時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

東京国立博物館

東京国立博物館

特別展も開催していたけれど、今回は常設展のみで。

あ、ユリノキが美しく咲いていた。GWの頃がいつも見頃。


まずは本館から。
3室。
「仏教の美術」の一部は金工だったのだけど、「金銅板両界曼荼羅」という見たことがないものが。金属で作成されている曼荼羅。あまり顔ははっきりしていないけれど、仏像が一杯彫られている。
後は仏画十六羅漢が出ていたけれど、虎を手なずける図が多いのはなんなのだろうね。強さの象徴なのか。
「宮廷の美術」は「綱絵巻」が気になった。渡辺綱の伝説の絵巻なんだけれど、とても丁寧に作成されているのが印象に。
「禅と日本画」は、特別展「東福寺」でクローズアップされていた吉山明兆と、その弟子である一之の作品と伝えらえている「白衣観音図」が。前者はすらっとしてて、後者はふっくらと優美で美しい。
同じく弟子の霊彩のものと伝えれている「文殊観音図」も優美。あと、背景の描き方が独特。
景南英文「渡唐天神図」は衣が綺麗で、ちょっと親しみやすい感じの天神図。

7室「屏風と襖絵」。
海北友雪「花鳥図屏風」は、花よりも様々な様子の鳥が凄い。どれも可愛いし。
柴田義董「鹿図屏風」は、余白を十分にとって右隻に2頭、左隻に1頭の鹿。…毛並みの描き方いいなあ…鹿可愛い…。
柴田義董、存じ上げなかったんだけど、呉春の弟子(なので四条派)になるそうで。門弟をたどると菅楯彦に繋がる、らしい。
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不思議に繋がるなあ。

8室。
「暮らしの調度」は季節柄、桜を意匠に使用した蒔絵の品等。
衣装は相変わらず美しいが、「打掛 鼠地唐織花文網目繋八橋胡蝶模様」、鼠地の渋さと、胡蝶模様が描かれている辺りが朱色になってて、なんだか凄く素敵。
「小袖 紫紋縮緬地鯉瀧模様」は紫地に描かれている模様がちょっと西洋っぽい。
船田一琴「瓢形酒入」は金工作品。瓢箪形をしているのだが、地の色が2色、金属で散らされている桜の花に、地に綺麗に彫られている雲と満月。素敵な作品。
陶工では上野(あがの)の白濁釉割山椒鉢と萩の白濁釉鉢。前者は形が面白くて(「割山椒」だから破裂してる感じ)、後者は「白濁」と言いながら萩の白釉なのでかなり白が強くて素敵。
「書画の展開」。書は分からないけど、頼山陽「蘇詩帖」の装丁が綺麗だった。
近衛家煕筆「新撰朗詠集」はいかにも公家の作成した筆致で、紙も古来からの典雅なものを使用していて。書き手は公家の書の方が好みなんだよね…。
一方、画。今回は花鳥画メインかな。
とりあえず、ガラスケースに並べられている巻物。円山応挙「写生帖(丁帖)」に岡本秋暉「鳥類写生図鑑」。…いきなりやりすぎじゃないですかね(真顔)岡本秋暉はちゃんと孔雀もあるしね…。
一方、掛軸の方。伊藤若冲「松梅孤鶴図」は鶴が大分ふっくらとしているデフォルメがされているのだが、個人的には若冲はこういう絵の方が好きなんだよなあ。
何度拝見しても素敵な円山応挙「雪中老松図」。
松村景文「合歓木雀図」は淡い色彩でとても丁寧に合歓木(ネムノキ)と可憐な雀を。
岸駒「花鳥図」は花の色彩とが鮮やかで、逆に白がちな鶴は、赤い頭の頂点と良い対比で。
岡本豊彦「孔雀図」は水墨のみで描いている。それで凄い存在感で、同時に幽玄の美しさ的な。
実は7室の柴田義董、でもって松村景文と岡本豊彦はそれぞれ呉春の弟子の四条派で(ついでに言うと、松村景文は呉春の年の離れた異母兄弟)恐らく東京国立博物館は分かって揃えてるんだろうなあ。「花鳥は景文、山水は豊彦、人物は義董」らしいのだけど、それぞれ花鳥画凄いですが…?
岡本豊彦、一時期は柴田是真の師匠だったこともあったそうで。書き手のツボを突こうとするのは禁止。
森派の始祖・森狙仙「秋山遊猿図」は猿と鹿の毛描きが、なんて柔らかそうなのか。
円山派になる中島来章「游鯉図」も泳ぐ鯉が涼やかで美しい。
ビッグネームが多いというのもあるけれど…ちょっと今回は凄いの揃えてきた感…。

