時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

リニューアルオープン記念 自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで@国立西洋美術館

久々に平日にお休みを頂いたので、これは平日でないと厳しいかな、というところへ。
www.nmwa.go.jp

国立西洋美術館、2年ほどお休みしてリニューアルオープン、第1弾の展覧会。
リニューアルオープンなので国立西洋美術館所蔵の選りすぐりを展示する、のと同時に、ドイツのフォルクヴァング美術館からの作品も展示。
フォルクヴァング美術館は今年が100周年で、コレクターのカール・エルンスト・オストハウスが収集した美術品を美術館作って見てもらいたい、という、国立西洋美術館のコレクションの元になってる松方幸次郎と同じような思想を持っていた、ということもあるみたい。

今回、写真撮影もOKなものが多い。
国立西洋美術館所蔵だから?と思ったら、フォルクヴァング美術館の作品も写真OK(作品にもよるけど)。おお、太っ腹。


「1章 空を流れる時間」。
ここで、トップにウジェーヌ・ブーダン3点を出してきた…!この章タイトルでトップに「空の王者」…!個人的なツボを…!
「トルーヴィルの浜」は国立西洋美術館所蔵で拝見したことある作品だったけれど、「引き潮のドーヴィルの浜」と「海浜」は国立西洋美術館の寄託作品で、拝見も初めてだし写真NG。
「引き潮のドーヴィルの浜」は曇天、「海浜」はパステルで味があっていいんだよね…。
で、そこから、マネ・ピサロ・モネモネモネモネ!わー…なんか凄い日本人好みっぽい…。
個人的にツボなピサロ「ルーヴシエンヌの雪景色」はフォルクヴァング美術館所蔵で初見。積もった雪に陽光が当たって光ってるのが…いい…。
同じくフォルクヴァング美術館所蔵のモネ「ルーアン大聖堂のファザード(朝霧)」は、モネが一時期多く描いていた霧の作品のうちの1つなのだと。朝霧に幻想のように浮かぶ大聖堂、とにかく幻想的になってる。
そして続くのがコロー。やはり日本人好みなのでは…というか個人的にツボだからねコロー…。
フォルクヴァング美術館所蔵の「森の外れの騎手」は勿論初見だけど、クリシェ=グラスという、ガラス版に線を彫って、それを印画紙に日光で印刷する方法で作っている小作品4展があって、国立西洋美術館所蔵だけど初見でおおっとなる。なお、タイトルが「コロー、ドービニー、ドラクロワ、ミレー、ルソーによる40のクリシェ=グラス」。…ちょっと待って、ドービニーとジャン=フランソワ・ミレーもあるの?み、見たい。
さて。次にあったのが、フォルクヴァング美術館所蔵のマックス・リーバーマン「ラーレンの通学路」。名前を存じ上げなかった画家なのだが、ドイツ印象派(の後、ドイツ分離派)の画家だそうで。「ラーレンの通学路」は木々の間を通学する子供たちの図で、なかなかほっこりする。木々の間に指す日光が印象派っぽいのかなあ。
そして続くのがルノワール。フォルグヴァング美術館所蔵の「オリーヴの園」は初めて拝見するけど、「風景の中の三人」は国立西洋美術館所蔵だけど初見かもしれない。晩年の、とても明るい画面。
で、この章最後に出てきたのが、フォルグヴァング美術館所蔵、ゲルハルト・リヒター「雲」。いきなり現代…。でも、リヒターのこういう自然を描くシリーズ、好きなんだよね。
周囲には写真作品もあって、19世紀末~20世紀初頭の写真家ハインリヒ・キューンの「夏の風景」は結構好きだなあ。


