時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

昭和モダン×百段階段~東京モダンガールライフ~@ホテル雅叙園東京

前回の場所と同じく、最寄り駅は目黒駅。ただし逆の出口。
駅から大した距離ではない…ないが…行人坂を下るのが、急で怖いんだが…。
まだ普通の天候ならともかく、この日結構な雨だったからねえ。余計に。


というわけで、お話には聞いていたのだが、初めての。
www.hotelgajoen-tokyo.com
あ、雅叙園自体は初めてではないはず。結婚式に御呼ばれした記憶がうっすら。
百段階段は初めて。
土足禁止、備え付けのスリッパはないので靴下必須。


百段階段は、雅叙園が料亭だった時代から存在する、百段の上がる階段の途中に、複数のとても豪華な宴会場がある建物。
行人坂の麓にある建物だからこそできる建築である。
階段は別にきつくはないけど…階段の天井から花鳥画ゴリッゴリである。
階段の天井の花鳥画は橋本静水。橋本雅邦の弟子で養子になるそうな。なかなか素敵な絵を描かれる。
装飾は気になるけど足元注意だし、通路だし、どうしたらいいやら。

ともあれ、それぞれの宴会場=展示場を拝見していく。

まずは「十畝の間」。
荒木十畝花鳥画が天井に飾られている宴会場。
ただ…これ、どこの部屋でも言えるんだけど、とにかく随所の細工が美しい。なんだこの建物…。
これ、建物だけ拝見できる時に伺っても全然良いなあ…。
とはいえ今回は「昭和モダン」テーマである。
この部屋のテーマは「モダンガールの装い」ということで、「職業婦人」「夜会」「銀ブラ」をテーマにした衣装及びシーンの展示。

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1枚目のタイピストとカフェーの女給、こちらが「職業婦人」。でもって2枚目が「銀ブラ」。
…これ結構好きな展示だ…。
当時のシーンと一緒だと、銘仙のデザインも映えるなあ。普通のシーンだと、変な派手さがある感じがする。

次は「漁礁の間」。
「漁樵問答」という中国の画題が、柱に彫刻されている。精巧で妙に迫力があって、ちょっと怖さすら覚えるぐらい。
盛鳳嶺という彫刻家の作品だそうな。なお、原画は尾竹竹坡とのこと。
更にここには美しい美人画の壁画が。こちらは菊池華秋が描いていた。美人画で有名な方だったそうで。
さて、この部屋の展示のテーマは「モダンガールのおめかし」。
化粧品や、モダンガールっぽい小物が沢山展示されていた。
当時のポスターなんかも展示されてたんだが、そちらは写真NG。この辺のデザインとか好きなので、少々残念ではある。
化粧品やら香水瓶のデザインやら、これは今でも好きな人は好きなデザインなんじゃないかなあ。見ていて楽しい。
そして同時代ということで、ルネ・ラリックの香水瓶やら、サラ・ベルナールのプロマイドが出てきたり。

次は「草丘の間」。
「草丘」は礒部草丘という日本画家。格天井や欄間の絵の作者。
で、ここに展開されているのは、元々は日本間であろう部屋を「文化Bar」に。上記のInstagramの3枚目の写真。
普通にこういうお店あったら雰囲気いいなあって思う内装である。
ステンドグラスのランプや飾り、暖炉も導入されてとても雰囲気が良かった。
あ、飲食が提供されるわけではないのであしからず。飲食OKな場所に作って提供してほしかったけどねえ。
あと、展示されてた「モダンガールの資格十ケ條」。
これの第四條が「ひととおり洋酒を飲んで味を覚えろ」があり、「文化Bar」の元になったのだが。
全体的に、これは風刺とか笑っていいやつなのかしら、と思いながら。
個人的には第九條「伊勢屋のノレンをくゞるのにヘキエキしてはならない」が好き。伊勢屋は質屋。どれだけ金銭的に無理させるのよ。

