時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

ラスキン生誕200年記念 ラファエル前派の軌跡展@三菱一号館美術館

三菱一号館美術館は、展覧会が終わると特設サイト閉じちゃうので、リンクは貼らず。

三菱一号館美術館は金曜は21時まで開館。仕事終了後、駆け足で。前回の展覧会チケットのリピート割で、少しだけお安くして入った。
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ラファエル前派についてはWikipediaでも。
ja.wikipedia.org
確かにどの絵も、本当に細部が細かく写実されているのは共通かも。ただ、それ以外は作家によって特徴はあるかな。
ラファエル前派を支援したのは美術評論家のジョン・ラスキンで、今回の展覧会は彼を軸に構成されている。

第1章は「ターナーラスキン」。ラスキンが影響を受けたターナーの絵がいくつか。ターナーは個人的に気になる画家。昨年のターナー展に行けなかったのが少々無念。
で、ラスキン自身もあちこちで「あるものをあるがままに描く」デッサン開始。正直、最初はあまり上手くないけど、どんどん細部を綺麗に描いていくのが分かる。「渦巻レリーフ ルーアン大聖堂北トランセプトの扉」の細かさはおおお、と。

第2章は「ラファエル前派」。
今回、三菱一号館美術館には珍しく、この章の大半の絵の写真撮影が可能。
この展覧会のアイコンにもなってる絵はこちらに。ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ「ウェヌス・ウェルティコルディア(魔性のヴィーナス)」。今回はラファエル前派の中でも、ロセッティ推しなのかなーと。
ただ。ロセッティの今回の絵、はっきりした美人ではあるのだが、殆ど同じ顔をしている。それはモデルが同じだから。ウィリアム・モリス(後章で出てくるよ)の奥様、ジェイン・モリス。
そして書き手が唯一撮影したロセッティの絵は、それとは違う顔の、「エリザベス・シダル―《ダンテが見たラケルとレアの幻影》のための習作」。鉛筆デッサン。どちらかといえば慎ましげな感じの。
この辺の絡みはうぃきって頂ければ、と(あ)割とやりきれない話ではあるよね、この辺。
一方、書き手の目的はジョン・エヴァレット・ミレイ。ミレイを知ったのは「オフィーリア」という絵があることを知ったから。知ってから、大塚国際美術館でレプリカを見ている。インパクトが強い。改めて見ると、細部がとても綺麗で、ラファエル前派なんだなあ、と。
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先日、某鬼籍に入られた女優さんの本の表紙が「オフィーリア」オマージュでびっくりしたりしたが、それは余談。そして余談とは言い切れないけれど、「オフィーリア」のモデルは、エリザベス・シダルなんだよね…。
さて、今回は「滝」と「結婚通知 ―捨てられて」に惹かれる。前者は自然描写が素敵で、後者は背景一切書いてないのに女性の表情がなんともいえず。
なお、「滝」に描かれている女性は、ラスキンの奥様。ここもラスキンと絡めてるんだなー…と言いたいところなのだが。今回ミレイが影に回ったのって、やっぱりラスキンを軸にしてるからかなあ、と思わなくもない。ラスキンの奥様のユーフィミア、別名エフィー・グレイは、後にミレイの奥様になられているので(遠い目)いやあ、まあ、ちょっとググっただけでも、ラスキンに問題がねー…。ロ…とか、二次元脳…とか…(ぶつぶつ)
「滝」自体は素敵な絵なのだけれど、裏を考えると…ううむ、となる。
ロセッティといい、事前に情報はあった方がいいのか、そうでないのか。

第3章は「ラファエル前派周縁」。ざっくりだな。ラスキンが評価してた画家、というくくりかな。
個人的に好きな辺りは、ウィリアム・ヘンリー・ハント。別名「鳥の巣ハント」と呼ばれるぐらい、鳥の巣の絵が上手かったそうで。実際、「ヨーロッパカヤクグリ(イワヒバリ属)の巣」はかなりツボで、ポストカード購入。「果実 ―スピノサスモモとプラム」も素敵。
後はウィリアム・ダイス「アラン島の風景」。ラスキンも多分ツボだったんだろうな、とても細かく描かれてる風景画。

第4章は「バーン=ジョーンズ」。エドワード・バーン=ジョーンズの絵がどどどどん。
エドワード・バーン=ジョーンズはロセッティの弟子。で、ロセッティよりもファンタジーになるイメージ。神話とか聖書とかが題材になることが多い。個人的にはちょっと好みからは外れるかな…。
ただ、これは区分としては第5章に入るのだけれど、「迷宮のテセウスミノタウロス(タイル用デザイン)」の、ひょっこり顔を出すミノタウロス=牛さんが可愛い(え)

第5章は「ウィリアム・モリスと装飾芸術」。
ウィリアム・モリスエドワード・バーン=ジョーンズの友人で、前半はモリスとエドワード・バーン=ジョーンズの共作がいくつか。前述の「迷宮のテセウスミノタウロス(タイル用デザイン)」も共作。
なお、モリスは奥様がロセッティと色々あり、エドワード・バーン=ジョーンズも女性関係で問題があって、モリスがエドワード・バーン=ジョーンズの奥様と仲良くなったり、とか、うぃきってぐったりする話が出てきたりする。ラファエル前派の周囲はこういう方ばかりなんだろうか…。
閑話休題。後半はモリス提唱の「アーツ・アンド・クラフツ」に纏わるもの。モリスの商会で作った製品のうち、家具とか装飾用織物とかが個人的にはツボ。
で、一番のツボは、モリスが作ったケルムスコットプレスという出版社の本。装丁がとにかくツボ。装丁デザインのポストカードは勿論購入した。

個人的には楽しい展覧会ではあるけれど、もう少しミレイの絵とウィリアム・モリス関連を見てみたいかなあ、という物足りなさもあったり。