時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

ルーヴル美術館展 愛を描く@国立新美術館

半年ぶりの乃木坂駅

駅でピンクのネズミが泳いでるんだが。
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こういうプログラム。こういう試みもありだと思うよ。



本題。

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この展覧会が開催されるのは随分前から存じ上げていたけれど、最初に「え?」ってなったのは、開催前だったりする。
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展覧会テーマソングは、別の展覧会でも実は見かけたので、そういう仕事もあるんだなあ、とは思ったのだけど。SOIL&"PIMP"SESSIONSが絡むとは思わなかったよ…。
なので、テーマソングの件は美術方面じゃなくて音楽方面から知ったという。
こちらの展覧会、主催が日本テレビで、もしかしたら日本テレビのドラマの劇伴やったところからお話が来たのかもねえ、と思いつつ。
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ちなみに、書き手は実はインストVer.が結構好きだったり(あ)SOIL&"PIMP"SESSIONS、元々インストバンドだから、インストがしっくりくるといのもあるとは思う。
なお、音楽は会場中には流れてなくて、音声ガイドには入ってるとのこと。
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こちらを書くのに遅れてたら、別バージョンも出たりして。



展覧会の前にお昼(事前予約時間の前に着いたので)。地下1階のカフェテリア「カレ」。


展覧会特別メニュー「牛肉とサルシフィのトマト煮 バターライス添え」。サルシフィは煮物に入ってる白いもの。西洋ごぼうごぼうと言いつつ、癖がないのでさらっと食べられちゃう。
添えてるちりめんキャベツ、多分塩で一度湯がいてるのかな。異様に美味しかった。



プロローグ「愛の発明」。
ここに絵は3点。「アダムとエバ」題材の絵が2点と、「愛の神アモル」1点。
愛の神アモル…と言うけど、要はローマ神話のキューピッド(クピド)、ギリシャ神話のエロス。
フランソワ・ブーシェ「アモルの標的」は展覧会ポスターにもなっていたけれど、明快に美しい絵。ブーシェは明るくていいよね。


そしてそのまま「1.愛の神のもとに-古代神話における欲望を描く」。
…欲望…うん、そうだよね。神話、ロクな恋愛ないものね…(遠い目)
なお、この章、肌色がとても多い。神話にすると堂々とヌード描けるしな(こら)。

「1-1.欲情-愛の眼差し」。もうこのセクションのタイトルだけで駄目な気がする(あ)。
寝顔覗いてるパターンとか、不倫を目撃するパターンとか。
前者だと、「恋人の正体見てはいけない」と言われてたけど見たくなってしまう鶴の恩返しパターンのルイ=ジャン=フランソワ・ラグルネ(兄)「眠るアモルを見つめるプシュケ」まあまだ分からなくもないんだが。
惚れた人間をずっと見つめて行ったら(寿命で)老いてしまうからどうにかして、と嘆願したら若いまま永遠の眠りについてしまって、それをずっと見つめてるという悲恋というか結構自分勝手(眠らされた方はどうなんだ)のジャン=ブルーノ・ガッシー「ディアナとエンデュミオン」とか。ちなみに他の御客様から「セーラームーン…」とか聞こえてきたりしたり。モティーフなんですな。
アントワーヌ・ヴァトー「ニンフとサテュロス」のニンフの白い肌とサテュロスの褐色の肌の対比がなんともこうアレで、個人的には結構好き(好きなのかよ)。
後者は、ラグルネ兄「ウルカヌスに驚かされるマルスとヴィーナス」。
要はマルスとヴィーナスの不倫をヴィーナスの夫・ウルカヌスに見つかった、と。
ついでにルカ・ジョルダーノ「ウルカヌスの火事場のマルスとヴィーナス」って、不倫相手の旦那の職場で逢瀬というアレな場面。
ちなみに、ラグルネ兄の絵はポンパドゥール侯爵夫人(フランス国王ルイ15世の公妾)の館にあったものだそうな。いいのかこの題材で。

