時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

没後70年 吉田博展@東京都美術館

www.tobikan.jp

吉田博は横浜美術館で拝見したのが最初だったかな。
morina0321-2.hatenablog.com
で、東京国立近代美術館で水彩画を拝見した。
morina0321-2.hatenablog.com

この週末で会期終了ということで、平日にしては混んでいた方かな。

「プロローグ」の章で、吉田博は木版画(新版画)で有名な方なのだが、木版画に本格的に取り組む前の、水彩と油彩の絵。あ、吉田博は元々洋画家。
東京国立近代美術館でも思ったけれど、吉田博の水彩画、とても美しい。「雲表」「朝霧」は本当に素敵だった。
写生帖もところどころに置いてあったのだが、初期の山の写生もとても美しい。
で、プロローグにも初期の木版画があるのだが、こちらが関東大震災で版木を焼失してしまって、その後渡米してからが本格的な木版画のスタート、そして展示のスタートとなる。

今回は章立てではなく、個人的な感想から纏める。

吉田博の水と光の表現がとても好きだ。
「第1章 それはアメリカから始まった」の「モレーン湖」「ナイヤガラ瀑布」、「第2章 奇跡の1926年」の瀬戸内海集のシリーズ、「第3章 特大版への挑戦」の壮大な雲海を描いた「朝日」、「第5章 東京を描く」の「隅田川」「隅田川 夕」「平河橋」、「第7章 日本各地の風景Ⅰ」の「大原海岸」に瀬戸内海集 第二のシリーズ辺り。

吉田博が山岳好きだったようで、山も美しい。
「第1章 それはアメリカから始まった」の「ユングフラウ山」、「第2章 奇跡の1926年」の「劒山の朝」、「第4章 富士を描く」の美しい富士山の数々(「御来光」の光と、「興津」の水鏡の具合が特に綺麗)、「第7章 日本各地の風景Ⅰ」の「雨後の八ヶ岳駒ヶ岳石室より)」、「第10章 外地を描く、大陸を描く」の「廬山」「石鐘山」辺り。

都市や建物を描いているものもあるけれど、個人的には夜が絡むものが好きだった。「第5章 東京を描く」の「神樂坂通 雨後の夜」、「第9章 日本各地の風景Ⅱ」の「奈良の夕」とか。
季節柄、桜の版画も多かったのだけれど、「第5章 東京を描く」の「上野公園」と「第9章 日本各地の風景Ⅱ」の「三溪園」が良かったかな。吉田博の花は、細部を描くのではなくて纏まりとして描く感じで、ちょっとデザイン的な雰囲気もある。
「第5章 東京を描く」にあった「中里之雪」は、色がなくて白と黒のみの版画なのだけれど、これはこれで素敵。

異色な章が「第8章 印度と東南アジア」。
御長男(も版画家)を連れて海を渡って取材してきたシリーズ。全体的に嫌いじゃなかったけれど、一番印象に残ったのが「フワテプールシクリ」。珍しく室内画なんだけど、なんともいえない雰囲気が良かった。

とにかく点数が多いので(前期後期で入れ替わるのだけれど、だいたい100点以上出ている)、自分の好みのものを見つけて楽しむ、でもいいかもしれない。



最後に少々余談的な話。
「第6章 親密な景色:人や花鳥へのまなざし」にあった「庭四題」のシリーズの1つ、「湖畔之庭」。
解説には「琵琶湖のほとりの春挙の別邸の庭」…え、それって山元春挙の別邸「蘆花浅水荘」のこと!?
いきなり春挙の話を振ってこられたせいで、春挙大好きな書き手が混乱をきたしたとか。
そういえば、春挙も吉田博も山岳好きな共通点はある…のかな。日本画と洋画の違いはあれど。