時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち@東京都美術館

www.tobikan.jp

1年振りの東京都美術館。平日朝イチを予約して。


構成なのだが。
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先日行ったメトロポリタン美術館展と類似している。年代順。まあ、そうなりやすい、というのはあるだろうけど。
そうなると、メトロポリタン美術館展と比較されがちになるかも…と思わなくもない。

とはいえ、導入は異なる。
「プロローグ-スコットランド国立美術館」。
スコットランド国立美術館エディンバラにあるので、エディンバラ城の風景、スコットランド国立美術館が建てられている丘陵地帯の絵、スコットランド国立美術館の内部の絵など。
4点ぐらい展示されていたのだけど、これらがペンと水彩で描かれているのがポイントかもしれない。
やはりイギリス絵画(とスコットランドもまとめていいのか不明だけど)は水彩が主になるのかな、と思いつつ。

「1 ルネサンス」。
ルネサンス絵画から始まるのだけれど、メトロポリタン美術館展でも書いたけれど、全く不勉強で…。
イギリス独自なものもこの時代だと出てこない。

「2.バロック」。
17世紀。
ここもイギリス独自なものはないのだけど、今回の目玉であるベラスケス「卵を料理する老婆」はここに。ベラスケス、19歳でこんな写実的な絵描いてるのよね…。
あと、レンブラント「ベッドの中の女性」の凄い緊迫感とか、ルーベンス「頭部習作(聖アンプロジウス)」の肌の赤みとか髪や髭の毛の具合とか、この辺りは見どころがあっていいなあ。
個人的な好みは、グイド・レーニモーセとファラオの冠」の光の当たり方とか、フランス・ファン・ミーリス「リュートを弾く女性」が小品だけど細かく描写されていていいなあ、とか。

「3.グランド・ツアーの時代」。
18世紀。
フランスだとロココ全盛期。ジャン=アントワーヌ・ヴァトー「立っている二人の貴族と座る貴婦人の習作」、フランソワ・ブーシェ「田園の情景」3点モノとかは代表的なのかな。あと、ジャン=バティスト・グルーズ「教本を開いた少年」の少年が可愛かった(そこ?)。
それからやはり出てくる、イタリアのヴェドゥータ(都市景観画)。フランチェスコ・グアルディ「ヴェネツィアサンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂」「ヴェネツィア、サン・ジョルジョ・マッジョーレ聖堂」の2点、どちらも好き。
で、イギリスはここで独自、肖像画が発達する。
代表的なのはトマス・ゲインズバラ。個人的には「歩く少女の習作」の少女が非常に可愛かった。
あと、ゲインズバラは風景画も良いよ。「遠景に村の見える風景」、良かった。牛や犬が可愛いし。
あ、展覧会の目玉の一つ、ジョシュア・レノルズ「ヴォルドグレイヴ家の貴婦人たち」も肖像画の流れ。個人的にはあまり好みではないのだけど。

「4.19世紀の開拓者たち」。
フランスは、バルビゾン派からの印象派、あとナビ派(というかヴュイヤール)もちらっと。
ええと…コロー「廃墟」「ラ・フォルテ=スー=ジュアール近郊の思い出(朝)」、ドービニー「モンティニー=シェル=ロワンの眺め」、シスレー「シュレーヌのセーヌ川」と並べるのは、書き手へのサービスでしょうか(え)。いや眼福…。
印象派だとモリゾ「庭にいる女性と子供」、ルノワール「子どもに乳を飲ませる女性」も雰囲気が良い。
あ、ブーダン「トゥルーヴィルの浜辺」は小品すぎて、「空の王者」らしい空が殆ど描かれてなかったのは残念…。
イギリスのこの頃は、風景画と肖像画が引き続き主体。
風景画家としてはターナーとコンスタブル。
ターナーは「トンブリッジ、ソマー・ヒル」、コンスタブルは「デダムの谷」。どちらも良い。ホイッスラーもあったけど、今回エッチング作品だけだったんだよね。
肖像画としてはジョン・エヴァレット・ミレイ「「古来比類なき甘美な瞳」」。後期の肖像画を描いてた頃の作品なのだけど、まあとても美しい…(そういえばラファエル前派の作品は出てなかったなあ、イギリスなのにね)。
で、スコットランドから肖像画家が出ている。フランシス・グラント。「アン・エミリー・ソフィア・グラント(“デイジー”・グラント)、ウィリアム・マーカム夫人」。これはとても印象に残る、結婚直前の娘を描いた肖像画
もう少しこういう、スコットランド特有の画家が出ているといいのにな、と思ったりしつつ。