「1-2.暴力と魔力-欲望の行為」。
暴力というか、男性が女性を掠奪とか、魔女が男性を魔法で誘惑するとか。
ラグルネ兄「デイアネイラを掠奪するケンタウロスのネッソス」、ネッソスの人と馬の境目が凄い描き方になってて、おお、っとなった。

「1-3.死が二人を分かつまで-恋人たちの結末」。
ああ、そうね、神話だと成就した恋人同士でも容赦なく悲劇になったりするよね(遠い目)
レオナールト・ブラーメル「ピュラモスとティスベの遺骸を発見した両親たち」のピュラモスとティスベは、ロミオとジュリエットのモティーフになったものだし、ダフィット・テニールス(子)「ヘロとレアンドロス―溺れたレアンドロスを発見するネレイデス」は、大分昔の映画「マリリンに会いたい」的なことをやってるわけで(言い方)。
あ、でも、ブーシェ「プシュケとアモルの結婚」は珍しくハッピーエンドではある。ブーシェはハッピーエンドを描いてほしいしな…。

「1-4.愛の勝利」。
このセクションはアモル特集。
ウスターシュ・ル・シュウールがかなり点数多め。別にアモルだけ描く画家ではなさそうなんだけど。


「2.キリスト教の神のもとに」。神話の絵から宗教画へ。

「2-1.「ローマの慈愛」からキリスト教の慈愛へ」。
「ローマの慈愛」は元々ローマの歴史書の一説なんだそうで。一応、孝行的な美談。獄中で食事を与えられない刑を受けている父親に、娘が母乳を与えて救おうとするという。…いやまあ…書き手も書いてて微妙な顔をしているが(あ)
結構描かれている題材なんだけど、当初から近親相姦的なことを指摘されてたらしい。まあ、倒錯的な感じはするよね…。シャルル・メランの絵が出ていた。
でもって孝行話もう一つ、今度は聖書で「放蕩息子の帰還」。息子が親からもらったお金で旅立って、放蕩ですってんてんになって恥じながら帰ってきたのを、父親が全く動じず歓迎して迎え入れるという話。…なんか色々微妙な顔になるけれども(あ)
ただ、キリスト教が入ってから、「愛」が家族愛も含むようになったよ、というのが言いたいのは分かった。

というわけで「2-2.孝心・親子愛-聖家族にみる模範」。
「聖家族」=幼子イエスと養父ヨセフ、聖母マリアの図。
「放蕩息子の帰還」の絵も1つ入ってはいるけど、基本的には聖母マリアと幼子イエスとか、聖家族の絵。
…1のセクションの後に見ると、正直ほっとする(あ)
シャルル・ル・ブラン「エジプトから帰還する前の聖家族」は、やたらとヨセフが格好いい。こちらの絵画、大工組合から依頼されて作成したのだけど、ヨセフが大工で、大工の守護聖人でもあるそうで、だから格好良く描かれているとか。

「2-3.犠牲に至る愛-キリストの犠牲と聖人の殉教」。
キリスト殉教図とキリスト教殉教者。今回は女性が多いのは…まあ、女性の方が需要が多そう…(こら)
聖アガタの絵もあった。キリスト教徒で囚われて拷問で両方の乳房を切り落とされる、という。…いちいちエピソードがアレなものが多い。そのエピソードもあって、乳癌患者の守護聖人にもなってるらしいけど。

「2-4.法悦に至る神への愛-マグダラのマリアの官能的・精神的な愛」。
マグダラのマリアもモティーフとしては多いだろうなあ、とは。いかにも画家が好きに描けそうなモティーフだしね…。
というかセクションのタイトルに「官能的」ってつけちゃう辺り、キュレーターの意図を感じなくもない。
ベネデット・ルーティ「キリスト磔刑像の付いた十字架を手に、瞑想するマグダラのマリア」は、正直官能的な表情ではあった。うん…。


