時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

シダネルとマルタン展@SOMPO美術館

www.sompo-museum.org

www.instagram.com
本当は別趣味予定だったのだけど、悪天候でそちらができない、ということで、急遽、でも気になっていた展覧会にこんにちは。


SOMPO美術館から紹介動画が出ている。

www.youtube.com
なお、SOMPO美術館はウクライナ人道支援をしていて、こちらの動画を拝見すると、回数に応じてSOMPO美術館が寄付してくれる仕組み。
www.sompo-museum.org
まあ、それも含めてるけど、参考になるので。


シダネルとマルタン。どちらもこの展覧会まで知らなかった。
「最後の印象派」と評されているけれど、確かに印象派の系譜っぽい。
紹介の通り、シダネルは非常に落ち着いている絵が多く、マルタンはとても明るく、点描技法。
Instagramに載せたのは入り口のフォトスポットだけれど、元の絵はマルタン「腰かける少女」。


5階からスタート。
展覧会最初には、マルタン「野原を行く少女」とシダネル「ベルク、孤児たちの散策」が出ていて、名刺代わりの作品展示、かな。

第1章「エタプルのアンリ・ル・シダネル」。
エタプルはフランスの港町で、シダネルは若い頃、エタプルに滞在していたそうで、その頃の絵。
ただ、シダネルって年齢でそこまで画風が変化しないので、ひたすら落ち着いた絵が続く。個人的には嫌いじゃないなあ…。

第2章「象徴主義」。
マルタンやシダネルは時代的に象徴主義に分類されることもある、みたい。
ただ、シダネルはどうだろうねえ…あくまでも影響を受けたレベルなのかなって。
マルタンの方が顕著かも。少女を若干現実と離れたところに描く感じか。

第3章「習作の旅」。
旅先で描いた絵。
旅先のせいか、シダネルの絵が少し明るく見えたような…。
でも、その中で落ち着いた、というかちょっと幻想っぽい「ビュイクール、月明かりのなかの教会」が一番好きだったなあ。

4階へ降りて。
第4章「アンリ・マルタンの大装飾画のための習作」。
マルタンは公共施設の壁画も手がけている。「普通の平民」が、労働をしていたり生活をしていたりする壁画。個人的には嫌いじゃない。
で、ここは写真撮影が2点可能。「ガブリエルと無花果の木」と「二番草」。

面白いのは、写真撮影OKの箇所の展示室の装飾、壁画のレリーフのようになってるんだよね。
なかなか面白いことをしていらっしゃる。

第5章「ジェルブロワのアンリ・ル・シダネル」。
ジェルブロワはフランスの北部の村で、シダネルが暮らしていた町。
ジェルブロワは現在「バラの村」として有名な、景観の良い村として有名なのだけど、シダネルが庭で薔薇を育て始めたのが村の中に広まって、そうなったという。シダネルにも自慢の庭だったようで、マルタンが訪問した時に庭を案内する映像が残ってたりするんだよね。
この章の絵はとても素敵なんだけれど、そのうち「食卓」シリーズ、という一連の作品がある。
食事前と思しき料理や飲み物が置かれている食卓、ただし人は不在、という絵。でも決して冷えた感じではなく、本当に食事前の、これから人が食卓につく直前の一コマなんだろうな。
このうち「ジェルブロワ、テラスの食卓」は写真撮影OK。

展示室の額装的な装飾、周囲はシダネルの薔薇の庭イメージなんだろうなあ。

第6章「ラバスティド・デュ・ヴェールのアンリ・マルタン」。
一方、マルタンはフランス南部の村・ラバスティド・デュ・ヴェールに在住。こちらも池を湛えた庭を美しく整えて描いている。
マルタンは色彩が明るいのだけど、それもあいまってとても綺麗な作品が多い。
シダネルが落ち着いてるから、そこからマルタンの絵を拝見すると、ぱっと暖かくなったような感じがしてしまう。

3階へ降りて。
第7章「ヴェルサイユのアンリ・ル・シダネル」。
シダネルはヴェルサイユにも住んでた時期があったそうで(息子が学校に通うために、学校の時期だけ一緒に住んでいたそうな)。で、その間に、ヴェルサイユでも作品を描いていた。
画風は変わらないけど、「ヴェルサイユ、月夜」の月の光がなんとも幻想的で良い…。

第8章「コリウールとサン・シル・ラポピーのアンリ・マルタン」。
一方、マルタンはコリウールとサン・シル・ラポピーにも家を所有して、制作。
コリウールは港、サン・シル・ラポピーは岸壁のところにある村。
それぞれ違った環境でそれぞれの絵を描いている。

第9章「家族と友人の肖像」。
あまり肖像画とは縁がないお二人だけれど、マルタンは数点肖像画が残っている。
自画像だったり、御自身の夫人だったり、シダネル夫妻だったり。

最後に、「シダネルとマルタンによる版画・素描画」。
版画はリトグラフマルタン「沈黙」、今までと異なって暗くてびっくりする。リトグラフのせいなのか、題材のせいなのか。
素描は素描でまたいい。シダネルは元々落ち着いた画風だから、素描でも完成した作品として違和感はあまりないような。
シダネルは素描だと肖像画を描いている(だから第9章の後にしたのかも)。夫人と息子と。
で、最後はシダネルの油彩が3点。デッサンじゃなく?と思って確認したら、油彩とパステルを使っている絵だった。
画材が違っても持ち味がぶれないなあ、シダネル。


絵にあまり触れてないのだけど、どれもこれも素敵で、どれが素敵とか言いづらい、要は非常に好みの展覧会だった。
基本的にはシダネルが好きなのだけど、でもマルタンの明るさも(特にシダネルの落ち着いた画風の後で見ると、より輝いて見える)捨てがたい、となってしまう。方向性は近いけれど、ちょっと味の違う食べ物を無限に食べてる感じ。
想像していたより好みストライクな展覧会だった(ので、手元にポストカードが沢山)。


この日はこちらだけ(ちょっとPCの調子が悪かったので新調したりしていた)。