で、「エピローグ」として。
フレデリックエドウィン・チャーチ「アメリカ側から見たナイアガラの滝」が。
チャーチ自体はアメリカの画家だけど、この絵を購入した実業家が元々スコットランド出身で、スコットランド国立美術館に寄付してくれたのだそうで。
こちらは非常に雄大で、素敵な絵だ。
一番最後に、こちらを基にしたフォトセッションも設けられていた。

うん…やっぱり、メトロポリタン美術館展と比較されちゃうんだろうなあ…とは。あちらが延期したから同時期になってしまった、という不運はあるけど。
もう少しイギリスの絵画にスポットを当てても良かったかもね。


さて、展覧会の特設ショップ、なのだが。


ええ、紛れやがりました。…うっかり買わされたわ、あれ…。くやしい。
コウペンちゃんとのコラボもあるけど、そちらは普通に可愛いタイプだった。


で、ちょっと早めのお昼にした。


1階のカフェ・アートにて、展覧会とのコラボメニューの紅茶プリンと、通常メニューのゴロゴロかぼちゃサンド。
かぼちゃサンドはもっと甘いかと思ってたら、控えめで、かぼちゃの野菜っぽい青臭さがなくて予想以上に美味しかった。
紅茶プリンは紅茶が凄く濃くてこれも美味しい。
上野精養軒系列だからか味も本当にちゃんとしていて、値段も(少なくとも他よりは)お手頃だし、お気に入りだったりする。


続く。

【特別展】生誕110周年 奥田元宋と日展の巨匠 ―福田平八郎から東山魁夷へ―@山種美術館

www.yamatane-museum.jp

推しに会いに来ました(え)
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そういえばこの時は、東山魁夷とダブル主役だったんだっけ。


第1章はそのまま「奥田元宋」。
第1室入口最初の絵は「湖畔春耀」だった。春だねえ…。
そしてそのすぐ横には知らない絵。
元宋の師匠・児玉希望「モンブラン」。水墨で(山の)モンブランを描いている。これが非常に格好良い…。水墨だけど写真のような写実というか。
「漁村」はいかにも日本の水墨画(これも素敵だけど)っぽいけど。こういう方なのね(児玉希望は一時期水墨を多く描いた時期があったそうな)。
さて、元宋自体の作品は…過去にすべて拝見してはいるのだけれど、何度見ても…いいよね…。
今回は、写真OKのものも(シェア希望ということでInstagramに載せた)

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「山澗雨趣」。「赤の元宋」だけど、色彩本当に綺麗だよ…。
ちなみに「奥入瀬」は春も秋も展示されているけれど、
サイズが大きいので第2章に置かれてしまっていたりして。
秋は目の前に椅子が置かれていたので心置きなく楽しんだのだけど、
春は置くスペースがなかったようで。まあ、仕方ない。

