時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

東京国立博物館

実は先週、5日ほど総合文化展が無料入場できた日があった。
なので、その後だとすいてるかなと思って(え)

なお、こういう企画もあったらしいのだけど、スルーしてしまった。
www.tnm.jp
メンバーズパス持ってたら、もしかして安く拝見できたのかもしれないけど。


まあ、平常通りに総合文化展をだらだら拝見していく。


まずは本館2階から。


1室。
「日本美術のあけぼの」、「埴輪 短甲の武人」がなかなか凛々しい(埴輪顔に凛々しいとか言い出した時点で割と駄目かもしれない)。

3室。
「仏教の美術」で、説相箱の装飾を拝見したり、「地蔵菩薩立像」のなんともいえない表情と、結構凄い袈裟の彫りにおおっとなったり、掛け軸の「焔魔天像」がとてもすっきりした顔をしていたり(「閻魔」だと結構ごつい顔で描かれるのにね)、何故か一覧に載ってない「婦人像」が美人画っぽかったり。
「宮廷の美術」は伝・藤原為家の「狭衣物語歌合断簡(姫路切)」や「伊勢物語切」の紙がとても格好良い…。
「禅と水墨画」は伝・狩野元信の「水墨画」が好き。右幅の川の様子が特に。

4室「茶の美術」。
「南蛮独楽香合 銘 昔男」が気になった。丸い形で、同心円に色合いの違う赤い漆が塗られていて(「独楽塗」と言うそうで)。どうやらタイやインド辺りで作られて、貿易で日本に渡ってきたみたい。
あとは「安南染付輪花杯」とか。安南=ベトナムベトナムの焼き物の絵はなんか可愛いよねえ。
結構遠くからの品を気に入っていたけれど、龍泉窯の青磁鉢は、少し変わった色合いで、なんか良かった。

5室・6室「武士の装い」。
変わり兜が気になる。「白糸威一の谷形兜」…これ邪魔じゃないのか…
後は、以前拝見してそうな気がするけど「南蛮胴具足」の兎耳の兜とか。兎耳は縁起がいいみたいで、結構作例があるみたい。

8室。
「暮らしの調度」。武家の女性衣装は毎回楽しいのだが、今回は「腰巻 黒練緯地宝尽模様」と「提帯 萌黄地牡丹獅子模様」が展示されているだけでなく、着用例の写真まで出ていた。
いや、これは写真欲しいよ。こんな着用の仕方するの…!?ってなるもの…。周囲にひとがいたら当たりそうな邪魔なやつ(言い方)。
陶磁だと、姫路の東山(とうざん)焼の「染付魚形硯」が魚の形で可愛かったり、仁阿弥道八が指導して開いた讃窯(香川)での「染付魚文建水」はベトナムっぽくない?と思ったら、やはりそちら意識で絵付をしているっぽかったり。
更に同じ讃窯の「褐釉人面貼付文徳利」は、人間の顔が彫られているもので、これは西洋っぽい…?と思ったら、オランダから渡ってきた陶器を参考にしているみたい。なるほど。面白いことやりますなあ…。
「書画の展開」、今回の書が「絵も一緒に楽しめる」作品集。
池大雅「茄子糸瓜図賛」の那須がなんとも可愛い形をしていたり、慈雲飲光「金棒図自画賛」とか謎に金棒だけ描いてるし、小林一茶「一茶像自画賛「子どもらを云々」」、慈雲飲光「達磨図自画賛」、近衛信尹「渡唐天神像賛」…どれもこれも人型なのにゆるい!
これも書に入るのかは分からないけど、「二十三番狂歌合」も面白かった。江戸時代の所謂「物売り」を説明入れて描いてるんだよね。唐辛子売りとかもあったんだなあ…。
絵の方は、とりあえず英一蝶「見立業平涅槃図」で吹いた。涅槃なのが仏じゃなくて在原業平なんだけど、侍ってるの全員女性という。動物もいるけど、全部雌なのかなあ、やっぱり(え)。ちなみに迎えに来るのも女神様だったりする。露骨な…。
曽我蕭白が「牽牛花(朝顔)図」「葡萄栗鼠図」がまるで双幅みたいに展示されていた。蕭白は変わった絵も多いけれど、この2点はそこまで奇をてらってない。そして余白多めの絵がとても素敵…。
あとは岩佐又兵衛「布袋図」。書き手はあまり岩佐又兵衛が分からないのだけど、こちらは薄い墨だけど、なんとも愛嬌のある布袋様を描いてて大変良い…。

9室「能と歌舞伎」、今回は能でも歌舞伎でもなく、狂言
今回は狂言面が面白かった。面白い表情している「うそぶき」と、いい笑顔の「祖父」。

10室。
「江戸(衣装)」は白い衣装が多いなあ。綺麗。
「江戸(浮世絵)」、歌川広重の「六十余州名所圖會」のシリーズのうち、滝が主体のものがいくつか。この季節には良いですな…。


さて。



本館2階に続く階段、なんかいる…?

