時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

特別展 生誕150年記念 板谷波山の陶芸 ― 近代陶芸の巨匠、その麗しき作品と生涯@泉屋博古館東京

sen-oku.or.jp

板谷波山展。
morina0321-2.hatenablog.com
こちらでお話した通り、生誕150年記念展覧会。先に京都の泉屋博古館で実施しておられた。
展覧会初日に、割と移動しやすかったので伺った。


まず、エントランスホールに2点、写真OKの展示物が。
1点は後に置いておいて、「序章 ようこそ、波山芸術の世界へ」のうちの、「彩磁更紗花鳥文花瓶」が。
序章は波山作品のハイライト。第1展示室に続く。


第1展示室。
序章=ハイライトなので、葆光彩磁と彩磁が主な展示に。
「葆光彩磁牡丹文様花瓶」は葆光彩磁のマットな感じ&赤で描かれている、個人的な好みのもの。
延壽文(=桃)もかなり出てきていたなあ。
葆光彩磁でも彩磁でもない「太白磁紫陽花彫嵌文花瓶」は、真っ白な地に紫陽花が浮彫されているもので、上品で良かった。
「氷華磁仙桃文花瓶」もここに。地の色が本当に綺麗だよねえ、氷華磁。

で。第1展示室の最後だけ「第1章 「波山」へのみちのり」。
「芸術家を志して―東京美術学校時代」とサブタイトルをつけられた作品は、木彫の「元禄美人」。


いや、あの…東京美術学校時代は彫刻科だったのは(前の展覧会で)存じ上げていたが…こんなに上手いんですか…彫刻…。着物の皺とか凄いんだよ本当に…。ちなみにこれが東京美術学校の卒業制作。


第2展示室は引き続き「第1章 「波山」へのみちのり」。
第2展示室の最初に展示されているのは河久保正名「海岸燈台の図」。
そうですね、元々河久保正名の画塾にいたのだから、泉屋博古館東京は展示しますよね、となった。
波山が描いた絵も数点出ていた。「頼朝と文覚」の頼朝が若くて可愛かったり。
で、彫刻も数点。「ひきがえる」可愛い!皮膚も凄い上手くできていて、ちょっとぬめっとした感じすらある。
彫刻の先生にあたる高村光雲の作品とか、息子の高村光太郎の作品とかもあったり。高村光雲瓜生岩子像」の瓜生岩子は社会事業家(孤児養育事業をされていた)で、波山の妻・まるの師になるそうで。
で、そこから、初期に作成した陶芸作品に。夫婦共作のマジョリカ皿や、まる単独の作品も出ていたりした。
「彩磁藤文花瓶」は初期作品でもかなり好きだなあ。


第3展示室の最初は「第2章 ジャパニーズ・アール・ヌーヴォー」。
こちらは「2-1 陶芸革新―アヴァンギャルド波山」と「2-2 アール・ヌーヴォー―いのちの輝き」に分かれている。
前者は、実はケースに沢山入った陶片。
波山、作品が少しでも気に入らないと割っちゃってたからなあ…(遠い目)綺麗な破片も沢山あったよ…。
後者は…まだ初期かな。アール・ヌーヴォーデザインが入り始めた頃なので、前の展覧会では初期として展示されていたヤツデデザインの作品がいくつかあった。
あ、そうそう、この辺りから、特別出品で泉屋博古館東京所蔵の初代宮川香山の作品が出てくる。
リアルな鳥とか蟹とかが乗ってるような作品じゃなくて、きちんと(?)綺麗な作品なので、後期の作品かな。


で、第3展示室の残り半分は「第3章 至高の美を求めて」の「3-1 葆光彩磁の輝き」と「3-2 色彩の妙、陶技の極み」。
葆光彩磁の作品はほぼ3-1として紹介して、3-2はそれ以外の、彩磁・氷華磁・金砂磁というオレンジと言っていいのかな、という色、辰砂磁・黒曜磁と。
葆光彩磁は勿論美しいけど、個人的には氷華磁・黒曜磁は本当に好き。
「辰砂磁花瓶」は辰砂が地の色ではなく、白地に辰砂の釉薬を斜めかけしてて、とても格好いい…。
個人的に気になったのが「彩磁印甸亜文花瓶」。「印甸亜」=インディア。こちら、久保田米僊がネイティブアメリカンの工芸をスケッチしてきていて、それをもとに作成したのだそうで、本当にそちらの香りのする面白いデザイン。
あと、この辺りは香炉が結構出ていたのだが、「彩磁珍果文香炉」は北原千鹿が火舎を作成していて、火舎の摘みが鹿になっていて、とても可愛い。波山は北原千鹿と結構組んで作品作ってるんだよね。
波山自体は別の香炉で、摘みの好みは瑪瑙と書かれていたけど(複数あったと思う)。


第4展示室は「第3章 至高の美を求めて」の「3-3 侘びの味わい― 侘びの味わい―茶の湯のうつわ」。
花瓶も香炉もあって(淡黄磁の花瓶が出てきて色が落ち着いた美しさだった)、ではあるのだけど、天目茶碗がずらり。天目なので鉄釉だと思うのだけど、色がそれぞれ全然違う。
茶の湯用の展示は前回もあったし特集の1つにになっていたと思うけど、点数は今回の方が少し多いのかな。
この部屋の展示、非常に良かった。


最後に、ホールにあったもう1つの写真OKの展示物。
「唐花文壺(生素地)」。
波山が亡くなった後、残されていた、釉薬をかけられる前の壺。
永遠に釉薬をかけられることを待ち続けるのか。
…まあ、その後、割られるかもしれないけど…(あ)


面白いし目の保養になった。


HARIO Cafeに寄ろうかと思ったら、満席だったので取りやめてこの日は終了。