第2章「文展から日展へ」。
旧「文展」=「文部省美術展覧会」、現在の「日展」=「日本美術展覧会」の話。というか途中「帝展」(帝国美術院美術展覧会)にもなっているよね…。まあいいや。
まず小林古径「闘草」。こちら、初めて拝見した気がする。お子様二人で草抜いてきて長さを競っている、という絵なんだけど、とにかくお子様の表情が愛らしく微笑ましい。片方は着物片脱ぎになっちゃってて。
松岡映丘「山科の宿 雨やどり・おとづれのうち「おとづれ」」は、やはり女性の着物の鮮やかさよ…。
福田平八郎「牡丹」も初めてかな。牡丹の花弁がとても薄くて、景色が透けて見える風情が良い…。
初めてではないのは山口華楊「生」。この淡い光を帯びた子牛、大好き。
髙山辰雄「坐す人」は…もうこれは抽象画だなあ、と唸ってしまう。
で、最後の方にあった2つの絵に驚く。坪内滄明「晨」と石川響「原野」。初めて拝見した。
前者は険しい海岸。とてもクリアな崖に、海の青さ。
後者は…なんというか、色合いが印象派?もしくは日本の明治から昭和ぐらいの油彩にありそうな感じの色で。
こんな日本画もあるんだ…。とても興味深かった。

第3章は照明を落とした第2室、「東山魁夷・杉山寧・髙山辰雄」。
元宋と同時代に日展で活躍した三巨匠、ということで。
魁夷は以前も拝見している(でもとても美しい)「緑潤う」「秋彩」。
杉山寧「霽」も初めてではないような。夕焼けのような空の色に、鳥が格好良く飛んでいて、虹もかかっていて。凛々しく格好いい作品。
髙山辰雄は以前も拝見したことあるかな、「中秋」の銀の月、黒い風景が金地に。格好いい…。照明を落とした第2室にはとても映える。

奥田元宋主体の展覧会なのだけれど、それ以外の作品も、何度も拝見したものも、初めて拝見したものも、とても印象的で興味深い展覧会だった。良かった…。


最後に、ミュージアムカフェに今回もこんにちは。


元宋「松島暮色」モティーフ「雪けしき」。甘くて美味しい…。

泉屋博古館東京リニューアルオープン記念展Ⅰ 日本画トライアングル 画家たちの大阪・京都・東京@泉屋博古館東京

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後期展示にこんにちは。
前回の展示会が異様に早く終わってしまい、開館時間前に着いてしまった(遠い目)。


「面の東京」。
後期は橋本雅邦「出山釈迦」や下村観山 「秋暮帰牧図」など、派手ではないけれど美しいな…と思う絵が2つ。
それ以上に印象に残ったのは、小林古径「人形」。
フランス人形をモティーフに描いているのだけど(モティーフの人形も飾られている)、黒い地の布に、黒いレースで飾ってあるドレスを纏っているのだけれど、わざと地の布を薄い黒にして、レースの柄をちゃんと見えるように描いているんだよね。これ、苦心して表現したんじゃないかな…。


「東 meets 西」。
後期は、前期は「点の大阪」にあった深田直城「春秋花鳥之図」をこちらの部屋に持ってきて、更に新しい絵を。
京都画壇から山口玲熙「冠鶴」。玲熙は山口華楊の兄。冠鶴は外国からのカンムリツルなのだけれど、羽の色が複雑で綺麗。
で、前期は別の絵が出ていた木島櫻谷「葡萄栗鼠」。櫻谷は個人的に好きな画家ではあるけれど、この栗鼠の柔らかそうな毛並みに、少ない線で描かれた尻尾、実を齧ってるこの表情…。良い…。
更にその隣の東京画壇・山口蓬春「如月」。黒で描く爪月と梅の木と花。とても格好いい。
「葡萄栗鼠」と「如月」が並んでいるのは…これは眼福…。


