時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで@東京都現代美術館

www.mot-art-museum.jp

東京都現代美術館は初来訪。
水天宮前駅から歩いて10分程度。昼下がりの14時に歩くのは少し辛い…って、雨…?
晴雨兼用傘で助かった。
ちなみに写真撮った時も結構降っていた。降ってるように全く見えない青空がバックだけど(お天気雨だった)。

で。
morina0321-2.hatenablog.com
前回伺った展覧会に続く、椅子がメインビジュアルになっている展覧会。
現代美術が得意でない書き手、これを機に来訪しようかな、というのもあった。
ジャン・プルーヴェはフランスの建築家&デザイナー。
今回初めて知ったのだけど、フランスのナンシーという町は元々ガラス工芸が盛んで、アール・ヌーヴォーの時代にナンシー派という派閥ができて、そこにはエミール・ガレ(ナンシー生まれ)やドーム兄弟普仏戦争でナンシーに避難してきた)も属しているという。
そのエミール・ガレと親交があった彫刻家・ヴィクトール・プルーヴェ(こちらもナンシー派)の息子さんがジャン・プルーヴェ。なんかもう、最初からデザインありきな生まれなんだなあ…。
ジャン・プルーヴェはそこからガラスじゃなくて、金属工芸へ進んだのだけど。


最初の展示場所は1階。
最初の部屋は「イントロダクション」。ここだけ撮影禁止。
で、ここにはテーブルとか、什器(展示用の)とか、ファサード・パネル(建物のデザインの表面。日本だとファサード保存と言って、古い建物のデザインだけ残す方法がとられることがあるよね)とか、そういうものが展示されてる。
なんか…殺風景…というか無機質…?
前回がどちらかというと生活に寄りそう椅子デザインが多かったので、余計にそう思うかもしれない。


次の部屋、というか通路から撮影OK。
で、通路の下に。

なんか家がある…?


どきどきさせながら次の部屋、セクション「工芸から工業へ」。
そこに展示されていたのは、主に椅子とテーブルで組み合わせた、色々なシチュエーションのセット。
やっぱり殺風景で無機質…というより、これ、機能的って呼ぶものだ…。
こんな感じ。

派手な感じはないけれど、仕事をするには十分良さそうな感じ、というか。
ちょっと無印良品的な感じもする。機能と合理性を考えてるのだろう。
簡素なので、大量生産もしやすそうだなあ…。だから「工芸から工業へ」なのだろう。
あと、自転車とか移動式の脚立(特注らしいけど)もあったりして。


セクション「椅子」。
ここは椅子がずらりと。いずれも機能的で、機能を工夫しようとしているのが伺える。
「木製スツール」なんかそうなんだけど、これって第二次世界大戦中だったりするので、金属が不足している時代のものなんだよね…。
あと、簡単に組み立てられる「組立式ウッドチェア CB 22」とか。
面白いのは上記の写真のセットで映っていた「メトロポール」チェア。よく見ると後ろの2本の脚がごついんだけど、その理由が「プルーヴェは椅子に座る時、前脚を浮かせて後ろに傾けるのが好き」だかららしい。個人的な理由過ぎる…!
あと、タイピストチェアと呼ばれているものがちらほらあって、タイピスト全盛期なんだなあ…となったりもする。
これは余談だけれど、丁度「ムジカ・ピッコリーノ」でルロイ・アンダーソン「タイプライター」がテーマで放送された頃で、どうもその辺が頭をちらついていた。書き手、はるか昔に「タイプライター」弾いたこともあるし…。速くて大変でね…。


閑話休題
次のセクション「出版物」で資料の類(でもデザインはなかなか素敵なのも)、そのセクション「ナンシーの自邸」で写真と、ファザード・パネルが。
で、更に地下2階へ。
次のセクション「ジャン・プルーヴェの工場」でも、ドアにファザードが並ぶ。
この辺からちょっと毛色が変わってきている。


で、その次のセクション「アフリカに向けて」。
この時代は1950年~60年ぐらい、アフリカにフランスが多くの植民地を持ってて、それが丁度独立するかしないかのタイミングの頃。
エールフランス航空がアフリカとの航路を開いていて、現地の社員宿舎を依頼したのだそう。
ちなみに依頼したのはジャン・プルーヴェと、シャルロット・ペリアン(内装担当)。
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ここでちょっと前に拝見した展覧会が顔を出したり。
で、ジャン・プルーヴェはどんな感じのものを作成したかというと。

この写真、テーブルや椅子、照明もだけど、後ろの壁も作品。
「ブリーズ・ソレイユ(日除ルーヴァ―)」。日差しも遮って、更に段になっている部分の下部に穴が開いてるから、通気性も高いみたい。
アルミニウムで作成しているので、材料が軽く、運ぶのも楽だったそうで。
制作も簡単にできるようになってるしね。
例として解体したテーブルも展示してた。


セクション「組立・解体可能な建築と建築部材」。
セクションを眺めて一言「なんじゃ、ここ」だったとか。
武骨と言っても良い、アルミのファサードや、斜めの柱やら(写真を載せないのは、他の方がかなり映っているので。他の方が写らないようにするのが至難なぐらいの大型)。
建築部材をそのまま持ってくるの、凄いなあ…。簡素だから設置も難しくなかったのかもしれないけど。
素材以外にも、簡素な建築部材で作成している建物の模型が沢山あって、それはそれでなかなか興味深い。
戦時中とか戦後直後なので、プレハブ建築は必要だったんだろうな…と。


で、最後に。

最初に拝見した家、「F 8x8 BCC組立式住宅」。
いくら簡単だからって、原寸大組み立てて展示してるのって凄いね…。
中に家具もあって、決して暮らしにくい感じの家ではなかったなあ。


「椅子の展覧会」…じゃないなあ、これ。
どちらかというと合理的な機能美の展覧会。これはこれで良かったなあ。
建物の展示だと模型が主になるけど、実際の建築部材がこれだけ使われていると、とても興味深い。


ちょっとだけ続く。