時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

鈴木其一・夏秋渓流図屏風@根津美術館


別世界で真っ先にNEZU Cafeに入った書き手(当日、ここまで飲食全く口にしていなくてですね…←言い訳)。


落ち着いたところで。

www.nezu-muse.or.jp
鈴木其一「夏秋渓流図屏風」、2020年に重文指定されたそうで、そちらを中心に展示する展覧会。とはいえ、展示室6室のうち、該当展示で使用するのは展示室1と2のみ。
他はそれぞれのテーマ展示。


1室・2室のメインの展示から。
序章「檜の小径を抜けて」。
ここでは、元々狩野派で描かれた檜中心の構図が、江戸琳派に取り入れられた、という解説。「夏秋渓流図屏風」の檜の描かれ方に繋がっていく。
まずは狩野派の、狩野常信「檜に白鷺図」。幹の描き方が美しい。色を塗らない箇所を作って濃淡をつけてて。
で、ここから琳派に取り入れられたのだが、取り入れたのは鈴木其一の師匠・酒井抱一
「雪中檜に小禽図」…幹の濃淡のつけ方とか、雪を表現するために白を散らしているのとか、その中で小さいながらもぱっと赤い色を印象付ける南天とか、可愛らしい小鳥とか、酒井抱一のセンスよ…。

第1章「「夏秋渓流図屏風」誕生への道行き」。
まずは酒井抱一「青楓朱楓図屏風」と「夏秋草図屏風」。
「青楓朱楓図屏風」は尾形光琳をリスペクトしているそうで、その分あまり抱一の洒脱さみたいなのはない気がする。「夏秋草図屏風」はまあ、東京国立博物館で何度も拝見しているので。そちらだと写真OKなのにね、とか思いつつ(そこ?)
そしてもう1つのビッグネーム、円山応挙保津川図屏風」。
応挙は写生を重んじたこと、それから西洋の遠近法を取り入れていて、かなり立体的な表現で描いてる。そう思うと琳派は割と平面だけど、鈴木其一「夏秋渓流図屏風」はかなり立体的で、応挙の絵を参考にしたのではないか、という解説がついていた。
で、本題の「夏秋渓流図屏風」。確かに水の流れ方は立体的で、でも水自体の描き方は琳派のそれで。木の幹の描き方は師匠の抱一譲り、でも幹のそこかしこに丸く苔が描かれていて、まるでデザインのよう。
なんというか、不思議な絵というか。うん。

第2章「其一の多彩な画業に分け入る」。
タイトル通り、この章は其一の作品のみ。
驚いたのは、其一の絵は花鳥図ぐらいしか拝見したことなかったんだけど、意外とジャンルが広い。人物も描くし、江戸の風俗を描いていたりもする。
「宮女奏楽図」の衣装が綺麗だなあとか、「神功皇后武内宿禰図」の武内宿禰の衣装の描き込みが凄いとか。
個人的に気になったのは、抱一みたいな洒脱な描き方をしている「蝶に芍薬図」、「雨中牡丹図」の雨の描き方、表面に秋草、裏面に波と月を描いて、表面の秋草にぼんやり月が浮かぶように見えるようにしてる「秋草・波に月図屏風」かな。


他はテーマ展示。
展示室3を中心に、ホールにも並んでいる「仏教美術の魅力」。
ホールに配置されているのだけど「十一面観音菩薩立像龕」は美しいなあ…。
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展示室4「古代中国の青銅器」。
ひたすら饕餮が見られる。ばんち文(蟠は出るけど「ち」が出ないな…璃の字の王篇じゃなくて虫篇)もあるけど。凄い細かいばんち文あったなあ…。

展示室5「筆墨の魅力 禅僧たちの書」。
書き手、この辺りはよく分かってないのだけど、「一休宗純墨蹟 偈頌」は非常に字が個性的だった。

展示室6「炉開き ─祝儀の茶会─」。
気になったのは、形の不揃いさが可愛くて、くっつきを防止する白土が上手い具合になってた「南蛮芋頭水指」、器自体の色も好きだけど器を収納する布の袋が船越間道でとても格好良かった「茄子茶入 銘 志賀」、渋い感じの「井戸茶碗 銘 宗及」と美しい肌の「志野茶碗」。


一通り回った後、庭園へ。

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無風の初冬の昼下がり、紅葉は盛りを過ぎていても美しく。
南天も小さいけれど鮮やかで。
ところどころにある仏像がたまに落ち葉で彩られていて。
飛梅祠の天神様は、散った銀杏が背景に積もっていて、銀杏の黄色が光背になっているようで。
池の鯉は大暴れしているのもいて。
とてものんびりと良い散策。


続く。