特別展は開催されていたけれど、常設展にこんにちは。
半年以上振りになってしまった。
1室「ハイライト」。
川端龍子「草炎」がひとまず目の保養で嬉しい。
新収蔵作品として安田靫彦「居醒泉」が。瀕死から蘇生するヤマトタケル、という題材なのでヤマトタケルが土気色の顔をしているのだが、何故か嫌いではなく。少し目を開けた表情が、仏像的な感じがして、なんとも言えない。
木彫が2点。米原雲海「清宵」と平櫛田中「永寿清頌」。
前者は11歳の利発そうな稚児姿の菅原道真。服の布の具合とか手に持つ帳面の柔らかい感じが凄い。
後者は彩色した老人の木彫。とてもリアル。それ故に、当時は生々しさに賛否両論あったのだそうな。そういうものなのか…。
2室。
「新か、旧か?」
文展に出るか、それ以外で頑張るか、という。
初期の吉田博の水彩画「新月」は文展に出ていたんだなあ。
逆で代表的なのは村上華岳だろうか。国画創作協会の第1回展覧会に出品した「聖者の死」は関東大震災で焼失してしまったそうだが、その下絵が出てきた。涅槃図なのだなあ。
3室。
「大正のタッチ」。
大正時代の日本人の洋画。自画像とか人物画が多い。
個人的におっと思ったのは、古賀春江「観音」。全体的に暗い背景に、決してビビッドではないけど目を引く暗い赤の服に陰りのある金の光背。少し変わっているけれど間違いなく観音像で。シュルレアリスムな画風になる前の作品で、個人的に嫌いじゃない。
4室は版画展示が多いけれど、今回は特別展が棟方志功展ということもあって、棟方志功も少し展示、それ以外の同時代の画家の版画を展示する「掌から空間へ」。
萬鉄五郎「寝て居る人」は萬鉄五郎の画風をそのまま版画で表現していて、これはこれで良いなあ。
抒情的な前川千帆「浴泉裸婦」、力強く細かい平塚運一「斑鳩寺初秋」辺りが気になるところ。
5室。
抽象画が多い部屋だったのだけど、今回は「飛行機、戦争、美術」。あれ?6室の展示が5室になってる?
ともかく、飛行機テーマ、この時期だと戦争がどうしても絡むよね、という感じの。
飛行機戦闘の絵などもある中、空からの都市の絵(要は航空写真)から整然とした幾何学抽象画を構成した、村井正誠「URBAN」は結構嫌いじゃない。
そして、竹内栖鳳「海幸」がここに。とても美しい鯛の絵。こちら、「軍用機献納作品展」という、展覧会の売り上げが全て戦闘機を作成するのに寄付された作品。時代だよね…。
6室。
「東山魁夷」。
1部屋とはいえ東山魁夷。特別展の棟方志功と同年代の画家だから特集してくれたみたいだが。
…いやもう…常設展でいいのかコレ…。
どれもこれも眼福。東京国立近代美術館さん、良い作品お持ちですね(そりゃそうだ)。
大部分、御本人から寄贈されたそうだが。写真も全部OKだったよ…。
8室。
「時間 配置 過程」。現代美術なので理解は難しいので、直感で。
直線的なのが好みなので宇佐美圭司「積層 No.1」とか。
単純なアクリルの円柱と三角柱と立方体のオブジェが並んでいる木村光佑「空間への距離」。
妙に明るい画面と花の、少々不気味とも言える形をコラージュしている野中ユリ「彩色版画」。
最初に5つの線の画面を写しこんで、同じフィルムで月を映し、それを並べて月を音符として楽譜に見立てて、その音を録音した野村仁「"moon" score」。レコードも録音も展示されてたよ。こちらを拝見した一か月前に亡くなられていたんですな…(展示紹介表示にシールで修正が入っていた)。
10室。
入口の付近は「生誕100年 田口善国」。
田口善国は漆工。工芸館が金沢に移ったからか、美術館の方で展示して貰えるの嬉しい。生誕100年と言うけれど、全然古い感じはしない。「ほおずき朱金蒔絵飾箱」とか凄い綺麗な赤が出ている。
松田権六の弟子になるので、松田権六の作品も展示してくれている。ありがたい。
もう半分は「墨画瓢々」。富岡鉄斎を特集していると描いているけれど、バラエティに富んでいる。
奥村土牛「胡瓜畑」「倭鶏」とか嫌いじゃないなあ。
でもって、児玉希望「仏蘭西山水絵巻(海)」で吹いた。推しの師匠、墨で絵巻にフランス描いてる…。
11室。この辺からガチで現代美術。
「想像/創造する「からだ」」。
今回の常設展のポスタービジュアルにもなってる遠藤麻衣×百瀬文「Love Condition」。こちら、映像作品。女性二人で色々話しながら、粘土で新しい性器を作ろう、という。
で、それで作られたのが「新水晶宮」。
映像を全部拝見してないし(1時間以上あるし)、「新水晶宮」を拝見した感想でしかないけど、「これって子供を胎内である程度育てる器官なのか、それとも別なのか」が気になった。育成機能だとすると、こんなあけっぴろげだと、生育時点で外的要因でバグが出るぞ、と思ったんだよね(言い方)
12室。
テーマは「エコとエゴ」。書き手が苦手なジャンルですね(おいこら)。書き手は軽々しくエコをお題目にする方が基本苦手なのですよ…。
とはいえ、キム・ミョンスク「森への賛歌1」とか、ベー・ビョンウ「松シリーズB」とか、森や木を題材にした作品は嫌いではない。
あと、柴田敏雄の写真もあったり。
morina0321-2.hatenablog.com
ギャラリー4。
テーマ「女性と抽象」。まま、女性作家の抽象表現。抽象なので好みのまま、と思ったら、結構写真撮ってた。謎。
福島秀子が結構好きなのかもしれない。
草間彌生「集積の大地」辺りはイメージと違うのかもしれないが、こちらの方が有名な辺りよりはいいなあ。
やっぱり常設展は面白いなあ。自分が普段拝見しないジャンルもさわりを拝見できるしね。
と思ったら、後日、下記のポッドキャストを拝聴した。
sorosoro-art.vercel.app
東京国立近代美術館の常設展、思った以上に力を入れておられているそうで。それも凄く分かるんだよねえ…。
ただ、カフェ事情の話はあんまり参考にならないなあ…というのはある…。丸紅ギャラリー傍にレストランもカフェもあるが、営業が平日だけなんだ…。日曜祝日はパレスサイドビルも営業していないから困ってるんだ…。
あと、話し手の学芸員さんが草バレーボールを趣味としていると聴き、もうひとつのこのアカウントが激しく反応したとか(あ)
というわけで、この日は祝日。
飲食も含めて続く。