前回のチケットでそのまま入っているので続き。
気になったところをざっと。「東西交流160年の諸相」というサブタイトル…と個人的な趣味がリンクするかは微妙なところ。
第7章「横浜浮世絵と輸出工芸」。
歌川広重の二代&三代の浮世絵が見られる。この辺が明治時代初期に浮世絵描いてた、というのは聞いたことがあった。興味深く。
で、初代宮川香山の技巧凝らしまくりの「高浮彫大鷲雀捕獲花瓶」「高浮彫桜ニ群鳩大花瓶」がとにかく凄い。明治時代の工芸は本当にどうなってるんだ…。
その流れで(展示室から外れた)回廊スペースの「特集 横浜の陶工 ― 初代香山と三代良斎」を。
こちらは三代井上良斎の作品が気になりつつ。板谷波山に師事しているので、波山っぽい淡い光の「白磁花瓶」もあれば、モダンだけどなんとなく古代オリエントとか西アジアにありそうな文様の「波文象嵌壺 銘「海」」とか、形的には昔からありそうだけどなんだかモダンさもあるように思える「蕎麦釉水差」、どこか西洋風なコバルト色の下部に日本風な淡い梅の花、という「コバルト釉紅梅花文花瓶」。なかなか素敵。
第8章「下村観山の滞欧経験」。
横浜美術館は観山特集してくれるので個人的には嬉しいのだが、いきなり出てきたのが観山が模写したジョン・エヴァレット・ミレイ「ナイト・エラント」。えええええここでラファエル前派と繋がるのー!?
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ちなみに、元の絵は昨年横浜美術館で開催した「ヌード NUDE ―英国テート・コレクションより」に出展されていて、コレクション展では観山の模写を出して、見比べることができたのだそうな。それは観てみたかったなあ。幹の描き方とか元と比べたい…。
ラファエロの模写も出てるよ。
後は新収蔵品「三聖之図」。観山がキリスト描いてる…。
そういえば、先日の東京国立近代美術館で「ダイオゼニス」があったなあ、と思ったら、この絵もイギリス留学中に描いた絵なのね。繋がるなあ。
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第9章「木版画の日本」。
第7章からの流れとも言えないわけではないが、先日から木版画に親しいのは気のせいだろうか。これとか。
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1/4ぐらいはポール・ジャクレーなんだけど、個人的にはいまいち合わないかなあ。というか、日本の新版画への流れが素敵なんだろうな。
橋口五葉は外でも何点か見ていると思うんだけど、「耶馬渓」「京都三条橋」いいなあ。美人画はいくつかあるうちの「長襦袢を着たる女」が気になった。
吉田博「瀬戸内海集 帆船 午前」「東京十二題 亀井戸」も気に入る。「グランドキャニオン」もいいけど、もっと面白いのは、山岸主計も「グランドキャニヨン」描いてること。表現が全然違うのがいい。個性。どっちも気に入った。
そして新版画と言えば川瀬巴水。眼福。しかしここでも「東京十二題 雪に暮るる寺島村」見るのか。上記の東京国立近代美術館でも見たばかりだ。版画は複数刷るからありがちだけどさ。
伊東深水「涼み 「新美人十二姿」より」も良かった。深水の美人画の女性はいまいち合わないことが多いのだが、後ろ姿のせいかな、これは素敵。
で。今まで新版画の流れの話をしていたが、実はちょっと前のものも出ている。水野年方と鏑木清方。水野年方は月岡芳年の弟子で清方の師匠になるのですな。なお花鳥画を渡辺省亭に習ったりもしている。…ああ、そりゃあ年方が気になるわけだ。まず、年方「御殿女中図」と清方「春のななくさ」が並んでいて眼福となり、その後ガラスケースに年方と清方の雑誌や本の挿絵がずらっと。おおお…。
こちらも展示室から外れて、ホワイエ&グランドギャラリーとなっているけれど要は展示室前からエントランスの広いスペースに、「イサム・ノグチと近代彫刻」。
彫刻はよく分からない書き手だが、マグリット「レカミエ夫人」が。後で調べたら、これ、元々はダヴィット「レカミエ夫人」という名画があって、そのレカミエ夫人が描かれている部分を丸ごと棺桶にした(!)という、なんともマグリットらしい作品。
ちなみにこちらの作品はそのままの絵もある、というかマグリットは時々絵を描いた後に彫刻を作る。彫刻だけが横浜美術館にあるみたい。実は昨年、富山県美術館のコレクション展で見た「真実の井戸」が絵も彫刻も揃ってて、それで知ったのだが。
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ちなみに「真実の井戸」はブーツ片方。
法外にいいものを観た…。閉館時間間際で、ミュージアムショップに寄ることすらできなかったけれど。