時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

ハマスホイとデンマーク絵画@東京都美術館

ハンガリーからデンマークへ(あ)
www.tobikan.jp

正直、この展覧会があるのを聞いた時は驚いた。
morina0321-2.hatenablog.com
国立西洋美術館で最初に観た時にいいな、と思ったハンマースホイ。特集展覧会が開催されるとは。ただ、個人的に「北欧のフェルメール」って誰が言ったんだろうという感じはあるのだが(ぼそ)
そして同じ時に観たスケーエン展も、とても関係がある展覧会。
まあ、今回の展覧会は現地の音に合わせて、ハンマースホイハマスホイ、スケーエンはスケーインと表記されることになるのだが。


章は4つに分かれる。
ハマスホイは実は最後に集められている、のだが、実は冒頭に「画家と妻の肖像、パリ」が出ていたり。


改めて「1 日常礼賛-デンマーク絵画の黄金期」。
デンマーク黄金時代」という、創作活動が盛んだった時期があったんだね。
そしてここでおお?となったのが、クレステン・クプゲ(Wikipediaだとクリスチャン・ケプケ)。かなり多く作品が展示されているのだが…凄くいい風景画。空の色(青空も夕焼けも)、水面、建物の細かさ…。いきなり物凄い好みの絵が鎮座している感じ。
そしてもう一人、ダンクヴァト・ドライア(Wikipediaだとダンクヴァルト・ドライヤー)。ああ、クプゲの指導受けてるからなのかな、こちらの風景画も素敵。「ブランスー島のドルメン」という作品の「ドルメン」は新石器時代の巨石墓のことなのだけど、石が凄い存在感で描かれていて。
ちなみにどちらも30代で病気で亡くなられている。なんと…。
ヨハン・トマス・ロンビュー「シェラン島、ロゴスコウの小作地」も空の具合がいいなあ、と思ったらこの方も戦争で事故で20代で亡くなっているし…。
ピーダ・クレスチャン・スコウゴー「ティスヴィレの森から望むフレズレクスヴァアクの風景」は画面は暗めだけど、雪とか狐とかが素敵。


「2.スケーイン派と北欧の光」。
3年前のスケーエン展でも中心になったミケール・アンガ(3年前はM.アンカーと記載。Wikipediaだとミカエル・アンカー)とか、ピーザ・スィヴェリーン・クロイア(3年前はP.S.クロヤーと記載。Wikipediaだとペーダー・セヴェリン・クロイヤー)が中心。
ミケール・アンガ「9月のスケーイン南海岸」「スケーインの北の野原で花を摘む少女と子供たち」、ピーザ・スィヴェリーン・クロイア「スケーイン南海岸の夏の夕べ、アナ・アンガとマリーイ・クロイア」辺りの風景が中心の絵は好きだなあ。ちなみにアナ・アンガ(Wikipediaだとアンナ・アンカー)はミケール・アンガの妻、マリーイ・クロイア(Wikipediaだとマリー・クロイヤー)はピーザ・スィヴェリーン・クロイアの妻。
妻はどちらも画家で、アナ・アンガは3年前のスケーエン展でも今回でも作品がある(マリーイ・クロイアは結婚後に寡作になってしまったそうで)。アナ・アンガは、どちらかといえば家の中の生活の絵を描くことが多い画家なのかな。この画題、どうもその後も影響を及ぼしている感じがするなあ…。
ピーザ・スィヴェリーン・クロイア「漁網を繕うクリストファ」も家の中の生活の絵、かも。これは背中側からの光がいい感じでね。
そしてもう一人、気になるのがヴィゴ・ヨハンスン。「9月の夕暮れ、スケーイン」は夕暮れの空の色が素敵で、「台所の片隅、花を生ける画家の妻」は家の中の生活の絵。


