時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

東京国立博物館

この日は夜に予定があったので、それまでにゆっくりしようと(何か間違っているような)。
特別展が開催されていない東京国立博物館、あまり訪れる人が少なく、一人占め感が強くて大変良い。
まずはキッチンカーでコーヒーを一杯頂いてから、本館へ。今回はのんびりなので、本館のみ。
今年はこれが最後になるかなあ…。12/25までしか開いてないし…。


1室「仏教の興隆」には「紺紙銀字華厳経 巻第九断簡」、別名「二月堂焼経」があり、2室の国宝では「白氏詩巻」が出ていて、紙好きな書き手にはとても楽しい。
3室だと「宮廷の美術」に出ていた伝・藤原行成の「大字和漢朗詠集切」や「和漢朗詠集断簡(法輪寺切)」、源兼行の「万葉集巻四断簡(栂尾切)」や「和漢朗詠集断簡(関戸本)」も素敵だったなあ。

3室「仏教の美術」、あまり仏画は得意ではないけど、「十一面観音像」はとても美しいと思った。

8室「暮らしの調度」は衣装だけ展示変更。
火事装束。火事装束は結構格好いいものが多いのだけど、「猩々緋羅紗地波鯉千鳥模様(抱き茗荷紋付)」は火事装束一式(頭巾+羽織)。真っ赤で派手で格好いいんだよね。猩々は前回の東京国立博物館来訪で触れた。
morina0321-2.hatenablog.com
同じく8室の「書画の展開」が展示変わっていたんだけど、今回はいまいち自分に嵌らなかった。
書の方になるけど、佐藤一斎「竹自画賛」で書と一緒に描かれた竹は素敵だったなあ。

9室は今回は歌舞伎(顔見世がこの季節にあるから、とのこと)。
派手ですねえ、歌舞伎の衣装は…。「羽織 浅葱繻子地雪輪南天模様」が一番好みだったかな。

10室。相変わらず江戸の「衣装」は眼福なんだけれど、9室が派手で、今回白地とか浅葱とか紺とか落ち着いた色が結構多くて、ちょっとほっとしたりした。
でもって「浮世絵」は季節柄、忠臣蔵。ずらっと葛飾北斎歌川広重忠臣蔵の絵が並んでいた。ビッグネームだ…。ただ、個人的に歌川広重は好きな絵師ではあるけれど、忠臣蔵のシリーズはいまいち好みでなかった…。
何枚か出ていた「名所江戸百景」シリーズの方が好み。「王子装束ゑの木大晦日の狐火」みたいな面白いのもあるし。化の狐。

1階に降りて11室。「彫刻」に菩薩立像が2体あったのだけれど、どちらも美しかった…。細部の細工も綺麗なんだよね…。

12室「漆工」。
「御所車蒔絵硯箱」は蒔絵に何か埋め込まれてところどころ光ってる。解説読んだら、切金を置いてるみたい。
「梅蒔絵硯箱」は梅の木の図柄が好み。
漆工で琵琶が出てるのは初めて拝見したかも(「琵琶 銘 大虎」)。
「垣秋草蒔絵歌書箱」は蒔絵の部分が多いのだけど、あまり蒔絵の色が派手でなくて、この色は好みだなあ。
「松梅蒔絵書棚」は模様のデザインがかなりモダンな気がする。

13室。
「刀剣」にあった「宝尽七宝文鐔」、七宝のワンポイントの使い方が非常に可愛い。
「陶磁」は、仁阿弥道八のとても美しい「銹絵雪笹文大鉢」と、愛嬌があって可愛らしい「色絵寿老置物」という、全然作風の違うものを並べて配置するのが好き。他にも、尾形乾山とか野々村仁清とか、この展示は年を越すので豪華なものを並べているのかな、とは。
高取の「黄釉沙金袋水指」の渋さとか、鍋島の「瑠璃地露文三壺形皿」や「瑠璃地芥子文酒呑」の、形が変わっていて色が青みがかってるのも素敵。

16室「アイヌ」も「琉球」も、衣服のみ展示替え。
琉球の「絣着物 黄地井桁崩模様」は絣と、明るい黄色の地がなんだか可愛らしい品。

18室「近代の美術」。
日本画は下村観山「楠公」がいいなあ。朦朧体が美しい景色と、鎧の細部まで細やかな描写に色彩。
彫刻は荻原守衛「女」。この静かな迫力はなんなんだろうね…。
陶磁はまず、「瑠璃地金彩唐草文仙盞瓶」。とても洋風なデザインでとても美しいけれど、作者が「四代高橋道八」。13室の仁阿弥道八から続く一門…!(実際、四代高橋道八は仁阿弥道八の孫に当たるようで)。あとは年木庵喜三「青地白堆波涛に獅子図龍耳瓶」。地の色がとても不思議な色。乳白色がかかってる緑。
金工は九代金谷五郎三郎「菓子器」。図案は梅かな、とても可愛くて良い。
洋画は山本芳翠「月夜虎」。虎がシンプルに格好良い。


本館一通り回った頃がだいたい16時半ぐらいで、後は本館の地下の休憩所でお茶を飲みつつ(平成館の休憩所が全面的に閉まっていて使えなかった…)。
後は本館、冬の衣服で歩くには少し暑かったので、外のベンチで涼んで、17時になる直前ぐらいに退場。

暮れる表慶館と本館はとても美しかった…。