時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

深堀隆介展「金魚鉢、地球鉢。」@上野の森美術館

上野恩賜公園も銀杏の美しい季節に。


上野の森美術館は今まで縁がなく、初来訪。

www.ueno-mori.org
www.kingyobachi-tokyo.jp
深堀隆介はメディアで見かけて、ちょっと気になっていた作家さんであった。
金魚の作品を作る作家さん。…金魚の作品「しか」作らない作家さん。


作品リストは会場に置いてなくて、ネットのPDFで拝見する形式。


写真がOKな作品があった。こんな感じ。


twitter上で歌いたかっただけなんじゃないかと真実を衝いてはいけない。


第1章「樹脂との格闘/進化する技法」。
まずはずらっと並ぶ、「枡の中の金魚」の作品「金魚酒」。
作成年代順に並んでいて、最初は中の金魚が平面だったのだが、2010年以降ぐらいの作品からか、金魚が立体化する。
どうやって描いているかは映像があったのだが、枡に樹脂を少し流す→固まるのを待つ→パーツを描く→枡にまた樹脂を少し流す→固まるのを待つ→パーツを描く…の繰り返し。勿論、ちょっとでも失敗したら作品丸ごと終了。
…これはやばい作家…。
ちなみに、金魚もだけど花びらや水草が浮かんでいる作品も多数で、これもまた美しい。
大きな枡や、木の風呂桶に多数の金魚を描いているパターンの作品も。
大きな枡に大きな金魚どすん、という存在感のある「蒼宿」も面白い。


第2章「2D-平面に棲む」。
その名の通り平面作品。和紙や木のパネルに描いている(次の章の作品も混ざって置かれているのでちょっと分かりづらい)。そうか、色紙に描いた「金魚書」もこの章なんだね。
で、ここに1つ「特別作品」が。上野の森美術館のこの場所でこの展覧会のために作成したインスタレーション「緋照」。写真OK(twitterに載せた大きな金魚の写真)。
…めちゃくちゃパネルからはみ出してるけど、これどうするのかね(遠い目)壁紙に描いた形になってるから、上手く移動できるのかな…。


第3章「遍在する金魚たち1-支持体、形式の探求の探求」
色々なものに描いてる。
「金魚ブリック」は樹脂に、紙に描いた金魚入れて長方形の形をした小型のもの。普通に美術館のグッズでありそう。
Tシャツ、軍手もまあ分かる。売れるし。
布や、段ボールとか、変わった形のパネルに描いてるもの。
屏風(「金魚之間」)。
段ボールが水槽になって、その中で金魚が各方面から描かれている「ダンボール水槽」。
木で作成した「木金」。
机の引き出しで金魚が泳いでるインスタレーション「方舟」。
番傘がひっくり返って、その中に水(樹脂)が讃えられて、そこに金魚が泳いでるインスタレーション「雫」。変わってるけどこれは美しい。
北海道お土産定番(?)熊の木彫りが金魚咥えてる「熊を金魚すくい」。え、ええ…。頭が金魚色に染まってるのとか、熊の背中から尾びれが出てるのとかあるよ…。
個人的におおっと思ったのは、「ハーフ・ユニバース」(これは展示サイトに載ってるけど、この写真だと「本筋」が分からない「ようになってる」ので、気になる方は展覧会で)と、ココナッツサブレの箱に樹脂入れて金魚泳がせた「ココナッツデメサブレ」。
第2章が割とスタンダードで、同じ部屋(「緋照」のある壁が仕切りにはなってるけど)に、なんかよくわからない謎のものが沢山ある感じに。


で、次の部屋は暗く。
その中で何やら怪しく照らされてる桐箪笥。
引き出しやら戸棚の中で金魚が泳いでた。インスタレーション「花嫁さえも」。
義母の花嫁道具だったそうで。…そんな大事なものいいの?って思ったけど、捨てる予定だったものを使ったそうなのでちょっと一安心したり。
更に次の部屋に続く前に、特別出品の「金魚酒」シリーズ4点、こちらは撮影OK(twitterに載せたのは「鈴夏」)。


第4章「遍在する金魚たち2-日常の景色とともに」。
生活用品を元に作品にしたもの関連。
木桶とか匙とかプラスチックのタライとかコーヒーカップとか木の俎板(「真魚」。一部削ってそこに金魚泳がせてた…)とか。
パンダの絵のホーローカップを作品にしたのは「贈り笹パンダ」って作品名だったり、ロボット8ちゃん(と書いて若い人は分かるのか…?)のアルミの弁当箱を作品にしたのは「No.8」だったり。
そのうち、これ使っちゃっていいの?だったのは、古いスニーカー作品の「灰白ノ池」。こういうのって却って高価なんじゃないの?と思ったら、レアスニーカーコレクターの方のスニーカーのようなので、多分高価…。
あと、「発掘されたササン朝ペルシャ時代の陶器」作品の「蒼月」、個人的に「勿体無い!」の声が出た(あ)東京国立博物館の東洋館3室に飾るぞ書き手なら(細かい)。


第5章「2.25D-表面と深さのはざまで」。
まずは、第2章に出てきたような、平面「のような」作品群。板の上に描いているのだが、実は薄く板を削って、そこに樹脂を重ねて描いているそうで。これは…解説されないと気づかないかも。確かに、絵が重なって出来ているのよね…。
もう1つは、拾った、錆びたり踏まれたりでボロボロの空き缶に樹脂を流し込んで描いてる作品群。
試行錯誤だなあ…。
同じコーナーに、映像作品の「メチレンブルーの海」が。こちら、飼っている金魚が病気になった時に、水槽に薬を流し入れてるのをスローで映してる。
そうそう、深堀隆介、自身で金魚飼っていらっしゃる。で、その金魚を時折眺めているそうな。スケッチはせず。唯一スケッチするのは、飼っている金魚が亡くなった時…。それが参考資料「DEATH NOTE」としてこちらのコーナーに展示されていた。丁寧に状況もメモされている。
…なんだろう、結構愛情が深いのかな、とは…。


第6章「新展開-生まれつづける金魚たち」。
描かれているのは金魚…そのものじゃなくて、例えば鱗。抽象画のよう。
「鱗皮」は柿右衛門の器に載っている、鱗つきの皮。
…流石に抽象すぎて、どうとっていいか分からないけども。
ここにはインスタレーヨン「方舟2」も。仕切られた木の枠にそれぞれ色々な金魚が。卵もあるよ。


で、最後の部屋。
壁に描かれている色々な金魚と…なんとも妖しい照明に照らされる、屋台の金魚屋。
インスタレーション「僕の金魚園」。
なんか、屋台の妖しさが不思議な感じだった。写真OK(twitterに載せたのが一部)。


金魚も美しくて、色々不思議なものが多くて面白かった。
なんというかこう、気負わずに行って楽しむのが良い展覧会な気がする。


余談。
展覧会の物販コーナーに、金魚みくじなるものがあった。200円。深堀隆介のイラスト入り。
金魚は中国では「金余」(お金が余る)と同じ音になるので、縁起が良いのだとか。
洒落で引いてみたら、凄い大きな音が出て、結構恥ずかしい…。やってみたい方は身構えてほしい。
ちなみに中吉。ぼちぼちです。


続く。