9室「能と歌舞伎」だが、今回は舞楽
舞楽舞楽で独特の色遣いがあって、個人的には衣装好きなんだけど、今回は駿河狩野派の狩野洞春義信が描いた「舞楽図巻」も、狩野派らしくきっちりと綺麗で良いなあ、と。
そして衣装。とても舞楽らしい色遣いで、ここまでくっきりしていると格好いい。
挿頭花(かざしのはな)も綺麗でねえ。

10室。
「江戸(衣装)」は目の保養として。
「江戸(浮世絵)」には、まあ5/5が近いからだろうか、「金太郎と山姥」の絵がいくつか出ていた。金太郎の母親が山姥だという話があるそうで。山姥と言っても初老の女性で描くことはあまりなく、あまり身なりは整ってなくても結構若い感じの女性として描く方が多いのだが。葛飾北斎・鳥居清長・喜多川歌麿という凄いラインアップである。
後は季節柄、山吹と関連した絵があったり。
葛飾北斎の肉筆水墨画「羅漢図」は、椀を片手で掲げている羅漢が妙に格好良かったり。
葛飾北斎の弟子にあたる蹄斎北馬の肉筆画「出陣図」もとても綺麗だった。


さて2階は拝見したし1階…の前に、時間が時間だったのでお昼を。
キッチンカーに、ちょっと変わったものが。


セネガル料理の「マフェ」。これはセネガル料理だけど、西アフリカにはこういう料理が結構あるらしい。
写真だとカレー風だけど、ピーナッツバター煮込み。
ここの味付けは辛さがなく、とてもまろやか。これは肉を使用してなくて、ヴィーガン料理にしてるっぽい。
ピーナッツバターとカシューナッツなので、カロリーは高めかもしれないが、満足感も高い。
スパイスの効いたホットチャイと、自家焙煎の甘さ控えめ濃厚チョコも美味しく。また出会いたいなあ、このキッチンカー。


本館1階に戻って11室「彫刻」。
普段は仏像が多いのだけど、今回は神像が多かった。七福神とか。
で、割と頻繁に展示されている、千手観音菩薩坐像と四天王立像(千手観音菩薩坐像の周囲を四天王立像が守ってる感じの配置)があるのだが…四天王立像、こんなにライティング格好良かったっけ…?


影も格好良かったのでつい載せちゃう。

12室「漆工」。
品の良い菊の蒔絵が多かったような。
あと、「石山寺蒔絵源氏箪笥」は気になっちゃう。源氏物語の冊子を収納する箪笥。蒔絵も豪華だしね。

13室。
「金工」は今までも拝見したものを含めてバラエティに富んだ展示に。
恐ろしく細かく美しい「花車置物」や「花籠形釣香炉」、同じく細かいけれど向かい合っている鳥が単純な形で却って可愛い「金銅尾長鳥文華鬘」。
龍と獅子の恐ろし気で格好いい文様が入っている「甲冑金物」、そして明珍一門の美しい自在置物…。
「陶磁」はバラエティに富んでる感じ。目の保養。

14室は特集。
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ウィーン万博関連の品に、運搬途中で海難事故に遭ったニール号の引き揚げ品なども。
日本からだと、江戸時代のものが多いのかな。蒔絵書棚とか、鼈甲製鳥籠とか。
西洋からだと、イギリス・ミントン社のタイルが凄く綺麗。
ニール号の引き揚げ品としては、よく13室に展示してある尾形乾山「銹絵葡萄図角皿」や、ドイツ製の「色絵金彩婦人図皿」等。
で、ニール号の悲劇があった後、イギリス中心に美術工芸品を日本に送ってくれて、しかもその時の工芸品の選定・輸送を担当したインダストリアルデザイナーのクリストファー・ドレッサー(アーツ・アンド・クラフツ運動に関わってた方なんだね)が、日本を4ヶ月視察して、イギリスで日本美術の研究をして、イギリスのジャポニズムの重要人物になったとか。
その時にウエッジウッド社の陶器を沢山持ち込んでいて、そちらも展示されていた。とても綺麗。