「線の京都」。
前期は櫻谷の屏風だったけれど、後期は望月玉溪「白秏孔雀図」。こちら、右隻の雄の孔雀の羽も見事な書き込みがされているのだけど、背景の木や花や小鳥も、とても綺麗。
京都はこちらしか変更はないんだけど、言及はされてないけど、富岡鉄斎「利市三倍図巻」と「京名所画帖」は展示部分や頁を変えてる。
「利市三倍図巻」はよりゆるくなった。牛に人が乗っている図があるんだけど、その牛がゆるくて可愛い。
「京名所画帖」は前期は森川曾文と鈴木松年だったけれど、後期は今尾景年と久保田米僊。
今尾景年の山の絵が非常に綺麗だった。
久保田米僊は、祭を川床から(川床なので、多分祇園祭じゃないかなあ)眺めている女性、という構図。これもなんとも風情が出ていて良い。
そしてもう一度、原田西湖「乾坤再明図」を拝見。ウズメちゃん可愛い(天鈿女命になんて呼び方するの)。


「点の大阪」。
いくつか変わっていたのだけど、個人的には…うーん。
前期は「東 meets 西」にあった上島鳳山「十二か月美人」のうち4枚を、後期はこちらに展示していた。


「住友春翠と日本画」。
こちらは、前期展示されていた尾竹国観に代わって、尾竹竹坡「蜀三顧図」が展示。要は三男から次男にバトンタッチ。
「蜀三顧図」って「三顧の礼」か。
双幅になっているのだけど、左幅の、孔明の隠棲していた家の絵が非常に素敵。細い線で、雪が積もって、慎ましく、少し愛らしいような。
遠目から見ても、なんとなく温かみがあるような佇まいなんだよね。


後期展示の絵だけでも十分楽しめたよ…。


さて、展示を拝見した後は。


HARIO Cafe。今回はランチ利用(殆ど見えてないけど、バジルチキンホットサンド)。美味しかった。

席に小さな花瓶(というかビーカー…?)で花が飾ってあったのが可愛かった。

分かりづらいかもだけど、コーヒーカップも少し曲線がついてるデザインなんだよね。
こちら、店頭で販売もしていた。


続く。

没後50年 鏑木清方展@東京国立近代美術館

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展示替えを拝見しに。
朝イチの時間で入場したけど、前回よりは入場者が少し多かったような。

第1章「生活をえがく」。
大きな屏風の作品だと「若き人々」「露の干ぬ間」あたり。
「若き人々」は、川を下る舟で逢瀬を楽しんでいる男女に、子供が囃し立てているという図で。女性の方が恥ずかしそうに扇で顔を覆っているのが可愛い。
「露の干ぬ間」は早朝、露で輝いている草花や朝顔の咲く庭で、恐らく寝ている間に乱れた浴衣姿で物憂げに立っている女性、という。
いずれも小さな物語的な生活が見える作品でいいよ。
ちなみに「露の干ぬ間」と、以前も今回も違った絵を出している「金沢三題」のシリーズは、名都美術館所蔵。
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懐かしいなあ…名都美術館…。
「金沢三題」のシリーズは風景画になるけど、それぞれ趣も変わっていたりで素敵。
あ、そうそう、福富太郎コレクションの「社頭春宵」は再会になる。
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第2章「物語をえがく」。
こちらの「京橋金沢亭」と、特集2「歌舞伎」にある「薄雪」も昨年の展覧会からの再会。「薄雪」はなんとも雰囲気もあって美しい絵なので、再会できて嬉しい。
で、同じく福富太郎コレクションで昨年の展覧会では展示されていなかったものが、「道成寺 鷺娘」。屏風もので、左隻が「鷺娘」、右隻が「京鹿子娘道成寺」。
姿も美しいのだけれど、どちらも表情の妖しさがなんともいえないんだよね…。


第3章「小さくえがく」。
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こちらで拝見した「にごりえ」がここに。ちゃんと話を拝見して、内容を頭に入れてからちゃんと拝見したいなあ…。
前回の「雨月物語」は頭に内容があったから、より面白かったもの。


