時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

【特別展】小林古径 生誕140年記念 小林古径と速水御舟 ―画壇を揺るがした二人の天才―@山種美術館

www.yamatane-museum.jp
展覧会タイトル通り、だけど、どちらかというと小林古径メインかな。
前後期制。

さて、この日はもう1つ目的があって。


というわけで、晴れて山種メンバーズに。まあ、何度お世話になっているか、という美術館だしね。
他にも美術館wi-fi導入、更にwi-fiコンテンツなんかも導入。
wi-fi導入はありがたいんだが(山種美術館、地下にあるせいか、展示室で自分のwi-fiどころかスマホの電波すら入らない)、wi-fiコンテンツは展示の解説を自動音声で読み上げてくれるだけなので、うーん。
耳からの方が説明が頭に入る、という方にはいいかもしれない。

一応3セクションに分かれているけれど、
第1展示室の一番最初の絵は「第3章 二人の交流、御舟亡き後の古径」から、小林古径「菖蒲」。要は古径の晩年の絵になる。
で、続く「第1章 歴史人物画からの出発、写実・古典への挑戦」。初期の頃の作品。
あの…凄くぶっちゃけると、実は古径に関しては、初期の絵の方が個人的に好みなんだよね…(あ)
「小督」は能「小督」題材だけれど、本当に色彩が綺麗で…これ18歳で描いてるって御冗談でしょう…?
以前も拝見した「闘草」、でもってこちらも着物が綺麗な「蛍」、美人が沢山の「極楽井」。「猿曳」の猿の毛描きもとても丁寧。
そうそう、変わったものといえば「静物」。漆椀に林檎、という絵なのだが…これ、なんと油彩。ガチガチに油彩という感じでもなく、さりとて日本画ともちょっと雰囲気が違う。面白い。

「第2章 渡欧体験を経て」。
古径も御舟も留学経験があるのだけど、それが発生する中期ぐらい。
古径に関しては、あまり渡欧がどうこう、という感じではない。
むしろこのセクションのハイライトは「清姫」かと。全8作全て出てる。書き手は何度も拝見している絵ではあるのだけれども。
あ、「清姫」があったからか、御舟「道成寺入相桜」も比較として出ていた。こちらも何度も拝見しているけれど、綺麗でねえ…。
後はとても丁寧な「桜花」や、羽根の色がなんとも綺麗な「夜鴨」等。
御舟の方が渡欧とか海外関連の絵が多いのかも。「オリンピアス神殿遺址」とか。

改めて「第3章 二人の交流、御舟亡き後の古径」。
「二人の交流」としては「桔梗」。こちら、御舟が描いた「桔梗」を、古径が模写してる。
更に御舟が亡くなった時、「速水御舟デスマスク)」を描いている。
古径は御舟より11歳年上なんだけど、御舟へのリスペクトが結構凄い。なんとなく、古径は印象派でいうところのピサロっぽいポジションなのかなあ…と。年上だけど年下の画家へのリスペクトも、勉強も熱心で。
そのせいか、古径は晩年になると、今までの自分のきちんとした筆致から、更に色々変化する意欲が見える…気がする。そしてその変化する方向が、書き手はいまいち馴染めないのだけど。
ちなみにちょっと話は外れるけれど、御舟の代表作の1つでもある(書き手も大好き)「牡丹花(黒牡丹)」と、古径の「牡丹」を並べて展示したりしてるんだよね(御舟の方は2章扱い)。御舟の方は言うまでもなく素敵だけれど、古径の「牡丹」は線がしっかり丁寧で。こちらもこちらで素敵。
後、絵がどうこうではなく「唐俑」でおお?っと。こちら、題材は東京国立博物館東洋館5室でよく拝見する、唐時代の女官の俑を描いてるんだ。先日の泉屋博士館東京、というか大阪市立東洋陶磁美術館所蔵のもの(スリムな方)もあったけれど。
morina0321-2.hatenablog.com
そういえば大阪市立東洋陶磁美術館=安宅コレクションとも縁が深いですな、この展覧会。
あ、そうだ。今回写真撮影がOKなのがこのセクション。「弥勒」。

www.instagram.com
穏やかな顔の弥勒摩崖仏(岩壁に彫られた仏像)なんだけれど、その横の桜と、周辺に生えている木の細かいこと…。
ちなみに奈良県宇陀市(解説パネルだと旧名の室生村になってた)の大野寺の弥勒摩崖仏なのだそうで、古径の絵だとちょっと違う感じも受けるんだが、周囲に生えているのは枝垂桜で、季節によっては枝垂桜越しに弥勒を拝見できるそうで。いいなあ…。

一方、ここまであまり触れてない御舟なのだが、今回はがっつりハイライトな絵を展示している。
前述の「牡丹花(黒牡丹)」に「昆虫二題」「翠苔緑芝」、小品だけど個人的には大好きな「桃花」「秋茄子」、でもって絶対第2展示室ですよ(暗い部屋のが映えるからね!)の「炎舞」。
出ていないの、「名樹散椿」ぐらいでは…。
下手すると古径の作品が霞むんだが、という凄いラインアップ。
以前も書いたけれど、上述の安宅コレクションのうちの御舟コレクションだものね。

で、今回も展覧会の和菓子を。
今回の和菓子はInstagramの方に載せている。古径「菖蒲」モティーフの「花涼やか」。
白の部分と緑の部分の固さが異なるので上手く切り分けられず、ちょっと無残な見た目になったのが悲しかったとか。


続く。