www.tnm.jp
ユリノキの下から表慶館もなかなか素敵。
展示内容も面白そう、表慶館自体も久々、と。
実はこの日から別の特別展もあるのだけれど、そちらとの共通券はないんだよね…。
同日に観に行きたい人はどちらも時間ずらして事前予約するんだろうか。謎。
今回は令和2年度日本博主催・共催型プロジェクト。
「紡ぐ-TSUMUGUプロジェクト」サイトに色々ガイドがあるので、作品はそちらからもご確認頂ければと。
tsumugu.yomiuri.co.jp
まずはエントランスから。ここは写真OK。
輝く箱がひとつ。江里朋子「截金飾筥「静夜思」」…あ!
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こちらで作品を拝見したなあ、今年(もう遠い話になってしまったような…)。変わらずとても美しい截金。
隣の林駒夫「呉女」は人形で、あまり人形は分からないんだけど、衣装が素敵。
続いて「第1章 金は永遠に光り輝き、銀は高貴さに輝く」。2室構成。ちなみに1室だけ写真OK、他の部屋はNG。
少し話は逸れるけど、今回の展覧会の会場は建築家の伊東豊雄の設計。白基調で、展示台との繋がりが緩やかな曲線。で、展示台の表面が黒。展示物が映るぐらい磨かれている。裏側も見られるようになっているのはいい設計。ガラスで覆ってないのでちょっと怖いけど。
1室の大角幸枝「銀打出花器「海峡」」、曲線が素敵で、展示台の表面に映る姿も綺麗だった。で、この名前に憶えがあった。
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1年前ぐらいになるんだね。作品としては類似点が多いかも。
1室の展示台でもう一つ気になったのは武腰敏昭「無鉛釉薬「朧げな記憶」」。白磁なんだけど絵付けが洋風で。ちょっと異彩だなあと。
1室の壁にかかっている作品だと、月岡裕二「切金砂子彩箔「凛」」。実は先に写真で拝見してたのを覚えていたんだけど、写真よりもずっと綺麗。曲線が良い感じで。
もう1つ、並木恒延「月出ずる」。漆の夜空に蒔絵の月、光を反射する海を螺鈿で表現しているのかな。あまりにも漆の表面が滑らかで、写真撮ろうとすると撮影者とか他のものが反射してしまって断念したけど、美しかった。
あ、そうそう、奥田小由女「海から天空へ」という人形作品があったのだけれど、奥田小由女は奥田元宋の奥様でいらっしゃったりする。こういう作品をお作りになるのか…。
で、2室。
展示台の作品で一番好きだったのは前田正博「色絵銀彩角鉢」かな。渋さがいいなと。茶の湯の茶碗っぽさも感じた。
佐故龍平「杢目金打出花器」や前田宏智「四分一象嵌打出銀器」も格好いい。中川衛「象嵌朧銀花器「チェックと市松」」はモダンでいい感じ。一方、吉田幸央「金襴手彩色鉢」はそこまで煌びやかではないけれど、それがいい感じ。
で、実は残念だったのが、前史雄「沈金箱「花明」」。漆の黒地に渋く枝垂桜、なんだけど、この黒地が展示台の黒だと映えない…。展示台、この作品は白だったら良かったのに…。印象が違うはず。
一方、壁に村田好謙「風と光と水と」。これは写真じゃ全然良さが分からないと思う…。光と水の対比とか、散る花びらの感じとか。とても素敵な作品だった。
章が変わって「第2章 黒はすべての色を内に吸収し、白はすべての光を撥する」。ここから2階の3室・4室。
まずは3室。黒の作品の展示台…やっぱり白の台で観たかったかもなあ、と思いつつも、西由三「鋳朧銀花挿」と田口壽恒「鍛朧銀盛器」はシンプルでいて造詣がそれぞれ恰好良かった。
で、白の作品の展示台には…この格好良くてダイナミックな白の釉薬はとても見覚えがあるよ、三輪休雪「雪嶺/花器」。
