時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

生誕110年 東山魁夷展@国立新美術館

散歩の割には荷物の多い金曜午前。

生誕110年 東山魁夷展|企画展|展覧会|国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO

上野でフェルメールムンクルーベンスやってます(はぁと)の時に、乃木坂でもビッグネームどーん(いや、ボナールも開催してるけども)。いかに「混まない日に」観に行くかを悩んでいる方は、書き手以外にもいるのかなあ。平日休みを頂いて、本当は別趣味に使うつもりが、会期が短い東山魁夷展、選びたくなるのも仕方がないということで。
個人にスポットを当てた展覧会なので、生涯に沿った流れになっている。…のだが、なんかもう…最初から凄いんだけども。

第1章「国民的風景画家」で「残照」「秋翳」でもううわーと。個人的には「月宵」「郷愁」とか、ありふれた風景も好き。「道」よりも「郷愁」に書かれてる道の方が好みなのは、なんだろう。書き手が真っ直ぐでない道を進んでいるからかしら(え)

で、第2章「北欧を描く」で、クリアになる、というか、冴えを増す、というか。これは空気の寒さが冴えになってるのかもしれないけど。「ウプサラ風景」「白夜」「白暮」「冬華」「白夜光」辺りが好き。

第3章「古都を描く・京都」。今回の東山魁夷の展示作品は大型のが多いのだが(まあ、国立新美術館のスペースなら、大型作品を広いスペースで見せるのが正しいと思う)、「京都四季習作」「京都四季スケッチ」という小品連作がここに。前期後期入れ替え有(書き手は前期)。前者は京都の自然メイン、後者は京都の街中の風景メインなんだけど、東山魁夷は自然描いた方がいいような気がしなくもない。「京都四季習作」は個人的にもツボが多いのだけど(「曙」「春静」「行く春」「夕涼」「夏深む」「照紅葉」「北山初雪」等)、「京都四季スケッチ」は「雪降る町」ぐらいだった。で、この第3章はそれだけでなくて他にも作品が多いのだが、「谿紅葉」「花明り」「雪の後」「春雪」辺りがツボ。書き手、東山魁夷の雪の描き方がかなり好き。

第4章「古都を描く・ドイツ、オーストリア」。やはり異質の街中の絵が多いのだが、「古都遠望」「晩鐘」がツボ。ヨーロッパの街の風景が雄大だからか、街の絵でも凄いしっくりくる。尖塔屋根のシャープ感もいいし。あと、「窓」がなんか気になる。窓の下のベンチが妙に。なんだろ。

第5章…のメインに入る前に間奏と題された「白い馬の見える風景」。必ず絵に馬が入る。1972年の作品だけ(この辺はぐぐってください)。「緑響く」はやっぱりいいね。個人的には「水辺の朝」もなかなか。

さて。第5章「唐招提寺御影堂障壁画」。今展覧会のハイライト。…いや、今までのパートも十分ハイライトだぞ、と思わなくもないのだが、またこちらが言葉を失う…。大きなスペースがないとできない、御影堂再現。勿論本物とはかけ離れてるんだろうけど、障壁画は建物の中でこその障壁画。だから、このパートだけ、ポストカード買ってない。ポストカードじゃわからない気がして。この展覧会、入場料1600円なんだけど、「1600円でいいの?本当に?もっとお金出してもいいよ?」となった。なお、御影堂障壁画はテレビ東京美の巨人たち」でも今年2回特集で放送されてる。
KIRIN~美の巨人たち~
KIRIN~美の巨人たち~
鑑賞時の手助けになるよね。建具屋さんが誂えるの苦労したとか。唯一書かれている生き物・ホトトギスの話とか。

まだ終わらない、第6章「心を写す風景画」。晩年の絵。なので、写生に行く身体でないから、記憶と心で再構成した絵。「静唱」「緑の窓」「秋思」「行く秋」とツボりながらも、「木枯らし舞う」でびっくり。ざっと舞う木の葉。東山魁夷でここまでの「動」を描いた絵を初めて見たんだけど(風のそよぎとか水の流れはあったんだけども)、何が凄いってこれが最晩年、亡くなる2年前の88歳の作品なのが。そしてその隣、一番最後の作品が絶筆の「夕星」。絵もいいのだけれど、画面構成が…なんとも考えてしまう。この日2度目の「本当にこの展覧会1600円でいいの?」。
素晴らしかった。大満足の展覧会。平日午前中ぐらいはまだ混雑せずに、じっくり見られる(けど、会期終盤はどうかな…)。大型の絵が多い上にスペースを広くとりがちなので、混雑でもそれなりにちゃんと見られるとは思うけど。

ショップでは恒例のポストカード大量購入、プラス、紅茶のティーバッグを。北欧での作品があったこともあって、ロイヤルコペンハーゲンとタッグ。4種類あったんだけど、フレーバーティーは躊躇われたため(保守的)、パッケージが「行く秋」の、王道のスカンジナビアブレンド。美味しい…。540円で5パック入ってて、サイズも小さいし味も良いので、お土産にも良いグッズだなあ、としみじみ。