前回も拝見したうちで特に好きな絵も再度楽しんで鑑賞し、満足。
続く。

特別展 燕子花図屏風の茶会 昭和12年5月の取り合わせ@根津美術館

www.nezu-muse.or.jp

根津美術館がこの時期、尾形光琳「燕子花図屏風」を出していたことは存じ上げていた。なかなか伺う日がなく、この日にようやく。
実はこの日に設定した後にスケジュールが色々変わって、この日の鑑賞は若干急ぎ足になっております…。おおお…。


展示室1・2が「特別展 燕子花図屏風の茶会 昭和12年5月の取り合わせ」。
こちら、根津美術館の初代館長であり実業家・根津嘉一郎が、昭和12年5月に開いた茶会で使用した品々を展示する、という企画。
書き手は茶会に全く詳しくないので初めて知ったのだが、茶会の流れ。
1.「待合席」で客が提供された湯を頂きながら身支度を整え(ウエルカムドリンク、と頂いた資料に書かれていた。確かに…)る
2.茶席に入り、「本席」にて、懐石料理と酒が振舞われる(ここまでで2時間ぐらい)
3.「中立」で一旦茶室を出て休憩
4.「濃茶」でメインイベントで所謂お茶の回し飲みを実施
5.「薄茶席」で薄茶を頂きながら広い空間でくつろぐ
6.「浅酌席」で大書院(書院造りの大広間ですな)で酒宴
7.「番茶席」で番茶や果物や、道具の付属品(箱とか書状とか)を愛でる
茶会よりも酒宴の方が絶対長いでしょ、むしろ酒宴から酒を一度醒ますためにやってるでしょ…という…。
書き手は無理だけど(さっと飲んでさっと帰りたいひとなので)、お好きな方は好きそう。

で、こちらを根津嘉一郎が主催するとどうなるか、というと。
まず、「待合席」で湯が入った茶碗を出される盆が柴田是真「蝶銹絵瓢盆」。…盆だよ…?茶碗載せたら絵が見えないよ…?(あ)
これは大きな瓢箪を輪切りにして盆にしたそうで、良い色の漆を塗られた盆の面には、目立たないレベルで蝶が描かれている。
茶碗がメインだからか、大人しい作りにしているのかなあ。よく見ると素敵な蝶なのだが。
メインの茶碗は所蔵にそれらしきものが見当たらなかったようで、参考作品が出ていたけれど。

でもって「本席」で懐石。
どの器に何の料理を盛ったか、まで書かれている。そんな細かい記録残してるんだ…。
「阿蘭陀藍絵花鳥文四方向付」という、日本がオランダで作らせた陶器があって(17世紀ということは、鎖国中の貿易かなあ)1つ絵が好みのものがあったり、「金襴手酒次」(明時代の景徳鎮とのこと)がとても変わった形をしていたり。
これ、東南アジアのケンディという水差しの形をしているそうで。こういう形。
bunka.nii.ac.jp
で、本席ではもう一つ、「炭手前」という、風炉(茶席で湯を沸かす器)に炭を継いで、炭継ぐこと自体と湯が沸く音を鑑賞するイベントがある。
で、炭の匂いを消すために香を焚くための香合や、白くなった炭を入れておく灰器が展示されていた。
香合は「燕子花開扇蒔絵螺鈿香合」。ああ、「燕子花図屏風」を後で出すために合わせてる…。
「雲華灰器」もモダンで素敵。

「中立」は、合図を出す銅鑼が展示。銅鑼の撥の彫漆が凄い…。

で、メインイベントの「濃茶」。
「本席」と「濃茶」は同じ茶室で実施するんだけど、「中立」で離席している間に掛け軸を花入(小堀遠州「一重切竹花入 銘 藤波」)に変えていたり。
抹茶は「膳所耳付茶入 銘 大江」の、茶入って要は棗なんだけど、漆黒じゃなくて錆びた茶みたいな色をしていて、これがいいんだよね…。
出される茶の茶碗は「鼠志野茶碗 銘 山の端」。志野焼好きにはいいなあ…。
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個人的には「南蛮〆切建水」(建水は余分な湯を捨てる器)が武骨で格好良くて好きだなあ…。

