時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

新版画 進化系UKIYO-Eの美@千葉市美術館

千葉市美術館は3年振りだったようで。
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当時の工事も終わり、1階にミュージアムカフェやミュージアムショップができていた。とても明るく綺麗に。


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今回は新版画。
200点近く展示しているのだけれど、すべて千葉市美術館コレクション。版画に力入れまくってますなあ…。
で、そのうち数点が写真OK。ありがたいなあ。


受付は8階。そのまま展示室へ。
「プロローグ 新版画誕生の背景」。
年代的に新版画が確立する前の版画、ということで、小原古邨・山本昇雲・高橋松亭が。
とはいえ、小原古邨は後年に新版画を作成するし、高橋松亭は渡邊庄三郎と組んで新版画のきっかけになる作品が出ている(後に高橋松亭も新版画を作成)のだけど。
小原古邨は以前記載したけれど。
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「大黒屋松本平吉」と「秋山武右衛門」版。古邨を名乗っていた頃。渡邊庄三郎と組むのは祥邨の名前で、になるのよね。小原古邨に関しては、個人的には古邨時代が一番好みだったりする。
小原古邨は花鳥画、山本昇雲は美人画、高橋松亭は風景画かな。
高橋松亭は新版画の風景画の先駆け、という感じにも思える。「酒匂」はポストカードになってたから購入したぐらい。


「第1章 新版画、始まる」。
渡邊庄三郎が従来の浮世絵の技法で、新しい版画を作ろう、となった頃。
で、まず、フリッツ・カペラリやチャールズ・バートレットが興味を。…意外と外国人が最初に興味持つのね…。
フリッツ・カペラリは人物画。新版画、というより、ジャポニズムの影響を受けたナビ派みたいな感じがしてしまう。
チャールズ・バートレットは風景画。「ベナーレス水辺」は面白い。インドの風景と浮世絵の風景画が上手く融合していて。
後は橋口五葉や伊東深水が新版画で美人画。橋口五葉の美人画は結構好き。


「第2章 渡邊版の精華」。
渡邊庄三郎の新版画の全盛期。
伊東深水川瀬巴水・名取春仙・山村耕花・吉田博がどどん。
川瀬巴水と吉田博はそれぞれ個人特集の展覧会を拝見している。
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山村耕花はこちらで拝見したなあ。
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川瀬巴水は完全に新版画の作家だけど、吉田博は作家人生の初期に渡邊庄三郎と組んでいたんだね。
あとは、エリザベス・キース・伊藤孝之・北川一雄・古屋台軒・石渡江逸がいくつか。橋口五葉も1点。
そうそう、織田一磨もあるのね。石版画が有名だけど、数年新版画をなさってたそうで。織田一磨を知ったのも千葉市美術館の前回の展覧会だったような。
あ、そうそう、今回の展覧会、8点だけ写真OKだったのだけど、そのうち2点が川瀬巴水「東京十二ヶ月」の「谷中の夕映」に「三十間堀の暮雪」。え、こんな素敵な絵、写真OKなの…?ありがたい…。


ここから7階の展示室へ。
「第3章 渡邊庄三郎以外の版元の仕事」。
渡邊庄三郎は東京の版元だけど、それ以外でも発生した東京の版元だったり、京都や大阪の版元だったり。
関西方面だと出てくる北野恒富。やはり美しいなあ。「舞妓」はちょっと怖いけど、それが良い。
関東の他の版元で出しているところだと、山川秀峰とか(個人的には版画より日本画の方が好きかもしれないけど)。
鳥居言人(ことんど)「朝寝髪」はなんと発禁処分になったそうで…。まあ、確かに色香のある素敵な美人画ではある。当時はこれでも駄目だったか…。
…というか、鳥居言人って鳥居清忠(五代目)のことか!山村耕花を拝見した同じ展覧会で(あれは男性のみが題材の展覧会だったので)美人画拝見したい、と思ってたらこちらか!「髪梳き」も素敵だったよ…。
前述の高橋松亭が、高橋弘明の名前で別の版元から出していたり。
あとはこの章から出てくる小早川清。ちょっと新しい感じの美人画、かな。


「第4章 私家版の世界」。
ここは版元を通さず自分で刷ってる「私家版」。
橋口五葉・山村耕花・吉田博・小早川清・石川寅治。
特に吉田博は展示点数が多い。殆ど自分で刷ってた作家なのよね。以前の展覧会で拝見した中でも好みだった作品が沢山。
で、写真OKなのが「劔山の朝 日本アルプス十二題」「光る海 瀬戸内海集」。
また…素敵な作品がOKなんだよね…。千葉市美術館どうなっているの…。
橋口五葉は風景画もあるけれど、やっぱり美人画は多いよねえ。素敵。
で、前述の川瀬巴水の展覧会でも拝見した「髪梳ける女」が出ていたけれど、そこに「マックの女神」ってキャプチャつけてて吹いた。いや、分かるよ、スティーブ・ジョブズが所有してたからね、この作品。分かるけど。


さて、章立て自体はここで終わりなんだけど、
最後に特集展示「ヘレン・ハイドとバーサ・ラム」。
どちらも女性版画家。
ヘレン・ハイドはジャポニズムに影響を受けたこともあり、日本または中国風の題材が多い。
バーサ・ラムは日本で木版多色刷を学んでいて、どこか東洋風の、独特な作品郡。
気になったのはヘレン・ハイド。
子供だったり母子の絵が多かったりするんだけど(メアリー・カサットの影響も受けているそうな)なんというか、キラキラしてる。
あまり現実見えてなくて理想の絵になっている、みたいな評価もあるみたいだけど、個人的には創作作品なんだし、キラキラしていたっていいじゃないか、と思う。
中米とか南米っぽい風俗の作品もあって、こちらもいいなあ。


思っていた通りの好みの展覧会であることも嬉しいけれど、
それに加えて自分の知らなかった、でも素敵なものを拝見できる展覧会、いいねえ。


2時間ぐらい拝見していたんだが、展示点数が多いし小型作品が多いので(浮世絵サイズなんだよね)、結構な疲労感。
1階のミュージアムカフェでコーヒーを。


続く。