次は「静水の間」。
部屋が2つあって、手前は橋本静水の絵で飾られている。奥の天井画は池上秀畝、欄間は小山大月のもの。
ちなみに、元々静水の絵だったところは、昔は山川秀峰だったそうで。う、山川秀峰も拝見したかった…。
で、ここの展示は、この辺の展示でモダンと言えば出てくるよね、の竹久夢二作品。
ただ、絵画もあるんだけど、半分ぐらいは楽譜の装幀とレコードジャケット。絵画も楽器を弾いている絵を展示していたり、なかなか面白かった。

次は「星光の間」。
「星光」は板倉星光という日本画家。菊池契月のお弟子さんか。美人画が得意な画家だそうなのだが、ここは繊細で美しい草花の絵が多かった。あと、小さな襖に蝶を描いたり。小さく描かれたバッタ的な虫もとても綺麗。
で、個々の展示は、小林かいち木版画家で図案家。
この頃の寵児だったみたいですなあ。そして個人的にもかなり格好良くて好みのデザイン。
女性が細身、極端に細身に描かれてるのもあるんだけど、むしろよりデザイン的というか。アール・デコ風と呼ばれてた(ただ、書き手はそこまでアール・デコは好みではないはずなんだが)。
絵封筒のデザインとかを手掛けていて、そういうものだと基本的に作者のサインとか入らないから、小林かいちの作品でないものもあるかもしれない、とのこと。
そのうち研究が進んだりするのかなあ。また拝見したい作家である。

次は「清方の間」。
…部屋の名前だけで倒れていい?(落ち着け)
名前の通り、鏑木清方の絵が天井に欄間に…!
展示の話。
ええと、立東舎というレーベルがありまして。…って、リットーミュージックのレーベルじゃないですか…。リットーミュージックは音楽雑誌の会社。音楽系で色々お世話になっておりますねえ。
で、そこが「乙女の本棚」というシリーズを出していて。文芸書であり画集でもある。書き手も本屋で一度拝見したことあるなあ…。
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このうちの江戸川乱歩「人でなしの恋」を立体展示(着物とか出てくる調度とか)している。
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で、周囲に文章や挿絵を展示。挿絵のイラストレーター・夜汽車さんの絵も今時の美しい絵でございます。
立体展示も美しい。ところどころに色紙で作成している蝶が飾られていて、雰囲気も抜群。あ、この展示のテーマは「大正デカダンスと文学」。うん、デカダンスなの分かる。
ちなみに「人でなしの恋」は青空文庫にも入ってて、そちらで文章を通しで読んだ。短編なので楽に読める。挿絵なしでも、オチが薄々読めても、文章自体に読ませる力あってちゃんと面白いよ。
書き手はこういうのだと、挿絵なしで読んだ方が情景を自分の脳内で展開するので面白いんだけど、この辺は好みでしょう。
問題は、書き手が清方好きすぎて(実際欄間に、清方の美人が複数おられる)この部屋展示なくていいなあ、って思っちゃったことだと思う(おい)
…建物展示の時にまた来ます…。

さて、百段階段を九十九段上り。あ、そう、百段階段ってあるけど九十九段しかないの。終わりを作らないで永遠にしているってことでいいのかね。
「頂上の間」。
素敵な広い窓から覗けるのは中庭的な感じなのかなあ。庭というよりは小さな深山幽谷、なんだけど。いい趣味だなあ。
展示は「モダンガール その先の時代へ」。昭和モダンなアンティークな着物を題材にして、画家・イラストレーターの加藤美紀に絵を描いてもらうという企画が。

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でもって、中原淳一の展示がここで来るか。そうですよね、展示しますよね、とは。




なかなか大盛りな展覧会ではあった。
建物と企画、どちらかに絞っても面白そう。




流石に疲れたし、まともにお昼も食べていなかったので、遅いお昼を。


「バルマルシェコダマ ステーキ&ロブスター」という、目黒駅のアトレ(駅ビル)に入っているお店。
人気店なんですな。そうでしょうね、美味しかったもの…。食べ過ぎるぐらいに…。
駅ビルで適当でいいや、で、入っちゃって、本当に申し訳ございませんでした…。