こちらでした。特別2室「親と子のギャラリー 日本美術のつくり方 Ⅴ」。
www.tnm.jp
漆工の「平目及梨子地見本」とか、見本でも綺麗だなあ、となったり。
あ、そうそう。

展示ケースにもいたりして。


本館1階へ。


14室は特集「創立150年記念特集 東博のガラスコレクション―明治期ガラス工芸の諸相」。
www.tnm.jp

尾張七宝の竹内忠兵衛の「ガラス七宝脚付杯」という七宝+ガラスのとても珍しくて綺麗なものとか(個人的に尾張七宝はあまり得意ではないのだけど、こちらは本当に渋い赤で綺麗)。
江戸の雛道具のガラス製品が滅茶苦茶可愛いとか。
品川硝子という明治初期にあった品川硝子製作所(会社は私営だったり公営だったりするみたい)の斑色ガラスが美しかったりとか。
薩摩切子もやはり美しいなとか。
紀州徳川家が収集しているガラス製品がとてもきらきらしていたり(お好きだったのかなあ)。
外国から輸入したイギリスのシンプルなガラス製品も、フィリップ・ジョセフ・ブロカールの割と落ち着いたデザインの彩色ガラスも美しい。
…なんて眼福な特集…。

16室。
アイヌ」で目を引いたのは、鮭皮製長靴と、火打用の道具を入れる巾着。巾着はチョウザメの皮製。北方の海産物から作っててへえ、となる。
琉球」の紅型衣装が「タナシ」。ちょっと丈の短い、夏用の衣装らしい。

18室「近代の美術」。
洋画は人物画かな。原撫松は個人的に好きなので良しとして、伊藤快彦「帽子をかむった男」が気になったり。題材として老人とか壮年の男性とか、ちょっと渋い辺りを気にしている。
工芸。今回は人間国宝の作品をずらり。
14代今泉今右衛門(雅登)…近代というか現代作家じゃないか…。「染付墨はじき梅花文鉢」は墨色が鈍く光る金属みたい。
三輪休雪は10代と11代。白釉を使ってそれぞれ異なる作品を。11代はオーソドックスに茶碗、10代はぽってりとして可愛い水指。
鈴木藏「志野茶碗」とか、伝統を踏襲してるものが出ていたりも。
高橋敬典「平丸釜」は形が可愛いんだけれど、小さく車輪の図柄が入っていて、それも素敵。
3代山田常山「梨皮紫泥茶注」は常滑焼なのかな、茶注の形がなんだかとても可愛い。
彫刻は後藤貞行「馬」と平塚田中「灰袋子」。
東京国立博物館の彫刻は、全方位撮れるものもあって、今回は「馬」なのだが。

こう撮ると本当に格好いい…。
日本画は、あまり得意でない画家なのだけど、荒木寛畝「貴妃読書・西施弾琴」。細面の美人画になるかな。女性自身も衣もとても気品があっていい感じ。
で、今回一番のびっくり案件。

…この絵、どなたが描いてるんですか?というか…日本画か…?
…下村観山!?????
morina0321-2.hatenablog.com
下村観山が欧州の絵を模写してたのは存じ上げてたけれど、ここで作品にもしてるの…!?
作品名は「椅子の聖母子・巌上の鵜」。
右側は観山がお好きな鵜だけれど、いつもと描き方が違うのでとても戸惑う。でも、素敵な絵。


平成館へ。


企画展示室はこちら。
www.tnm.jp
「創立150年記念特集 チベット仏教の美術―皇帝も愛した神秘の美―」。
ええと、普段は看板(東京国立博物館は看板というかタペストリーだけれど)の写真を載せるんだけど、今回撮ってるけど、載せない。載せられない。
父母仏を看板に載せると、流石にちょっと載せづらいんだよ(遠い目)下手するとセンシティブとか言われてしまう…。
というか、この看板、夏休みで割と年齢層が低い方々もいらっしゃる時期、いいんですかね…(逆に言うと、この看板で引き返す保護者様がいればいいのか…?)
ちなみに父母仏、今回3点ほど展示されていたりする。チベット仏教の話すると必須だからなあ…。
あ、ごく普通(?)の仏像もあるよ。「除蓋障菩薩坐像(八大菩薩のうち)」とか、「明月母坐像」とか、妙に綺麗。

