ユリノキも色づく季節。
東京国立博物館は現在、特別展開催中。
www.tnm.jp
が、こちらのチケットが買える気がしないレベル。
で、暫く総合文化展を拝見していない。
特別展の後に総合文化展に流れる方もいるだろうし、混雑しているかなあ…と、恐る恐る総合文化展のみで。
入場したら、本館前に何やら椅子が。
www.tnm.jp
おっと、個人的には1年半ぶりのイベントですな。
morina0321-2.hatenablog.com
今回は拝見している暇がなく、スルーしたけれど。
まずは本館へ。
3室。
「仏教の美術」。「毘沙門天立像」は、ユニークな顔立ちの毘沙門天と、踏まれている鬼が「ぐえっ」って感じで面白かったんだが、旧蔵・川端龍子でおおっと。
「釈迦三尊十羅刹女像」がなかなか綺麗だったなあ。
変わったところだと、水瓶の特集展示が。全体的に形が綺麗だよね。
「宮廷の美術」は、伝・藤原公任筆の「伊勢集断簡(石山切)」の破り継ぎの料紙がとても美しい。
伝・寂蓮の「和漢朗詠集切」も雲紙使ってていいなあ…。
絵の展示は「歌人の絵」。個人的に雰囲気は嫌いじゃないなあ。
「禅と水墨画」は、伝・雪舟等楊の「中国真景図巻」がなんとなく雰囲気が好き。
4室「茶の美術」は、多分何度か拝見しているものが出ていたような。粉引徳利とか。あれ、なんかいいんだよねえ。雨漏もあって。
5・6室「武士の装い」。
兜に印象が深い。「紅糸威星兜」は普通に格好良くて、「紫裾濃威筋兜」は竜の飾りがついてる。
で、「紅糸威二枚胴具足」。兜がサザエ。サザエ…。でもって、胴がちょっと西洋の鎧っぽい。スーツアーマーとかプレートアーマーとかそういう感じの。でもって袖の部分が金属の鱗状。おお、スケールアーマー(先程から何やらゲーム的な言語が…)。南蛮胴の形らしい。これ面白いなあ。
7室「屏風と襖絵」。
作者不詳の「花車図屏風」、とても綺麗。狩野派らしいけど。空間の取り方とかも好み。
8室。
「暮らしの調度」。
まずは家具系。
「澤瀉漆絵膳」がとても繊細で美しい…。
「草取蒔絵螺鈿硯蓋」は琳派っぽいなあ、と思ったら光琳風蒔絵の一種だそうな。
「貝尽蒔絵提重」は小皿のデザインが1つ1つ違ってて全て美しい。どうなってるんだ。
「鼈甲波亀蒔絵盃」は、波を表している直線の交差の仕方がとてもモダン、というか現代工芸でも通用しそうなデザインだな…江戸時代のデザイン凄いな…。
「鼈甲水草鯉蒔絵盃」は鯉の鱗のデザインが格好いい。
「茶室蒔絵料紙硯箱」は箱の外側の木目と、画面の余白が好き。
「楓鹿蒔絵硯箱」は楓と鹿の構図が。振り返り鹿も格好いいし…。
衣装はこの時期割とお馴染みの火事装束。格好いいんだよね、このシリーズ。
「火事装束 緋羅紗地注連縄模様」の赤の上着と紫の頭巾が目に眩しい。
「火事頭巾 金革紺萌黄黄段羅紗」も格好いいけど派手なデザイン。色は紺の地は落ち着いてるのに、その分金&黄色が目立つ目立つ。これ、女性用なんだな…。
「火事羽織 紺木綿地雷神模様刺子」は意外と渋い色だし図案は目立たないんだけど、雷を表してるのかな、模様がいかにも雷、という感じでなくて(むしろ太鼓持ってるし音波みたいにも思う)、ちょっと面白いなあと。
陶磁は何度か拝見したことあるんじゃないかな、という品々。でも好みの器ばかりだったので眼福。
文房具で水滴「瓜に栗鼠水滴」「柿水滴」と矢立「紅葉流水文」「竹形」。細工が綺麗だわデザインも素敵だわ…。
装飾&化粧品は「菊萩茫柄鏡」「柿に烏飾簪」の細工の細かさが綺麗で、「梅松葉紅葉文白粉刷毛」はちょっと珍しいかなあ。こちらも文様が細かい…。
「書画の展開」。
今回の絵が「扇に描かれた絵」特集の様子。以前もあったね。
