時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

企画展 歌と物語の絵 ― 雅やかなやまと絵の世界@泉屋博古館東京

前回の小休憩はHARIO Cafeでした。というわけで戻りました。
sen-oku.or.jp


泉屋博古館所蔵のやまと絵の展覧会。
前後期制、拝見したのは前期。写真OKな作品もあるよ。


「1:うたうたう絵」。
和歌関連の作品。
一番最初は藤原定信「石山切(貫之集下)」。って絵画じゃない、書なのだが。でも美しい料紙…。ありがたい…。
土佐光起が2点。「木瓜鶉図」は木瓜の花が可愛く、「菊花図」は全体的にとても美しい…。
今回写真が唯一OKなのが松花堂昭乗三十六歌仙書画帖」。松花堂昭乗寛永の三筆の一人ではあるけれど、自分で絵もするのね。というわけで歌の書と、詠んだ歌人の絵をセットで描いている。書の方の料紙に箔散らして風流、絵は綺麗だけど表情は結構ユーモラス、という。

で、部屋が分かれた先にもこのセクションは続くのだが、
最後の最後に伝・本阿弥光悦「葛下絵扇面散屏風」。
ええと、この屏風は絡み合った葛が下絵として全面に描かれていて、その上に扇面が散らされていて、その上の書画が「伝・本阿弥光悦」ではないかとなっているっぽい。
葛下絵の屏風は後の時代のもの。要は別作品を屏風に仕立て直した感じ。
なので、扇ひとつひとつはとても綺麗。
…葛の下絵が…ちょっと…。なんかこう…もう少し主張のない下絵にできなかったのか…。


「2.ものかたる絵」。
要は物語系の作品。
伝・土佐永春「是害房絵巻」。
元の話は「今昔物語」。唐の天狗・是害房が比叡山の法師に法力で挑んで、ズタボロにされて、日本の天狗に助けられて湯治で回復して帰国する、という話。
bunka.nii.ac.jp
東京国立博物館にもほぼ同じもの(写し?)があるのかな。こちらを見て頂ければお分かりかと思うが…天狗…というか…鳥人間…?ガッチャマンっぽいとも思った。なんか凄い愉快。
狩野常信「紫式部観月図」は月と石山寺紫式部、の定番の図。とても綺麗。
狩野益信「玉取図」。元は幸若舞「大織冠」で、藤原鎌足八大竜王に奪われた宝珠を、海女を使って取り返す、という話だそうで。海女が剣と玉を持って水中で竜と対峙している図(恐らく玉を奪って、竜が追いかけてくるのを剣で威嚇しているんでしょうな)、という姿がとても格好良い。
源琦「楊貴妃・楼閣図」は絵の佇まいも木瓜の花も美しい。
竹取物語絵巻」はかぐや姫に逢いたい人達を、門前で断ってる翁が本当に申し訳なさそうな顔をしていたのが気になった。
「浮舟図」は「源氏物語」の絵では定番の「舟に乗る男女」の図なのだが、なんだかとても綺麗だった。土佐派のものではないか、ということなので、単純に好みの可能性。


「3.れきし画」。
…歴史画、でいきなり出てくる原田西湖「乾坤再明図」。…天の岩戸の話を歴史に分類していいのだろうか…。まあいいか、以前も拝見して凄く好きな作品だし目の保養だし。
まあ、菊池容斎「鼠狐言帰図巻」も、鼠と狐の輿入れだしな…。…いやまあ、これは江戸の大名の輿入れを鼠と狐に置き換えてるっぽいのだが…。というか、菊池容斎ってこういうのも描くんだ…。凄い可愛い作品なんだけど…。
猪飼嘯谷「鞍馬春色図」は鞍馬で修行する牛若丸。桜が凄い。


この展覧会自体はここまで。
綺麗だったり愉快だったり、やまと絵楽しかったなあ…。


さて、もう1部屋あるのが、同時開催の別展示「没後100年記念 黒田清輝と住友」。
いきなり黒田清輝の洋画の話になってしまったのだが。
morina0321-2.hatenablog.com
例の「昔語り」の話である。東京国立博物館(というか、黒田記念館)から「昔語り」下絵をがっつり借りてきて展示しているという。
黒田記念館だと撮影できる(というか、昔撮った)のだが、今回はNGである。
まあでも、この話を泉屋博古館ですることに意味はあるからね。うん。


後期も多少入れ替えがあるので拝見したいなあ、と思っていたのだが、後日スケジュールを間違えて再訪できなかったのが心残り。


続く。