次は「薄茶席」なのだけど、こちらは展示室2に展示してあるので、その前に「浅酌席」が来る。
要は酒宴なんだけど、ここで出てくる「燕子花図屏風」。
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それだけじゃなく、円山応挙「藤花図屏風」と、作者は不明の「吉野図屏風」。
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「吉野図屏風」は「吉野龍田図」の右隻(桜)。…こんな凄い屏風3つ立てて酒宴…しかもメインイベント終わった後の酒宴…。
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何故かこの時に存じ上げた「松岡氏が根津氏に震えてた」のを思い出したりした(遠い目)根津氏の心尽くし&お大臣なところが…。
この屏風3つの展示があったので、大きい展示室1での展示にしたんだろうな。個人的には「藤花図屏風」がドストライク。
ここでは「鉄仙葡萄漆絵堤重」という、料理を出すお重が出ていたのだけど、これも非常に細かくて豪華。

展示室2へ。
1つ戻って「薄茶席」。
尾形乾山「銹絵茄子文水指」がしれっと使われている…。茄子の絵が可愛いし…。
茶碗は「雨漏茶碗 銘 蓑虫」。経年で出た染みを「雨漏」とする日本文化はいいよね…。

最後の「番茶席」。
呂敬甫「瓜虫図」。
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こちらのリンクだと分からないかもだけど、虫がとても細かく綺麗に描かれている。
青磁象嵌花文香炉 銘 老女」も、すごくすっきりした形の香炉で素敵。
そしてここには、この日の茶会で出されていた茶器の箱がずらりと(鑑賞用だものね)。
「南蛮〆切建水」の箱の蓋が漆の濃淡で二色になっていたり、「銹絵茄子文水指」の銘のラベル(と言っていいのか)の紙が凄く綺麗な波模様入っているものだったり、「青磁象嵌花文香炉 銘 老女」の箱の蓋の木目が綺麗に出ていたり。

で、展示の最後は番外編で「茶会記」。
この日の茶会は記事になったり、(やっぱり凄かったみたいで)記録を残していたりする。
だからここまで細かいことが判明しているんだな…。

…なんか、凄いものを拝見した気がする。脱帽。


でもって、テーマ展示。
展示室5は日本画、「画賛の楽しみ色々」。
画賛って正直得意じゃないんだけど…も。
なんだか凄いゆるくて可愛い、禅画みたいな水墨画があるぞ、と思ったら啓釈「一葉観音図」というもの。
一葉観音という、花びらに載ってる小さな観音様がおられるそうな。三十三観音の1つ(このブログだと白衣観音もそうだね)。これはなかなか個人的にお気に入りの一品。
でも一葉観音…なんか…何か違うものが頭をよぎるのを必死に振り払ってるけど。なんかマッチョなギリシャ衣装着てそうなのが(やめなさい)
閑話休題
他にも、伝・周文「江天遠意図」が素敵だなあとか。
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等春(雪舟の弟子、長谷川等伯の、等伯の自称「師」(正確には師匠の師匠っぽいけど)なのだそうで)「杜子美図」の木が素敵な描き方だったり、ロバが可愛かったり。
更に、尾形乾山が作成して自ら賛を書いている「銹絵山水図角皿」、尾形乾山が作陶・光琳が絵・乾山が賛という兄弟合作もいいところの「銹絵梅図角皿」(これは光琳の梅の絵が素敵)、更に自分で素敵な絵と素敵な文字で賛を描いた乾山「定家詠十二ヶ月和歌花鳥図(九月) 」…いやちょっとこれは豪華すぎません…?
で、板谷広長「伊勢物語図」は美しいやまと絵で、自ら記載した賛は、短冊の絵を描いてそこに書かれている素敵なもの。
更に冷泉為恭「時鳥図」は、自らの賛で「ほととぎす 鳴きつる方を」とのみ、美しい字で書かれていて。さっと書かれた貴族の男性が、上を見上げている絵で。
これ、「千載集」(百人一首にもある)の「ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば ただありあけの 月ぞ残れる」の和歌で、要は「眺むれば」以降は絵で表しているという…。
いやあ、展示室5、想像以上に面白い上に豪華だった…。