morina0321-2.hatenablog.com
先に書。書の方にも扇に書かれたものが。烏丸光広「扇面「一枝に」」。雰囲気が好みなんだよねえ…。
で、大らかな絵と字を見てあ、っとなった仙厓義梵「滝図自画賛」。
でもってガラスケースには、特別展とリンクしているであろう、岡倉天心の手紙が。…結構面白い文字書くんだね、岡倉天心。
で、絵なんだが。先にも書いた通り「扇に描かれた絵」なのだけど。
狩野常信・狩野山雪・狩野伊川院栄信・長沢芦雪・英一蝶・伊藤若冲・尾形光琳・尾形乾山・酒井抱一…東京国立博物館…ここで本気を出してきたんだが…。しかもどれも素敵なんだよねえ。たまらん…。
渡辺崋山「蝙蝠図扇面」もなかなか素敵な形の蝙蝠を描かれてたし。
唯一存じ上げなかったのが佐脇嵩之かな。英一蝶の門人で、扇に絵を描くことが多かったそうで。「秋海棠図扇面」、いい感じだった。
9室「能と歌舞伎」。
金春家伝来の能装束と面。「厚板 藍白段籠目唐草模様」が結構好きかなあ。後は女性の面が品が良い気がする。
10室。
「衣装(江戸)」は相変わらずの眼福。渋い色が多いのも良い…。
「浮世絵(江戸)」。
今回は「風景の中の人物画」なんだろうか。歌川広重はいつもの通り多めに展示してくれてるんだけど(ありがたい)、人物が描かれてる絵が多かったので。
渓斎英泉の人物画がちょっと面白い感じだった。
肉筆浮世絵は奥村政信「小倉山荘図」も宮川長春「紫式部図」も鮮やかで綺麗だった。
面白いのは、「摂津の玉川で擣衣(砧で布を打つこと)」という題材を扱った複数の絵師の作品を並べたこと。摂津の玉川は、六玉川(6つの名高い清らかな川)の1つ、摂津国の玉川。鈴木春信も歌川広重もあって嬉しい。礒田湖龍斎も春信風だった初期の作品で、個人的にはかなり好き。
北尾重政「浮世六玉川第二 近江 俊頼」(同じく六玉川のうちの近江の玉川を描いてる)も初期作品なのかな、春信風。余談だけど、北尾重政は須原屋茂兵衛という版元の系列(お父さんの須原屋三郎兵衛がのれん分けして別の店を持ったそうな)なのだが…須原屋は一部の埼玉県民には心惹かれる名前であり(こちらの流れを組む県内書店チェーン)。
「近江の玉川」題材は歌川広重も葛飾北斎も描いているものが並んだ。豪華。北斎の美人画、結構好き。
1階へ下りて11室「彫刻」。
珍しく全部撮影OKだった。
そして入口の「菩薩立像」がとても美しい…。
「愛染明王坐像」は厨子と一緒に飾られていて、この厨子も合わせて美しい。
「十二神将立像」は干支の十二神だけど、東京国立博物館にはそのうち5体が所蔵されていて、あと7体は静嘉堂文庫美術館所蔵…って拝見したことあるよそれ!
morina0321-2.hatenablog.com
全て拝見したことになる、のかな。これで。
個人的には未神の独特なポーズ(あと、髪型がドラゴンボールに出てきそう(え))と、抜刀ポーズの辰神がとにかく格好いい。
「文殊菩薩騎獅像および侍者立像」もいいなあ。侍者がなんか生き生きしてる感じで。
あ、今回取り上げた展示、全て重文。これでもかと置いてあったよ重文…。
12室は普段は「漆工」だけど、今回は特別編。
「創立150年記念特集 根付 郷コレクション」。
実業家の郷誠之助氏のコレクション。
ただ…根付なので、沢山飾れるのだけど、写真が本当に撮りづらい(小さいものって撮りづらい)。
愛らしい動物の牙彫をいくつか気に入って撮影。
あと、今回江戸時代と明治時代が混ざって展示されていたのだが、明治時代に1つ、小さいけど美しい蒔絵装飾の「箱形菊蒔絵根付」の銘「是真」を見逃さなかった書き手。しれっと柴田是真を展示してる!