15室「記録の歴史」。書籍や巻物にある地図とか図鑑的な絵とか、初期の写真とかなので、普段はあまり触れないのだが。
今回、狩野晴川院養信「江戸城本丸障壁画下絵」で。
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数か月前の別展示じゃん!
今回は「本丸大広間二之間」が。
更に狩野探淵の「江戸城本丸障壁画下絵」の「本丸松廊下」が。…ええと、江戸城本丸の松廊下って…「忠臣蔵」のアレですよね…。
前者は松の立派な大木、後者は海と砂浜の松並木。どちらも狩野派の丁寧な仕事。

16室「アイヌ琉球」。
アイヌの樺皮箱とか物入れがとても可愛いんだが、木綿衣も緑と茶色の、ちょっと珍しい色で面白かった。


ここから平成館へ。
まずは企画展示室。
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とてもバラエティに富んでいる。
東洋館5室でお馴染み(?)「緑釉犬」を360度ぐるり拝見可能なのは嬉しい。
同じく中国製の陶製「白釉獅子枕」。江戸の「尾長鳥水滴」、精巧な「自在蛇置物」、東洋館3室でお馴染み(?)エジプトの魚の像「オクシリンコス」。
簡略化されたモティーフとなっている近代の金工作品・二代須賀松園「猫」。
南画家・中林竹渓「月下遊猫図」に、河鍋暁斎「豹の図」。
本館15室にありそうな、とても丁寧な動物の図鑑「諸獣図」。
同じく丁寧で図鑑かと思ったら、「北斎漫画」がしれっと。
彦根更紗や「唐織 紅地籠目牡丹桜尾長鳥模様」等の布の図柄になっている尾の長い動物。
更に動物標本で、ヤマアラシの尾や棘、クモザルの骨格標本、キリンの尾まで。
…カオス…。

考古展示室。
今回は弥生時代ぐらいまでの古代と、中世以降のテーマ展示が展示替えしていた。
面白いのは「近世の経塚」。一石経という、掌で握って隠せるぐらいのサイズの石(自然石らしい)に経を墨で書いている。一文字だったり結構書き込んでいたり。展示されていたものは江戸時代のものらしいのだけど。複数のひとの1つ1つの祈りだったりするのだろうか。
でもって「大名屋敷のうつわ」。加賀藩(今の東大構内に屋敷があったそうな)の屋敷跡から、オランダ・デルフト窯の陶器片が出土していた。さ、流石の前田家…。
後は、「中世のあの世とこの世」で板碑とか骨蔵器とか撮ってた。あまり縁起が良くなさそうだけど、骨蔵器を拝見する時は、ほぼ陶器として鑑賞している感じではある。板碑は梵字デザインが綺麗だし。


本館戻って18室。
平櫛田中「森の仙人」の存在感が凄すぎるのをなんとかいなし(いや本当に凄い像だと思う)、木彫では米原雲海「竹取翁」もなかなか楽し気。
日本画では、島崎柳塢「おないどし」がとても美しい美人御二人。
島崎柳塢は今年別の絵を拝見しているけれど、美人画お得意なのかな。
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松本楓湖と川端玉章が師匠になるのか…。確かに足元の花も美しかったものね…。
あとは「東海道五十三次絵巻」かなあ。今村紫紅の描いてる箇所が好きなんだよね。
金工だと、川之辺一朝「藤牡丹蒔絵手箱」の描く牡丹がとても美しかったり、村松万三郎と香川勝広・沢田寿永が合作した「婦人用/紳士用時計鎖」がとても繊細だったり。
陶磁だと、樋口治実「含珠珈琲具」。樋口治実は「含珠焼」という、蛍手の一種の技法を使用する。蛍手は透彫の部分を透明釉で埋めて、その部分が微妙に透けた感じに見えるんだけど、まあその色が美しい…。
油彩。岡田三郎助「傾く日影(雑草)」…文句ございませんなあ…。なんて美人…。
あとは以前も拝見した原撫松「モンタギュ夫人像」と吉田博「精華」、どれだけ周囲が写りこまずに綺麗に写真が撮れるか、を頑張ったり(え)。背景黒は本当に色々写り易くてね…素敵な絵なのに勿体ない…。
でもって最後に荻原守衛「戸張孤雁氏像」。
荻原守衛と戸張孤雁、親友なんですな。戸張孤雁は先日拝見したけれども。
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本館と平成館回っただけでもう15時前なんだが。朝からいて。なんで?


