時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

2022年度 第1回コレクション展@京都国立近代美術館

岡崎辺り、なんだかんだで結構来ているのだが、平安神宮の前まで来たのは久々かな。
京都国立近代美術館は初めて。あんまり時間がなかったので、今回はコレクション展のみ覗いてみよう、というわけで。


www.momak.go.jp


コレクション展は4階。
行ってみたら、半分は企画展の部屋だった。
www.momak.go.jp
え?…入っていいんですか?コレクション展のチケットで?
というわけで、企画展の一部も拝見できてしまった。なかなかこういう構成もないなあ…。


まずは企画展。
今回は京都と大阪の、江戸時代から昭和初期ぐらいまでの絵を展示していた企画展。
コレクション展のチケットでOKだったのは、第3章「町人たちのアートワールド-大阪画壇の可能性-」の一部。明治以降から昭和初期にかけてぐらいの作品。
…あれ?その辺りの大阪画壇だと少し知識がある…?
morina0321-2.hatenablog.com
余談だけれど、こちらの企画展は泉屋博古館(京都の方)とタイアップしていて、両館でチケットの割引対応してるんだよね。
時間に余裕があったら、泉屋博古館と両方訪問していた可能性もあった。

というわけで、一番最初におおっとなったのは、深田直城「水辺芦雁・雪中船泊」だった。泉屋博古館東京でも印象に残った作家。水辺とか空の具合とかもいい感じで。
今回初めてお目にかかるのは庭山耕園「猟犬図」。犬が可愛い(そこ?)
でもって西山完瑛。「雅趣短冊十二月」も「浪速名所画帖」もきちんと綺麗な絵。

で、大阪画壇だと外せないかな、北野恒富。
「日照雨」は顔が出ていないけれど、口元と襟足の美しさに唸る。
「蓮池(朝)」(リストだと展示期間過ぎてたけど、置いていてくれたのだろうか)は幻想的な蓮の花に、後ろ姿の女性と、何やら暗い表情をした女性という二双一隻の屏風絵。
「鷺娘」は2つあり、1つは肉筆画、もう1つは木版。いずれも細い目の上目遣い風の鷺娘、もう何とも言えぬ…。木版の方が何かを企んでいる表情をしているような。いいなあ。

で、泉屋博古館東京でもお目にかかった上島鳳山「西施図」。
西施は中国四大美人の一人と言われていて、谷川で洗濯しているところを見出されたという伝説があるので、洗濯している美女の図。綺麗な眼差し。傍に生えている柳も綺麗。

で、そういえば大阪画壇だった、島成園「人形遣い」(北野恒富に習っていたりもする)。
人形の顔は見えなくて、人形を操っている女性の顔ははっきり描かれている(こういうのも珍しい気がする)のだが、女性の目と口元がなんともたまらない。
人形の顔が見えないのも気になるんだよね…。

なんというか、ピンポイントで個人的にも美味しいところを拝見した感じ。ありがたかった。


さて、コレクション展。

まずは、展覧会のポスターになってたあの作品。
ここのところよく拝見するなあ、という森村泰昌。実はお隣で展覧会やってるってのもあるんだけども(ぼそ)
展覧会のポスターになっているのは「だぶらかし(マルセル)」で、元はマン・レイが撮影したローズ・セラヴィ(マルセル・デュシャン)のポートレイトなのか。マルセル・デュシャンが女装してローズ・セラヴィになって、それを森村泰昌が作品になって…や、ややこしいぞ。
こちらは「合わせ鏡の対話/不在の間――森村泰昌とドミニク・ゴンザレス=フォルステル」というテーマ。
ドミニク・ゴンザレス=フォルステルも現代美術家で、やはり「小説や映画の登場人物に扮装」するパフォーマンスをするとのこと。展覧会サイトに「スカーレット・オハラの衣装を貸し借りしたところから交流が始まった」って書かれてて、個人的にはどういう状況なのかと頭を抱えてしまう。現代美術は分からない…。
あ、でも、ドミニク・ゴンザレス=フォルステル「無題(映画について)」は、カーペットが一枚敷かれていて、カーペットの四辺に沿って本が置いてある、というインスタレーション。本は手にとって読んでも良い(なるべくなら元にあったところに戻してほしい)という。なんとなく気にはなった。

「上方と洋画」テーマへ。
個人的に好みなのは小磯良平「婦人像」。やはり綺麗だよねえ。
須田国太郎「天守閣 彦根城」も気になった。何故か気になる須田国太郎。画風、暗いんだけどね。

「エデュケーショナル・スタディズ03 眼で聴き、耳で視る|中村裕太が手さぐる河井寬次郎」テーマ。
こちらは視覚に障害のある方に、いかに美術鑑賞をしてもらうか、というテーマ。
河井寬次郎の陶芸作品を、触れた方が解説する音声や、触っても良い作品を作って触ってもらうという鑑賞方法を提示。
更に、河井寬次郎が生活で使っていた道具(トランジスタラジオなんかもあったよ)や河井寬次郎が集めていた新聞の切り抜き等で、河井寬次郎の生活を感じる、という新しい鑑賞方法の提示もしていた。

「陶芸の色彩」テーマ。
素敵な色彩の陶芸がずらり。これは個人的な好みテーマ。
初代諏訪蘇山「飛青姿花瓶」に浮き出る斑紋。
タカエズ・トシコ「壺」のとても小さな口(口のない作品を作る方だったそうで)と豊かに流れる赤紫の釉薬の景色。
河井寛次郎「砕苺紅瓶子」は名前の通りの苺の種のような斑点が入っている紅い瓶子。
八木一艸「釣窯金魚置物」は金魚の形も可愛く、深い青の身体も素敵。
何より驚いたのは、板谷波山「朝陽磁鶴首花瓶」。板谷波山といえばマットな地(葆光釉)なんだけど、「朝陽磁鶴首花瓶」は全然違う。朝陽というか…オーロラの色にありそうな赤。こういう作品もあるのか…。とても素敵な色だった。
かと思えば、ピエール・フーケ「鉢」のような、基本は青磁で縁だけ鈍い金、みたいな端正なものも。
あ、そうそう、コレクション展の方は一部写真撮影OKで、特にこのテーマは写真OKなものが多かったので、個人的に楽しい。

「近代工芸にみる文房具」テーマ。
漆工作品が2つ。赤塚自得「桜蒔絵料紙硯箱」と迎田秋悦「大正大嘗宮蒔絵料紙硯箱」。どちらも蒔絵凄いしデザインが素敵。
一方、竹内碧外「行雲流水文硯筥及文台」。竹内碧外は木工芸家だそうで、漆は使用しているけれど、蒔絵ではなく木目で行雲流水文を美しく表している。これはこれで格好いい…。
河井寛次郎「鉄薬丸型陶硯」は陶器の硯。丸くてあまり硯っぽくはないけど、なんだか愛嬌があっていいなあ。

「西洋近代美術作品選」テーマ。
今回は花の静物画特集かな。
花なので、出た!アンリ・ファンタン=ラトゥール「カーネーションの花瓶」。美しい…。
更にルノワール「薔薇の花瓶」も明るくていいなあ…。
ヴラマンクが3点ほどあったけれど、嫌いじゃないなあ。


なかなか楽しいコレクション展に、思いもよらぬ特別展チラ見せ。満足。


そして4階からは、こんな景色が見える。


平安神宮の大鳥居、山は…東山連峰なのかな。
そして見えているお隣の建物へ、続く。


ミュージアムカフェも行きたかったな…(時間がなかった)