時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

光陰礼賛─モネからはじまる住友洋画コレクション@泉屋博古館東京


まずはお昼でした(あ)美味しかった…。

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というわけで、洋画コレクション展。


入口のホールは写真OKなのだが、彫像が増えていた。


作者は山本芳翠…!?
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あの美しい虎を描く方の、石膏像!?
いきなり珍しいものを見せて頂いている感。


「1 光と陰の時代 -印象派と古典派」。
このセクション、外国人画家が描く洋画。
いきなりルノワール静物(プラム)」とモネ「サン=シメオン農場の道」「モンソー公園」展示してるけど…?
「サン=シメオン農場の道」は初期の絵で、まだ印象派というよりはバルビゾン派らしい。いや、バルビゾン派好きなので全然ストライクだけど。
「モンソー公園」はパトロンの奥様を描いてる作品で…というか…あーって(Wikipedia参照)なったものの、絵は素敵。
で、その間に展示されていた、ヴィクトール・ヴィニョン「田舎の家」。お名前存じ上げなかったのだが、物凄く好み…。ピサロを思わせるなあ、と思ったらピサロと同じグループにいたこともあるそうで。日本には殆ど作品所蔵がないそうな。
で、エルネスト=ジョセフ・ローラン「芍薬」はちょっと点描入ってるかな。こちらも綺麗。
一方、印象派関連が多いかと思えば、アカデミックな肖像画や人物画も。
ソロモン・ジョセフ・ソロモン「野の聖母」は、肖像画はアカデミックな感じなんだけど、背景がちょっと印象派っぽい感じがした。


「2.関西美術院と太平洋画会の画家たち」。
住友家は関西美術院の設立者の一人・鹿子木孟郎を支援していて、実は留学滞在費を出している時に、外国の洋画の紹介もお願いしてたそうな。
それもあって、関西美術院関係者の画家。
更に太平洋画会(現・太平洋美術界)に鹿子木孟郎と、更に関西美術院の設立者の一人である浅井忠も出品していたということもあり、こちらの関係者も。
中心は鹿子木孟郎と浅井忠。
鹿子木孟郎はアカデミックの系列から肖像画が得意で、「加茂の競馬」も「ノルマンディーの浜」もアカデミック系の絵で、これはこれで格好いい。割とはっきり。
浅井忠は油彩1点と水彩5点。浅井忠の水彩が好みなので大変嬉しい…。油彩「河辺の古城趾」も格好良かった…。
気になったのは吉田ふじを「神の森」。前もお名前を出したかもしれない、吉田博の妻。吉田博は太平洋画会の設立者の一人なので、ふじをも参加してたのかな。
「神の森」は神社へ向かう石段と周囲の絵なのだけど、なんというか…絵だけでもしゃんとする感じになってしまう。
そしてもう一つ夫婦の絵が。渡辺與平と渡辺ふみ子。お二人とも太平洋画会。與平は早世してしまったそうで(ちなみに渡辺は妻の姓で旧姓宮崎)、ふみ子「離れ行く心」は、與平がふみ子の肖像画を描いたものを、ふみ子が写したのだという。憂う表情がなんともいい…。
ちなみにふみ子は再婚し(なので、再婚後の亀高文子での名前での作品もあるかも)、結婚後に神戸で洋画塾を開いたりして、長寿を全うされた様子。
仙波均平「静物」の葡萄の感じもいいぞ。


「3.東京美術学校派と官展の画家」。
はい、日本洋画のビッグネームずらり。
岡田三郎助「五葉蔦」、藤島武二「幸ある朝」、山下新太郎「読書の後」と美しい女性(女性だけじゃなく光のさし方含めて)が並ぶ中に、和田英作「こだま」の人間離れした女性(多分妖精?)が並んじゃうセンス。
もうなんというか、暗い中で妙な存在感と迫力が…。
藤島武二は風景画「大王崎」もあって、こちらはこちらで空の色が凄い。


「4.岸田劉生とその周辺」。
周辺と言っても、岸田劉生中川一政のみ。
岸田劉生は好きな作家か?と言われると微妙なんだけど、ついついじっくり見ちゃったりする。
「晩秋の霽日」の穏やかな風景画に、お得意の自画像と、麗子像。
「二人麗子図(童女飾髪図)」は片方の麗子がもう片方の髪を整えてる図。…シュール。いや本当になんなんだ。でも見ちゃう。


「5.20世紀のパリと日本」。
もう少し現代に近い絵。
熊岡美彦「ミモザ」は、ミモザが飾られてる花瓶の重厚さと、ミモザの軽やかさが良い。
岡鹿之助三色スミレ」と熊谷守一「野草」は可愛い。
坂本繁二郎「箱」は…うん、箱、だね。坂本繁二郎、割とシュールな絵を描くよな…。なんとなく幻想的に。
で、香月泰男「ドリルを持つ人」。香月泰男はどうしても暗い絵が多いのだけれど、こちらはまだ辛くはならない感じで、むしろ雰囲気嫌いじゃない。黄土色のキャンパスに、黒い人影。


最後は「【特集展示】住友建築と洋画―洋館には洋画がよく似合う」。
住友家には須磨別邸、という大きな洋館があって、そこに沢山、今回展示していたものも含めて、洋画を飾っていたんだとか。
洋館の模型もある。建築は野口孫市で、野口孫市のスケッチも展示。須磨浦のスケッチが結構素敵。
また、館のどこにどんな洋画を飾っていたか、まで展示されていたんだが、驚いたのは、黒田清輝「昔語り」が飾ってあったこと。
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黒田記念館で下絵があったあの絵だ…。
須磨別邸は空襲で火災・消失してしまって、「昔語り」も運命を共にしたのだが、黒田記念館の下絵にあった解説「完成品は火災で焼失した」はここだったのか…。
で、ここにも浅井忠の水彩「垂水の浜」があるのだが、やはり素敵。
でもって。ここには「詳細が不明」な作家が2名。河久保正名と田村直一郎。前者は途中から消息が不明、後者は本当に経歴が不明…。
でも、絵はいいんだよね。前者は「海岸燈台の図」、後者は「朝陽荒川上流図」「武甲山入口夕陽」。


割と軽い気持ちで伺ったのだけれど、流石に所蔵が住友家だった。良かった…。

続く。