時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

やまと絵-受け継がれる王朝の美-@東京国立博物館

前回の10日後に来訪。どれだけ東京国立博物館好きなのか。…年間パス持ってると寄りやすいよね…(ぼそ)
とはいえ、今回はちゃんと特別展の料金を払う。

www.tnm.jp

こちらの展覧会、実はちょっと悩んだ。
「やまと絵」自体は嫌いじゃない、んだが…ちょっと自分の好みと違うような気がして。
まあ、平日休めたので伺いましょうか、となったのだが。

細かく展示替え発生。書き手が伺ったのは一番早い期間。
写真NG。


「序章 伝統と革新-やまと絵の変遷-」。
やまと絵とはなんぞ、という紹介の章。
対比が「唐絵」「漢画」。要は中国風の絵。中国の画家が描くものも言うし、中国の風景を題材にするのも。
やまと絵は日本の風物を描いた、というくくり。
やまと絵としては神護寺が所蔵(東京国立博物館に寄託してるのかな)「山水屏風」が人物が細かくて美しい。やまと絵屏風としては最古のものになるそうで。
唐絵としては伝・周文「四季山水図屏風」。空間の間が好きな水墨画


「第1章 やまと絵の成立-平安時代-」。
第1章から第3章は時代順。
「第1節 やまと絵の成立と王朝文芸」「第2節 王朝貴族の美意識」は、実は絵画ではない。前段階として、物語や日記が文芸作品として生まれ、それらを彩る美しい料紙、文様が発展して、更に貴族の持ち物にも波及していく、という話。
なので、この辺りは紙の本の展示が多め。綺麗な料紙が拝見できて、個人的には楽しい。
morina0321-2.hatenablog.com
こちらで拝見した「古今和歌集序」も来ていておおっと。
同じ時に模本を拝見した「平家納経」も本物が来ていた。…本物も本当に綺麗なんだね…凄い…。
紙以外だと、春日大社所蔵の「蒔絵箏」がとても美しい…。
あと、よく本館12室では拝見する「片輪車蒔絵螺鈿手箱」、平成館2階特別1室の明かりが結構明るいので、その元で鑑賞できるのはいいなあ。

「第3節 四大絵巻と院政期の絵巻」。
四大絵巻は「源氏物語絵巻」「信貴山縁起絵巻」「伴大納言絵巻」「鳥獣戯画」のこと。
当然のように全て国宝(だが、今回名前を挙げる作品がかなり国宝が多いので、まあそこは…うん)。
ええと、実はこの期間、この四大絵巻が全て展示される期間だった。「伴大納言絵巻」だけこの期間しか展示されなかったんだよね(他は巻替)。
別に狙って伺ったわけではなかったけれど、流石に来て拝見しないわけにもいかない…という言葉になるのは、ずらっとひとが並んで、ゆっくりとベルトコンベア式に拝見している状況だから。少々覚悟がいったなあ。
それぞれ特徴は違う。
源氏物語絵巻」はただただ美しい。絵も料紙も。個人的にはこちらだけ拝見でもいいぐらい。
信貴山縁起絵巻」は縁起の中で結構なファンタジックな話が描かれる。この時期に出ていたのは有名どころなんだろうか。倉と米俵が飛ぶ(飛倉巻と呼ばれてる)。飛んでいく米俵を眺めている鹿が可愛かった(そこ?)
「伴大納言絵巻」は群像を描いている。群像のそれぞれの人の表情がとても良い。
鳥獣戯画」はこの時期は一番有名な甲巻が。兎と蛙が相撲とってるアレ。流石に本物を拝見する機会はあまりないので、貴重な機会だった。
ただ、この章はそれだけではない。
地獄草紙(いわゆる地獄絵)と、病草紙。
病草紙は病にかかっているひとを、なんだか妙にユーモラスな状況にしているというか、笑いものにしているというか…。病人の見物人も結構描かれてるんだよね。もしかしたら、当時はその手の病気はある意味「見世物」だったのかもしれないなあ…とは。
「霍乱の女」(霍乱は日射病の意味もあるけど、真夏に起こる急性胃腸障害のことも言うらしい)も上から下から出しちゃって(言い方)辛そうなんだけど、地味に辛くて、何より切なそうだったのが「不眠の女」。当時だと、灯をつけておくわけにもいかなかっただろうし、真っ暗で何もできないし眠れないし…は辛いよね…。
「痣のある女」も辛い。貴族の女性なら猶更。
病草紙はいつか全部拝見したい気もする。若干あられもないのもあったりするんだけど(あ)書き手が拝見した時期じゃないけど、「ふたなり」も展示あったんだよな…(ぼそ)


