時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜― モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン@三菱一号館美術館



イスラエル博物館所蔵の、印象派中心の展覧会。初来日の絵が結構多いそうな。
まあ、個人的には印象派と言われたら訪れるのだけど。


入り口は3階から。
第一章「水の風景と反映」。川や海モティーフの絵画を。
…ええと、最初の部屋から、ジャン=バティスト・カミーユ・コローとシャルル=フランソワ・ドービニーがどどんとあるわけで…。いかん、書き手、最初から大好物だ(あ)ちなみにカール・ピエール・ドービニー (シャルル=フランソワ・ドービニーの息子さん)の絵もあるよ。
あと、存じ上げなかった画家が一人。ヨハン・バルトルト・ヨンキント。クロード・モネに影響を与えた画家のひとりで、印象派の先駆者。「日没の運河、風車、ボート」は小品だけど、これも素敵。
最初からこんなに好みの部屋…。

そして次の部屋には、ギュスターヴ・クールベにウジェーヌ・ブーダン
ブーダンはその次の部屋にもあるけれど、そちらにはアルフレッド・シスレーがどどんと…。
…なんだろうこの展覧会、書き手を狙い撃ちでもしてるの…?(落ち着いて)どこを見ても好みの絵があるのって、ちょっと凄い。

その次の部屋は大部屋(展示の都合で仕切りがあるけど)。
この部屋だけ、撮影OK。
とはいえ、今までの部屋が個人的にツボ過ぎたしな…と思っていたのだが、いきなり最初に拝見した絵におお…?と。
タッチ的には印象派とちょっと違う感じ。なんだろう、「パキッ」とした感じを受ける絵。
レッサー・ユリィ「風景」。
そもそもレッサー・ユリィという画家を存じ上げなかったのだが、ユダヤ系のドイツ人画家なのだそうで。
どうも今回の展覧会の評判を聞く限り、レッサー・ユリィはかなり好印象なようで。うん、分かる。
で、第一章の最後はクロード・モネ。今回の展覧会のポスターにもなっている「睡蓮の池」。いやあ、ポスターになるでしょう、この絵は。光の差し方が秀逸。


で、大部屋自体は続くのだけど、展覧会の章が変わる。
第二章「自然と人のいる風景」。水から離れた、もう少し大きく捉えた自然の風景画。
ギュスターヴ・クールベは初期の頃の聳える岩壁の多い風景画(下記展覧会も参照)、「森の流れ」「岩のある風景」。
morina0321-2.hatenablog.com
ジャン=バティスト・カミーユ・コローは川から離れて、開けた土地の「モルトフォンテーヌ、小さな柵へと続く道」、森の中の「樹々の間に差す陽光」。
シャルル=フランソワ・ドービニーの「水と完全に離れてる」絵は珍しいと思うが、「花咲くリンゴの木」、いいなあ…。
そしてこの部屋には、カミーユピサロが3点どーん。「豊作」「エラニーの日没」「朝、陽光の効果、エラニー」どれも好み…。
あと、この部屋にはフィンセント・ファン・ゴッホの絵も。「麦畑とポピー」はポピーの鮮やかな赤が素敵で。

大部屋はそこまでだけど、第二章は続く。
次の小部屋のメインはポール・ゴーガン。ゴーガンは好き嫌いあるけど、とても平穏な昼下がり描いた「マルティニークの村」と、炎に迫力というか、生命力のようなものを感じる「ウパ ウパ(炎の踊り)」が非常に印象に残る。
その次の小部屋はポール・セザンヌ。個人的にセザンヌが得意でないので触れられないけど。


その次の部屋は第三章「都市の情景」。
カミーユピサロが2点。自然と工場を対比して描いた「ポントワーズの工場」と整然と整備された区画の昼下がり「テュイルリー宮庭園、午後の陽光」。今回、ピサロは好みの絵が多いなあ…。
そして次の部屋には、レッサー・ユリィが2点。とても都市的で、お洒落で素敵な「ベルリンの冬」、明かりが道に反射した色彩が凄い「夜のポツダム広場」。非常に洗練された感じを受ける。


ここから1つ下って2階へ。
最初の部屋は特別展示その1、クロード・モネ「睡蓮:水の風景連作」。
こちらはイスラエル美術館からではなく、DIC川村記念美術館和泉市久保惣記念美術館、そして実はこの日はまだ展示してなかった東京富士美術館の「睡蓮」を並べる企画。東京富士美術館のは11/30から展示予定とのこと。
まあ、個人的にはそこまで目当てで来ているわけではないので。美しいのはその通りだけど。
でもって次の部屋が特別展示その2、以前も拝見したオディロン・ルドン「グラン・ブーケ」。折に触れて展示するよね、こちら。


次の部屋からは最後の第四章「人物と静物」。
印象派で人物ということで、ここからピエール=オーギュスト・ルノワールの人物画3点。
「花で飾られた帽子の女」はいかにもルノワールっぽい絵で素敵だけど、「レストランゲの肖像」はなんだかとても明るくて好き(描かれているレストランゲ氏が、ルノワールの御友人なのもあるのかも)。
あと、カミーユピサロの人物画がここに。ピサロの人物画、初めて拝見したかも。「ジャンヌの肖像」。これが凄く良い表情で、可愛い女性で。ジャンヌはピサロの娘さんだからかも。

次の部屋は静物画。
ここもルノワールが3点。個人的には「静物」が好きかな。リンゴと…ビワかな。柔らかい色彩で。
ギュスターヴ・クールベ「リンゴの静物」はリンゴが酷く歪んでいた。これ、もしかして森の地面に落ちてるリンゴを写生しているのだろうか。徹底的に写実主義クールベらしい。
ポール・ゴーガン「静物」も結構好き(ゴーガンの静物画が好み)。

最後の部屋は人物画。
ピエール・ボナールにポール・セリュジエにエドゥアール・ヴュイヤールと、ナビ派主体。
個人的にはヴュイヤールの絵は結構好みで、「長椅子に座るミシア」の落ち着いた生活の感じや、「窓辺の女」「エセル夫人、ナポリ通り」の都市と生活がそこにある感じ、というのがいいなあ、と。
そして最後の部屋にもレッサー・ユリィ「赤い絨毯」が。こちらは裁縫をしている女性の絵。ユリィのお母様が夫と別れて女手ひとつで、裁縫仕事でユリィを育てているそうで、その原風景の絵、なのだそう。
この絵、ハマスホイ(ハンマースホイ)を思い出した。
morina0321-2.hatenablog.com
後ろからの視点、というのもあるけど、静かな生活を感じとったのかもしれない。


王道の印象派に加えて、レッサー・ユリィの絵も楽しめるという、かなりいい展覧会だった。
下の写真は三菱一号館美術館の前で咲いていた薔薇。いい時期。


いい展覧会だったので。

遅めのお昼でまた呑んでたりする。美味しいよ、常陸野ブルーイングのペールエール…。