時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

小原古邨@太田記念美術館

www.ukiyoe-ota-muse.jp

太田記念美術館は原宿にある。浮世絵専門の美術館。時々気になる展示はあったものの、扱っているもののせいか、それとも原宿という立地のせいか割と混んでいるという情報があり、なかなか足が向かず。

が、今回の展覧会は小原古邨。おはらこそん、と読む。明治から昭和にかけての作家。日本画を元々なさっていた方だけれど、途中から木版画の作家に。海外では人気があるけど、国内だといまいち無名。昨年秋に茅ヶ崎市美術館で特集の展覧会があり、その時にも気にはなったのだけれど、距離的になかなか足が…。

今回は平日に休みを貰えたので、こんにちは。

太田記念美術館は入場料が700円と安め。入ってすぐ、混雑する理由が判明。2階建てなのだが、かなり小さめ。
2階は吹き抜けになっていて、回廊状になっているのを回りながら、壁にかかっている絵を見るという形。確かに、浮世絵専門なので、そんなに壁に飾るスペースがいらないのだろうけど…。
ちなみに1階は、壁の一方が靴を脱いで畳に上がって観る形式。そして部屋中央には日本庭園風の設えと座るスペースが(閲覧可能な展示会の図録も置いてある)。

さて、小原古邨の展覧会。今回は前期後期完全入れ替え。書き手が観たのは前期。

1階はひたすら花鳥画。鳥と花。とてもスタンダードな花鳥画だなあ…と思うけど、よく考えたら木版画でこの表現なのだから、凄い。桜をとても嫋やかに描かれる気がする。あと、散る桜の花びらを描いているのがいくつか。そういう好みなのかな。
個人的なお気に入りは「柿に目白」。柿の色が素敵。
あと、木菟の表情が豊か。「月に木菟」の木菟が凛々しさと可愛さを同居。更に2階の「木菟と雀」。昼の木菟が凄い眠そうに目を細めてるの。

2階はもう少しバラエティに富む。花鳥画は多いのだけれど、虫・魚・蛙・蟹・動物…と。
個人的に動物画に惹かれた。毛皮がなんだか柔らかそうなの。展覧会の表題作「踊る狐」は実物を見た方がいいかも。毛皮のふわふわ感が凄い。前期だと「試摺」と言われるものも展示されているけれど、ここをもう少し毛皮のようにして、みたいな指示が書き込まれている。木版画の摺り師の技なんだろうなあ…。
あと、本当に少ないけど風景画もいくつか。個人的にはこれも好きだなあ…。「厳島神社」とか「帆船」とか。

で。実は1階全部と2階の半分ぐらいは、「大黒屋平吉(展覧会だと松木平吉)」と「秋山武右衛門」という版元のもの。
で、昭和に入ってから、渡邊庄三郎という版元の名前が。そして小原古邨も祥邨という画号に変更(なお、酒井好古堂と川口商会の共同出版にした際は「豊邨」に画号が変わる)。ここから色彩が変わって、渡邊庄三郎の刷る「新版画」と呼ばれるものに。
個人的には「随分大胆な色遣いに変わったなあ」という印象。…個人的には新版画じゃない方が良かったかなあ。新版画だと、鳥の描かれ方に違和感があって。
「月夜の桜」を原画と全然違う仕上がりの色にしたのは、そういう色の表現もあるよね、と興味深かったけれど。
この辺は好みによると思う。

後期に全部入れ替わるので、もう一度見に来てもいいなあ、とは思っている。

ちなみに、3/3の日曜美術館が小原古邨だそうで。
www4.nhk.or.jp