あと、4点牙彫で銘「光明」。石川光明…。解説なしでしれっと展示するから怖い。
あ、江戸時代だと銘「乾山」もあったよ…。
13室。
「刀剣」は相変わらず笄とか鍔を拝見し。
「陶磁」は拝見したことあるものが多いかなあ。それでも目の保養。
14室は「創立150年記念特集 未来の国宝―東京国立博物館 彫刻、工芸、考古の逸品―」。
実は11室の「菩薩立像」もこの特集の1つだったりする。
1品ずつ展示するのだが、私が拝見した時は「吉野宮蒔絵書棚」。うん、蒔絵がとても美しい…ただ、部屋が暗くていまいちはっきり分かりづらい気はした。
本館18室に行く前に、平成館の企画展示室をちょっと覗き見。
「つたえる、つなぐ 博物館広報の歩み」ということで、東京国立博物館の広報資料。
個人的には年末年始の開館閉館ポスター(そんなの作成されていたんだなあ)と、トーハクくん&ユリノキちゃん(東京国立博物館マスコット)のファッションショー的な展示が面白かったかな。
本館18室「近代の美術」。
日本画は、河鍋暁斎「地獄極楽図」が流石のユニークさを。
狩野芳崖「山水」、竹内栖鳳には珍しい群像画「富士川大勝」、下村観山「老子」(下村観山は老人描かせるといいよねえ…)と名前の知れている作家もありながらも、鶴沢深真(大阪の画家なのかな)「王昭君」、橋本静水(橋本雅邦の養子)「一休」も面白い。
で、ガラスケースは今回何を展示しているのかな、と軽々しく覗いたら…川瀬巴水「東京十二題」12作品全部出し。お、おおお…!?全部写真OKだし。なんてことだ。
彫刻は竹内久一「町田久成像」の布の具合が凄い。町田久成は東京国立博物館初代館長。
工芸は人間国宝の作品が続く。濱田庄司があるのが嬉しい。高橋敬典「八方面取姥口釜」がとても可愛い形(書き手は茶釜が結構好き)。
さて。本館になにやら特別企画が。
「未来の博物館」。
国宝を8K映像や高精細複製して楽しむ企画。
8K映像の第1会場は法隆寺の夢殿の解説と「洛中洛外図屏風(舟木本)」の解説。
「洛中洛外図屏風(舟木本)」は3つの切り口&前後編で6つぐらいのパートでそれぞれ解説が。「食と享楽」は土井善晴さんと伊集院光さんが解説してて、食文化とか気になるから凄い聞きたかった…んだけど、1パート7、8分ぐらいあって、その話が5つ目ぐらいで。立ちっぱなしで聞くのはなかなか辛いし、時間が溶ける…。
疲れたので。
おやつの甘味も頂きましたが本日ノンアルで終了 pic.twitter.com/TIJw2091wX
— daily tsubamegaeshi (@morina0321) 2022年11月6日
「カフェゆりの木」でぜんざい(冷)とホットコーヒー。

すぐ傍の白い酔芙蓉が美しかった。
東洋館に移動。
10室。「朝鮮時代の美術」の展示替え。拝見したことがない水滴もあったりして、面白かった。
9室「中国の漆工」は屈輪が多かったので楽しい。
4階から3階に移動する途中で、「オアシス6 アジアの占い体験」が再開していることに気づいたりしつつ。
5室は特集が2つ。
普段の「中国の染織」が「創立150年記念特集 再発見!大谷探検隊とたどる古代裂の旅」。
古代裂は正直、ここまでよく染織が残っていたなあ、という、法隆寺宝物館の染織と似た感想を。
でもって「中国の陶磁」が「創立150年記念特集 東京国立博物館のイスラーム陶器」。…好みドストレートなものをここで持ってきてどうしろと(あ)風変わりな焼き物を沢山拝見できる…最高だ…。
「中国の青銅器」で饕餮を拝見したり、「中国 墳墓の世界」は灰釉も青磁も良くて…この部屋、楽しかったなあ…。
3室の「西アジア・エジプトの美術」は拝見したことあるものが多かったかなあ。
13室。
「アジアの染織」は「カシミヤ・ショール」。
ペイズリー柄が多くて、個人的にはあまり好みではないのだけど。
ペイズリー関係なかった「赤地ミフラーブ文様切嵌刺繍カシミヤ」は切り張りされた花の刺繍が格好良かったり、金の刺繍が紺地に縫われた「コート 濃紺ヴェルヴェット地花卉文様金銀糸刺繍」は豪華で、「帯 銀地花卉鱗文様モール錦」も花の文様が目立たず、でも落ち着いてて美しい帯。
白地なのでペイズリー柄があまり目立たない感じの「白地ペイズリー花文様金銀糸刺繍」も良いなあ。
「カシミヤ礼拝用壁掛 紺赤縞地ペイズリー唐草文様綴織縫い合わせ」は内側がペイズリーだけど、外側の「綴織縫い合わせ」の部分がとても格好いい。
「アジアの民族文化」は「メラネシアの宗教彫刻」。ええと…独創的な仮面や像がどん、と…。一角の雰囲気がなかなか異様。それもまた良し。
午後だけだと、本館と東洋館(と平成館ちょこっと)回るだけで手一杯だなあ…。
やっぱり楽しい。というか、国宝展にも負けじと総合文化展も頑張ってる。
国宝展だけで終わっちゃ勿体ないよね、東京国立博物館。