展示室6は茶道具、「立夏の茶事 ─初風炉─」。
風炉は5月から11月まで使うものらしい(冬は「炉」になる)。
で、立夏に初めて使うから「初風炉」。
大津絵「藤娘」がかかっていたり、「独楽煙草入」のボーダー柄がなかなかポップで良かったり、「絵御本草文火入」(煙草の火種を入れておく器)の草文が素敵だったり、「肩衝茶入 銘 躍駒」のチョコレート色が良かったり、「信楽茶碗」が鉄釉と灰釉を使っていて非常に格好良い(箱の蓋まで格好良い)一品だったり(尾形光琳・乾山の父、尾形宗謙の作ではないかと言われているらしい)。


さて。
最後に時間と戦いながらも、庭園へ。


この時期に「燕子花図屏風」が展示されるということは、庭園で燕子花が丁度見頃で。
本当に丁度いい時期だったかもしれない。
→追記でおまけ。

燕子花が咲いている池の岩にあった、蛙の置物。可愛い。

NEZU CAFEにも行けないような状況だったけれど、十分なぐらい堪能したよ…。

ありがたいのに駆け足で


本日配信リアルタイムではほぼ聞けない状態だったのだけど*1、少しの時間アーカイブを残してくださってて、ありがたく拝見できましたよ…
「前哨戦」なセトリ、なのかな、と。本戦は…ちょっとスケジュールが見えない…(遠い目)

*1:ちょっとだけログオンしてスパチャをちょこっと

シダネルとマルタン展@SOMPO美術館

www.sompo-museum.org

www.instagram.com
本当は別趣味予定だったのだけど、悪天候でそちらができない、ということで、急遽、でも気になっていた展覧会にこんにちは。


SOMPO美術館から紹介動画が出ている。

www.youtube.com
なお、SOMPO美術館はウクライナ人道支援をしていて、こちらの動画を拝見すると、回数に応じてSOMPO美術館が寄付してくれる仕組み。
www.sompo-museum.org
まあ、それも含めてるけど、参考になるので。


シダネルとマルタン。どちらもこの展覧会まで知らなかった。
「最後の印象派」と評されているけれど、確かに印象派の系譜っぽい。
紹介の通り、シダネルは非常に落ち着いている絵が多く、マルタンはとても明るく、点描技法。
Instagramに載せたのは入り口のフォトスポットだけれど、元の絵はマルタン「腰かける少女」。


5階からスタート。
展覧会最初には、マルタン「野原を行く少女」とシダネル「ベルク、孤児たちの散策」が出ていて、名刺代わりの作品展示、かな。

第1章「エタプルのアンリ・ル・シダネル」。
エタプルはフランスの港町で、シダネルは若い頃、エタプルに滞在していたそうで、その頃の絵。
ただ、シダネルって年齢でそこまで画風が変化しないので、ひたすら落ち着いた絵が続く。個人的には嫌いじゃないなあ…。

第2章「象徴主義」。
マルタンやシダネルは時代的に象徴主義に分類されることもある、みたい。
ただ、シダネルはどうだろうねえ…あくまでも影響を受けたレベルなのかなって。
マルタンの方が顕著かも。少女を若干現実と離れたところに描く感じか。

第3章「習作の旅」。
旅先で描いた絵。
旅先のせいか、シダネルの絵が少し明るく見えたような…。
でも、その中で落ち着いた、というかちょっと幻想っぽい「ビュイクール、月明かりのなかの教会」が一番好きだったなあ。

