時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

未来へつなぐ陶芸 ―伝統工芸のチカラ展@パナソニック汐留美術館

panasonic.co.jp
土日の新橋はひとがいないので快適。

陶芸の展覧会。
日本工芸会陶芸部会の設立50周年」の記念展なので、作品はほぼ現代作品。どんな感じなんだろう、ということで覗きに来た。

時期的に3章に分けてる感じ(でも、第Ⅱ章にも新しい作品が出ていたりもする)。
「第Ⅰ章 伝統工芸の確立」「第Ⅱ章 伝統工芸のわざと美」「第Ⅲ章 未来へつなぐ伝統工芸」。
作品自体は東京国立近代美術館(というか、工芸館の方かな)所蔵が多いけど、第Ⅲ章は個人所有(というか、作者所有かも)が多いのか、所属が空白のものが多い。
東京国立近代博物館所有だと、そちらで飾られたら写真OKなのかな、と思ったりもした(この展覧会自体は全作品写真NG)。
東京国立近代美術館の作品であれば、下記で検索できるかと。
www.artmuseums.go.jp
日本工芸会の作家検索でも出てくる。展示作品がなくても、作者の傾向がとても分かりやすい。
www.nihonkogeikai.or.jp


全体的な話を先にすると。
伝統的な陶芸がまずあって、そこからどう型を破るというか、独自のものを出そうとするというか、それに皆さん苦心していらっしゃる作品の数々で。
その工夫が面白いなあ、と思いながら拝見していた。


後は特に自分が好みだった作品を。


「第Ⅰ章 伝統工芸の確立」では、割と古式を守っている作品の方が好きだったかも。
金重陶陽「備前耳付水指」は備前のどっしり感もありつつ、どことなくねっとり感もありつつ。
加守田章二「曲線彫文壺」は土の肌なんだけど、曲線の入り方と形が凄くモダンな感じで。
中里無庵「黄唐津叩き壺」は、中世の陶器っぽい感じで逆に面白かったり。
藤本能道「梅白釉釉描色絵金銀彩鷺図扁壺」は、描かれている絵が素敵だった。

あと、展示に小さなコーナー的なものがところどころあって。
特集展示 column1「伝統工芸と創作工芸」には、いきなり板谷波山「葆光彩磁和合文様花瓶」が。波山のこの色はどうやって出すんだろうね本当に…。
あと、今回初めて認識した楠部彌弌「彩埏花瓶 山帰来」。この彩埏というのが彼独自の技法で、陶器の輝きが独特。波山とはまた違ったタイプの落ち着いた輝きというか。そしてちょっと洋風っぽい。

そして続く特集展示 column2「人間国宝重要無形文化財保持者)の存在」。
荒川豊蔵「志野茶碗」「瀬戸黒茶碗」。色が白と黒で対照的なんだけど、肌の独特さは共通して格好いい。
石黒宗麿「彩瓷柿文壺」は白い地に干し柿と干す木枠なんだけど、とても可愛らしい。
そして濱田庄司「柿釉赤絵角皿」。濱田庄司って渋いイメージがあるんだけど、この皿は緑や赤や茶の線が入っていて、なんか凄く可愛い。こういうデザインもあるのね。


「第Ⅱ章 伝統工芸のわざと美」。
この辺りから割とチェックしている作品が多かったりする。
なので、特におおっとなった作品を2つ。
久田重義「鉄釉輪文皿」。シンプルな黒い皿なのだけど、同心円のように段がついていて。なんだろうね、吸い込まれそうな。美しい。
もう1つは市野元和「丹波土部釉彩平鉢」。鉢の底の黒と、解けるような境目からの白と。

特集展示 column3「産地と表現」。
気になったのは伊勢﨑淳「備前黒角皿」。黒い角皿(黒は鉄分とのこと)の真ん中に円形で、備前火襷の肌。

特集展示 column4「茶の湯のうつわ」。
波多野善蔵「萩茶わん(わんは盆の旧字体?)」は正統派の萩茶碗という感じで、個人的には嫌いじゃない。赤土にうっすら白い釉薬。ええ…そういう萩焼じゃない方もいらっしゃいますしね…(何)。


「第Ⅲ章 未来へつなぐ伝統工芸」。
ええと。「第Ⅲ章」、凄く作品数が多い。
そしてとにかく個々の個性が強い。
実は。
morina0321-2.hatenablog.com
先日こちらで拝見して良い印象だった前田正博「色絵銀彩角鉢」、今回の展覧会にも出ているのにスルーしてる(え)それぐらいに、周囲が個性が強くて感覚がよく分からなくなっている(前田正博のこの作品はモダンで渋いんだけど地味だしね)。
なんか、どれが好きとか言えなくなってた。皆凄い(語彙力皆無)
あ、そうだ、上記の展覧会で拝見した吉田幸央は、その時とは別の作品「金襴手彩色皿」が出されていた。これも格好いい。九谷、と言われるとイメージが随分違うんだけど、金彩を扱う窯なのよね。

で、特集展示 column5「素材と表現」。
隠﨑隆一「備前広口花器」がちょっと面白かった。一見、土の肌の変わった形の器なんだけど、土自体がちょっと変わってる。
備前は田んぼの土が堆積しているのを主に使うそうなのだが、こちらの作品、田んぼを作る際に捨てられる土を使ってるそうで。今流行のSDGs的な。
武骨な感じが結構好き。

最後の特集展示 column6「新たな技法とうつわのかたち」。
とにかく形が個性的なもの。
新里明士「光器」は小さな穴が細かく入っているのだけど、この穴、ドリルで開けてるそうで。結構繊細な穴なのに…。


そういえば、面白かったのは「三輪休雪」の系譜。今までも何回か触れているけれど(最初はこちらかな)。
morina0321-2.hatenablog.com
「第Ⅰ章」に三輪休和(十代休雪)「萩四方水指」、「特集展示 column3」に三輪壽雪(十一代休雪)「白萩手桶花入」、「第Ⅲ章」に十三代(当代)の「エル キャピタン」。
今回は龍氣生(十二代休雪)はなかったんだけど(まあ、この方の作品はもっと突き抜けてるしね…)ダイナミックに萩焼の白釉使って独自の表現をしてる皆様揃ってるのが、なんかもう。
というか、萩焼はかなり革新的な方が多い。
前述の波多野善蔵とか「第Ⅱ章」にあった新庄貞嗣とか、この辺りがスタンダードな萩焼なんだけど。
「第Ⅲ章」にあった十五代 坂倉新兵衛は恐らく物凄い歴史のある窯元なんだろうけど、スタンダードな萩焼に絵付してたり(萩焼は普通絵付けしないんだそうで)。
「第Ⅱ章」の岡田裕(この方も江戸時代からの窯元の八代目だそうな…)は炎彩という、本当に炎と、炎に焦げた色をお使いになっていたり。


いやあ…面白かった。
あまりに情報過多で受け止め切れてないけど。


新橋でお昼を食べてから、続く。
あ、余談だけど、新橋駅からパナソニック留美術館へ行く道、アンテナショップが3店舗あって、「奈良」「鳥取&岡山」「香川&愛媛」と3店舗なのに5県楽しめて、全部(簡素なところもあるけど)食事がとれる。
今回は奈良まほろば館でお昼だった。三輪そうめんのにゅうめん美味しかった…。