時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

MOMATコレクション@東京国立近代美術館

この日の展覧会、全て竹橋駅付近。

ただし、このコースで一番良くないのが、日祝だと休めるカフェがないのである。休憩ができない。
…あ。


東京国立近代美術館、「美術館の春まつり」企画でお休み処できてる…!
というわけでここで一休み、甘酒を頂きました。日本酒から作ってるけど、アルコールは多分飛んでる…(実はこちら、日本酒も出している)。
美術館併設のお高いレストランと連携してるので、お弁当はそこそこいいお値段がしていた。

www.momat.go.jp
一休みしてからMOMATコレクション(常設展)。


1室「ハイライト」。
個人的に今回はいまいち嵌らなかったかも。
ハンス(ジャン)・アルプ「地中海群像」をあちこちから見てみよう、みたいな感じで展示していて、
個人的にも彫刻を色々な角度で拝見するのが結構好きなので喜んで。

ここから観ましょう。って足跡はどなかたの趣味で作りましたか?(他は普通の靴の跡だったのに)


2室「春まつり」。普段は10室のことが多いけれど。
あ、そうそう、普段は10室にある清家清「臨機応変型多目的移動畳」がこちらに。
そしてそちらを挟むように配置されている、菊池芳文「小雨ふる吉野」(こちらはこの時期よく拝見しますな)と日高理恵子「樹を見上げてⅦ」。小雨の中咲き誇る桜と、画面いっぱいに延びている裸の枝。畳の上から見上げるように鑑賞できるのがいいなあ。


3室「麗子、生誕110年」。
麗子は岸田劉生「麗子像」の麗子、ですな。
岸田麗子も画家なんだが、こちらの展示はそれよりも「岸田劉生から見た様々な娘・麗子」という趣。
東京国立近代美術館の「麗子肖像(麗子五歳之像)」は、有名な麗子像とはちょっと一線を画す劉生の細密描写の頃の画風で描かれている、とても格好いい麗子の肖像画なのだけど。
紙に水彩で描いてる「戯画(おはなの風船)」、紙に墨で日記のように描いている「麗子のおけいこ」「戯画」、なんでこれ描いたんだろう、な「麗子鬼を打つの図」(本当に麗子が鬼を叩いてて、横で劉生が見ているという謎の絵)、麗子宛の、旅先の様子の絵を添えた葉書、麗子が小さい頃に出品して優等を貰った展覧会の日記、それから小さい頃に描いた絵に大抵の批評(正直割と親バカ…(あ))…なんというか、愛が溢れてたよ。娘さんへの眼差しが分かる。
ちなみに実際の写真も展示している。麗子さん、なかなか素敵な女性なんですよ。
「麗子肖像(麗子五歳之像)」、本当にかなり写実的なんだな、というのも分かる。


4室「近代の役者絵」。
山村豊成(耕花)と名取春仙。どちらも何度か拝見してますな。こちらとか。
morina0321-2.hatenablog.com
春仙の「六世尾上菊五郎 早野勘平」がなかなか美しいなあと思いつつ。
あ、平櫛田中「鏡獅子」*1の試作頭部も出ていた。本体と含めて所蔵されてたんだね…。


5室「アンティミテ」。
フランス語で「親密さ」。元々は19世紀末に身近な人々や子どもや動物の親密な情景を描いた一群の画家たちを「アンティミスト」と呼んだそうだが、ここではアンティミストが描いたような題材を時代問わず描いている絵、という意味の展示。
morina0321-2.hatenablog.com
ヴァロットンはないんですね(え)(そもそもヴァロットンの「アンティミテ」シリーズは身近だけど不穏すぎる)。
絵画で気になったのは甲斐仁代「自画像」。素朴な感じがなんか良かった。
ちなみに甲斐仁代は晩年石橋正二郎パトロンになっていて、「自画像」も石橋正二郎東京国立近代美術館に寄贈したのだそうな。…自分のコレクションにしなくて良かったんだろうか。一歩違ってたら、アーティゾン美術館所蔵になってたかもしれないなあ。
あと、ここには彫像が2点。高村光太郎「兎」は素直に可愛いのだが、土方久功「猫犬」…とても可愛いけれど、こちら、動物としては何…?(真顔)想像のキャラクターとしてはとても可愛らしい。うん。