4階へ降りて。
第4章「アンリ・マルタンの大装飾画のための習作」。
マルタンは公共施設の壁画も手がけている。「普通の平民」が、労働をしていたり生活をしていたりする壁画。個人的には嫌いじゃない。
で、ここは写真撮影が2点可能。「ガブリエルと無花果の木」と「二番草」。

面白いのは、写真撮影OKの箇所の展示室の装飾、壁画のレリーフのようになってるんだよね。
なかなか面白いことをしていらっしゃる。

第5章「ジェルブロワのアンリ・ル・シダネル」。
ジェルブロワはフランスの北部の村で、シダネルが暮らしていた町。
ジェルブロワは現在「バラの村」として有名な、景観の良い村として有名なのだけど、シダネルが庭で薔薇を育て始めたのが村の中に広まって、そうなったという。シダネルにも自慢の庭だったようで、マルタンが訪問した時に庭を案内する映像が残ってたりするんだよね。
この章の絵はとても素敵なんだけれど、そのうち「食卓」シリーズ、という一連の作品がある。
食事前と思しき料理や飲み物が置かれている食卓、ただし人は不在、という絵。でも決して冷えた感じではなく、本当に食事前の、これから人が食卓につく直前の一コマなんだろうな。
このうち「ジェルブロワ、テラスの食卓」は写真撮影OK。

展示室の額装的な装飾、周囲はシダネルの薔薇の庭イメージなんだろうなあ。

第6章「ラバスティド・デュ・ヴェールのアンリ・マルタン」。
一方、マルタンはフランス南部の村・ラバスティド・デュ・ヴェールに在住。こちらも池を湛えた庭を美しく整えて描いている。
マルタンは色彩が明るいのだけど、それもあいまってとても綺麗な作品が多い。
シダネルが落ち着いてるから、そこからマルタンの絵を拝見すると、ぱっと暖かくなったような感じがしてしまう。

3階へ降りて。
第7章「ヴェルサイユのアンリ・ル・シダネル」。
シダネルはヴェルサイユにも住んでた時期があったそうで(息子が学校に通うために、学校の時期だけ一緒に住んでいたそうな)。で、その間に、ヴェルサイユでも作品を描いていた。
画風は変わらないけど、「ヴェルサイユ、月夜」の月の光がなんとも幻想的で良い…。

第8章「コリウールとサン・シル・ラポピーのアンリ・マルタン」。
一方、マルタンはコリウールとサン・シル・ラポピーにも家を所有して、制作。
コリウールは港、サン・シル・ラポピーは岸壁のところにある村。
それぞれ違った環境でそれぞれの絵を描いている。

第9章「家族と友人の肖像」。
あまり肖像画とは縁がないお二人だけれど、マルタンは数点肖像画が残っている。
自画像だったり、御自身の夫人だったり、シダネル夫妻だったり。

最後に、「シダネルとマルタンによる版画・素描画」。
版画はリトグラフマルタン「沈黙」、今までと異なって暗くてびっくりする。リトグラフのせいなのか、題材のせいなのか。
素描は素描でまたいい。シダネルは元々落ち着いた画風だから、素描でも完成した作品として違和感はあまりないような。
シダネルは素描だと肖像画を描いている(だから第9章の後にしたのかも)。夫人と息子と。
で、最後はシダネルの油彩が3点。デッサンじゃなく?と思って確認したら、油彩とパステルを使っている絵だった。
画材が違っても持ち味がぶれないなあ、シダネル。


絵にあまり触れてないのだけど、どれもこれも素敵で、どれが素敵とか言いづらい、要は非常に好みの展覧会だった。
基本的にはシダネルが好きなのだけど、でもマルタンの明るさも(特にシダネルの落ち着いた画風の後で見ると、より輝いて見える)捨てがたい、となってしまう。方向性は近いけれど、ちょっと味の違う食べ物を無限に食べてる感じ。
想像していたより好みストライクな展覧会だった(ので、手元にポストカードが沢山)。


この日はこちらだけ(ちょっとPCの調子が悪かったので新調したりしていた)。