時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

特別展「本阿弥光悦の大宇宙」@東京国立博物館平成館

東京国立博物館に月2回来ていたります、おはようございます。

変わった形のコーヒーのコップと共にスタートです。
キッチンカーで購入したのだけど、尖った両端のどちらからでも飲める不思議な形。


今回は特別展メイン。

www.tnm.jp
前回来た時はやっていなかったし、そもそも休日の特別展は避けるタイプ。
本阿弥光悦。当ブログで折々に触れているが、書き手の琴線に妙に触れるデザインを繰り出してくるニクいお方。
というわけで満を持して、平日休みに。
まだ会期始まって一週間、渋めのお題ということもあり、混雑もそこまでではなく、快適。
写真NG。

しかしそれにしても…この展覧会の煽り文よ。
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書き手は若干年代がずれているので、実はそこまで馴染みがない曲だったりする。むしろ「ソクドノオンガク」でまともに聴いたぐらいのレベルかもしれない…。

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隙あらば貼る。


本題。
一番最初に展示されている作品は、展覧会ポスターにもなっている、「舟橋蒔絵硯箱」。
…変わってるよねえ、この作品(あ)


「第1章 本阿弥家の家職と法華信仰-光悦芸術の源泉」。
そもそも、本阿弥光悦とは何者なのだ、という話から始まるのだが。というのも、為してる作品が各方面に渡るもので。
Wikipediaでは数寄者となっていた。風流とか芸道とか、そちらの方面の人、という意味っぽい。
で、この章の「本阿弥家の家職」というのは何かというと、刀剣鑑定や研磨。
というわけで、この章は「本阿弥家の」本職である刀剣の展示と、本阿弥家が深く信仰した日蓮法華宗関連の展示。
ただ、光悦は本阿弥家の本家ではなく、本家の娘さんと結婚して婿養子になったはずが、本家に実子の男子が生まれたので別家にした、という父親の元に生まれている。
「刀 金象嵌銘 江磨上 光徳(花押)(名物 北野江)」という刀が。
「江」は刀を作成した郷義弘という室町時代名工で、それを鑑定した「光徳」という銘(刀を鑑定した人間の銘が入るのだそうな)は本阿弥家九代・本阿弥光徳のこと。で、この銘の書が光悦、なのだそうな。
あと、光悦の指料=自分で腰に差してた「短刀 銘 兼氏 金象嵌 花形見」と拵になる「刻鞘変り塗忍ぶ草蒔絵合口腰刀」。
刀身そのものはよく分からないけど、拵はなかなか個性が強い。忍ぶ草の蒔絵が散らされている。
「花形見」は能「花筐」のことらしく、恋人と別れて、逢いたさのあまりに狂女として想い人の前に現れて踊り、そこで落とした「花筐」(花籠)が昔渡したものだったと想い人が気づいたら、狂女が正気に戻ってハッピーエンド、という話で。
「本家と別になってるけどいつか本家に戻る」のを「忍ぶ草」=忍んだ思いにしている、という意味合いではないか、と分析されていた。
どうなんだろうねえ。本家以外の芸事も沢山なさってるしなあ…。
法華信仰の方は、光悦がいくつかお寺に扁額を残してて、その展示が。大きいものだからある程度広さがないと無理だろうねえ。
後は光悦が「伝・小野道風」のものとして本阿弥家の菩提寺である本法寺に寄進した、「紫紙金字法華経ならびに開結」や、本阿弥光悦が書写した「立正安国論」が。


「第2章 謡本と光悦蒔絵-炸裂する言葉とかたち」。
「光悦蒔絵」は光悦が作成に関わったとされる蒔絵作品郡。ちなみに描かれる絵自体は、俵屋宗達の流れだったりする。
だから「関わった」は蒔絵のデザインとか、プロデュースなんだろうね。
「謡本」は能の脚本にあたるものだけど、こちらも書体が光悦風、でもって料紙に雲母(きら)刷りの文様が入るものを嵯峨本とか光悦謡本とか呼ぶようで。
書き手は謡本の展示から拝見したのだが…う、美しい…。美しい紙が書き手の好みなので、これはツボ。
一方、光悦蒔絵の方。
個人的に一番好きなのは「花唐草文螺鈿経箱」。
こちらはちゃんと光悦の作品。実は前の章で出た「紫紙金字法華経ならびに開結」を寄進した際に、収納していた箱。…寄進物の価値を箱で高めた…。デザインも個人的に好き。
他だと忍ぶ草模様で埋められている「忍蒔絵硯箱」、朽ちた竹をデザインした「竹蒔絵硯箱」が素敵だった。


「第3章 光悦の筆線と字姿-二次元空間の妙技」。
書。
最初の方は書状(手紙)。実は、文字「だけ」だと書き手は難しい部分ではある。
字の肥痩が素晴らしいとか、中風(ちゅうぶう)=今で言う脳卒中の後の後遺症で文字がかすれ気味になったりするのもまた良い、とかあるらしい。
光悦は「寛永の三筆」のひとりだが、「三跡」のひとりで光悦が私淑したっぽい小野道風がここでも出てきて、「斎宮女御集断簡(小島切)」は紙が素敵で(飛雲綺麗なんだよねえ)いいなあとなったり。
光悦に書を学んだ角倉素庵「百人一首三十六歌仙和歌集」は素敵デザイン。光悦に学んだらこうなるかあ…。
で、その後に本家・光悦の作成した好みデザインがどどどどどん、と。
やはり圧巻は「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」だろう。下絵が俵屋宗達、書が本阿弥光悦。巻物作品なのだが、それを全て広げて展示。
この部屋にいる時にたまたま人が途切れたということもあり、2往復してしまった。いい…。
この一角は本当に素晴らしい作品が多くて良い。
「蓮下絵百人一首和歌歌巻断簡」は、東京国立博物館所蔵のもいいけど、樂美術館所蔵も素敵。


