時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

日本画に挑んだ精鋭たち―菱田春草、上村松園、川端龍子から松尾敏男へ―@山種美術館


お先にCafe椿で和菓子を(え)
速水御舟「白芙蓉」モティーフの「しらつゆ」と、さくらんぼ緑茶。
目にも美しければ、味もとても美味しい…。


軽く腹ごしらえして。
www.yamatane-museum.jp
展覧会ポスター、割と何度も拝見しておりますが、個人的には夏に拝見するのには大変良い絵だと思うので全然あり。


第1展示室、トップの絵は実は「【特別陳列】「今日の日本画 山種美術館賞展」から「Seed 山種美術館日本画アワード」」のもの。
山種美術館日本画の奨励・普及活動の一環として、「山種美術館賞」というものを隔年で決めていた。2016年から「Seed 山種美術館日本画アワード」としてトリエンナーレ(3年に1回)に変更。ただ、2022年は流行病もあって実施しておらず、次回は2024年。
というわけで、これまでの山種美術館賞展・Seed 山種美術館日本画アワードの大賞作品ほぼ全てと、優秀賞がいくつか。「ほぼ」なのは、つい最近展示してしまって(保管期間の理由で)出せないものがあるので。ちゃんとお断りが出ていた。
トップで展示されていたのは松尾敏男「翔」。こちら、以前も拝見している。その時は第2展示室だった記憶が。暗い部屋で拝見するのと明るい中で拝見するのと、印象がやっぱり変わるね。格好いい。
こちらは第1回山種美術館賞優秀賞。…大賞ではないんだよね。

で、改めて「第1章 近代画家たちの挑戦-新たな日本画の創造を目指して-」。
なんだかんだで知られた名前が並ぶんだよね。というか、ビッグネームは、その時代に新たな日本画と奮闘した方ではあるわけで。
で、それで、一番古い作家が柴田是真。いやあ…柴田是真はちょっと…特殊というか異能というか…。
今まで拝見した絵が多いのだけれど(でも眼福な作品が多いので嬉しい)、初めてでおっ?と思ったのは結城素明。「巴里風俗」シリーズの「街頭所見(街路樹)」と「ルーブル美術館」。まず、これ日本画?となる。水彩っぽい。洋画家がお洒落に描いた、と言われても信じそうな感じである。
結城素明は何度か拝見しているけれど、今まで拝見してきたものとは全然画風が違うので、本当に試作なんだろうなあ、とは。
あ、今回撮影がOKだった速水御舟「白芙蓉」もこのセクション。

www.instagram.com
「白芙蓉」も何度も拝見しているけれど眼福な作品。

「第2章 現代画家たちの挑戦-戦後を乗り越え、日本画を未来へつなぐ-」
今回の第1章と第2章の違い、描かれた時期が太平洋戦争の前後で分けているっぽい。こちらに小野竹喬入ってて、ん?ってなったりした。小野竹喬と山口蓬春、生まれたのは御舟より早いのでね…。
まず驚いたのは、朝倉摂があったこと。作品を拝見するのはこれが初めてなのだが、朝倉摂、括りとしては日本画になるんだ…。「濱の母子」、麻布(キャンパス)に描いているし、全然日本画っぽくなかったけどね。
でもって次は展示風景。


扱いとしては「第1章」になる作品で展覧会ポスターにもなっている川端龍子「鳴門」と、千住博「ザ フォールズ」(こちら18年振りの展示だそうな)が並んでいる一角。
実はこれだけじゃなくて、滝や海などの水の絵をこの一角に集めている。
とても涼しい。見た目にも涼しいし…多分空調も凄く涼しい…。正直、お客さんが少な目ではあったのもある…(ぼそ)
でも、いい作品多いよ。土屋禮一「海」や加山又造「波濤」もあって、それぞれ表現が違っていて。
で。「鳴門」の向かいに、高山辰雄「坐す人」。一応、滝が流れているので水関係でまとめた、んだと思う。けどこれの主体は…なんともいえない複雑さを伴った岩壁に、溶け込むようにして坐している、恐らくは修行僧。目を凝らす必要があるぐらいまで溶け込んでいる感じなのに、異様な存在感。この一角にあるにはかなり異質な作品なのだけど…いいですな…。
で、第二章の最後が並木秀俊「白鳳」。なんと、今年描かれた作品。描いた…というか…。実はこちら、木の板に截金+日本画という作品。截金で描いた羽根が細かい…細かい…!
同時期に、オンラインで截金講座を実施されていて、そこで使用した「牡丹に蝶」も展示されていた。色綺麗で細かい…自分の手では絶対無理だ…。

さて、改めて「【特別陳列】「今日の日本画 山種美術館賞展」から「Seed 山種美術館日本画アワード」」。
石田武「林」がここに。山種美術館賞第2回大賞なのだそうな。だから山種美術館には石田武の作品が多いのね…。
気になった辺りは岩澤重夫「古都追想西安)」、浅野均「静かな地平」辺りかなあ。それぞれ山種美術館賞第7回と第8回の大賞。


第2展示室は「【特別陳列】「今日の日本画 山種美術館賞展」から「Seed 山種美術館日本画アワード」」の続き。
坂本幸重「鮭」のなんともいえない存在感とか、北田克己「ゆふまどひ」の女性の、黄昏に色づくなんともいえない表情とか、川崎麻児(あさこ)「黄昏」の、やはり黄昏時の窓から入り込む金色の光が、なんとも宗教的な静けさを表していたりとか、印象に残った。それぞれ山種美術館賞の11回大賞・13回大賞・14回優秀賞。
ちなみに川崎麻児だが。
morina0321-2.hatenablog.com
こちらで拝見している川崎春彦の娘さん(ということは川崎小虎のお孫さんだし、東山魁夷とも御親戚)。娘さんも割と明快な絵を描かれますね。

あ、ちなみに14回大賞の木村光宏「兆」は今回不出品。下記で拝見している作品ですな。
morina0321-2.hatenablog.com
で、ここだけでなく何度も拝見している田渕俊夫「輪中の村」、実は5回優秀賞。…大賞じゃなくて優秀賞なの、あの作品…。何度も展示されているぐらい良い作品だけども。
前述の「ちゃんとお断りが出ていた」作品は「兆」と「輪中の村」。後者は優秀賞だけど、お断りが出るくらいだよ…。


この日は結構な暑さだったので、恵比寿駅からバスで往復したのだが、バスを外で10分ぐらいは余裕で待てるぐらいに、身体が冷えていたとか。
すいているのは個人的にはありがたいけど、もう少しひとが入ってもいいぐらいにはいい展覧会かと。

続く。