時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

館蔵品展 狩野派以外学習帳 江戸にきらめいた民間の絵師たち@板橋区立美術館

板橋区立美術館。最寄り駅の西高島平駅から、徒歩15分程度。

こんなのぼりを立ててくれていた。お気遣いありがとうございます。
正直、駅からの遠さよりも、西高島平駅までの電車が遠い…。都営三田線の終点ってこんな遠いの…?


www.city.itabashi.tokyo.jp

館所蔵品の中から、江戸の絵画は狩野派以外もあるから、その辺を中心に、と。
板橋区立美術館は江戸時代の作品を結構収集されているんだね。
館所蔵品の展覧会なので入場無料。
館所蔵品の展覧会なので写真OK。
…結構大盤振る舞いでは…。


2階の部屋が3つ。
それを繋ぐ、ホール的なところに、とても可愛らしい、雛を囲んで愛でている図。柴田是真「上代雛図」。…え?いきなり?しかもとても可愛らしいんだが…?
更に「貝尽図屏風」に描かれる貝の素敵なデザインよ…。
ホールにはそれ以外にも、作者不詳ながらもとても品の良い絵が描かれていて、しかも取り外し可能な竹屋町裂が貼られて、裂を楽しむことも、取り外して外の背景を借景することができる素敵な屏風「秋草流水図屏風」や、素朴で可愛らしい池田孤邨「雛祭図」が。
池田孤邨は酒井抱一の弟子なので琳派になると思うけど、それっぽい絵ではなかったなあ。


第1室のテーマは「富士山」。
いきなりその姿自体も美しければ、その間の余白もとても美しい富士山。
狩野探幽「富士山図」。
狩野派「以外」とはなんだったのか。いや美しいからいいけれども。
探幽の弟である狩野尚信「富士見西行・大原御幸図屏風」も余白を美しく使っている。一人でぽつんと富士を眺めている西行、という図も面白いし。
そして隣にはぱあっと明るい色彩の狩野雅信「御殿山筑波山遠望図」。いきなり時代が下った。木挽町狩野家最後の当主で狩野芳崖の師匠。雅信はあまり評価は芳しくなかったりするらしいのだが、この絵はいいなあ。色彩が綺麗で明るくて繊細で。
で、更に狩野秀水「窓越富嶽図」。これ、障子の外に見える白雪を富士に見立てて描いたそうな。狩野秀水は秋田藩の御用絵師になった狩野派の画家。

さて、ここまで狩野派を並べてきて、次の絵からは画風ががらっと変わる。
しかもいきなり油彩チック。
司馬江漢並べてくるんだもの。
「鉄砲洲富士遠望図」「深川洲崎富士遠望図」はこの部屋のテーマ通り富士の図だが、それよりも描かれている犬が可愛いなあ…。
そして富士とは全く関係ない「樹下美人愛児図」。美しい母子図ではあるんだが、服がどう見ても日本や中国じゃない。江戸時代の絵とはとても思えぬ…。
「駿州柏原図」は他の絵と異なって水墨画だけれど、なんだか凄くぱきっとして明快。面白いなあ。
江漢に影響を受けているらしい、詳細不明の龍山という銘が入った「三保松原富士図」も油彩で洋風。

そして更にはっきりした絵が続く。義川「富嶽遠望図」。銭湯のペンキ絵とか解説に描かれてるぐらいの明快さ。
こちらは「泥絵」という、顔料に胡粉を混ぜて描いている浮世絵(庶民の絵)なのだそうな。
義川はどうやら山形城下の表具屋で絵師だった義川斎定信、のことらしい。
泥絵では「江戸風景」という、絵葉書大でセットになってるものもあったり。

で、洋風と言えばやはり来ますよね、亜欧堂田善。
猿橋風景図」に「三囲雪景図」。とても明快な絵。後者は特に、雪景色の中に佇む笠姿のふたり、という抒情部分も。

でもって、もっと一風変わった「富士画賛」という絵が。
描いたのは出島の外科医・ヤン・フレデリック・フェイルケ。外国人の絵もここに入れるか…。
しかし、アカデミックというよりはセザンヌとか、言ってみればキュビズムとか、そっち系の描き方だなあ…。流石にまだその辺は全盛期でなさそうではあるけど。

この辺を拝見してしまうと、小野田直武「富嶽図」はまだ日本画っぽい景色ではある。この方も秋田蘭画の方ではあるのだが。
でもって、それまでの日本画ともまた違う「琳派」、野崎真一「富士・三保松原図」、油彩とも違う別のビビットな富士山が。
そして歌川広重「江戸近郊図」は、円窓から見える田園風景、そして表装に描かれている富士山(これは後で誂えられたもの)という、結果的に富士の図となったもの。こういうのもありか。


第2室、に行く前に、先に小部屋に入ってしまう。
こちらはちょっとテイストが異なって、修理した絵画の修理解説と一緒に。
が、こちらに展示されていたのが、住吉廣尚・廣隆の、表が「春秋遊楽図屏風」、裏が「四季花鳥図屏風」。住吉派の絵画!住吉派、美しいよね…。土佐派からの流れだからかもしれない。個人的にとても好き。
更にこちらには英一蝶「一休和尚酔臥図」が。…一休さん(大御所になった後だろうけど)酔いつぶれて寝てますけど…。愉快な図である。


第2室。テーマは「牡丹」。
でもって…書き手、展示順とは逆に拝見していったりしていた。
本来は狩野派を展示して、別の派閥の展示になる、という感じなのだけれど、お陰でいきなり物凄くかけ離れた絵画から。
加藤信清「五百羅漢図」。この方、「文字絵」という、絵の輪郭線が全て文字でできている、という凄い絵で。こちらの図も経文で輪郭を描いているという…。
その他、南蘋派の宋紫石「牡丹小禽図」、南画の春木南溟「牡丹ニ孔雀図」、岸派の清水天民「花鳥図」、特定の流派に入らない町絵師・長谷川雪旦「草花図」、全く経歴が不明(どこかの武士の手習いではという話が)徳雄院「牡丹金魚図」等、バラエティに富んだ経歴の方々なのだが、どれもこれも美しい牡丹。最後の「牡丹金魚図」は、金魚の色合いが不思議に暖かそう。
そして3点展示されていた、色合いがなんともクリアで他の日本画とは一線を画した、第1室にも出ていた秋田蘭画・小野田直武。第1室の絵よりもこちらの方が「これだ!」と思わせる。眼福。
でもって、最初の方に並んでいた狩野派ずらり。色彩が強いものも、水墨画もある。…でも、全体的にまとまってて綺麗だよね、狩野派。鍛えられた画力なんじゃないかなあ。江戸初期から末期の方まで。
で、最後にガラスケースを拝見したら、酒井抱一「白梅鶯・紅葉鹿図」。ここで酒井抱一ずるい…!また凄いキュートなんだよねえ…。


こちら本当に無料でいいんですか?写真全部OKなんですか?
なんだかもう、ありがたい展覧会だった…。



流石に体力を使い果たしたので。


都心に戻って遅めのお昼、及び、平日午後の愉悦を楽しんでいた。