時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

三菱創業150周年記念 三菱の至宝展@三菱一号館美術館


三菱の創業周年記念、静嘉堂東洋文庫から誇る至宝を持ってきちゃったぞ企画。昨今の事情で1年延期しての展覧会。
東洋文庫は伺ったことはないけれど、静嘉堂は…もう3年前になっちゃったか。
morina0321-2.hatenablog.com
しかも来年には美術館部分は明治生命館1階に移転だものね。三菱一号館美術館の御近所。
www.seikado.or.jp
東洋文庫は推測でしかないけど、静嘉堂の印象を考えると…多分結構渋い展覧会になりそうだな、と来訪。
前後期制で、割と入れ替わり有。拝見したのは前期。


第1章「三菱の創業と発展-岩崎家4代の肖像」。
「4代」は三菱財閥創業者の岩崎弥太郎*1、2代目で弥太郎の弟の弥之助、3代目で弥太郎の長男・久弥、4代目で弥之助の長男・小弥太を指す(戦後の財閥解体で4代のみ)。
弥之助が静嘉堂文庫、久弥が東洋文庫の創設者(ついでに久弥の家が旧岩崎邸庭園)。小弥太は静嘉堂の拡充とか財団法人化を実施している。
初代は収集家というよりは「御自身が収集される対象」かもしれない。大熊氏廣「岩崎弥太郎座像」とか、御本人の書が展示されていた。
そしてハイライトのように、「赤楽茶碗 銘 吉田」と「黒楽茶碗 銘 三千院」の対の楽茶碗と、「唐物茄子茶入 付藻茄子」が。後者は結構有名なエピソードがてんこ盛りな一品で、前期のみ展示。


第2章「弥之助-静嘉堂の創設」。
要は静嘉堂関連提示。日本の刀・文献・仏像仏具・絵画、中国の書画…。
個人的に気になったのは紙類。歌人坂上是則の家集「是則集」が切箔に砂子で豪華だったり、「小倉色紙」もやはり切箔使ってるし、「和漢朗詠集 太田切」は唐紙に金泥・銀泥で下絵入れてるし、「伊勢物語」は描かれている絵も綺麗だけど裏地に切箔入れてるし…。
あと、「光悦謡本」が本当に光悦流の書体だなあとか(謡本を格納している「秋草蒔絵謡本箪笥」にも光悦流の文字が)、嫁入り道具だったらしい「源氏物語」(格納する箪笥つきの本の装丁が可愛いなあとか。
仏像は「木造十二神将立像」が出ていて、そのうちの「亥神像」の表情が、なんとも茶目っ気があってチャーミング。鎌倉時代の仏像にそんな風に言っていいのかは置いといて。
絵は、橋本雅邦「龍虎図屏風」の龍の顔がなんだか可愛らしい。大きなのと別にもう一匹、口を開けてるのもなんだか可愛いし。
絵といえば、弥之助は原撫松のパトロンもしていたそうで、原撫松の「岩崎弥之助像」という肖像画も出ていた。個人的に原撫松が結構好きなので、拝見できて嬉しい。


第3章「久弥-古典籍愛好から学術貢献へ」。
要は東洋文庫関連提示。とにかく本。学術系、地図、図鑑、中国書籍、宗教関連…。
トップバッターが「リグ・ヴェーダ」英訳本とか、メルカトルが描いた(当然メルカトル図法)「北極図」とか、曲亭(滝沢)馬琴が編集した図鑑「禽鏡」とか、シーボルトが書いた「日本植物誌」「日本動物誌」とか。
圧巻だったのは、「写本チベット大蔵経」等のチベット仏教の諸々の展示と、「聖書」と「コーラン」と「阿毘達磨倶舎論(中尊寺経)」が同じ部屋に展示されていたこと。
なんか…戦争始まりそう…(なんてことを)
「阿毘達磨倶舎論(中尊寺経)」は紺紙で金字と銀字が交互の行に書かれていて、個人的に好みではあったけれど。


第4章「小弥太-静嘉堂の拡充」。
まずは茶道具。豊臣秀吉の「北野大茶湯」という大茶会があったらしいのだけど、それを再現というか倣った茶会を催したそうで、その際に使われたものなども。
「御所丸茶碗 黒刷毛」の黒い釉薬の具合とか、「井戸茶碗 越後」の風情もいいんだけど、目を引いたのは「唐物茄子茶入 利休物相(木葉猿茄子)」。元々茶入自体も素敵なんだけど、堆黒のお盆を合わせてて、これが凄く素敵で。小堀遠州が茶入と盆を合わせたとか、それがそのまま伊達家伝来になったとか、結構なものだったようで…。
で、次の部屋への廊下が暗い。なんとなくそれで予測していた次の部屋の展示は、「曜変天目(稲葉天目)」。
静嘉堂で一番著名な所蔵品かもなあ。部屋を暗くした演出も相俟って宇宙。個人的には天目茶碗はどれも素敵だと思うけどね。
最後の部屋は、静嘉堂の陶器諸々。
気になったのは三彩。「三彩足噛馬」は足を噛んでいる動きも面白いし、そもそも三彩の馬の肌の色が黒いのも珍しいなあ、と。
更に1つ、区切られた小部屋があって、そこに飾られていたのが「三彩貼花文壺」。三彩の壺なんだけど、規則的に飾られてる「花文」が、1つ1つ、解説に記載されている表現通り、宝石のブローチを飾ってるみたい。西洋の影響を受けているみたいだけど…こんな作例あるんだね…。


渋い展覧会だった。ひとを選ぶかもしれないけど、個人的には好きな展覧会。
ただ。

写真撮影OKがこの「おかめの面」だったというのが。いや本当に渋い展覧会だったんだよ!
なお、こちらは弥太郎が銀行の営業室の壁に掛けていたもの。


さて。
三菱一号館美術館は東京駅付近にある。

…あれ?(意図的なのバレバレ)
というわけで常陸野ブルーイングでランチ。鯖サンド、というかこの中に挟まれているザワークラフト、滅茶苦茶ビールと合う…!もう1杯頼みたかったね…(遠い目)


とはいえ次に行くので、我慢して続く。

*1:記載上は「弥」は旧字体だけど、以降新字体で記載