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一方、壁には高橋*1寛「友禅訪問着「露地」」渋くて格好いい着物。白の壁だから映えるよねえ。
4室。
展示台。黒い作品だけどこれは映えた友定聖雄「A Silent Voyage」。硝子作品だというのもあるけど、横に一直線に入った透明部分が印象に残る。オブジェ的な作品。それから河野榮一「時空への旅」も陶磁のオブジェ的な作品ではあるんだけど、なんだろうこの存在感。
一方、オブジェとはまた違う壷作品がいくつか。吉賀將夫「萩釉陶壺「対比と調和」」…萩焼って個性強くないか?三輪休雪もそうだけど…。これもこれで好き。今泉今右衛門「色絵雪花薄墨墨雪松文蓋付瓶」は、実は裏側の図の方が好き。菊の花かな。銀で描かれてる。
で、壁の作品で気になったのは松枝哲哉「久留米絣着物「光韻」」。とても格好いい絣着物で好きなんだが…このお名前。「日曜美術館」で先日紹介されてた。
www.nhk.jp
今年の日本伝統工芸展の入選作品を作られた方だ。
www.nihonkogeikai.or.jp
ここでお目にかかれるとは。というか、毎回日本伝統工芸展、行き逃すのだが…。
章が変わって「第3章 生命の赤、自然の気」。5室・6室。
まずは5室。
展示台では武関翠篁「花籃 「来光」」。これも黒の展示台ではない方がいいかもだけど、中の赤が綺麗。一方、同じ竹製品に漆を施した小森邦衞「籃胎合子」。これは最初赤い箱に見えて、よく見ると細かくてびっくりする。
で、これは赤くはないんだけど、森野泰明「扁壺「松籟」」。ポップで可愛い。
で、壁の作品。森口邦彦「友禅着物 緋格子文」。
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あとは上記の京都での展示ですな。森口邦彦デザインは統一感があるというか。格好いいよ。
6室。部屋が暗い。作品には光をあてている。
で、この状況の展示でおおっとなったのは、大澤光民「鋳ぐるみ鋳銅花器「大宙へ」」。5室から6室へ移る際の入り口にあって、入り口から見た時の角度だといまいちなんだが、中に入って振り返るように見ると、当たる光と作品に刻まれてる金属の線が上手く光ってとても綺麗。
壁には土屋順紀「紋紗着物「竹風漏月」」。土屋順紀も上述の着物展で拝見しているが、本当に光を通すと綺麗な薄い着物でね。
最後の章「第4章 水の青は時空を超え、樹々と山々の緑は生命を息吹く」。ここから1階に戻って7室・8室。
まずは7室。須田賢司「タモ拭漆嵌装箱「銀漢」」(タモは木の種類。漢字が出なかった)。タモの木目が本当に格好いい。象嵌も素敵だし。
寺池静人「ねぎぼうず・Ⅱ」は何だか可愛い。
樂直入(十五代吉左衛門)「焼貫黒樂茶碗 銘 峨々幽晦 黒きこと他になく 山の如く孤生して固の雄たらん」山下義人「蒟醤箱「山笑う」」も素敵なんだが、これは黒い展示台がちょっと邪魔をしているような…。
8室。
展示台では松本達弥「彫漆箱 「漣」」。これ、彫漆なので地は黒で、展示台の黒が邪魔するかと思ったら…なんか、展示台と一体化して、青漆の波濤がそこに浮き出て、作品として面白いことになってた。
逆に、安達征良「硝子絹糸紋鉢「夕陽」」は、黒の展示台よりも別の方が、ガラスの光を透過した色が綺麗だったかも。十分綺麗ではあったけど、サイトの写真の方が綺麗に見える…。
壁には小宮康正「江戸小紋羽尺駒絽両面染 両子持立涌」。江戸小紋って本当に細かい。これは会場で見た方が感動するかも。
個人的にはなかなか濃密な展覧会。満足。
平日だったこともあったのか、ひとはかなりまばらだったので、気兼ねなく拝見させて頂いた。展示側としてはもっとひとが入って欲しいかもしれないけどね。
続く。