時々、さんざめく

とるに足りないニワカ趣味話(旅行、美術、酒etc)

美しい人びと 松園からローランサンまで@松岡美術館

駅が同じ路線の近所なので、泉屋博古館東京とセットで来ることが多い松岡美術館
普通は泉屋博古館東京であれば、同じ駅の大倉集古館や菊池寛実記念智美術館じゃないのか、という話は置いといて(タイミングが合えば伺うけれど)。
まあ、青銅器サミットやった仲だし。今回の松岡美術館は青銅器関係ないけど。


いつもの通りに展示が変わった箇所を。まずは展示室1。
割と青銅器が展示されていることが多い部屋なんだけど、今回は様子が違う。
www.matsuoka-museum.jp
古代オリエント 創造の源」。
ちなみに他の特別展示と合わせるのかと思ったら、来年まで該当展示だそうで。
東京国立博物館東洋館3階にありそうな、古代オリエントの謎の像がごろごろ。これは…書き手の好み…!
謎の像、と書いているけれど、今で言う定礎式で使用するイラクの「王の定礎釘」みたいなのもある。
トルコで出土した「横たわる女人像」なんかは、ヘンリー・ムーアみたいだし(影響受けてるのでは、と解説に書かれていたけど)。
人型が多いけど、人型とはかけ離れたギリシャの「抽象図形型偶像」とか。一応スタイルはは女性…なのか…。
そして「ヴァイオリン型偶像」。これもくびれとかが女性っぽいらしい(「抽象図形型偶像」よりはなんとなく分かる)のだが、形が結果的にヴァイオリン。
…というか…その…ウッドベースに見えるのは、毒されてるのかねえ(遠い目)ウッドベース風に立ててる感じと、全体とネックの長さのバランスがそう見える…。


気を取り直して2階、展示室4。
普段は中国の陶器の部屋だけど、やはり様子が違う。
www.matsuoka-museum.jp
「憧憬のペルシア」ということで、ほぼイラン出土の陶器。
ラスター彩で美しい文様の陶器がざっくざく出てきた。
更に陶器の特集のはずなのに、地中海辺りから出てきたガラスの器も展示されているし。「円形カット碗」なんかは、正倉院の宝物で出てくる形と一緒だったりする。うーんシルクロード
ターコイズブルーの青釉の数々も美しい。経年で(当時作成した方の思惑とは裏腹に)銀化したものもあるけれど、銀化するのもこれはこれで格好いい…。
「子持壺」も出てきたけれど、この辺りは日本の子持壺とは関係ないのかなあ。
東京国立博物館で出ている牛型リュトンみたいなのもいた。
白地の陶器も模様が凝ってて素敵なものが多数。その中に、スルタナバード(現アラクWikipediaだとアラーク表記)で大量に発見された、白地で模様が濃いスルタナバード陶器と呼ばれているものも。


さて、展示室5・6…に行く前に。


季節ということで、2階にお雛様が飾られていた。京都製の御殿飾り。
松岡清次郎氏の長女さんのものだそうな。


展示室5・6。
今回の本題「美しい人びと 松園からローランサンまで」。

www.matsuoka-museum.jp
前後期制。日本画はどうしても保管的に長く展示していられないからね。
今回は展示室6から始まる。
「美しい女(ひと)びと」。
所謂美人画だが…作者未詳の肉筆浮世絵「三美人図」は浮世絵の正統派美人。
で、以前も拝見して美しいと思った円山応挙「趙飛燕」の後に、上村松園「春宵」が続き、更に(以前拝見したとはいえ)鏑木清方「春の海」「菖蒲湯」が出ている。…美しすぎて意味が分からない並び…。
伊藤小坡「ほととぎす」「麗春」も。伊藤小坡、まだお持ちなのか…。「ほととぎす」はほととぎす自体は描かれてなくて、ほととぎすの声にはっとした表情の女性の絵。表情がとても良いし着物も綺麗。「麗春」も着物と、梅の花が綺麗。
で、あれ、と思ったのが菊池契月「寛永麗人」。江戸時代初期の女性(なので兵庫髷が特徴的)が、「舶来もの」の犬を連れている図。勿論、美しいのではあるが。
morina0321-2.hatenablog.com
「散策」を思い出すんだよね。あれも犬を連れている絵で。勿論、あちらは大正時代の女学生風だったんだけど。何かシリーズものとかだったりするのだろうか。

