時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

カルティエ、時の結晶@国立新美術館

www.nact.jp
cartier2019.exhn.jp

普段の生活には全く無縁な(あ)フランス高級宝飾ブランド・カルティエの展覧会。
目の保養と、ちょっと気になることを聞いたので。あと、月曜平日開館の美術館なこともあり。

最初に、「展示物に解説がないので無料の音声ガイドをどうぞ」と。珍しい形式。
音声ガイド自体もスマホ方式。展示物一覧もあって非常にありがたい。紙のリストもあるんだけど、この展示会の会場は展示物が宝飾品ということもあって照明を落としていて(途中のベンチのところだけ明かりつけてくれた)紙だと見えない…。

で。この展覧会はカルティエの宝飾品を飾るだけ、じゃなくて。
新素材研究所という建築設計事務所が会場構成を担当している。
なので、イントロダクションは新素材研究所主宰の一人、杉本博司の作品「逆行時計」。杉本博司は写真家なのだけど、これは元々の古い時計を逆行化して修復してるミクストメディア作品。「時」を大事にしている作家さんだからこそ、かも。

ここからが本編。

序章「時の間 ミステリークロック、プリズムクロック」。
暗い中に何本もの淡く柔らかに光る白い柱。国立新美術館の展覧会サイトにもイメージがあるし、twitterにもあった。


会場の構成としてはとても素敵。
ただ、気になったのは、これって柱になってるから、柱が空いている一か所からしか作品が見えない。色々な角度から見る、ということができない。そして空いているのが一か所。これ、観客がその前で止まって観ることしかできず、その後ろからは見えにくい。これで観客の歩止まりを起こしやすい。観ている時も邪魔になっちゃいけないと思うので、気疲れする。これはもう、小型の宝飾品系展覧会は仕方ないと諦めるしかないかなー。
で、この展示物は置時計。「ミステリークロック」は、時計の針が機械と全く繋がれていないように見える時計のこと。デザイン恰好いいなあ…。個人的には「シングル アクシルのミステリークロック」が一番好きかな。
あと、特設サイトにもある「大型の「ポルティコ」ミステリークロック」、上に乗ってるの…ビリケンさん、だよね?(え)書き手がそう見えるだけ?

第1章「色と素材のトランスフォーメーション」。
4つの小部屋に分かれていて、それぞれガラスケースに入っているのだが、ガラスケースの背面が木材。


春日杉を使用とのこと。
あと、飾られている宝飾品の飾る台が変わってるの、この写真で分かるかな。トルソーとかの木材は神代杉や神代欅、あと屋久杉も使ってて、トルソーの土台は光学ガラス。石は伊達冠石を使用しているそうな。凄い凝ってる。
個人的には木のトルソーが本当に素敵で。多分、彫りも素敵なんだと思う。しかし、結構貴重な木を加工しちゃってるよね…。

小部屋その1、「メタルの技術:プラチナ」。
プラチナで細かい細工ができるようになったという提示。特設サイトにある「リリー」ストマッカー(胸飾り)ブローチとか本当に細かい。
個人的な好みは別のティアラだったけれど。黒の金属(ブラック加工スティールらしい)を土台にプラチナを飾ってる。

小部屋その2、「石の技法:グリプティック」。硬石彫刻。
個人的に気になった「ブレスレット」は黒翡翠に彫刻。

小部屋その3、「職人技と装飾技術:象嵌」。
マルケトリというらしいのだが、特設サイトにもあるシガレットケースは確かに目を惹いた。
カワセミの羽をはめ込むのはどうかと個人的には思うが。

小部屋その4、「カルティエのカラーパレット:「トゥッティフルッティ」 」。
「トゥッティフルッティ」はフルーツ尽くし、という意味らしい。色とりどりのフルーツイメージなのかなあ。
個人的な好みは、「ピーコックパターン」の緑主体のよりも、珊瑚とオニキスで全体的にコーラルピンクなブレスレットとか、アメシストトルコ石の青と紫のパターンとか、ピンクサファイアとパープルサファイアのピンクと紫のパターンとか、だけど。

