時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

MOMATコレクション@東京国立近代美術館

とりあえず10時に事前予約して、たどり着いたのが10時40分(東京国立近代美術館は1時間単位の予約)ぐらいだったんだが、あまりにも入り口に人気がなくて少々怯みつつ。
まあ、普通は再来週から始まる特別展とセットなのだろうけど。

というわけでMOMATコレクション(常設展)。気になったところを。


1室「ハイライト」。
山元春挙「雪松図」がいきなり入り口から向かって右手のガラスケースにどどどどどん。なんと六曲二双の大作。
所謂「雪松図」。有名なのは円山応挙だよね。
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そういう絵なので雪と松のみ、書き手個人的なツボでもある春挙の「山」とか「水」とかではないのだが、幹の書き方とか、遠近感(特に一番右の松の遠さを朦朧体で表しているところ)とか、背景に薄く墨を塗っていて、横一本だけ敢えて塗らずにして光を表してる風だったりするのが綺麗。
もう1つ印象に残ったのは坂本繁二郎「水より上る馬」。幻想的ではあるんだけれど、淡い色調がとても綺麗で。


2室「#MuseumBouquet」。
昨今の状況で、美術館で花の絵をSNSにアップする、そんなムーブメントが起きていたそうで。
というわけで、いつもは1室で見かけるセザンヌ「大きな花束」を2室に飾って、花の絵特集。
日本画では土田麦僊「菊の写生」が何枚も。麦僊の花の絵は本当に素敵。前も書いたけど。
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村上華岳「椿」も存在感があっていい。
洋画だと向井潤吉「ダリア」がとても素敵。向井潤吉はそこまでお目にはかかってない、と思ったけれど、そうか、世田谷美術館の分館・向井潤吉アトリエ館で名前が引っかかってたんだ…。


3室「美術と生命」。大正時代の「生命」が表れる絵を集めた感じなのかな。「この部屋に並ぶ作品の作者たちは皆、意外に思われるほど早くに亡くなっています」という東京国立近代美術館の見どころ解説が切ない。
で、この部屋って毎回洋画が多いんだけど、珍しく日本画速水御舟「白葡萄と茶碗」が。透明感のある葡萄も、つるりとした茶碗の陶器の質感も、テーブルクロスの皺の具合も、素敵で。
あと、岸田劉生がなんかいいんだよねえ。今回は「自画像」と「壺の上に林檎が載って在る」。あ、そうそう、1室に「道路と土手と塀」も飾ってあったっけ。


4室は珍しく版画ではなく「明るい家」という特集。疾病の予防策で「明るい家」が奨励されて、それが絵に反映されている、というのは面白い。
牧野虎雄「明るい部屋」は色遣いがボナールっぽくて、大久保作次郎「花苑の戯れ」は印象派みたいな描き方。


5室「美術と国家|連邦美術計画」。
1930年代の世界恐慌ニューディール政策で芸術家支援計画「フェデラル・ワン」が出て、そのうちの美術部門が「連邦美術計画」と言われていたそうで、それに関わる絵。当時アメリカ在住だった日本人も対象になったそうで。
川村吾蔵の牛の木の彫像(牝牛も牡牛もあったが、写真は牝牛)が素敵。


6室はいつもの通りの戦争関連。今回は一人の作家で、戦中の絵と、その前またはその後の絵が対比して飾ってある。
まずは小磯良平。「練習場の踊子達」での群像の描き方を、「娘子関を征く」で応用したという(軍隊を描く=群像を描くことになるので)。「練習場の踊子達」は光の当たり方も綺麗で素敵な絵だった。
で、2室で「ダリア」があった向井潤吉。「バリッドスロン殲滅戦」、物凄い躍動感がある絵だった。そして戦後は「飛騨立秋」のような茅葺屋根の絵。戦後はずっとそういうモティーフを描いてたそうで、上述のアトリエ館にはそういう絵が多い様子。
後は以前拝見した太田喜二郎「新緑の頃」が。これは戦前。戦中の「陸軍記念日に」はいまいち好きではなかった。


7室「傷口の快復」。戦後から立ち上がろうとする希望を描いたものが多い。
あれ、これはいいな、と思ったのが北脇昇「抛物線」。実は北脇昇は先日の東京国立近代美術館のギャラリー4(2階の特集室)で「一粒の種に宇宙を視る」という企画展を実施していた。下記の時。
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ただ、個人的にぴんとこなかったので、感想書いてないという。
「抛物線」は良かった。7室のテーマが本当にわかりやすくはまる絵で。


10室の日本画は「歴史の描き方」。…書き手は人物画はあまり得意では…(あ)
ただ、上村松園「静」があったのは良かった。「静」は静御前白拍子姿。着物とか扇とかも綺麗なんだよねえ。
後は下村観山「大原御幸」(「おおはらごこう」)。かな。御幸の行列とか、木の描き方とか。



楽しかった。また展示替え後に。