というわけで休憩。カフェゆりの木(カフェスタンド)の「抹茶と和三盆の干菓子、ひとくち煉羊羹」。
抹茶が凄い色の器で出てきたけれど。鈞窯の澱青釉っぽい(複製ではあるだろうけども)。


時間が少ないけれど東洋館へ。
5階の10室から。
「朝鮮時代の美術」に絵画が。
李霆「墨竹図軸」、とても美しく凛々しい竹の絵。ちなみに李霆は世宗の玄孫にあたるとのこと。世宗…国王だろうけど聞き覚えが…うわあ、ハングル創設した李氏朝鮮国王…。
申命衍「牡丹図軸」もとても淡く繊細な牡丹で。
「朝鮮の仏教美術」には、何やら四角いものが。磚(せん)と言って、焼成煉瓦なんだそうな。床とか壁に使うから、タイルみたいなものかな。
「蓮花鬼神文磚」とか、日本の鬼瓦みたいなものかもしれないね。

9室。
「中国の漆工」で「唐花堆朱多面燈台」が。堆朱はあまり得意ではないのだけど、こちらは四方向からの明かりの部分にガラスが嵌っていて、そのガラスに描かれている花が可憐でいいなあ、と。

5室。
「中国の染織」に「古裂帖」。古くからの布地で素敵なものを台紙に貼りつけて、帳面にしたもの。今でいうところのカタログ。センスのいいデザインを貼り付けてて、「古裂帖」そのものが芸術品になってる…。
これは見本帳なんだけど、例えばマニアが似たようなスクラップ帳を作って、後世に芸術品として珍重されるかもしれない、と思うと夢が膨らむかもしれない。
「中国墳墓の世界」は個人的に好きなところだけれど、「黄釉絞胎壺」は面白かった。黄褐色のマーブル模様の壺。副葬品だと灰釉とか緑釉とか三彩だものね。

4室「中国文明のはじまり」。
「灰陶黒色暗文小壺」とか「黒陶両耳壺」とか、黒っぽい地でシンプルな形なんだけど、個人的には結構好みだなあ…。

13室。
「アジアの染織」、今回はインドの染織。ペイズリーが多いのでそこまで写真撮ったりはしなかった。
「インドの細密画」。今回はインド神話が題材で、ラクシュミーパールヴァティーサラスヴァティー等の女神の絵が多いのでちょっと楽しい。…けど、タントラがあったのでええとまあ。注意書きないといけない気がするんだが(ぼそ)
「アジアの民族文化」は台湾タオ族。蘭嶼という孤島に住む、島嶼部に住む台湾唯一の民族だそうで。
デザイン的にも面白い船の模型があったのだけど、チヌリクランという名前だそうで。
土製の玩具を作る文化もあって、土人形と土製の船の玩具が展示されていた。これも可愛い。
あと、性別で食べることができる・できない食料が決まっているらしく、どちらもOK、な食材を載せる柄付木皿も出ていた。面白いなあ…。


法隆寺宝物館。
久々に2室「金銅仏・光背・押出仏」を。光背もとても綺麗なんだけど、今回は押出仏の美しい辺りを拝見していたり。
で、6室の、相変わらず奈良時代のものが何故あんなに綺麗に残っているのか分からない、という染織の数々を拝見して、この日は終了。



常設だけで普通に1日かかるのは何故なんだろうね…。