時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

東京国立博物館

なかなか伺えなくて、展示もすっかり変わってしまった。

そして恒例の春企画、「博物館でお花見を」開催。
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その前の展覧会でかなり力を使い果たしているので、この日は本館のみ。


2階から。1室。
「日本美術のあけぼの―縄文・弥生・古墳」の「埴輪 盛装の男子」。みずら結って表情が妙に可愛い。


3室。
「仏教の美術」の藤原定信法華経」、経文に入る前の髪が綺麗な桃色の紙に切金散らしてて、とても綺麗。経文部分も上下に砂子巻かれてるし。


4室。「茶の美術」。
どっしりとして格好いい「竹一重切花入 銘 園城寺」(伝千利休)。園城寺三井寺)?どうして?と思ったら、表面の干割れ(ひわれ)が園城寺の「弁慶の引き摺り鐘」伝説のような割れ方だ、という意味だそうで(伝説は下記参照)。また迂遠な…。
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5室・6室。「武士の装い」。
兜が変わってて面白かった。前立てが菖蒲の「紺糸威筋兜」、ちょっと変わった烏帽子型の「紺糸威烏帽子形兜」、「何これ?イカ?」と思ってしまった富士山型(イカの耳っぽく見えたの…)の「白糸威富士山形兜」。


7室。「屏風と襖絵」。
今回は「博物館でお花見を」のポスターにもなってる狩野晴川院養信「源氏物語図屏風(絵合・胡蝶)」。うん、やっぱり書き手、個人的にこの方の絵、好みなんだね。
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源氏物語図屏風」の右隻が「絵合」、左隻が「胡蝶」(こちらがポスターになってる)。色がとても綺麗。


8室。
「暮らしの丁度」は華やかな色合いのお着物だったり、変わった色&形の焼物だったりと、見どころが多かったけれど、気になったのは「芦蒔絵文台・松千鳥蒔絵硯箱」。朽ちた木を使って拵えてる。渋い。
「書画の展開」は狩野伊川院栄信「勿来関図」の細部の花が綺麗だなあとか、酒井抱一「流水四季草花図屏風」がまた写真OKなの!?とか(勿論素敵)。板谷桂舟(広隆)の「源氏物語図 初音・胡蝶」は、7室との対比なんだろうな。以前も拝見しているが、やっぱり綺麗。住吉如慶が絵を入れた「伊勢物語絵巻」も以前拝見してるかな。綺麗なことに変わりはなく。「筒井筒」の場面、書き手でも分かるぐらいに分かりやすかった(井戸もそうだけど、最後の「飯盛り」の絵もあるのね)。


9室「能と歌舞伎」。
今回は能「蘆刈」関連。「蘆刈」は家が没落した夫婦の妻が乳母になって出世してから夫を探す話なので、綺麗な衣装多め。落ちぶれた夫の衣装もあるんだけど(それでも能なので絹仕立てらしい)。


10室。
「衣装(江戸)」は春らしいものが多数で、今回は町方の着物中心。その割には裕福な家の衣装もあって、「小袖 紅綸子地雪持笹桜模様」なんて総鹿の子だったりするし。「振袖 藍鼠縮緬地源氏香模様」はとても渋い(振袖と腰から下の部分だけ刺繍入れてる)のだけど、少年用の着物(この時代は元服前の少年も振袖着ることがあったそうで)だとか。
「浮世絵」は、書き手の好きなところは置いておいて。葛飾北斎「鷽 埀櫻」がちょっと違う感じの浮世絵で格好いいな、とか、歌川国芳「真勇竸・きよ姫」は安珍清姫伝説か!(鐘も描かれてるし)とか。


特別1室・2室で「鳥獣戯画展スピンオフ」。
特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」が4/13からなので、関連企画。「鳥獣戯画」の甲巻/乙巻/丙巻/丁巻の模本とか、甲巻で描かれている遊びや道具にスポットを当てた展示がある。
書き手は実は「鳥獣戯画」には詳しくない(先日終わったヒストリアの特集で取り上げられていたのは拝見したけど)。なのでそこまで詳しくは分からなかったけれど、おっとなったのは「竹菱葵紋散蒔絵双六盤」。実は8室に「竹菱葵紋散蒔絵櫛台」が出ていた。同じ竹菱葵。婚礼道具という解説まで同じ。こっそり他展示とスピンオフしてる。ちゃんと展示拝見しているひとなら分かる、学芸員さんの遊び心。狩野晴川院養信「十念寺縁起絵巻 上巻(模本)」も7室との絡みなんだろうなあ。