「3.19世紀末のデンマーク絵画-国際化と室内画の隆盛」。
ハマスホイと同時代の絵。ここから「家の中の生活の絵」、がっつり出てくる。ヴィゴ・ヨハンスンの絵が数点あるせいもあるのかもだが。「コーヒーを飲みながら」とかねえ。これは所謂ヒュゲ、なのかな。
個人的にはラウリツ・アナスン・レング「遅めの朝食、新聞を読む画家の妻」。レングは貧民だったそうで、ずっと厳しい社会派の絵を描いてたけど、結婚した後はずっと妻との生活が主題になっていく、というエピソードが大好き。
あと、ピーダ・イルステズ「縫物をする少女」。光の指し方がいいのだが、モデルはイステルズの娘さん。お子様大好きなんだね…。ちなみにピーダ・イルステズ、ハマスホイの妻のお兄さん、つまりハマスホイの義兄。
あと、カール・ホルスーウ「読書する女性のいる室内」とか、「室内」とか、空気感が好き。…恐らくこの辺の空気感は、ハマスホイと近い。


「4.ヴィルヘルム・ハマスホイ-首都の静寂の中で」。
最初の頃は初期の絵。
「夏の夜、ティスヴィレ」が割と好きな風景画かもしれない。空の色が微妙なのは、陽が落ちない北方の国の空、なのかな(デンマークは完全な白夜ではないらしいけど)。
初期の頃はまだ個性が表れてないけれど、結婚した頃の「寝室」がもうハマスホイっぽい。
ちなみに、ハマスホイの絵の師匠が2.で出てきたピーザ・スィヴェリーン・クロイア。


これは展覧会にも言葉が展示されていたんだけど、クロイアの株が急上昇した(あ)。絵の先生として凄い能力だよねえ…。
で、「室内」「背を向けた若い女性のいる室内」はいかにもハマスホイな、背中側から女性を描く。あ、国立西洋美術館の「ピアノを弾く妻イーダのいる室内」もやっぱりこちらにお邪魔していた。
「画家の妻のいる室内、ストランゲーゼ30番地」は珍しく奥様が横顔なんだが、端の方にいて明らかに主題じゃない。どちらかといえば中央に近いストーブが主題なんじゃないのか、的な。
途中でちょいちょい風景画を挟む。ハマスホイは割とくすんだ空の色を描くことが多い。「三隻の船、クレスチャンスハウン運河の眺め」「スネガテスティーンの並木道」「風景、ゲントフテ」「クレスチャンスボー宮廷礼拝堂」等。空に紗がかかっているような感じ。実際、デンマークは冬はそんなに天気良くないっぽいが、「ロンドン、モンタギュー・ストリート」も空はくすんでいる。まあロンドンだけども。
なのだが、「ライラの風景」はびっくりした。こんな綺麗な空も描くんだねえ(え)
あと、「聖ペテロ聖堂」は塔が綺麗。1.にあったクプゲ「フレズレクスボー城の棟-湖と町、森を望む風景」からの影響じゃないかって解説にあった。
で、後期になればなるほど、誰もいない室内を描くようになる。どうも、ハマスホイは無人の室内を描きたくてたまらなかったらしい。…やっぱり変な人だ(あ)
「室内-開いた扉、ストランゲーゼ30番地」「室内-陽光習作、ストランゲーゼ30番地」「室内、蝋燭の明かり」…なんとも言えない空気感とか、淡い光の差し加減とか、蝋燭の炎の揺らめきとか。
そして締めにある絵はやはり誰もいない、「カード・テーブルと鉢植えのある室内、ブレズゲーゼ25番地」。


個人的には、国立西洋美術館での出会いでツボに嵌った画家なので、大変良かったのだが。
正直、お勧めするにはなかなか難しい…かな…。ひとの好みもあるだろうし。
むしろ国立西洋美術館に、この画家に会わせてくれてありがとうと言いたい。これがきっかけだったのだから。


さて、お金を展覧会に落としたいという理由もあり。
www.seiyoken.co.jp
展覧会特別メニュー「リンゴのシブースト バニラアイスを添えて」を頂く。シブーストって言うとフランス由来っぽいのだが、デンマークの「焼かないリンゴのケーキ」が伝統菓子としてあるみたい。
で、そこにスパークリングワインを合わせる(え)。東京都美術館のレストラン&カフェ3店舗共通のハマスホイ限定メニューなんだけど、何故か載ってない…。
美味しかった!