6室「1941-1945|戦争/美術」。
普段は絵画のみが展示されていることが多いのだけれど、部屋に入った瞬間に存在感が強い彫刻1点。
平櫛田中「鶴氅」。鶴氅は中国とか朝鮮辺りで結構ある男性の襟付きガウンみたいな服のこと。で、見覚えのあるお顔…と思ったら岡倉天心だった。教科書とかで拝見する顔だ!とても威厳がある彫刻である。
でもって写真もある。安井仲治。おや、丁度別のところで特集展覧会されてますな。書き手は全く詳しくなかったのだけど、代表作の「流氓ユダヤ」シリーズ。この辺りはWikipediaに詳しくあったけれど、この時代しか撮れないね…。作品としても亡くなる1年前のものだし(病気で早逝されている)。
国吉康雄「誰かが私のポスターを破った」。日本っぽくない…と思ったら、国吉康雄アメリカを拠点にしていた画家。煙草を持つ女性の表情がなんともいえないんだよね…。この絵画自体も結構深い意味があるらしいのだが。


7室「存在と不在―見えるものと見えざるもののはざまに」。
1950年-60年の、少なくとも実在世界ではない作品が多々。何故か岸田劉生「壺の上に林檎が載って在る」もあったけど。
版画系が多いかもしれない。
長谷川潔とか浜口陽三とか、現実世界のものだけど現実世界ではありえない描き方というか。
で、気になったのは清宮質文。多色刷木版の、くすんだ世界、やはりくすんだ色合いの蝶。版画だけでなくガラス絵もある。現実と少し違う、独特の世界というか。
野田哲也も面白いなあ。写真を版にして木版刷りしてるのか。


8室「流通するわれら」。
いまいちテーマがわかりにくいなあ。現代アートだし。
石を郵便で送りつける堀川紀夫「The shinano river plan 1969/2013」とか、ジャガイモが入った段ボールを美術作品にしたロバート・ラウシェンバーグ「ポテト・バッズ」辺りはテーマに沿ってるんだろうか。


10室「芹沢銈介と、新しい日々」、というわけで芹沢銈介特集。
カレンダーずらりはなかなか圧巻。気に入ったものもいくつか。
獅子文六の小説「可否道」(改題「コーヒーと恋愛」、獅子文六の中でもかなり有名な小説らしい)の挿絵もなんだかいいなあ。
あと、日本民藝館で以前拝見した「絵本 どんきほうて」が出ていた。本家は風車に闘いを挑むけど、こちらだと水車に闘いを挑むんだ…!(そこ?)


12室「作者が語る」。
東京国立近代美術館が映像として残しているアーティストのトーク映像と共に。
その中の一人に児玉靖枝が。やはりお花見企画では出さなきゃならない「ambient light - sakura」。それ以外の作品も出ていたけども。
野見山暁治トーク動画は貴重になってしまったなあ。
黒川弘毅の彫刻もいくつか気になったり。


で、ギャラリー4の小企画展。
www.momat.go.jp
「新収蔵&特別公開 ジェルメーヌ・リシエ「蟻」」。
ジェルメーヌ・リシエは20世紀前半の女性彫刻家。ブールデルのお弟子さんになるのか。
「蟻」、不思議な作品ではある。
ただ、それに劣らず個性的な彫刻がとても多い。
清水良治「牛骨と子供」みたいに、元々生き物だった無機質な牛の頭蓋骨をかぶっていたり(一応遊んでいる状況なのか…?)、全く無機質な板を合わせて作ったのに「蝉」というタイトルがなんとなくわかってしまう土谷武の作品とか。
淀井敏夫「聖マントヒヒ」も随分デフォルメされてたり。
morina0321-2.hatenablog.com
この時に出ていた向井良吉「蟻の城」もあった。
あ、ブールデルが師匠ということで、ブールデルに教わった日本人彫刻家の作品もあった。普通に女性の像だったりするので、ちょっとほっとしたり。
バラエティに富んでて面白かったよ。


ぐるりと回るとやはりへとへとになるのだけど、それでも13時ぐらい。
次の場所どうしようかな、予約取らなきゃ入れない…あ、丁度良い時間のチケットがないや、ということでこの日はこれで終了。


というわけでアルコールも入れてしまう。

*1:国立劇場に展示されてる有名な像、実は東京国立近代美術館所蔵で、国立劇場に長期貸与している。今は国立劇場建て替えに伴い、井原市平櫛田中美術館に貸与されてる