時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

泉屋博古館東京リニューアルオープン記念展Ⅰ 日本画トライアングル 画家たちの大阪・京都・東京@泉屋博古館東京

sen-oku.or.jp

お久しぶりの泉屋博古館東京分館…もとい、「泉屋博古館東京」。リニューアルオープンしたら、名前もちょっと代わり、建物もリニューアル。
いきなり見えるところに、お洒落なミュージアムカフェができてるもの。
内部も構造が変わっていて、新しい展示場所を作っているような形。ただ、この構造だと沢山のお客様は入れないだろうな、とは。元々そういうつもりで作っていないのかもしれないけれど。この日もお客様はぽつりぽつり、ではあったし。落ち着けて良いけれども。


今回は泉屋博古館東京所蔵の日本画展覧会。
前後期制で、今回は前期。


まずは元々あった展示室で「面の東京」。東京の作家の作品。
個人的に気になったのは橋本雅邦「深山猛虎図」。背景の墨のグラデーションも綺麗だし、虎が凄く緻密に描かれていて。
あとは特別出展の彫刻、山崎朝雲「竹林の山濤」。老人の像の造形が素敵だなあと。


次の章は「東 meets 西」。
この展示室は、増設というか、元々バックヤードだった場所を改良したのかな。
ここは東京・京都・大阪と、同じ画題で掲載しているよう。
前期は美人画。東京は尾竹国観「人物画」。ああ、尾竹国観は尾竹三兄弟の三男さんか。洋装で着飾った男女。
京都は木島櫻谷「唐美人図」。ちょっと顔が個性があるのだけど、色彩はとても素敵。個人的にも櫻谷好きなので嬉しい。
大阪は上島鳳山「十二ヶ月美人」。時代も違っていれば人じゃなくて女神的な方もいるけど、それぞれ違った美人。美人も素敵だけれど書かれている季節も素敵。12月の和傘に積もった雪も綺麗。円山派の流れを汲んでるのか。
なかなか眼福で良いコーナー。
更に面白い展示、大正時代に作成された「東西現代画家相撲見立番付」。
行司には既にこの番付には入らない重鎮が載っていたのかなあ。山元春挙は行司だったし。
東は大関に下村観山、鏑木清方は前頭。一番上の段にいたから格は上の方なんだろうな。
西は大関に木島櫻谷、張出大関橋本関雪、小結に上村松園、前頭の上から2番目の段に伊藤小坡・島成園・西村五雲とか。…一番下の段に入江波光を見付けたけれど、個人的な気持ち的に位置が若干微妙な…(あ)
これは参考文献としてプリントしてほしいような。面白いよね。


次は「線の京都」。京都の作家。
こちらも元々あった展示室で。
今尾景年「深山瀑布図」細かく綺麗な絵だなあ…。
「京名所画帖」は複数の画家の画帖だけれど、その中でも鈴木松年の絵が、色は少ないけどざっと描いている感じがいいなあ…。
そして六曲一双の木島櫻谷「柳桜図」。桜はふっくらと可愛く、柳の葉はとても細かく。
で、今回おおっとなったのが原田西湖「乾坤再明図」。これ、「古事記」で閉じこもった天照大神が天の岩戸から出てきた場面だと思うのだけど…天照大神がとても可愛い…。こんな愛らしい風に描かれている天照大神もなかなかないのでは。光の当たり方とか、右下に描かれている鶏(天照大神が出てきたところだから、朝のイメージなのかな)の色もとても綺麗。→追記。天照大神じゃなくて、天鈿女命の方だった。いや、いずれにしてもとても愛らしかったけれども。


次は「点の大阪」。大阪の作家。
展示室は「線の京都」と一緒で、片側に京都、もう片側に大阪の展示。
泉屋博古館は住友家のコレクションが始まりなので、商売の中心が大阪だったこともあって、大阪の作家の作品を多く保有されている様子。
章の最初に章立ての解説があるのだけれど、大阪画壇の中心だった北野恒富の「大阪の人は大体に於いて、絵を理解しない」という身も蓋もないコメントがあったり。
ここは花鳥画で素敵なものがいくつか。
渡辺花仙(女性なのですな)「四季花鳥画帖」の綺麗な牡丹のグラデーション、伊藤渓水「四季花鳥画帖」のふわふわな鳥の羽毛、深田直城「春秋花鳥之図」はとても素敵な雉と、可愛らしい梅。


最後は新しい展示室(ロッカーの後ろ、バックヤードに部屋があったのかな)で、「住友春翠と日本画」。
住友春翠は貴族の家系(天皇に連なるレベル)から住友の後継者に請われて、養嗣子となった方なのだが、絵画に造詣が深い方だったようで。
ここも東京・大阪・京都の画家の作品が1つずつ展示。
で、東京の画家である尾竹国観「黄石公張良之図」が気になった。
これは下記の故事に纏わる絵なのだが。
ja.wikipedia.org
黄石公に靴を拾ってあげる張良が龍に乗ってるんだよね。この龍がなかなか良い感じで。


後期に出る作品、というか作家のリストを拝見すると、時間があればまた来たいなあ、と思いつつ。


さて、泉屋博古館東京、以前は入り口のところで受付のついでに、というような物販をしていたのだが、
リニューアルに伴って、ミュージアムショップができていた。
決して大きくはないけれど、アーティストの作品なんかも置いていたりした。


で、ミュージアムカフェ。美術館の入場券で割引があるというのもあり、入ってみた。
耐熱ガラスメーカーのHARIOが経営しているカフェ。

こんな感じで、コーヒーの道具にも力を入れている様子。美味しい。

そしてガラス張りの店から見える、泉ガーデンの庭園がとても美しい。桜の時期は本当に綺麗…。


ゆったりと眼福。


続く。