「3.人間のもとに-誘惑の時代」。
ここまでは神話とか宗教の世界だったけれど、ここからは一般の民の「愛」の話に。

「3-1.室内と酒場-オランダ絵画における愛の悦びと駆け引き」。
一般民衆の恋愛模様、的な。
とはいえ、若い女性をからかう年配の男性、とか、恋人っぽいカップルを窓の外から盗み聞ぎするとか、後はまあ、春をひさぐ系っぽいけど匂わせてるぐらいで両方ともきっちり服は着てるし、的な。
サミュエル・ファン・ホーホストラーテン「部屋履き」は、誰もいない部屋の入口に、脱ぎ捨てられている部屋履きの絵。意味深。なんとなく、ヴァロットンを想起したり。

「3-2.優雅な牧歌的恋愛-フランス流の誘惑のゲーム」。
パストラル(田園詩)というジャンルになるらしい。牧歌的な恋愛の絵が続く。
が、ここでとても建物が格好いい絵に出くわす。
ユベール・ロベール「かつてヴィーナスに捧げられた神殿」。どうやらデートスポットのようで、ここで語らうカップルが小さく描かれているんだが、流石「廃墟のロベール」、建物が本当に格好いい。

「3-3.エロティシズム-「かんぬき」をめぐって」
「かんぬき」は今回展示の目玉の作品、ジャン=オノレ・フラゴナール「かんぬき」。ベッドの横で、とてもドラマティックな動きの男女、男性の右手には閉じられたかんぬき。意味深ですな…。
そしてもう少し直接的なエロティシズムなのが、フランソワ・ブーシェ「褐色の髪のオダリスク」。肌も露わなハレムの女性が、ベッドの上でなんとも官能的な姿。…この時代、一般民衆の女性でなく、「ハレムの女性」だから、こういう風に描けるんだよなあ…。
時代はもっと後だけど、国立西洋美術館所蔵のルノワールアルジェリア風のパリの女たち(ハーレム)」もそうだけど、遠い国の女性はフィクションっぽいので裸体描いても許される、みたいな。
だからマネ「草上の昼食」は問題作扱いだったし。
あ、ブーシェなので作品自体はとても美しいよ。

「3-4.夫婦の幸福の演出」。
いかにも幸福な夫婦の絵。
トマス・ゲインズバラ「庭園での語らい」は、夫婦よりもむしろ風景がとても美しい。

「3-5.結婚の絆か、愛の絆か?」
ここで面白い絵はギヨーム・ボディニエ「イタリアの婚姻契約」。
婚姻の手続きを公的に行っている絵。夫婦とそれぞれの母親は熱心なのに、新婦の父親が召使の女性に完全に目がいってるという。人間らしく微笑ましい。



「4.19世紀フランスの牧歌的恋愛とロマン主義の悲劇」。
ここまでは17世紀~18世紀の絵画だったので古典主義からロココという感じだったけれど、このセクションは19世紀。で、この頃は題材的には神話多めだったりする。
そしてこのセクション、写真OK。これは結構嬉しい。
展覧会ポスターにもなったフランソワ・ジェラール「アモルとプシュケ」はとても綺麗。
テオドール・シャセリオー「ロミオとジュリエット」は習作なのかな。ざっと描かれているけれど結構雰囲気が好き。
ウジェーヌ・ドラクロワ「アビドスの花嫁」は小品だけど、ドラクロワっぽいドラマチックな動きと、服がとても素敵。書き手が服を着た絵が好きなのかもしれない(今更それを書くのか、この展覧会で)。
ちなみにドラクロワの題材はバイロンの悲劇なのだそう。シャセリオーの作品もそうだけど、当時、悲劇を題材にした絵も多く書かれたそうな。



書き手、実はこの手の時期の西洋絵画はあまり拝見するジャンルではないんだけど、なんか結構勉強になった感じ。神話とかキリスト教とか。




ちょっと時間があったので、国立新美術館の別会場で開催していた汎美展へ。入場無料だったし。
こちらは抽象画だったり現代アート的な作品だったりが多くて、また縁遠いのだけど、ふらっと拝見するには面白かった。





1階のカフェ「コキーユ」でお茶して帰った。
なんか、国立新美術館でぶらぶらするのが目的みたいな感じに。