時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

大阪の日本画@東京ステーションギャラリー

https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202304_oosaka.html

大阪の日本画にスポットを当てた展覧会。
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昨年何故か2つほど(1つは前後期どちらも)拝見したけれど、その流れで。
写真NG。

いつもの通り3階から。
会場の都合で、セクション順にならんでいるわけではないので若干混乱しつつ。

「第一章 ひとを描く-北野恒富とその門下」。
大阪画壇だと外せないよね北野恒富。
北野恒富はとてもスタンダードな美人画と、かなり個性的な美人画と2つあって、どうしてもスタンダードの方に目がいく。「摘草」とか「宝恵籠」とか。
で、その門下は…個性的だなあ。
展覧会の入口の絵は中村貞似「失題」。個性が強い…。ちなみに貞似は幼少時に火傷が元で両手の指が不自由なんだそうで。それで描けるの凄いな…。
で、やはり門下でずば抜けてるなあと思うのは島成園。「舞妓之図」とても艶やかだった…。

「第四章 文人画-街に息づく中国趣味」。
泉屋博古館東京での展示でも思ったけど、大阪画壇は意外と文人画が多いんだよね。あまり得意なジャンルではないけれど。
泉屋博古館東京所蔵で以前拝見した姫島竹外「竹林七賢」と再開したり。
河邊青蘭「武陵桃源図」は花が細やかだな、と思ったら、女性の画家なんだね。

「第五章 船場派-商家の床の間を飾る画」。
大阪は展覧会を開いて名を挙げて、という感じではなく、商家のそれぞれの家で絵を求められて購入される、ということが多かったそうで、その床の間で飾るような、そこまでの大きさでない絵が多い。
そして結構趣味が渋い。
森一鳳「藻刈舟」とか本当に渋い絵だよなあ…個人的には抒情的で結構好きなんだが。
ちなみにこちらが多く求められた理由は、藻刈=「もかり」、一鳳=「いっぽう」、で、「儲かる一方」って意味合いもあったそうな。あ、うん、大阪でしたね…(遠い目)
京都国立近代美術館で拝見して割と良い印象だった西山芳園・完瑛の作品も(親子合作もあった)。
そしてここに入るのが深田直城。泉屋博古館東京所蔵で以前拝見した「春秋花鳥之図」も素敵だけど、「糸桜猿猴」の面白い構図と猿の毛描きの綺麗さとか、「水中游鯉図」の余白も良い感じの構図とか、好きだなあ…。ちなみに膳所の方なんですな。なんか膳所の方に弱いとかあるのか書き手。山元春挙とか…。
で、深田直城の弟子にあたるのが平井直水。こちらは孔雀を得意としていたようで、「梅花孔雀図」は美しかった。
ちなみに解説によると、平井直水は高畠華肖の師匠に当たるそうで。また全然違うところにいった…(高畠華肖が京都市立美術工芸学校日本画科出身なので、その時の先生なのかもしれない)。

ここから2階。
「第三章 新たなる山水画を描く-矢野橋村と新南画」。
矢野橋村を存じ上げなかった。第四章より少し後の時代の方なんですな。兵器工場で左手首切断の大怪我を負って、右手一本で画家となったという、壮絶な方ではある…。
大阪で美術学校を開いたりもしたそうで、教育者の面の方が強い方かもしれないなあ。
あまり作品は個人的に合わないかも…。文人画難しい…。

「第二章 文化を描く-菅楯彦、生田花朝」。
絵ががらっと変わる。大阪の風俗を描いた二人。菅楯彦が生田花朝の師匠にあたるそうで。
菅楯彦は当時の大阪、というよりはもう少し前の大阪、なのかな。風景が江戸時代っぽい(当時の大阪にそういうのが残っていたのかもしれないけど)。個人的には結構味があっていいなあ、と。
余談だけど、菅楯彦は超絶大な名妓を娶ったということでも有名らしい。
生田花朝(後に花朝女と号。女性)はもう少し現代っぽい。そして結構大らかで独特な色使いで、賑やかな風景を描いている。

「第六章 新しい表現の探求と女性画家の飛躍」。
どちらかといえば第一章からの流れかもしれない。
ここまでも結構出てきているけれど、大阪は本当に女性画家が多い。
さて、ここまで出てこなくてちょっと気にかけていた作家がこちらに。上島鳳山。「緑陰美人遊興之図」、美人なんだけど表情がなんかいいんだよねえ。
あと、色々な作家の合作で「鴻池家旧蔵舞扇」が出ていたのだが、上島鳳山の「松上の鶴」は鶴が本当に美しかった。「舞扇」では河邊青蘭「松の図」も格好良かった。
御船綱手(みふねつなて、と読むのですな)「西洋名所画帖」は色遣いがとても綺麗。川端玉章の弟子にあたるのですな。
女性画家というと、三露千鈴「秋の一日」の母子がとても美しくて素敵だった。この方は早世されたそうで…。惜しいなあ…。
星加雪乃「初夏」は…二人のふっくらした…というか丸いとしか言いようがない女性。でもなんか可愛い。
高橋成薇「秋立つ」は当世風女子で可愛い。この方、中村貞似の妻になった方で、それで絵をやめてしまったらしく、島成園が惜しんだとか。
その島成園はこのセクションにも作品が。「祭りのよそおい」。こちらは祭りで着飾ってる可愛らしい少女の絵…だけじゃないんだよなあ…。
美しい着物にリボン、足袋に下駄、という着飾って楽しそうな3人の少女に、そこから離れたところで3人を見ている、華やかでない普段着の着物、頭は草花で飾り、裸足に草履の少女。
明らかに貧富の差を描いている(豊かな3人の少女も、来ている着物で少し差があるらしい…)。
島成園のこういうところ、凄いよな…。ただ美しいだけじゃないんだもの…。
ちなみにこちらは宣伝チラシにもなってるのだが(思わず貰ってきてしまった)、チラシには「豊かな3人の少女」しか載せてなかったりして。…わざとかな…。

存じ上げてる辺りも、存じ上げていなかった辺りも、とても楽しく勉強になった。
ちょっとマニアックなものを取り上げるのが、東京ステーションギャラリーっぽくていいよね。


さて、東京ステーションギャラリーの展示の後は。


常陸野ブルーイング丸の内、チケットで安くなるとどうしてもね!


そしてこの日は、これで終わりではなく。
ちょっと酔い覚ましも兼ねて散歩っぽく歩いて(とはいえ東京駅から数分)目指した、三井住友銀行アースガーデン。


実はこちら、東京ステーションギャラリーにチラシがあって知ったという。こういうのがあるから、各美術館にある他展覧会のチラシやポスターは軽く目を通しておいた方がいいのよね…。
ホキ美術館主催の写実画家お二人の展覧会。
ホキ美術館も暫く行けてないなあ…。暫く事前予約が必要だったということもあったのだけど、もう予約不要になってるそうなので、いつか伺わなくては。