時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

東京国立近代美術館

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というわけで、前回に続いてMOMATコレクションへ。
https://www.momat.go.jp/am/exhibition/permanent20220318/

1室「ハイライト」。
2022年12月で東京国立近代美術館が70周年ということで、「初年度購入作品を中心に」。
どれがどうなのかはいまいち分からなかったけれど、稗田一穂「奇異鳥」はそうなのか、それとも稗田一穂が昨年亡くなられたからか。
で、今回は特別展が鏑木清方ということで、弟子の山川秀峰地唄舞「寿」」と、伊東深水「清方先生寿像」。前者は本当に正統派の美人画で、後者…展覧会で拝見したけれど、とてもよく似ていらっしゃる…。
また、今回は10室が恒例のお花見企画なので、川崎小虎「萠出づる春」も。とても幻想的に春を描いている屏風。


2室「1907年、前と後」。
主題については公式サイトの解説を読んで欲しい。なかなか面白いことが書いてあるので。
それとは全く関係なしに。
池田蕉園「さつき」美しい…。甘くて美しい感じ。
菊池契月「供燈」は歴史画のジャンルだろうけど、なんというか場面自体がゆったりとしていて美しい。「平家物語」の平重盛なんだけどね。
で、恐らく主題に即しているのが浅井忠「山村風景」と、赤城泰舒「白い砂」。赤城泰舒は水彩画家で、この2点の作品が1907年の「前と後」の対比になっているのだと。浅井忠の水彩画が美しいのは勿論なのだけど、赤城泰舒の明るさもいいなあ…。
で、ここには彫刻作品もある。高村光太郎「兎」、とても可愛い…。非常に動きのあるポーズなので、思わずガラスケースを回りながら写真を撮ってしまった。


3室「自分を見つめる/ 他人を見つめる」。
自画像・肖像画
椿貞雄「腕鎮を持てる自画像」を昨年購入したのがきっかけになっている主題。
なんというか、なかなかいい表情なので印象が強い。
で、椿貞雄の師匠になる岸田劉生の自画像もいくつか。劉生の自画像は本当によく似ているよなあ…。
中村彝の自画像も格好いい。年代的に失恋前か…(ぼそ)


6室「日本画と戦争」。
世界の状況が状況だけに、なかなか微妙な部屋ではあるのだが。
太平洋戦争中の戦争の絵とか、「軍用機献納作品展」に出されている作品等。前者は山口蓬春「香港島最後の総攻撃図」、後者は横山大観「春風万里乃濤」。どちらも美しいので…なんとも困惑。


9室は写真、郷津雅夫 「ハリーズ・バー」。
ニューヨーク、マンハッタン南部のバワリー通りにある一軒のバーの、窓辺の写真。様々な男性が一人佇んでいる姿は、彼らの内面を想像したり、面白いシリーズだなあ…。


10室「春まつり」。
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以前と重複する絵もあるので、ここは新しく出ていた絵の話を。
浅見貴子「梅に楓図」。日本画…というよりは現代美術。墨と顔料でダイナミックに。それでも梅はなんとなく分かるなあ…。
そして他は絵ではなく、工芸。
村雨山「縮緬地友禅訪問着 ばらの花」はちょっと着物の柄から逸脱しているような、西洋風絵画のような薔薇の花が描かれていて、鎌倉芳太郎「紺地印金朧型梅花文長着」は、よくよく見れば梅の花の描き方は日本画っぽいのに、一見色とりどりでポップ。
松田権六「蒔絵桜鳥平卓」は、漆の黒地に、真ん中の月のような大きな黄金に、黄金の鳥と桜の花が舞い、周囲に3つの点で表された模様が散っている、という美しいもの。
藤沼昇「根曲竹花籃 春潮」は、春…というよりも血を連想させるような竹籠の色。
岩淵重哉「塩釉紅瓷鎬手壺」は、色も形も桜を具現化したような壺。


11室「いのちのかたち」。
現代美術だとあまりハマらないかな、と思ったのだけど。
入り口の彫刻、柳原義達「風の中の鴉」がとても格好いい。
で、奈良原一高の「「人間の土地」より 緑なき島-軍艦島」。
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行ったことのある場所というのは、なかなか感慨深い。軍艦島の全景と、そこで働く人々の浴場の写真がいくつか。
そして、その横に、アルマンド(オランダのアーティストなのね)「海景 20-5-05」の荒々しく力強く描かれた海の絵が軍艦島を想起させ、須田国太郎「断崖と漁夫達」の、暗い色彩に佇んでる漁師たちの絵が、浴場の写真との対比になって。学芸員さんの意図を感じるなあ。
一方、栗田紘一郎の「Beyond Spheres」シリーズの写真。風景写真なんだけど、これが非常に雰囲気がある。
更に、「Winter Path」の横には速水御舟「風景素描(林丘寺塀外の道・雲母坂)」。デッサンだから色彩は薄くて、「Winter Path」と、とても構図が似ていて、非常に不思議な感じ。
こういうのも面白いなあ…。


12室も続いて「いのちのかたち」。
現代美術は分からないけど、気になった辺りを。
正木隆の「造形」はシリーズなのかな。凄い空虚感。
あとはアンリ・ミショーの作品が多数。絵…というのか(踊っている人を描いているようなのは絵と認識できるけど)、なんか知らない言語がわーっと描かれているようにも見えて、意外と嫌いじゃない。


13室・ギャラリー4は小企画「新収蔵&特別公開|ピエール・ボナールプロヴァンス風景》」。
https://www.momat.go.jp/am/exhibition/pierrebonnard2022/
ピエール・ボナールプロヴァンス風景」の初展示なのだけど、そちらよりも、マティスがボナールをリスペクトしていて、ピカソがボナールを嫌いという解説が面白かった。人の好みはそれぞれですよね、と(そういう感想?)
で、同じ部屋には日本の洋画家の絵が複数。3室とか5室に飾られていそうな辺り。でもこれが面白い。
落ち着いた赤の屋根が印象的な岡鹿之助「群落(A)」。
朝の空を描いた色彩がなんともいえない藤島武二「港の朝陽」。
素行はハチャメチャだけど絵の味わいはなんともいえない長谷川利行「新宿風景」。
郊外の景色を描いてもどことなく退廃的な感じがする佐伯祐三「雪景色」。
「夏の朝」ってタイトルなのに画面はやっぱり暗めになる須田国太郎。
で、最後の方は現代美術になるのかな。丸山直文「Garden 1」が気になった。
凄く不思議な淡くぼやけた色彩で。題材がなんというか、ヴァロットン「ボール」を思わせるような。きっと庭で遊んでいるんだろうけど、人影があまりにも頼りなくて、「ボール」同等の不安を覚える感じ。


外に出たら真っ暗に。久々に夜遊び(?)
いやあ…この日は本当に満足…。