チベット仏教特有なのは父母像以外にもある。
「ターラー」という女神が信仰されている。日本だと三十三観音の1つ、「多羅菩薩」。効能?によって色があるらしい。白とか緑とか。
そういえば、サラスヴァティの像も展示されていた。まあ、日本だと弁財天になるのであまり違和感はないけど。
仏頂尊勝母坐像」。仏頂尊勝母は如来の肉髻(頭頂部の盛り上がり)が神格化されたもので、諸仏を生み出す女神(陀羅尼を納めておくとか)。チベット仏教では割とポピュラーらしい。展示されてたものがとても美しかった。
「ガウ」というもの。日本語だと携帯厨子。首にかけるペンダントみたいにして携帯する。あちらだとお守りみたいなものみたい。
「サッチャ」(ツァツァ)という、粘土を型に嵌めて作った小型の仏像。大量生産して、土産とか巡礼に携帯するようなものらしい。割と気軽だな…。
後は、チベット文字で書かれている「般若経」とか、満州文字満州=清民族も仏教を信仰していて、チベット仏教と交流があったそうで)で書かれている「大乗因縁経」とか。
後は、チベット仏教にあまり関係ないものも。「ケサル王伝」という叙事詩があって、その像も展示されてた。

あと、河口慧海という日本の僧侶が、日本人で初めてチベットに入国した方で、この方が持ち帰ったチベットのものが展示されていた。
持ち帰った「菩薩立像」がとても美しかったのだけれど、あちらの像は妙な色気があるのだろうか…。
でもって「檀木釈迦如来立像」。これ、慧海がチベットから持ち帰った白檀に、高村光雲が釈迦如来を彫った、という。…そんなことやっちゃうんだ…。なんか…凄いな…。

いや、とても興味深い展示ではあった。
→追記。

www.youtube.com
東京国立博物館の公式Youtubeでオンラインギャラリートークがあったので、気になる方はこちらもどうぞ。父母仏の話は微妙にぼかしているようなr

考古展示室。
面白いコーナーが「古墳時代の鈴の響き」。恐らく祭祀用の、鈴に関連した品々が展示されていた。まんま鳴らす用途の鈴だったり、鏡の縁に鈴がついていたり。
後は柄の先端を蕨状にした「蕨手刀」とか。
あと、とても個人的な感じで。

「埴輪 太鼓を叩く男子」を撮ってた(あ)いや、楽器演奏してる埴輪は割と写真撮ってたりするのよね…。


法隆寺宝物館。
今回の染織は少なめだけど、袍の残決と、模造が。
残決はまあ…大分残ってなかったけど、ちゃんと模造作れるのも凄いよね…。


東洋館。いつもの通り上の階から。


10室。
「朝鮮の陶磁」、高麗の青磁象嵌がとても綺麗だった。青磁自体も綺麗だし、象嵌される薄い色も綺麗でね。
後、今回は結構日本の茶の湯で好きそうな茶碗がいくつか。雨漏茶碗とか、決して綺麗とは言い難い茶碗(雨漏りのように染みが広がっているものなので)なんだけど、こういうのを日本人は美として捉えるので面白いよね…。
「朝鮮の磨製石器と金属器」。ついつい「緑釉鳥」とか気になっちゃうんだよね。どうして書き手、こう、副葬品好きなんだ…(言い方)
あと、この日は考古展示室でもそうだったんだけど、意外と鏡を気にしていた。馬鐸も。馬鐸は形が好きなんだよね…。

5室。
「中国の染織」は刺繍特集。
いきなり経典が展示されていたりする。全て刺繍で作られている「刺繍経」。文字も刺繍なんだそうで…。言われなければ、印刷で作られてるようにも見えるよ…。
坎肩(チョッキみたいな上着)とか馬掛(乗馬用の女性の上着)とか、まあとにかく美しく刺繍されていた。これは眼福…。
「中国の陶磁」。あれ?これ、先日、板谷波山展で拝見した茶葉みたいな色してる、となったのが「茶葉末双耳瓢形瓶」。中国では茶葉末釉というものだそうで。
morina0321-2.hatenablog.com
後は非常に目立つ赤の「紅釉瓶」とか、天目茶碗がずらりと並んでいたりとか。

13室。
「アジアの染織」はインドネシアの染織。バティックもあるんだけど、細かい文様で個人的な好み過ぎる…。色合いも好みだし。
で、珍しく「インドの細密画」。今回は女性を描いたものが中心。
勿論現地の女性の絵が多いんだけど、「英国婦人の肖像」みたいな珍しいものとか、シチュエーションが謎すぎる「酒に酔って見つめ合う二人の女」とか(高貴なお嬢さんと従者の女性らしいんだけど)。

こちらは「タンブーラを弾く女」。つい楽器を弾く絵は気になっちゃう。


1日がかりでした。楽しかった!


1日がかりなので、昼御飯はキッチンカー、おやつは気が付いたら土日祝だけ営業始めてた「カフェ ゆりの木」。