時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

アーティゾン美術館

今回も展示は色々と。

最初はこちら。
www.artizon.museum

「写真と絵画-セザンヌより 柴田敏雄鈴木理策」。
元々、鈴木理策(以下、敬称略)は気になる写真家で。
morina0321-2.hatenablog.com
というわけで、こちらの展示もどんな感じになるのか気になり(正直ちょっとイメージがわかない)、拝見しに。
なお、アーティゾン美術館は6階から始まるけれど、こちらの企画は6階から。

思ったよりは混雑していたかもしれない。

「SECTION 1 柴田敏雄 ―サンプリシテとアブストラクション」。
柴田敏雄の写真を拝見するのは初めてかと思う。
なんというか、自然でも人工物でも、「不思議な造形」になるものを撮影する写真家なのかな。例えば、規則正しく何かが並んでいたり、あまり規則正しくないけど同じ形が点々としてたり。
なんとなく、絵画だと現代美術との比較の方がありそうで。
で、各セクション、比較対象の絵画が出ているのだけれど、ここで出ていたのが藤島武二「日の出」「青富士」。
藤島武二、風景画を描くと妙にビビッドになるよね…。肖像画はそんなことないのに。

「SECTION 2 鈴木理策 ―見ることの現在/生まれ続ける世界」。
鈴木理策の、主に自然の中で撮影している写真郡。
フォーカスの場所が面白かったりする…のは、御本人もモネを意識していて、実は「ジヴェルニー」ってシリーズもあるぐらい(ジヴェルニー=モネが居住し、自分の好きなように作成した庭がある村の名前)。
個人的には写真作品自体が大変眼福なのだけれど、その中で雪景色を主体にしている「White」のシリーズで並んで展示されているのが、クールベ「石切り場の雪景色」「雪の中を駆ける鹿」。これは…更に眼福…!

「SECTION 3 ポール・セザンヌ」。
セザンヌの影響をお二人が受けていますよ話。まあ、鈴木理策はまんま「サント=ヴィクトワール山」の作品があるしね。
鈴木理策の初期(2000年前後?)作品が拝見できて面白かった。室内を撮影しているシリーズもあるんだなあ…。

「SECTION 4 柴田敏雄 ―ディメンション、フォルムとイマジネーション」。
コラボしている作品は抽象画が多かったのだけれど、ここでいきなり円空仏が出てきてびっくりする。いや、円空仏は拝見していて勿論楽しいけれども…。

「SECTION 5 鈴木理策 ―絵画を生きたものにすること/交わらない視線」。
まずは鈴木理策の「ミラー・ポートレート」シリーズ。肖像写真のシリーズ。人物撮影しているシリーズもあるんだね…。
ここは展示されている絵画が気になった。ヴュイヤール「鏡の前」、アングル「若い女の頭部」、岸田劉生「麗子坐像」(麗子シリーズでも大人しい方だと思う)、岡田三郎助「婦人像」。どれも違った味でいいなあ…。
あ、そうそう、アルベルト・ジャコメッティ「ディエゴの胸像」があったのだけれど、鏡が一緒に展示されていて。

こんな感じで写真撮ってみたり(アーティゾンは写真OKのものが多くていいよね)。
…って。ディエゴって弟さんじゃないか。
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あとは「りんご」という、まんま色々な林檎を映していくシリーズ。でも綺麗。
こちらとの対比はボナール「桃」。


さて、次は5階…で、いきなり展覧会が変わる。
www.artizon.museum

「Transformation 越境から生まれるアート」。
「越境」と「変化」を着眼点に、19世紀半ばから第二次大戦後までのヨーロッパ、
日本、アメリカの美術を展望する企画なのだそう。

「Part 1 歴史に学ぶーピエール = オーギュスト・ルノワール」。
今回の企画は、タイトルについている作家が主体で展示されている。
というわけで今回はルノワールが主体。これは嬉しい…。
写真あまり撮ってないけど(何度も拝見している絵が多い)、唯一撮ったのは「モーリス・ドニ夫人」。ルノワールらしい明るい肖像画なんだけど、モーリス・ドニと交流があったのか、という(ドニは美術批評もやっていて、ルノワールとの対話をしたい、というところから始まったそうで)。


「Part 2 西欧を経験するー藤島武二藤田嗣治小杉未醒」。
同時期に西欧に留学した3名の日本人洋画家が主体。
…ただ、小杉未醒は西洋で池大雅を見て日本画にも傾倒して、早々に帰国して変わった方なのだけれど。まあ、それなかったら黒獅子旗も生まれなかったかもしれないし(ぼそ)(それ別趣味)(デザインした時期は小杉放庵の名前だったかね)。
3名と言いながら、藤島武二藤田嗣治が大部分で、小杉未醒は「山幸彦」だけだったけれど。でもこれが結構面白い。洋画で日本題材を描く作品はなかなか趣があるよね。
藤島武二の「ネミ湖」「蒙古の日の出」は初めて拝見したし、藤島武二の風景画はやはり印象的。

「Part 3 移りゆくイメージーパウル・クレー」。
…ああ、すみません、この辺の抽象画分からない…。一応、目は通したけれど。

「Part 4 東西を超越するーザオ・ウーキー」
ああ、そうだよね、北京生まれでパリに渡ったザオ・ウーキーは確かに「越境」なのか。
ザオ・ウーキーは抽象画だけれど、意外と惹かれたりするんだよね…。
そのザオ・ウーキーはパウル・クレーに影響を受けているのだけど、こちらのセクションで飾られているパウル・クレー「庭の幻影」は色彩が嫌いじゃないぞ。あれ?
あとはジョアン・ミッチェル「ブルー・ミシガン」とか、ピエール・スーラージュ「絵画 1969年5月26日」とかは結構気になった。


4階はコレクション展。
ローランサン「二人の少女」はまあ撮影してるのだけれど、ルオー「ピエロ」は撮影するのは珍しいのかもしれない。でもこの絵、好きだなあ…。不思議な静けさがあって。
そして珍しく抽象画、田中信太郎「羽化」が気になった。不穏な赤の画面。


で。
4階の照明を落とした小部屋で、「写真と絵画-セザンヌより 柴田敏雄鈴木理策」の最後のセクションが。
「SECTION 6 雪舟」。
雪舟と柴田・鈴木両名とのコラボ。
ただ、雪舟の作品よりも、柴田敏雄アメリカのグランド・クーリー・ダムを題材にした、白黒がとても格好いい作品郡とか、鈴木理策の「White」シリーズとか(白がとても眩しい…)、そちらの方が印象には残るなあ。


最後はコレクション展・特集コーナー。
www.artizon.museum

石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 ピカソとミロの版画 -教育普及企画-」。
あまり得意ではない範囲だけど、ミロの「犬」シリーズや、「人と鳥」とか、妙に可愛い。
一方、ピカソは一時期リトグラフをやっていた時期があって。

こんなに普通の女性が描けるんだよねえ、となったり。

こんなのもあったり。これ、「カルメン」の挿絵なんだが…。こんな凄い(比喩)カルメン初めて拝見したよ…。


色々な絵を色々拝見できる、面白い美術館ではあった。