「2章 <彼方>への旅」。
この章、最初はどちらかというと名前を知られてない辺りが続く(書き手が存じ上げてないだけかもしれない)。
最初は風景画から。
カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ「夕日の前に立つ女性」は展覧会ビジュアルにも選ばれてた。荒野の夕焼けの前に立つドレス姿の女性の後ろ姿は、やはり非常に印象に残る。
フリードリヒの弟子になるノルウェーの画家・ヨハン・クリスチャン・クラウゼン・ダール「ピルニッツ城の眺め」は、窓から眺めた夕焼けの風景の絵で、遠い風景と暗い室内の窓の全景という、面白い構図。
カール・フリードリヒ・シンケルはドイツの建築家だけれど絵画も描く方で、「ピヘルスヴェルダー近郊の風景」も前の2つの作品と同じく夕焼けの風景画。
で、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの弟子・カール・グスタフ・カールスはカスパー・ダーヴィト・フリードリヒの模写で「高き山々」を。
この辺は繋がっているドイツ関係の画家(ヨハン・クリスチャン・クラウゼン・ダールはノルウェーだけれど)。フォルクヴァング美術館所蔵だからこそなんだろうね。あまり拝見しない辺りだから面白いなあ…。
で、ここから繋げるギュスターヴ・クールベ国立西洋美術館とフォルクヴァング美術館双方から、「波」が。やはり格好いい荒れた海の波。
で、そこから象徴主義の方向へ。
ギュスターヴ・ドレ「松の木々」(国立西洋美術館への寄託作品、写真OK)とか結構好きかも。ドレは挿絵とか版画の方が有名なのかもしれないけど、こちらは油彩で、岩肌の描き方とかがちょっと独特。
ロドルフ・ブレダンのリトグラフ(いずれも国立西洋美術館所蔵)が複数出ていて、その中では「魔法の家」が好き。結構描き込むタイプなんだけど、「魔法の家」は家の壁の白と、周囲の描き込みで黒いので、メリハリがきいてた。
アルノルト・ベックリーン(日本だとベックリンって表記することが多いのかな)「海辺の城(城の中の殺人)」(フォルクヴァング美術館)ってなんか凄いタイトル…。別に絵の中で殺人は起きてないのだけど…。あ、アルノルト・ベックリーンって「死の島」の。タイトルがアレだけど、以前どこかの番組で解説聴いて存じ上げてた。
で、ここから繋がるのはギュスターヴ・モローオディロン・ルドンオディロン・ルドンはロドルフ・ブレダンに教えてもらったこともあるとか。
ここに出ていたギュスターヴ・モロー「聖なる象(ペリ)」「聖チェチリア」、水彩で色がとても綺麗で、いずれも宗教絡み(ちょっと宗教が違うけど)で、なんとも神秘的な雰囲気。いずれも国立西洋美術館所蔵なのね。
そして更に有名どころのゴーガンが。フォルクヴァング美術館所蔵の「扇を持つ娘」の雰囲気が結構好きかも。
で、クリスティアン・ロールフス「森の中」は、ちょっと変わった雰囲気だけど印象派、なのかな。最終的には表現主義の画家になるけど、時代的にも印象派を描いてた頃みたい。
フォルクヴァング美術館、存じ上げないけど面白いドイツの画家を出してくれるの、ありがたいなあ。


「3章 光の建築」。
最初はセザンヌから入るので、ポスト印象派という感じだろうか。
個人的には展覧会ビジュアルの1つにもなってた、フィンランドの画家・アクセリ・ガッレン=カッレラ「ケイテレ湖」(国立西洋美術館所蔵)の、不思議な湖面の描き方(でも素敵)にまずおおっとなって。
更にテオ・ファン・レイセルベルヘ「ブローニュ=シュル=メールの月光」(フォルクヴァング美術館所蔵)の美しい点描で描かれた港の夜の風景がおおお、で。
で、点描からポール・シニャックに。「ポン・デ・サール橋」(フォルクヴァング美術館所蔵)の明るさが素敵だなあ。
で、そこから抽象へ。
抽象は心のままにモンドリアンコンポジションX」、カンディンスキー「小さな世界」のシリーズのいくつか、パウル・クレー「月の出(サン=ジェルマン界隈)」辺りを気にしつつ。
モンドリアンパウル・クレーはフォルクヴァング美術館、カンディンスキー国立西洋美術館所蔵。


「4章 天と地のあいだ、循環する時間」。
最初は…自然とか牧畜とか農業とか、その辺がテーマなのかな。
個人的には拝見したことあるものが多かったけれど、ピサロ「収穫」は初めてかもしれない。国立西洋美術館所蔵なのだけど。
で、ちょっと毛色が違うものが。アントワーヌ・ブールデル「鋼の刈り入れ」「踊る女たち」「友愛の鳩」。水彩。
…え?ブールデルってあの、彫刻家のブールデル、だよね…?なんでも、松方幸次郎が彫刻の注文をしたら、お礼に送ってきた絵だそうで。貴重…。
そして更に毛色の違う、エドヴァルド・ムンクリトグラフの作品。
あ、「眼鏡を掛けた自画像」は普通に自画像なんだけど、「アルファとオメガ」は聖書の失楽園ティーフ…なんだけど…なかなかアレな連作で…(あ)
「絶望するアルファ」がムンクの名作のあの作品っぽいポーズとってるけど、凄い無表情に描いててちょっとツボに入ったりしつつ(多分そういう楽しみ方じゃない)。

で、最後、区切られた部屋は、花園。
ゴッホ「ばら」、モネ「睡蓮」連作に「黄色いアイリス」。
個人的にはドイツの女性写真家エンネ・ビアマン「睡蓮」が気になった。早世された方で、あまり作品数自体が多くないのだろうけど。


国立西洋美術館所蔵作品が多いこともあって、とてもとっつきやすい(上に抽象もちょこっとだけ入れてきて、初心者には良さそうな感じ)展覧会であると同時に、フォルクヴァング美術館からの、有名どころにプラスでドイツのアーティストを紹介してくれるような、幅広く楽しめる展覧会だったように思う。
満足。


続く。