時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

扇の国、日本@サントリー美術館

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今更気づいたが、展覧会のキャッチフレーズがひどい(あ)

サントリー美術館お得意の、渋いお勉強系展覧会と認識してこんにちは。

ただ、入った途端、展覧会の構成が非常に凝ってることに気づく。入り口の仕切りが扇形になってるとか。あれ、これは結構頑張ってる展覧会…?

序章「ここは扇の国」で、パリ万国博覧会に出展した扇をいくつか。
谷文晁「雛に蛤図扇面」がとても可愛らしい。

第1章「扇の呪力」第2章「流れゆく扇」第3章「扇の流通」辺りは、お勉強モード。
日用品であり儀礼にも使用される扇、通信手段(手紙的な)にもなる扇、そこから「扇流し」、そして貿易品になる過程。持ち運びやすくて、文字も絵も書けて、デザインにもいくらでも凝れる品。優れものですなあ…。
狩野派の扇もばんばん出てくる(というか、狩野派が元々扇屋やってて、狩野元信は相当やり手だったみたいだけど)。狩野永徳の扇が結構好き。
夢窓疎石が所有していたとされる扇とか出てきて、ひゃっとなったりする。

第4章「扇と文芸」。ここもまだお勉強モード。
文学作品の名場面を扇に描く、それを集めると全集になる、それを屏風に飾る。
源氏物語絵扇面散屏風」は、源氏物語の帖の順にしてるんじゃなくて、季節単位で左から右に貼っているとか。こういうの、ちゃんとどの場面がどの帖って判定できる教養が欲しい…(あ)源氏物語自体は結構好きなんだよね。光源氏に文句垂れながら読むタイプだけど(え)

第5章「花ひらく扇」。江戸時代に扇に描いたor扇に纏わる題材を描いたものを集めている。
書き手、浮世絵にそんなに造形が深いわけではない。
けど、いきなり鈴木春信の男前(「見立那須与一 屋島の合戦」)と、歌川国貞の凛とした美女(「百人一首絵抄 坂上是則」)にお出迎えされたらうおおおおおっと。
でもって、扇に絵を描く、という手法だとやっぱり出てくる宗達派。そうか琳派出てくるよなーだよなーとか思ってたら、本阿弥光悦「扇面鳥兜螺鈿絵料紙箱」で眼福。
更に、酒井抱一「月図」「源氏物語図」。また、対照的なの持ってきたなあ…。「月図」は酒井抱一の銀泥の月が配されてる。いかにもデザインチック琳派。「源氏物語図」は全体構図も素敵だけど、単眼鏡持ってきてー!な、とても細かい意匠。朧月夜の十二単の柄とか、調度の蒔絵図柄とか、襖の鴛鴦っぽい絵とか。
で、葛飾北斎「物想う美人図」。…美人だった。着物から仕草からとても素敵な。

終章「ひろがる扇」。意匠としての扇の作例。
個人的に好みなのが「桜に破扇図鐔」。書き手は刀というか、刀身はよく分からないんだけど、鐔とか目貫とか、あと附属品の笄とかも好きで。こちらは桜と、「簡単に壊れやすい」破扇ということで、この儚い感じがたまらない。
各種着物意匠も素敵。サイトに載ってた「梅樹扇模様帷子」は前期展示だったので見られなかったけれど、これも実物見てみたかったなあ。
そして尾形乾山「銹絵染付絵替扇型向付」が素敵だった…。

今回の作品はサントリー美術館所蔵以外の作品が大多数で。別会場へ巡回するというのもあるのだろうけど、本当に努力して集めて展示したんだろうな、と思う。
予想以上に良いものを見せて頂いた。ありがとうございました。

帰りに東京ミッドタウンのSAKE SHOP 福光屋で、正月に頂くお酒を購入するなど。
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今回は加賀鳶の「極寒純米 無濾過・生」を。