で。実は大まかな3章構成、1つ1つに入るコーナー「トレジャーピース」。
杉本博司プレゼンツで、日本の古美術とジュエリーとの組み合わせ。
で、第1章の「トレジャーピース」は第1章の最後、屋久杉+ネックレス+…一輪の小さな草花。
花は作品だ。作家は須田悦弘。精巧な草花の彫刻を作成される現代作家。ケースに名前はちゃんと出ているけれど、リストにも載らず、公式の展覧会の紹介には一切なく。
実は、噂で須田悦弘の作品がある、と聞いたのが、今回訪れる決め手になったんだよね…。一度見たかったの。
古い屋久杉の板の上に豪華な宝飾ネックレス、の横にそっとある小さな草花。なんとも不思議な。

第2章に入る前に、第2章の「トレジャーピース」は、宝飾品の前に仏画の掛け軸。

で、第2章「フォルムとデザイン」。
ここ、説明は沢山あるんだけど(「アクシデント」という、事故で歪んだのをそのままデザインとして取り込む腕時計シリーズが一番分かりやすいかな)、そんなことより会場に圧倒される(記載後、公式twitterより風景写真が出たので追記)。


大谷石で組まれた、一見、荒涼としている感じすらある会場。ところどころに展示ガラスケース。
あと、この展覧会は全体的に涼しい会場なのだが(展覧会の外にでると気温が違っていて実感する)、この部屋は明らかに寒い。石のせいかなあ。薄着で来た人は無料ストールの貸し出し(途中の係員さんからも借りれる)があるので、遠慮なく借りた方がいいかと。

さて。この会場が終わると次にあるのは小コーナー「パンテール」。
パンテールはカルティエのモティーフの1つ。まあ、要は豹柄?(言い方)豹そのもののモティーフだったり、柄モティーフだったり。

更に続くのも小コーナー「アーカイヴ」。
ここは宝飾じゃなくて、デザイン画とかデザイン研究用史料。
アラビアの装飾を学んだり、浮世絵の研究本があったり。ってジャポニズムの波がここにも…。ちなみに浮世絵研究本の展示ページは鈴木春信だった。個人的に嬉しい。
あと、日本研究本があって、展示されていたページが藤模様だったのも個人的にはツボ。

第3章に入る前に、第3章の「トレジャーピース」。
掛け軸は白い神鹿。…春日大社のだ!そしてその前に、光学ガラスの塊の上に置かれる「2本の「フェーン(シダ)の葉」ブローチ」。このブローチはシダなのだけど、もしかして藤に見立ててる…?書き手としては、とても気になる配置だった。
春日大社展、もう2年前になるんだなあ(春日大社自体も4年前に行った以来かも)。
morina0321-2.hatenablog.com
あと、その横にネックレスが飾られているのだけれど、それが飾られているのが寺院の天井板の上で。この天井板、もう薄くなっているけれど、往時は鮮やかであっただろう色彩が施されている。いいなあ…。

第3章「ユニヴァーサルな好奇心」。
自然からのインスピレーション(花とか鳥とか爬虫類とか)と、外国からのデザインと。
この章は写真OK。写真撮影用なのか、ガラスケースの背景は一切撮影の邪魔にならないような黒。実はしれっと左官仕上げ。凝るなあ…。
自然からのインスピレーション、分かりやすいのは蛇。割とまんま蛇。綺麗だけどね…。
外国からのデザインは、日本とか中国とか、アフリカだとピラミッドとかスカラベとか。日本だと梅だったり、ヴァニティケースを印籠形で作ったり。面白いことしてるなあ。中国だと、まんま中国の建物みたいな「時計付きデスクセット」が。陰陽ペンダントなんかもあったよ。
個人的に一番よく撮れた写真はこれかなあ…。ちなみにピンクの石はピンクスピネルだそうな。

で、個人的に軽くツボったのはこちら(一番左)。

だれーんって感じになってる…。タイガーのネックレスなんだけどね。

面白かった。混んでる時に行くと宜しくない展覧会ではありそうだけどね。