。


3室。
西アジア・エジプトの美術」は個人的に好みなので見て回っていたけど、ここにも「空想の動物」が。有翼ライオンとグリフィン。どちらもイタリア。


11室「クメールの彫刻」。
当然のように(?)「ガネーシャ坐像」と戯れて。
ここでの「空想の動物」はガネーシャだけでなく「ナーガ上のブッダ坐像」のナーガや(どちらも動物というより神カテゴリでは…)「まぐさ」の右下にいる「マカラ」という怪魚が紹介されていた。マカラは存じ上げなかった。


さて、12室と13室は、今回は企画ものの部屋に。

www.tnm.jp
マレーシア・イスラーム美術館精選 特別企画 「イスラーム王朝とムスリムの世界」。
いかにも書き手が好きそうなものが多そう…と思ったんだけど、意外と当てが外れたというか、いやあっているのか…。
実はかなり文字モノにフィーバーしてて。クルアーンコーラン)含めて。あちらの文字ってなんであんなに格好いいんだろうか。
それから武具の類。シャムシール刀に短剣、マレー半島のクリス、アルジェリアの火打石銃。
宝飾品はオスマン朝ムガル朝がキラキラしていて大変良い感じ。
布物は近年のものが多かったけど、マレー半島のバティック布はやっぱり好み。
あとは、意外とイスラム世界を描いた絵画が素敵。カール・ヴトケ「ダマスクスのウマイヤ・モスク」は結構好み。ドイツの画家で、あちこち旅行して色々描いているそうで。ネットで拝見する限り、なかなか魅力的な風景画を描かれるので、他も拝見してみたいなあ。
ポーランドの画家のスタニスワフ・フレボフスキ「モスク入り口の貧者」も良い感じの迫力があっていい。貧者というか、恐らくは托鉢僧なんだよね。横に「修行僧の鉢」を展示しているのもいいぞ。
チェーザレ・デラクア「オスマン美人」も美しかった…。
あ、細密画もあったよ。


いやあ…楽しかった…。