時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

尾形乾山生誕360年 琳派のやきもの -響きあう陶画の美@出光美術館


そういえば、尾形乾山の展覧会って伺ったことないなあ、と思い。

展示は、乾山の年代順の作品展示、プラス没後、という感じだろうか。


「第1章 詩書画の陶芸」。
今更言うまでもないかもだけど、尾形乾山尾形光琳の6歳下の弟。
光琳というひとは生活自体、一言で言って「放蕩」だったらしいのだが(弟の乾山に無心したレベル)、乾山はそういうことには興味なく、早々に隠遁したいタイプだった模様。陽キャ陰キャということか(言い方)まあ、隠遁もヲタ趣味に走るのも似たようなものでしょうしね…。
で、中国の詩書画には造詣が深かったようで、関連した作品も多い。
「銹絵漁村夕照図茶碗」は「瀟湘八景」の「漁村夕照」に題材をとってるものだったり。
銹絵が多くて地味ではあるけど、個人的には銹絵は好み。
一番いいと思ったのは「銹絵竹図角皿」。竹の描き方素敵、と思ったら、絵付は光琳だった。作る作品と人物の素行は関係ないしな(こら)。
でもって、乾山の作品でない展示も今回は含まれている。
同時代…というよりその少し年代が上の陶工、ということで出ていたのが野々村仁清。乾山に陶芸を教えているので、師匠ということでいいのかな。
白釉の使い方がとても素敵な作品ずらり。今回の展示品は全て出光美術館所蔵だけれど、素敵な作品を所有していらっしゃるなあ…。
で、他には尾形猪八が。二代目乾山となった、乾山の養子。…ええと、仁清の実子という説もあるそうで…。なんと。作品「銹絵絵替長角皿」も悪くなかったよ。
俵屋宗達「扇面散貼付屏風」も展示されてた。


「第2章 王朝文学の情緒」。
乾山の中期ぐらい、平安時代(王朝文学)を題材にした作品の提示。
まず「色絵定家詠十二ヶ月和歌花鳥図角皿」。十二ヶ月なので十二客。月によってデザインは違うけど、これが…いい…。個人的に凄く好みの花鳥図が描かれている角皿。
藤原定家の歌をモティーフに十二ヶ月の作品を作る、は結構定番だったらしく、狩野探幽「定家詠十二ヶ月花鳥図帖」も展示されていた。探幽の余白の作り方、本当に好み。眼福。
乾山に戻って、「色絵百人一首和歌角皿」は少し図案を単純化して、この辺りから琳派っぽいデザイン風のものが出てくるのかな。
今回展覧会ポスターになってる「銹絵染付金銀白彩松波文蓋物」は、より松を簡略化したデザインだけど、こちらも第2章の展示。
で、同じように、日本の古い時代を書としてデザインした作品が展示。
書・本阿弥光悦、版下絵・俵屋宗達の「花卉摺絵古今集和歌巻」と、伝・本阿弥光悦花月帖(春)」。
…書き手、本当に光悦に弱い…弱すぎる…。この書のデザイン感覚が好き…。後者は「伝」だけど、確かに書体は光悦流。料紙も格好いい。
あと、伝・土佐光信「松図屏風」。こちら、光信として「伝えられてる」だけなのかなあ。いや、光信はやまと絵の作家だけど、この松のデザインっぷりが凄い琳派っぽいんだよねえ。


「第3章 交響をなす琳派の陶画」。
後期の作品。乾山は晩年は京都から江戸に移っててるのだが、後期の作品の方がなんというか、鮮やかだったりする。あと結構デザインチックかな。
個人的に一番好きだったのが「黒楽菊桐文茶碗」。黒地に白で菊と桐の花が描かれていて、とても格好いい。
あとは野々村仁清の作品が数点、仁阿弥道八のユーモラスな「色絵乙御前人形」(こちらは伝・乾山「乙御前図」と対比の意味)、そして本阿弥光悦の作品1つ。
仁清…出光美術館さん、本当に良いのお持ちですよね…。「色絵梅花文四方香炉」、細かく綺麗なんだよねえ…。
仁清は第3章で「特集 重要文化財「色絵芥子文茶壷」をめぐりみる」が組まれていたり。…乾山主体の展覧会じゃなかったでしたっけ(あ)
でもって光悦。「赤楽兎文香合」。
idemitsu-museum.or.jp
これ、実物だとかなり小品なんだけど…色とか絵とかいびつな形とか、めちゃくちゃ好み…。光悦が書き手を惑わせる…(しっかりしろ)数か月後、期待してますからねトーハクさん(ぼそ)


「第4章 継承される陶画の美」。
乾山最晩年の作品と、その後の陶工や琳派
琳派としては江戸琳派尾形光琳・乾山に私淑した酒井抱一の書物がどどんと。でもって抱一の弟子の鈴木其一も。
陶工としては、こちらも仁阿弥道八が出ていた。「銹絵金彩桐一葉形皿」、葉の形をしている陶器がとても格好いい。


乾山主体の展示会なのに、乾山以外もとても楽しい展覧会であった。




で。
出光美術館は、実は主体の展示室と、それ以外の展示室もある。
idemitsu-museum.or.jp
テーマは決まっていて、期間で展示を変える、という感じか。
1つは展示室4のルオー展示。パナソニック留美術館にもあるけれど、日本人の実業家、結構ルオーお好きなんですかね…。以前も一度入ったことがあったと思う。流行病で暫く休止していた。
1つは茶室。こちらはだいたい常に開いていたので拝見している。展示されているものがそれぞれ素敵で、毎回近くで拝見したい…と思う。
もう1つ、今回初めて拝見した展示室5「陶片室」。
東洋主体の陶片が展示されている(貿易の形で西洋の陶片も出てくる)。
ケースに入って展示されているものもあるけれど、各キャビネットの引き出し(全部ガラスケース)を開いて、拝見できるようになっている。
この時は三上コレクションという、三上次男氏が収集した東洋の品々(陶片だけでなく)が展示されていた。三上コレクションも、とても素敵であった。
…が…書き手…陶片でも全然イケるわ…(どんな発言)。陶片の綺麗な地の色(朝鮮青磁とか粉引とか)、垣間見える絵付(ベトナムの陶器とか)、いやもう全然イケます、大好物。
書き手、陶片室に1時間ぐらいいたんじゃないかな…正直、自分でもびっくりしている。




思った以上に時間を費やしてしまって、とても空腹になっての遅い昼ご飯。


出光美術館は有楽町駅近くにあるので、一度伺ってみたかった「荻野屋 弦」(「峠の釜めし」で有名な荻野屋のお店)。
oginoya.tokyo
昼間から日本酒が頂けるのはちょっと嬉しい。そしてまさかの「枡じゃなくて釜」。か、可愛い…。
今度は呑み主体で来たいなあ…。