展示室6へ。
もう少し「美しい女(ひと)びと」が続く。
梶原緋佐子「白川路」。大原女みたいな女性なのかな。非常に前向きの視線が格好いい。梶原緋佐子の絵だなあ…。

で、次のコーナーは「美しい男(ひと)びと」。
下村観山「山寺の春」は以前も拝見したが、「武人愛梅」と、若い男性を描く絵が続く。観山は年齢を重ねた男性が格好いいが、青年もなかなか。「武人愛梅」は装束がとても美しい。
小堀鞆音「孝子小松内府図」や久隅守景「業平・定家」は以前も拝見しているけれど、この辺りを並べてくるのはやはり眼福。
で、酒井抱一「布引滝・旭鶏・月兎」。…え?「月兎」は以前単独で拝見したけれど、三幅一対だったの?一幅ずつでも目の保養なのだが…。「旭鶏」「月兎」は描かれている鶏や兎も可愛く、風情もあり。
「布引滝」は眺めている3人の男性の装束の色が鮮やかで。

最後は「西洋の人びと」。油彩画。
まずは裸婦。ジャン=ジャック・エンネル「森の中に横たわる裸婦」も、モーリス・ドニ「赤い寝椅子に横たわる裸婦」も、どちらも素敵。エンネルはアカデミック、ドニはナビ派ではあるけれど。
でもって肖像画
まずは以前も拝見したチャールズ・エドワード・ペルジーニ「束の間の喜び」。
で、チャールズ・シレム・リッダーデイル(イギリスのロイヤル・アカデミーの画家なのか)「少女像」はショートカットの理知的そうな女性が素敵。少女というより少し大人びた感じだけれど、外国人だからかなあ。
で、最後はマリー・ローランサン。この日、書き手はマリー・ローランサンで始まってマリー・ローランサンで終わっているという。「帽子をかぶった少女」は以前拝見したけれど、「若い女」は初めて。で、前者が1920年代、後者が1930年代。なので輪郭線がない絵と、鮮やかな色彩。これは拝見している順番として正しかったかもしれない。


あ、「西洋の人びと」途中に和室の展示。
梶川文龍斎「源氏蒔絵棚」細かい…ガラス越しだと別のものが反射してしまうので、もう少し間近で細かく拝見したいなあ。
床の間には堂本印象「椿」が。これはテーマとは別に、季節的な理由で展示しているのかな。花弁の色の付け方がとても良い。


大変眼福な展覧会。
あと、ミュージアムショップに、今回の簡単な解説が載っている、手作りの冊子が売られていた。「憧憬のペルシア」と「美しい人びと 松園からローランサンまで」の2点。200円。個人的にはこういう試みが好きなので、どちらも購入。
「美しい人びと 松園からローランサンまで」の後期展示も、多分伺うのではないかと。
そういえば、後期展示だと解説の冊子も変わるのかな。

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最後にこの日の花手水。分かりやすい風の強さよ。


さて、今回はこれで終了…なのだが、もう1つ余談。
松岡美術館の向かいに、何やらお店ができておりまして。
https://www.instagram.com/kiko_wine_and_chocolate/
ワインとチョコレートメインのお店。


というわけで伺って参りました。
実は松岡美術館の途中で寄って休める適当な場所がないなあ、と思っていて。白金台の辺りってチェーン系のカフェがないんだよね。目黒まで歩けばあるけど。ちょっと敷居が高そうなカフェもあるんだけど、そこは未踏。
これなら休める!というか酒が呑める!(ストレート)選択肢が増えるのはありがたい…。
ちなみに頂いているチョコレートの粒の方はサントメ産のカカオ豆で作っているベルギーチョコレート。サントメってサントメ・プリンシペのか!山種美術館とか國學院大の近所に領事館的なものがある。確認したら、カカオ豆のモノカルチャーなんだな…。