「第2章 やまと絵の新様-鎌倉時代-」。
「第1節 写実と理想の形」は、人物画とか肖像画とか、仏画も。
「佐竹本三十六歌仙絵」を各所蔵から取り寄せてくれていた。やはり綺麗。
「上畳本三十六歌仙絵」(人物が畳の上に座って描かれているのでこの名前)は初めて拝見したけれど、これも結構好き。
一遍聖絵」(巻第九)も割と細かく描かれてて嫌いじゃないなあ。

「第2節 王朝追慕の美術」は貴族生活の絵画。
紫式部日記絵巻断簡」がとても綺麗…。
「隆房卿艶詞」は「白描技法」という、彩色なしで細い線だけで描いているのだが、女性の髪の黒が逆にくっきりと。これはこれで美しい。というか、これ、藤原(冷泉)隆房と小督の話なのね。

「第3節 鎌倉絵巻の多様な展開」は、武者や戦闘の絵、動物の絵なども出てきたことを展示。
ここにも「一遍聖絵」が(こちらは巻第七)。やっぱり嫌いじゃない。


「第3章 やまと絵の成熟-南北朝室町時代-」。
「第1節 きらめきのかたち」。
その名の通り、金を使用した豪華なものが出てくる辺り。
「夜寝覚抜書」は金銀泥絵下絵で、とても綺麗。
広島(尾道だそうで)・浄土寺所蔵の「源氏物語図面扇面貼交屏風」もとても美しい。どこの場面か全然判別つかない教養のなさが悲しいが。土佐派の絵師が描いたとされてるのだそうで。ああ、書き手が好みなのも分かる気がする。
「彩絵檜扇」もとても美しい。かなり豪華。

「第2節 南北朝室町時代の文芸と美術」。
この辺りになると、妖怪とか化物退治とかそういうものも出てくる感じ。
個人的には「仏鬼軍絵巻」で、地獄を攻撃する仏の軍隊とか出てきて「なんだこの世界観」となったり。
で、この節の目玉は真珠庵所蔵、伝・土佐光信「百鬼夜行絵巻」だろうか。実物初めて拝見したよ。なんともユーモラスで楽しい。

「第3節 和漢の混交と融合」。
やまと絵と漢画が混ざってきている、という意味合いなのだろうけど、この章は土佐派と、狩野元信(元々漢画の狩野派にやまと絵技法を取り入れた)が出てくる。
土佐派は伝が多いけれど、唯一つかない土佐光茂「桑実寺縁起絵巻」は色彩が綺麗。


「第4章 宮廷絵所の系譜」
宮廷絵所は宮廷や寺社の調度等に絵を描く専門の部署。
常盤光長(土佐派の祖先)が原本である絵画から始まり、鎌倉時代後期の高階隆兼、その後は土佐派が沢山。
常盤光長原本で、住吉如慶等が模写した「年中行事絵巻」は眼福。
高階隆兼「石山寺縁起絵巻」は色が美しい。
仁和寺所蔵の伝・土佐行広「妙音天像」もとても美しい色彩。
伝・土佐光信「硯破草紙」は、硯を誤って落として割ってしまった若者の代わりに、その主人の息子が罪を肩代わりして、それで追放されてその先で亡くなってしまい、両親と本来割ってしまった若者が揃って出家する、という救いがない話。でも絵は綺麗。細見美術館所蔵。
土佐光元「紫式部石山詣図」もとても綺麗で眼福。やっぱり土佐派好きだなあ…。光元自体は武将として早世してしまったそうだが。


「終章 やまと絵と四季-受け継がれる王朝の美-」。
屏風の大型作品が最後にどどんと。
狩野秀頼「観楓図屏風」は華やかだったなあ。


あ、書き手はグッズは購入しなかったのだが。
artexhibition.jp
artexhibition.jp
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図録が鈍器とか、絵巻の抱き枕とか、どこぞの人気シール的なやつとか、なんかちょっとイカれてた(褒め言葉)。
百鬼夜行絵巻」の謎の赤い塊な妖怪のグッズはちょっと惹かれた。買わなかったけど。


綺麗なものや愉快なものが拝見できて、なかなか。
しかし、混雑で、結局拝見に3時間ぐらいかかったような。


というわけでお昼直行。キッチンカーのピザ。結構ボリューミーだった。


ただ、この日はカロリーとっておいて正解だな、と思うわけで。
続く。