時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

クールベと海 展― フランス近代 自然へのまなざし@パナソニック汐留美術館

土日の新橋は結構好き。ひとがいないので。

panasonic.co.jp

※この写真は展覧会の最後に撮影OKなもの。

クールベ中心の展覧会。気になったのでこんにちは。

チケットは完全事前日時指定制。ただ、Webサイトでできるのは日時指定のみで、展覧会のお金は入り口で支払う形式。
前後期制で、3点ほど作品が入れ替わる(3点中2点はクールベの作品じゃないけど)。


展覧会は5部構成(本当はローマ数字で降られてたけどアラビア数字に直してる)。


「1 クールベと自然―地方の独立」。
自然の多い風景画を集めている。
最初に展示されている絵にいきなり惹かれる。木の描き方とか、遠景のぼかした感じとか。アシール=エトナ・ミシャロン「廃墟となった墓を見つめる羊飼い」。ミシャロンはコローの師匠なのだそうで。ああ、コローと描き方が似ているかも。調べたら、コローと同い年で師匠で、ミシャロンは夭折されてるんだ…。
この章、コローやデュプレ、ナルシス=ヴィルジル・ディアズ・ド・ラ・ペーニャ等、
バルビゾン派をいくつか展示している。
で、加えてクールベクールベの自然を描く風景画は、割とこう、重厚というか。パレットナイフを多用する描き方だからかもしれないけれど。バルビゾン派とも違うし、印象派とも違う。
「フランシュ=コンテの他に、オルナン付近」が少し明るいかな、と思ったら、こちらは印象派の影響を受けて描いている作品だそうで。
「アルプスの渓谷」も夕暮れっぽい空が綺麗。


「2 クールベと動物―抗う野生」。
動物が出てくる風景画。
コロー「ヴィル・ダブレー 牧草地からコローの家へと続く道」が素敵だとかトロワイヨンの牛が可愛い(「近づく嵐」)とか、あるのだけど。
クールベの描く動物っていいんだよねえ…。
国立西洋美術館にある「罠にかかった狐」で元々存じ上げていたけれど。
「雪の中の小鹿」の鹿は愛らしく、「川辺の鹿」の鹿は小さく描かれているけれどダイナミックな動きで。


「3 クールベ以前の海―畏怖からピクチャレスクへ」。
このセクションはクールベが出てこない。
出てくるのはターナー、そしてコンスタブル。…あれ?
morina0321-2.hatenablog.com
ピクチャレスクの話はこちらでも出てきてたなあ。関連展覧会の意味合いがあるのかな。
ちなみに油絵もあるけれど、エッチングとか本の挿絵とかが主。


「4 クールベと同時代の海―身近な存在として」。
ここもクールベが出てこない。
バルビゾン派のコローやデュプレ、「空の王者」ブーダン印象派のモネ・カイユボット・そしてシスレー
書き手の好みにかなり寄ってる感じが…。
デュプレ「海景」は海よりも空の美しさが印象的だし、ブーダンは「ブレスト、停泊地」の晴れた空も「海洋の帆船」の曇の多めの空も素敵で。
シスレー「レディース。コーヴ、ラングランド湾、ウェールズ」のなんとも言えない色合いはもう大好き(贔屓)。
あと、この時代は(ブーダンが割と題材として描いてるけど)レジャーとしての海も取り上げてて、当時の水着も展示されていた。水着…というか…女性の水着、普通にブラウスにパンタロン、その上にスカートだったけど…。ほぼ普通の服のような。


「5 クールベの海―「奇妙なもの」として」。
展覧会本題の「クールベと海」。
クールベは内陸部出身で、最初に海を見た時の言葉が展覧会のポスターに描かれているけれど、それが「奇妙なもの」なんだよね。
だからか、明るいもの(「海岸風景」等)もあるし、それはそれで素敵だけれど、自然の畏怖をそのまま体現するような荒れた波、そして暗い、得体の知れない色の海水を描いている絵が多い。
空もかなり不穏で。
展覧会のポスターになっているのは愛媛県美術館が所有している「波」(この章、「波」というタイトルの絵画ばかりなので、所有美術館を記載しておく)。これは空の明るさも見えていて、それでも海は暗くて。
綺麗な海の絵も勿論好きだけれど、クールベの畏怖や恐怖や厳しさを孕んだ海も素敵だと、思う。
写実主義クールベらしい。


パナソニック留美術館はそこまで大きくない展示スペースなので作品数もそこまで多くなく、今回は展示物を全て他美術館から借りてきているのだけれど、なかなか系統立てた感じではあって、いい展覧会だった。
展示物が他美術館から借りているものばかりなので、グッズのポストカードは全部他美術館の販売物ではあったけれど…。


おまけ。この季節だからこその景色。

パナソニック留美術館の傍にある、旧新橋停留所と八重桜。見上げて撮ったので斜め。

続く。