でもって1階へ。11室「彫刻」。
いつもこの部屋は写真NGのものが多いのだけれど、今回はOKなものが多い。「千手観音菩薩坐像」、穏やかなお顔がいい感じだったので撮影。


12室へ行く前に。11室から小階段に繋がる部屋があるんだけど、以前からここに冬木小袖復刻の募金が置かれている。
で、以前は募金箱だけだったんだけど、今回はここに冬木小袖の複製衣装が展示されていた。掛けているのではなくてマネキンに着せた形。しれっと帯が桜模様っぽいのもポイント。


12室。「漆工」。
「桜蒔絵硯箱」や「桜蒔絵香箱」は「博物館でお花見を」シリーズなんだけど、桜よりもそれぞれ形が変わっていて気になった。硯箱は右側にもう半分がありそうだったし、香箱は台の上で4分割になってて。
あとは、「椿鶴亀彫木漆塗重箱」は(書き手があまり得意でない)朱漆だけど、漆の暗さが結構好みだったり。


13室。
「金工」は灯籠や香炉。灯籠がいくつか気になったりしつつ。
「刀剣」は「月に桜花図鐔」が「博物館でお花見を」シリーズ。だいたいこの季節は出してくれて、書き手も気に入ってる鐔なのだが。…展示には書いてなかったんだけど、東京国立博物館の展示物一覧には「加納夏雄」って書いてある。え?本当?
「陶磁」は野々村仁清「色絵波に三日月文茶碗」「白釉建水」(後者は確実に以前も拝見している)が素敵だったり、永樂和全「色絵絵替小角皿」「三島写桜文茶碗」がそれぞれ可愛かったり、高取焼「黄釉沙金袋水指」や上野(あがの)焼「片身替釉菱形水指」が面白い形をしていたり。


14室はまたもや「鳥獣戯画展スピンオフ」。この部屋は動物モティーフのアレコレ。
妙に可愛い縄文時代の「猪形土製品」、間抜けな感じで和む「埴輪 鶏」、リアルな京焼の「蛙形水滴」。でもって外国産まで入れてて、イタリア出土の「梟文杯」は好みだったり。


16室。「アイヌ琉球」。
アイヌはアットゥシ(樹皮で作る織物)の織り機が出ていた。あとは日用品が色々気になったけれど(団子を掬う「シトベラ」なんかもあった)、なかなか物々しいごつごつした見た目と「ストゥ(制裁棒)」という展示名のものが。調べたら、刑罰執行用のものだった。これで叩くのか…。
琉球はジシガーミ (厨子甕)が。ジシガーミは簡単に言うと琉球の骨壺。琉球はちょっと葬法が変わっているので、詳細は調べて頂ければ。着物は芭蕉布。涼し気。


ちょっと平成館の企画展示室へ寄り道。「東京国立博物館コレクションの保存と修理」。
これは説明図解も丁寧で勉強になる。ボロボロに欠けまくった銅鐸(突線鈕3式銅鐸)が本当に綺麗に修復されてるしね。


本館に戻って18室。「近代の美術」。
拝見したことがあるものが多いのだけれど(でも木島櫻谷「朧月桜花」は大好きなので堪能)、今回は吉田博「精華」かな。
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東京国立博物館の御近所でつい最近拝見した展覧会とのスピンオフ。展覧会のは木版画中心だったけど、こちらは超大型油彩。しかも、3匹のライオン(雄2匹雌1匹)になにやら指し示している裸体の女性、という。…なんて謎の構図なんだ…。吉田博もなかなか掴み兼ねる画家である。
ちなみにこちら、「吉田ふじを氏寄贈」。吉田博の奥様からの寄贈なんだね。奥様も画家で、絵は東京国立近代美術館で拝見している。
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たまたま雨にも降られず(この前の展示会を見ている間に降った様子だったけど)疲労困憊ではあったけれど、楽しかった。付近もまだ桜が残ってたしね。
なのでこの日のおまけは、旧博物館動物園駅と桜。