時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

テート美術館所蔵 コンスタブル展@三菱一号館美術館

mimt.jp

ちょっと久々になった三菱一号館美術館
で…実はこの展覧会のメインになっている絵「フラットフォードの製粉所(航行可能な川の情景)」なんだけど、この看板、周囲の桜が映ってしまって、違う絵になっちゃってる(遠い目)まあ、それはそれで笑って許してください。綺麗ではあるし…(だめ)

コンスタブルはイギリスの画家。ターナーと同時代。
風景画中心の画家ということで、ちょっと地味かもしれない。ただ、なんとなく落ち着きたくてこんにちは。
ちなみに「テート美術館」はイギリスの「テート・ギャラリー」という組織で運営されている美術館で、ナショナル・ギャラリーに入りきらない作品の管理をしている様子。


1章「イースト・バーゴルトのコンスタブル家」。
コンスタブルの紹介とか初期の絵とか。紹介的な絵としては、御両親や奥様のマライアさんの肖像画等。マライアさんの肖像画、かなり美人。
コンスタブルは裕福な地主の御両親の元で育ったんだけど、マライアさんとの結婚はずっと反対されていて、お父様が亡くなってから結婚ということになったそうな(年表拝見したらコンスタブルが40歳で!)。ちなみにコンスタブルもなかなかハンサムだったみたい(他人が記述したものが残っている)。
あ、そうそう、コンスタブルはサセックス地方というイギリスの南東部の地方で育っていて(ロンドンより南)、そこの風景を主に描いていたそうで。
個人的には「テムズ川あるいはメドウェイ川の船舶のスケッチ」2点がなかなか素敵だったり、「外套をきたボンネット姿の少女の習作」もなんかいいなあ、と思ったり。ちなみに後者はカンヴァスじゃなくて「ミルボード」という厚紙に描かれいてるもので、以前は松方コレクションに入っていたそうな(今はテート美術館所蔵)。
また、「初期の影響と同時代の画家たち」ということで、ターナーとかゲインズバラ等の展示もあるよ。


2章「自然にもとづく絵画制作」。
ここから本格的に風景画に。「フラットフォードの製粉所(航行可能な川の情景)」もここ。
個人的には「モルヴァーン・ホール、ウォリックシャー」の水面の描き方が好きかな。
全体的に、まだ印象派も生まれてない頃なので、そういう光の描き方ではないかな。イギリスだから、ということもあってか、空が「綺麗に晴れ渡る」ような描写にもなりづらいしね。
「同時代の画家たちによる戸外制作」にて、やはりターナー等の展示も。


3章「ロイヤル・アカデミーでの成功」。
ぱっと目を引いたのが「ヤーマスの桟橋」。やはり曇りがちだけど空が広くて、海が綺麗で。
実はこの章、「ハムステッド、およびコンスタブルと同時代の画家による空の研究」として展示されている方が作品が多い。ハムステッドはロンドンより少し北の郊外の高台で、コンスタブルが家族のために空気が清浄な場所に引っ越したそうで。ここで空や荒野の習作を沢山残している。
確かにここの章の空は全体的にいいなあ。前述したように晴れ渡ってない、むしろ灰色の雲が多いのだけれど、それをいかに美しく描くか、という感じで。
あと、ちょっと話が逸れるけど、「ハムステッドの木立」の牛の描き方が結構好き。
同時代の画家の絵だと、アレグザンダー・カズンズ「嵐の前」のいかにも荒れそうな空とか、ジョン・リネル「アルファ通りのテイサム家の庭、夕景」の雲が薄くかかった夕暮れとかも素敵。


4章「ブライトンとソールズベリー」。
ブライトンはサセックス地方のリゾート地で、奥様が結核にかかったので静養で赴いたそうで。
ただ、リゾート地だから人が多くてコンスタブル自体は気に入っていなくて、「ブライトン近くの海」みたいな人気のない場所を描いていたらしいのだが(やはり空と海が綺麗)、なんだかんだでリゾート客が目につく「チェーン桟橋、ブライトン」も描いていて、これもいい絵なんだよね。コンスタブル、もしかして小さく群衆を書くのが上手いのでは…。
ソールズベリーは大聖堂で有名な街だけれど、大聖堂で奉仕している親友がいたので訪れていたそうな。奥様が亡くなってしまったこともあって、大聖堂付近で絵を描くことに没頭していたというのもあるそうで。結核だものね…と思ったんだけど、実は奥様、7人お子さんを生んでいて、亡くなる数か月前にもお子様を産んでいらっしゃったり。う、ううむ。


5章「後期のピクチャレスクな風景画と没後の名声」。
こちらは3パート仕立て。

まずは名声を確定した「ロイヤル・アカデミーでの競合」。
簡単に言うとコンスタブルvsターナー。このコンスタブルの絵「ウォータールー橋の開通式(ホワイトホールの階段、1817年6月18日)」、開通式の参加者の衣装や船の赤がいい感じで映える絵で。
で、この絵に並べられるターナー「ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ64号」の絵は空と海と帆船なので色が地味で、公式に与えられた絵の修正がOKな時間に赤いブイを書き込んで(!)コンスタブルの「ターナーが銃をぶっ放していったよ」ってコメントが残っているそうな。でも、ターナーの絵、これはこれで好きだけどね。帆船に当たる光の具合とか。

で、次が「イングランドの風景」。
こちら、実はコンスタブルの原画を木版画にしたもの。解説を加えて、後の教本にしようと考えたのだと。自分の後、を考えるようになったのですな…。
晩年は病気がち、ということもあったみたい(とはいえ、亡くなったのは実は普通に生活していて急に、だったそうなので、長いこと苦しむ、ということはなかったのかな…)。

最後は「晩年」。
今まで書いてきた風景のデッサンを再構成して、架空だけど素敵な画面構成を作って描く、ということをしていたそうで。
「ヴァリー・ファーム」は森と川と、ところどころにいる人と、牛と。結構気に入ってる。
でもって唯一今回写真を撮影して良い「虹が立つハムステッド・ヒース」。虹を描いているのは、これともう1つ、1つ前の章にあった木版画ぐらいかな。これはなかなか素敵な絵なのだけれど、もしかしたら実物で拝見した方がいいかも。虹の微妙な色具合が写真だと上手く出ない感じ。


今回は展覧会で珍しくお土産を購入。

イギリスで17世紀頃に盛んに作られた陶器「スリップウェア」の図案をモティーフにしたクッキー。
陶器自体はバーナード・リーチ濱田庄司が気に入ったらしく、日本の民藝運動にも繋がるものでもある。
つい好みで購入してしまった…。


続く。