「第4章 光悦茶碗-土の刀剣」。
陶芸。光悦は樂家(二代常慶・三代道入)と親交があったようで。
実は1点は以前拝見している。
morina0321-2.hatenablog.com
出光美術館所蔵「赤楽兎文香合」。今回の展示はほぼ茶碗で、香合はこの1点だけ。でも、こちらをお借りして展示したかった気持ちは本当に分かる…。
書き手は茶碗の良し悪しは実は分からないんだけど、基本的に楽茶碗は嫌いじゃない。更に、光悦茶碗、結構個性が出ている気がする。1つ1つちょっと風変わりで面白いなあ、と。拝見していて楽しい。


書き手は第3章でかなりお腹一杯ではあったけれど、
それにしてもやっぱり底知れぬ数寄者、ではありますなあ…。
面白かった。



さて、グッズコーナーなのだが。


書き手、「本阿弥光悦肖像」(作者は伝・本阿弥光甫=光悦の養子・光瑳の息子なので養孫になる)に群がるおしゅしの台詞が推しうちわの言葉みたいでちょっとツボり、このアクキーが欲しくなる欲と戦った(え)欲望を抑えて買わなかったけれど。
おしゅしが乗ってる絵がアクキーになってたら負けてたかもしれない(クリアファイルだけだったんだよね)。
というか、東京国立博物館さんも、似てるからって通常メニューの磯辺焼きを紹介する悪ノリである。いや美味しいけどね、カフェゆりの木の磯辺焼き…。
※展覧会コラボメニューはホテルオークラガーデンテラスで扱ってるよ、念のため。



鑑賞終わったのが13時前。
ちょっと風が強い日で、キッチンカーだとしんどいかな、昼御飯どうしようかな、とふらふら。
ホテルオークラガーデンテラスを覗いたら待ち列ができていたので諦めて、前回と展示が変わっている法隆寺宝物館の6階を拝見したり。
今回は柄物が多くて、これが1300年ぐらい前のものとは思いづらいよなあ、となりつつ。
で、結局。


キッチンカーで揚げパン的なもの(油っこくないよ)に甘くないピーナツバター。本当に甘くなくて、意外とさらっと。



さて、あとは先日と変わったところの総合文化展の鑑賞を。
本管へ。
特別2室は特集。

www.tnm.jp
「親と子のギャラリー 中尊寺のかざり」。
実は特別展の関連展示。

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特別展、拝見していないのだけれど、こちらの展示はほぼ模造で、写真全てOK。これはこれでありだなあ…。
どんな風に模造するか、というのもかなり展示が多め。なかなか興味深い。
あと、孔雀が結構多いんだよね、中尊寺。流石、毒を取り除く鳥。


14室は特集展示。

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「塔と厨子」。
普段だと本館3室(仏教の美術)や13室(金工)でお目にかかることが多い。実は普段から結構好きな展示。造作が綺麗なんだよねえ…。
「塔」は金属製が多いけれど、水晶でできている物もある。
あ、あと、平成館の考古展示室でお目にかかったことがある「泥塔経」もある。泥塔経、形が結構可愛いんだよね…(あ)グッズで、この形のクッキーとか売ったら意外とイケるんじゃないかという。
厨子」は厨子の中に祀られているものも塔と同じように格好いいけれど、扉に描かれている絵も大体格好いい。四天王とか菩薩とか明王とかなのかな。
東京国立博物館の公式ブログにもあるのでご参考までに。
www.tnm.jp


16室。
久々に「琉球」展示。
「ドゥジン(胴衣) 紺地松皮菱唐花模様錦」が琉球の衣装っぽくない…と思ったら、奄美大島のものだった。それでか。
本土の着物っぽくもないし、なかなか不思議な柄。


18室「近代の美術」は一部入替。
長く展示できない日本画と、前回目の保養であった浅井忠の水彩画。水彩画も傷みやすいしねえ。
今尾景年「鷲猿」は、鷲からひょいっと逃げる猿の不敵な顔がなんともいえない。
岸竹堂「虎」は、とても格好いい。これは凄い。前回で拝見した山本芳翠「月夜虎」はまだ展示されているので、比較してみても面白いかも。どちらも素敵。
実は岸竹堂があまりに制作に没頭しすぎて、「虎が睨んでいる」と発狂して一次入院した、曰く付きの作品でもある。
橋本雅邦「竹林猫」は、猫が妙に艶めかしい。
前田青邨「燕山之巻」はガラスケースに展開された巻物の絵。これは中国の燕山山脈の風景なのかな。シルクロード方面から燕山山脈に入って、万里の長城が見えて。シルクロード方面のエキゾチックな風景に、燕山山脈の雄大さに続いて、格好いい絵である。



東洋館へ。
10室。
「朝鮮時代の美術」には絵画がいくつか。
伝・金得臣「郭子儀図屏風」は沢山の人(女性が多い)が思い思いに遊んで楽しんでいる図。後宮的な感じだろうか。
一方、筆者不詳「宮廷儀式図屏風」は、儀式なので、何かのゲームの盤上に規則正しく駒が並んでいるかのような並び…かと思ったら、儀式に参加していない、恐らくは家来とか門番とかそういう方々、なんだか妙に寛いでいたり。面白いなあ。



全部回ったら14時過ぎてしまった。
慌てて次の場所へ。続く。