時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

江戸時代の美術─「軽み」の誕生@出光美術館


ここのところ、江戸の絵画が続いている気もする。
前後期で1点だけ展示入替がある。今回は前期。
全体的に展示数が少ないけれど、それは大型の屏風が多いから。


展開最初に説明書きが。
「つまらない」美意識。
この文字面が結構インパクトがあるのだが、ここのつまらないは漢字で「詰まらない」と書いた方がしっくりくる。要は「余白がある」ことへの美意識。
この辺を主張し始めたのは狩野探幽。ですよね。探幽の余白の作り方、個人的に大好きで、何度も言及しているぐらいだ。


「第1章 ものづくしの絵画-江戸時代の美術前史」。
「ものづくし」つまり物が沢山描かれている絵画。
桃山時代の「吉野・龍田図屏風」が一番分かりやすい。桜の花ぎっしり描いている。
ちなみにこちらが前期。後期は伝・土佐光信「四季花木図屏風」。
idemitsu-museum.or.jp
こちらはそこまでぎっしりではないなあ。


「第2章 狩野探幽と江戸狩野派-「つまらない」絵の誕生」。
狩野探幽「叭々鳥・小禽図屏風」。この余白の生かし方は凄い。格好いい…。
探幽の甥で探幽と画風が似ていると言われている狩野常信「吉野・龍田図簾屏風」は、もう少し余白が少ないかな。桜が綺麗。


「第3章 余剰と余白-「つまらない」絵の広がり」。
ここかはら狩野派含む色々。
狩野尚信(探幽の弟で常信の父)「平家物語 小督・子猷訪載図屏風」は、左隻の「小督」がなんともいえない。余白とか。話の概要を存じ上げてるから、というのもあるが。
でもって、土佐光起「須磨・明石図屏風」。雄大な景色の中に庶民の生活が描かれている。土佐派はなんとなく貴族の生活的なものを描くイメージだったので、結構題材が新鮮かも。それでもとても綺麗…。
狩野探幽源氏物語 賢木・澪標図屏風」は、余白も美しければ色彩も美しい…。
俵屋宗達岩佐又兵衛の作品もあったけど、あまりこの辺が得意でない書き手が結構いいなと思ったので、かなり良い絵が揃っていたように思う。


「第4章 洗練と機知-浮世絵と江戸琳派の軽み」。
こちらは「浮世絵」と「江戸琳派」と出ているのだけれど、それにプラスして松尾芭蕉が自ら書いた「発句」集。
松尾芭蕉の発句集は、自分で絵を入れているのもあり、なかなか面白いと思う(他の方に絵を入れて貰っているのもある)。
浮世絵は所謂美人を描いたものが多数。
蹄斎北馬「渡し船図」「月下美人図」いずれも素敵。
喜多川歌麿「娘と童子図」は娘さんが勿論美人であるけれど、それ以上にとても微笑ましい。
で、江戸琳派酒井抱一を数点。「十二ヶ月花鳥図貼付屏風」素晴らしいな…。「糸桜図扇面」もとても綺麗な桜。
鈴木其一も出ていたけれど、そちらよりは先日も拝見した池田孤邨「柿樹・秋草に小禽図」の方が良いかなあ。


そうそう、ところどころに工芸作品が数点置かれていたのだが、個人的には野々村仁清が2点出ていたのが良かった。
「灰釉胴張共蓋水指」「信楽写共蓋水指」、いずれもかなり渋い感じ。


これはなかなかの目の保養。
軽い気持ちで行ったのだけど、なかなか良かった展覧会だった。
あ、相変わらず展示室5の陶片室で引き出しを開け閉めしてた(多分行くたびにやる)。




帰りはなんとなく、丸の内仲通りをぶらっと。
この辺、丸の内ストリートギャラリーという企画で、アート展示してるんだよね。
www.marunouchi.com
気になったのは草間彌生。そこまで好きな作家ではないのだけど、「われは南瓜」は嫌いじゃない。黒基調の水玉南瓜。